第四十五話 二章第九話 ウンディーネ戦
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第四十五話です。
討伐対象の水の精霊と遭遇したマサキ達、その戦いの行方は?!
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「いたぞ! ウンディーネらしき水柱が見える!!」
陽が傾き始め空に赤味が帯びてきた頃、見張りから警告が発せられ、甲板上は蜂の巣を突いたように慌ただしくなった。
それまで風を受けていた帆を畳むため、水兵たちがあちこちでロープを引っ張り、収納していた櫂が突き出される。
俺達はそんな彼らの邪魔にならないよう船の後部に寄って、ウンディーネとの戦いに備えて最後の確認と準備を行なう。
「水の精霊よ、その力で我らに水上を歩む加護を与えよ!〝ウォーター・ウォーキング〟」
詠唱を終えたアリサは俺、ネイリーン、ルシェラの順に杖で触れて水上歩行を可能にする魔法を授ける。
水の精霊を退治するのに水の精霊から加護を得るのは不思議な気もするが、本来なら精霊はエレンディア世界の事象を担う裏方的存在だ。そんな彼らが積極的に人間を襲うのは何らかの理由で〝狂った〟状態に陥っているわけで、一部の個体に過ぎない。
この海域には〝正常なウンディーネ〟も存在し、アリサはそちらから力を借りて魔法として活用したのである。
「これで、私の魔法が効いている限り決して溺れることはないよ!」
改めて魔法の効果を説明するアリサだが、それは主に俺に宛てているのだろう。彼女は俺に視線を送りながら微笑む。
「ああ、アリサを信じているよ」
俺は当たり前とばかりに頷いた。
俺達が考え出したウンディーネ討伐方法は単純ながら効率的だ。
まずは船とその乗員の安全を図るため、アリサの魔法で海上を歩けるようになった俺達だけで〝狂ったウンディーネ〟まで接近する。
その後は前衛役が敵の注意を惹きつけ、切り札のアリサが〝コントロール・エレメンタル〟で強制的に水の精霊を支配し、疑似的に持っていた個我〝人間への敵意〟を消して無害化するという段取りだ。
何しろ母船である〝白き翼号〟がウンディーネとの戦闘で損傷、あるいは沈没してしまえば生きてメーゼレに帰還するのは不可能となる。精霊魔法スキルを高レベルで保持するアリサがいるからこそ取れる戦術だろう。
船長が用意してくれた網状のロープを使って海に〝着地〟した俺は、初めて〝ウォーター・ウォーキング〟の効果を味わった。
最初は大きなクッションに降りたような弾力があったが、まもなく足裏に堅い地面があるような錯覚に襲われる。それでいて波によって足元がダイレクトに上下に動くので、エレベーターで下に降りた時のように下半身の奥がモゾモゾする感じもした。
同じ場所に立ち続けたら更に船酔いを悪化させてしまいそうだが、海の上を溺れるリスクになしに行動できるメリットに比べれば贅沢な悩みだろう。
「頼んだよ! あんた達!」
俺達のパーティー全員が海に降り立ったところで、上から船長の声援が届く。直接戦うのは俺達だが、彼女も〝狂ったウンディーネ〟の恐ろしさは充分に知っているに違いない。悲愴な面持ちをしていた。
「ああ、任せてよ!」
それにリーダーのアリサが答えると、俺達は陣形を整えてウンディーネが待つ海域へ歩き出した。
「敵はこちらに気付いたようです!!」
先頭の歩くネイリーンが警告の声を上げる。
それまで遠くに見えていた異様な水柱が、まさにこちらを目掛けて迫って来ている。いよいよウンディーネとの戦いが始まろうとしていた!
「皆、魔法を完成させるまで、時間を稼いで!」
「「「了解!!」」」
事前の約束どおり俺達はアリサの前に三方向に散る。俺が左翼、ネイリーンが中央、ルシェラが右翼の布陣だ。
ルシャラの前衛能力は俺やネイリーンに比べると低いが、アリサを敵のターゲットから外すため、今回は彼女にも囮役を担ってもらっていた。
「こっちです!!」
もっとも、メインの壁役はやはりネイリーンである。彼女は自分を標的とさせるよう大声でウンディーネを挑発した。
その目論見は成功し、巨大な・・・人の背丈の倍ほどもある水の柱が彼女に迫る。
この距離になると〝狂ったウンディーネ〟が髪の長い女性の姿を取っていることが、はっきりと見て取れる。形の良い乳房やくびれた腰までもが再現されており、無駄に官能的だ。
水の女巨人とも言うべき存在は勢いを維持したままネイリーンを飲み込もうと、その海水で象られた腕を延ばした。
だが、ネイリーンはその攻撃を素早く避けると、すれ違い様に長剣を一閃させる。剣の切っ先がウンディーネの腕を捉え水飛沫を飛ばす。
不定形のはずのウンディーネはまるで痛がるかのように、その身を退かせる。彼女が父から受け継いだ長剣は魔力が込められており、精霊のような魔性の存在にもダメージを負わすことが出来るのだ。
「狂える水の精霊よ! その身を我に預け、配下と成れ!〝コントロール・エレメンタル〟」
ネイリーンがウンディーネを怯ませたと同時に真打であるアリサの魔法が完成する。視覚的には派手な変化は見られなかったが、水の精霊は硬直したかのように動きを止めた。
「・・・やったか?」
思わず呟いてしまった自分の言葉に、俺はしまったとばかりに後悔の念を持つ。こんな台詞はフラグでしかない。
その不吉な台詞に誘われるように〝狂ったウンディーネ〟は再び動き出すと、アリサに向って突撃を開始する。魔法が失敗したことで彼女を最大の敵と認識したのだろう。
それを阻止しようとネイリーンが再び前に立ちはだかるが、水の巨人は急に萎んだように足場となっている海に潜り彼女を素通りする。水の精霊ならではの立体的な動きだ。
「〝ショートリープ〟!」
もちろん、俺はそんな敵の動きに感心をしているだけでなかった。暗黒魔法を唱え、足場の悪い海上を瞬間移動で距離を詰めるとウンディーネとアリサの間に躍り出る。
当然だが、俺達はアリサの〝コントロール・エレメンタル〟が抵抗された場合のことも想定している。この場合は素早く第二作戦に以降する手筈だ。
第二作戦・・・それは、各自最善を尽くし全力で敵を倒せ! である。
「〝エナジードレイン〟!」
再び人型の形態を海上に現したウンディーネに、俺は標的の精神力を吸い取る暗黒魔法を放つ。
俺の剣はそれなりの業物だが、ネイリーンとは違い魔力は込められていない。そのため精霊にダメージを与えるには魔法しか手段がなかったのである。
もっとも、魔力や精神力でその存在を維持している精霊にとって、精神力に直接ダメージを与える〝エナジードレイン〟は有効な対抗手段のはずだった。
その証拠とばかり、俺の精神力に純粋で濃厚な魔力が汲み足されると、ウンディーネは身体を僅かだが縮ませる。効いている証拠だ。
「やった!」
手応えを感じ歓声を上げる俺。だが、ウンディーネは勢いを止めることなく間合いを詰めると、まるで俺が恋人でもあるかのように両手を広げ抱擁しようと迫る。
「そ、それは、もう間に合ってます!!」
回避が遅れた俺は、抱き付こうとする海水で象られた女体に場違いな悲鳴を上げた。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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