第四十四話 二章第八話 白き翼号
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第四十四話です。
ウンディーネ退治に向うため、メーゼレ海軍の哨戒船に乗り込んだマサキだったが・・・。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
朝の柔らかい日差しの中、その船は白い帆を膨らませながら青い海を切り裂くように進んでいた。
どこから現れたカモメらしき海鳥達が並走するように飛び回っている。漁船と間違えて何かおこぼれを貰えやしないかと探っているのだろう。
そんな様子を俺はメインマストの麓から眺めていた。本来な爽やかで絵になる光景だが、今の俺にそんな余裕はなかった。
もっとも、再び一度溺れ死んだことによる海への恐怖に苛まれているのではない。それは仲間達の支えによって我慢出来るまでに克服していた。
だが、船が揺られることで与えられる三半規管へのダメージはかつてのトラウマとは無関係に俺を襲い、一時間ほどの船旅で既に船酔いになり始めていたのである。
そして船室で横になるより、立って潮風を浴びている方が楽なことに気付くと、俺はメインマストに張り付くようにして気分を紛らわせているのだ。
これからウンディーネ退治に出掛けると言うのに情けない姿ではあるが、隣にはルシェラも苦しそうな表情を浮かべて立っているので、俺が特別に軟弱というわけでないはずだ。
「だ、大丈夫か? ルシェラ?」
「あんまり、大丈夫じゃないみたい・・・」
倒れそうになったルシェラの腕を掴むと、俺は彼女を支えるために自分へと引き寄せる。俺も苦しいがルシェラはより深刻のようだ。
「ああ、マサキにルシャラ! 良い物を借りてきたよ!」
「二人とも大丈夫ですか?!」
そこにアリサとネイリーンが現れ俺達を励ましてくれる。彼女達は俺とルシェラよりも丈夫な三半規管を持っているらしい。
「も、もしかして、酔い止めの薬かな?」
俺はアリサの言葉に期待を感じながら問い掛ける。
「いや、盥を二つ借りて来た! これで甲板や服を汚さずに済むはずだよ!」
「・・・あ、ありがと」
「・・・」
俺とルシェラはネイリーンに支えながら、アリサが突きだした小さな盥を受け取る。今回の依頼は前途多難であった。
昨夜はネイリーンが絡んで来たチンピラ冒険者を危うく殺し掛けるハプニングもあり、俺と彼女はそれ以後、甘いムードに戻ることはなく明日に備えて寝室の向かうことになった。
そして翌朝、夜明け前に仲間と合流し軽い朝食を終えると、約束どおり今回の依頼主で船を提供してくれるメーゼレ海軍の迎えが来たので、俺達は水路を使って港まで案内される。
早朝ということもあり、俺達を乗せた小舟は十分も掛からずにメーゼレ海軍が待つ哨戒船に辿り着く。昨日は狭く迷路なような道に驚かされたが、慣れれば移動も楽で食事も美味い良い街なのかもしれない。
俺達が乗る哨戒船〝白き翼号〟は全長20メートルほどの大きさで、三本のマストと片側8本、合計16本の櫂を持つ帆船とガレー船との合いの子のような船だった。
待ち合わせていた女船長との挨拶時に聞かされた話だが、この船は本来、パトロール用に造られた高速船で、櫂を漕ぐのはウッドゴーレムと呼ばれる人型サイズの簡易ゴーレムらしい。
一本の櫂に二体が担当し、事実上このゴーレム達が沖合に出て風を受けるまでの補助動力を担当する。
俺のいた世界では人間に漕がせるのが一般的なので、それに比べればスマートだが、どうせ魔法を使うなら直接船を動かせないものかと思ってしまう。
まあ、その辺は俺の知らないところで色々と効率の問題があるのだろう。いずれにしてもこのエレンディアでは魔法文明によってエネルギー問題が解決されており、この船も自動化が進んでいるというわけだ。
そのような理由から、この哨戒船の乗員は25人程度と思ったよりも少なく、船長を始めにウッドゴーレムの製造と命令を可能とする付与魔法スキルの保持者が多いようだ。
また、船乗りということで荒くれ男達の群を想像していたのだが、船長を筆頭に女性も働いており男女差はやや男の方が多い6対4ほどだった。
メーゼレ海軍に限らず、冒険者のような生業にも女性の社会進出が著しいエレンディア世界だが、これは魔法の才能には男女の体格差が関係ないからだろう。まあネイリーンのような例外もいるのだが。
話が逸れたが、船長との挨拶と船の説明を聞き終えた俺達は、その後も具体的な〝狂ったウンディーネ〟の対応策やそれぞれの役割をお互いが納得するまで確認し合う。
何せ総勢30人の命が掛かっているのである、予想出来るトラブルは今の内に解決する必要があった。
そして打ち合わせも含めて、食料や水等の物資の積み込みを終えて全て憂い解決すると、メーゼレ海軍の高速哨戒船〝白き翼号〟は船長の命令に従い一糸乱れぬ動きで櫂を漕ぎ始め出航を開始したのだった。
「これを噛むと少しは楽になるかもしれない」
なんとかアリサから渡された盥を使わずにいた俺だったが、それでも最悪に近い気分に耐えていると、大きな帽子を被った中年女性、この船の船長がやって来て俺とルシェラに緑の葉を一枚ずつ差し出した。
それまで忙しく部下に指示を与えていた彼女だったが、風が安定したことで〝客〟である俺達に構う余裕が出てようだ。
「あ、ありがとうございます!」
俺はこれこそ船酔いに効く薬草だと信じ、礼を伝えると同時に口に放り込む。その途端に口の中だけでなく、鼻腔にもミントを更に数倍強くしたような清涼感が広がる。何回か噛むと強い苦味もやって来たが、今の状態ではそれすらも逆に心地良かった。
「ほら、ルシェラも齧ってみろよ」
効果を確認した俺はルシェラの代わりに葉を受け取り、そのまま彼女の口に突っ込む。
「うう・・・確かに、少しはましになったかも・・・」
特効薬とは言えないが、ルシェラにも効果があったようで、咀嚼しながら微かな笑みを浮かべた。
「それは良かった。あんたらにはウンディーネ退治にがんばって貰いたいからね、船酔いで何も出来ませんじゃ、こっちも困るから! ははは!」
女性船長はその太めの体格に似合った大きな声で豪快に笑いだす。
もっとも、その声の調子には船乗りにある、陸の者を見下すような嫌味はない。いわゆる肝っ玉母ちゃんのノリだ。ダークエルフのルシェラにも偏見はないようで、俺よりも症状が酷い彼女の背中を優しく撫でる
「あ、ありがと・・・まさかこんな揺れるとは思わなかったよ・・・」
「まあ、この船は速度を出すための快速船なんでね、特に揺れやすいんだ。もう二、三枚渡しておくから、目的地に着くまでになんとか回復させておくれよ! ははは!」
船長は更にルシェラを励ますと、ミントに似た葉を更に彼女に手渡すと笑い声を残して去って行った。
そんな彼女の善意もあり、俺とルシェラの二人は〝狂ったウンディーネ〟が現れる海域に到着することには、万全と言えなかったが、戦えるまでに気分と体調を回復させることが出来たのだった。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
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