第四十三話 二章第七話 海の幸そしてネイリーン
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第四十三話です。
港街メーゼレに到着したマサキはネイリーンと良い雰囲気になるのだが?!
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
計画的に整備されたトリムとは異なり、雑然としたメーゼレの狭い道をネイリーンの案内に従い俺達は冒険者ギルドを目指す。
洗濯物の直ぐ隣で捌いた魚の切り身を干している誰かの庭先を通ったかと思えば、屋台が連なる横丁の裏、調理場としか思えない場所を横断するなど、メーゼレの港地区は驚きに満ちた街だ。
それもそのはずで、山の手側に繋がる大通りを除くと陸側を歩く者よりも、街中に張り巡らされた水路を行く小舟の方が多いくらいなのである。
この街の住人からすれば、街中の移動は小舟でするのが常識であり、陸側の通路はあくまでも近所に出向く裏道という感覚なのかもしれなかった。
やがて無秩序に繋がる狭い道を抜け、水路に掛けられた橋を越えて俺達を先導していたネイリーンが足を止める。どうやら目的地に到着したようである・
もし、土地勘のある彼女がいなかったら、俺達は明るい内に辿りつけなかったに違いない。そう感じさせるほど、港地区は細々とした街並みだった。
もっとも、そこまでしてやって来たメーゼレの冒険者ギルドは想像していたよりも小さかった。精々、少し大きめの酒場か宿屋といった具合である。
建材もほとんどが木製で風雨や陽に晒されたことで漂白されたように白み掛かっている。トリムのギルドとは比べものにならないほどお粗末だ。
「着きました。ここがメーゼレの冒険者ギルドです」
こちらを振り向いたネイリーンが俺達に到着を告げるが、その顔にうっすらと苦笑が浮かぶ。トリムのギルドを見慣れている俺達が、がっかりしたことを感じ取ったに違いない。
「ありがと。まあ・・・皆も言いたいことがあるだろうけど、ここはトリムみたいな大都市じゃない。とりあえず中に入って依頼の受諾とこれからの予定を相談しよう」
案内終えたネイリーンを労わると、アリサは俺達を励ますように率先してメーゼレの冒険者ギルドの扉を開けた。
「最初はあまり期待していなかったけど、食事は本当に美味いな・・・」
俺は空になった皿を前にして声を抑えて呟いた。
茹でたエビの尾を剥いて赤味のあるソースで味付けしたその料理は、素材の甘味とソースの酸味や香辛料が絶妙にマッチしており、控えめに言っても凄く美味かった。これだけでご飯二杯は食べられるだろう。
と言うか、この世界で一般的流通している穀物は米ではなく麦なので、凄くご飯が恋しかったりする。ああ、米が食べたい!
「うん、素材も新鮮だけど、香辛料の使い方が上手いね。さすが、港街だよ!」
アリサが俺の意見に同意し、魚の切り身の串焼きを肴に麦酒を飲み込んだ。
「ほんりょに、おいひい!」
「ルシェラ、料理は逃げませんから、もっとゆっくり食べては?」
「そうひはれへも」
ルシェラに至っては口いっぱいに料理を頬張りながら何度も頷く。内陸、しかも山間に近い集落で暮らしていた彼女にとって海の幸を口にするのは今日が初めてのことなのだ。
最初はエビの形状に驚きをみせていた彼女だが、当たり前のように食べる俺に触発されたのか、いつの間にか新しい食の境地を歩んでいた。
俺達の中でただ一人冷静なのが、メーゼレに滞在経験のあるネイリーンだ。彼女は魚の切り身と野菜の酢漬け、いわゆるマリネで麦酒を静かに味わいながらルシェラの面倒を見ている。
そんなわけで建物の外観と規模でがっかりしていた俺とアリサ、ルシェラの三人は食事の質の高さからメーゼレの冒険者ギルドの評価をあっさり〝掌返し〟したのだった。
もちろん食事と酒を楽しむ前にやることはしっかりやって、既に俺達はトリム経由でウンディーネ鎮圧の依頼を受けた冒険者パーティーであることをギルド側に伝え、正式な契約を結んでいる。
〝狂ったウンディーネ〟はメーゼレから少し離れた南東側、最近の海賊騒ぎで迂回路とした海域に出没しているらしく、現地まではメーゼレ海軍が持つ足の速い哨戒船を使っても片道で丸一日は掛かるとのことだった。
そのため、討伐出発は明日の早朝と決まり、初日の午後は旅の疲れを癒しつとともに、メーゼレに流れる噂の収集に費やしたのである。
今更だが、テレニア海で海賊の動きが活発化しているのは間違いのない事実だった。
メーゼレにやって来る商船は自衛能力がある大型船か足の速い高速船くらいで、その数は本来の半分以下となっているらしい。
その海賊を避けるために迂回路が新たに考案されたのだが、こちらは〝狂ったウンディーネ〟が居て海賊並に危険な海域であったことが発覚する。
道中で俺達が予想したとおり、海賊とウンディーネ退治の依頼は密接に関連していたのである。
また、メーゼレの有力者が所有する商船も立て続けに襲われ、その人物が海賊と奪われた商材や宝物の奪還に多額の懸賞金を掛けているという噂も耳にする。
冒険者としては心踊らされる話だが、海賊はどこかの島に拠点を作るほど組織化されており、今のメーゼレ海軍では簡単に手を出すことが出来ない規模だとされている。
アリサ率いる俺達のパーティーは優秀だが、四人だけでそれだけの海賊と渡り合えるはずがなく、メーゼレの政治事情もあって、これについては深入りを避けることで仲間の意見が一致した。
何しろメーゼレはトリムと違い、指揮系統が統一されておらず有力者がお互いを牽制し足を引っ張り合っているらしいのだ。
本気で海賊を根絶やしにするつもりなら、まずはメーゼレでの勢力争いを解決してからだろう。ウンディーネ退治ならいざ知らず、有力者のごたごたの後始末をする気は俺達になかった。
「ふう・・・さてと、もうちょっと麦酒を飲みたい気持ちもあるけど、明日に備えて寝るとするかな」
二杯目の麦酒を飲み干したアリサは溜息を吐くと、立ち上がる準備を始める。まだ宵の口で酒量も彼女にしては控えめだが、頃合いと見たのだろう。
明日からは丸一日かそれ以上船の上で生活することになるのである。体調を万全に備える必要があった。
「うん、私もお腹いっぱいで早く横になりたいかな、アリサ、一緒に部屋に行こうよ!」
「俺も・・・ぐっ!」
ルシェラもお腹を擦りながら立ち上がったので、俺もそれに続こうとするが、いきなりテーブルの下で足を踏まれ、浮かした腰を再び椅子に落としてしまう。
「わ、私とマサキは、も、もう少し他の冒険者から情報を集めてみます!」
「なるほど、ではネイリーンにマサキ、おやすみ。また明日。それじゃルシェラ、一緒に部屋に行こうか」
「う、うん。おやすみ・・・」
一緒に部屋に行こうと言った手前か、ルシェラは残ることになった俺達に二人に未練そうな視線を残しつつも、アリサとともに客室のある二階に続く階段へと消えていった。
「何も足を踏むことはないだろう?」
残された俺は右隣に座るネイリーンを責めた。
情報収集の重要性は俺も良く知っている。それを彼女一人にさせるつもりはない。普通に誘ってくれれば、協力するつもりでいたのだ。
「そ、それはすみませんでした。わ、私も悪いことをしたと思っています。でも、もうちょっとマサキと・・・二人で一緒に飲みたいなと思って・・・」
「ん? 聞き込みを手伝うんじゃないのか?」
「あ、いや、そうです! そう! でも、そんなに急ぐこともないでしょう!」
先程とは異なることを口にしたので、俺が改めて問い掛けるとネイリーンは焦りながら辻褄を合わせるように呟く。
この様子から酒精で頭の働きが鈍くなっていた俺は、やっとネイリーンの真意に気付く。彼女は俺と二人きりになるためにアリサ達に嘘を吐いたのだ。
「た、確かに、い、急ぐことはないかもな!」
女の子・・・そうネイリーンはまだギリギリ女の子だ。女の子から誘い受けたことで、俺は逆に恥ずかしくなって言葉をどもらせる。何しろ、こんなことを言われたのは生まれて初めてなのだ!!
「で、でしょう!」
ネイリーンも俺と同じように顔を赤くしながら頷いた。
その様子を見ながら俺は『そうか!』とこれまでの盲点に気付く。どうやら俺はこれまでに付き合いで、自分が思っていた以上にネイリーンとのフラグを貯めまくっていたらしい。
今なら、鎧なしで俺を抱き締めて欲しいとお願いしても、彼女はあっさり認めてくれそうである。と言うか、それ以上のことをしても許されそうだ!!
どうしよう・・・多少の癖はあるがネイリーンは魅力的な女性だ。これだけ慕ってくれるのなら、それに応えるのが男ではないか? そんなことを考えていると、耳触りの悪い男の声が聞こえて来た。
「よう、あんちゃん! 見せて付けてくれるじゃねぇか! その気がねぇなら俺が代わってやるぜ! それにそっちの姉ちゃんも、なんなら俺が一晩中その・・・」
声が聞えた方を振り向くと体格の良い男がこちらに下品な笑みを浮かべて立っていた。汚れているが板金鎧を着て腰に帯びているところを見ると戦士職の冒険者らしい。
どうやら、俺とネイリーンのこれまでのやり取りを店のどこからか盗み見ていて、良い感じになったところで絡んで来たようだ。
まあ、確かに俺のような特に強そうにも見えない若い男が、ネイリーンのような美女とイチャつき始めたら良い気分はしないだろう。
もっとも、トリムでは俺・・・ではなくネイリーンにそのような声を掛ける男は一人もいない。なぜなら、彼女を怒らせた者の運命は決まっているからだ。
「ネイリーンここは俺に・・・」
任せろと言おうとした時には、既にネイリーンは立ち上がって、その男を見事なアッパーカットで殴り飛ばしていた。彼女は剣の腕だけでなく格闘スキルも達人級なのだ。
「おい! ちょっと! こいつ首が! しかも息もしていないんじゃないか?!」
俺とのやり取りを邪魔されたからか、この日のネイリーンは手加減を忘れたらしい。白目を剝いて倒れた男の首が不自然な形に曲がっていることに気付くと俺は彼女に訴えた。
「仕方ないですね・・・回復魔法を掛けるので、マサキは首を正しい位置に固定しといて下さい」
「わ、わかった!」
絡んで来た男を助けながら、俺はネイリーンと付き合うのは、もう少し強くなってからにしようと心に誓った。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新を予定しております。
二章の舞台となる港街メーゼレはヴェネチアをイメージして、異国情緒を出すように心掛けています。
読者がマサキを通して、トリムとは異なる街並みを感じてくれたら作者として嬉しいです!
よろしければ感想や評価をお待ちしております!




