第三十七話 二章第一話 腕試し
異世界を舞台としたハーレム冒険小説の通算第三十七話です。今回から新しい章が始まります。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、作者のやる気が出て頑張れます!
「てい!」
短い掛け声とともに放たれた横なぎの斬撃を俺は自分の剣で受け止める。
それと同時に激しい火花を散り、剣を握る手と腕を通じて激しい衝撃が全身に伝わった。鋭さだけでなく重さを伴った恐ろしい攻撃だ。
『やはり強い!』
俺は敵の能力を純粋に認めると、後ろに身を引いて力を相殺させる。このままでは剣を弾かられるか、圧力で押し倒されてしまうからだ。
だが、相手は俺が守勢に回ることを想定していたのだろう。鎖帷子を纏った大柄の女戦士は滑るように間合いを詰めると、自身の長剣を握ったまま俺の側頭部を狙って肘打ちを放った
「く!」
後頭部の髪を掠る感覚と耳障りな風切り音を得ながらも、俺は頭を下げて攻撃を辛うじて躱す。そして、その勢いを殺さずに飛び込むように前転をして敵との距離を広げた。
相手は俺を上回る体格の持ち主であり、更には格闘スキル32レベルの所持者である。組み付かれてしまったら何も出来ずに締め落とされてしまうだろう。格闘戦は避けねばならない。
間合いを仕切り直した俺は飛び起きると、すぐさま後ろを振り返る。敵の追撃に対処するためだ。しかし、俺の予想は良い方向で裏切られる。敵の大柄の戦士はこちらに向き直ったばかりであった。
直線的な動きこそ見劣りしないが、やはり重鎧を着る代償は確実にあるようで、旋回などの咄嗟の動きは俺よりもワンテンポ遅れている。
俺はそれこそ敵に付け入る弱点であることに気付くと、一度左側に回り込む動きを見せてから急に反転し右側から剣を振るった。
「む!」
狙いどおり左からの攻撃に対処しようとした敵は、切り返しに惑わされたことで短く声を漏らした。
剣撃が相手の左肩に食い込もうとした瞬間、俺は力を逆に込めてその動きを止める。それでも、抑えきれなかった剣の切っ先が、リング状の鉄編が律儀に並ぶ鎖帷子に当って微かな音を立てた
「ああ・・・一本取られてしました」
相手の戦士は構えを解くと残念そうに呟く。だが、その台詞とは逆に彼女の顔には笑みが浮かんでおり、俺への賞賛を示していた。
「・・・やった、やっとネイリーンから一本とった!」
俺もそれに応えるように笑顔を作ると歓喜の声を上げた。
トリムの街に災いを齎したドラゴンと秩序の使者の襲撃から一カ月が立とうとしていた。
その間にも緊急の依頼を成功させていたが、それらの冒険を乗り越え自身の成長を感じた俺は、腕試しとしてネイリーンに試合を申し込んだのだ。
このエレンディア世界では経験値を使って様々なスキルを身に付けられるが、覚えたてのスキルをいきなり実戦で扱うには、やはり不安がある。
そのため冒険者ギルドの裏庭には模擬戦や魔法の試し打ちをする練習場が用意されており、冒険者達が仲間内で試合を行うのは特に珍しいことではなかった。
このような理由からネイリーンは二つ返事で、俺にそのでかい胸を貸してくれたのである。
以前の冒険で、防御面はともかく剣の腕はネイリーンに追い着いたと思い込んでいた俺だが、それは甘い願望でしかなかった。
合計十回行った試合でネイリーンに有効打を与えることは出来たのは七戦目のたった一回だけだ。
弱点と思われる左右への対処の遅れを突いて一本奪ったが、それ以後の試合では俺の動きに対応し、結局彼女は九対一で俺を圧倒した。
もちろん今回はあくまで模擬戦であり、魔法の使用を禁止した剣と体術のみの試合なので、俺には暗黒魔法という切り札もあったが、ネイリーンも回復魔法を温存しているので条件はほぼ対等と言えた。
まあ、冷静に考えて見ればネイリーンはこのトリムでも有数の戦士なのである。
俺はエレンディアに転生してから二回ほど死に掛けるか本当に一度死んだりして、経験値にボーナスを得ていたが、それだけで簡単に追い付ける存在ではないということなのだろう。
ちなみに俺はトリム防衛戦で24000、その後の薬草の買い付け依頼で3400の経験値を得て、武器戦闘(刀剣)32、回避特化20、暗黒魔法20、そしてこれからの冒険を想定して探索スキルを20まで伸ばした。
さらに余談だが、俺の持つ自動蘇生スキルの初期習得コストは5000と判明する。現在値が50レベルなので51にするには20000必要だ。
蘇生確立がスキルの値であることを考えると、他のスキルを延ばす方が、賢明な経験値の使い方と言えるだろう。
当然と言うべきか、仲間達の中にもこのスキルの取得を願う者は出なかった。やはり、コスト的には完全な外れスキルなのだ。
「マサキは本当に強くなったね!」
ネイリーンとの試合を終えて冒険者ギルドの食堂に顔を出した俺は、銀髪で褐色の肌をした美少女に出迎えられる。仲間でダークエルフのルシェラである。
彼女は先程までアリサと一緒に俺達の試合を見学していて、着替えをしてきた俺よりも一足先にいつものテーブルに戻っていた。
「なんとか、それらしくなってきたかな」
「そうは言うけど、ネイリーンと試合が成立するだけでも凄いことだと思うよ。ふふふ」
「そ、そ、そうかな!」
謙遜しながら席に腰を降ろす俺に、もう一人の仲間でパーティーリーダーのアリサが微笑を浮かべながら褒めてくれる。
今日の彼女は長い金髪をお下げにして背中に垂らしている。なので、均整のとれた頭と顔の造形がはっきりと見て取れた。
普段の彼女も素敵だが、お下げ姿のアリサも可愛らしい。そんな美少女達から褒められたことで、顔の筋肉がとろけそうになるが、俺はそれに必死に耐えた。
「マサキが強くなったのは事実ですが、この男はあまり褒めると調子に乗りますからそれくらいしておきましょう」
「・・・ああ、確かにそれはあるね。今のはなしにしよう!」
「そう言えば、そうだったね。この程度で浮かれているようではまだまだ甘いよ。マサキ!」
「え!!」
俺がニヤケ面を抑えていると、やはり着替えから戻ったネイリーンが現れてアリサ達を窘める。その内容は俺としても自覚しているが、せっかくの良い気分が台無しである。
ネイリーンのことは仲間として頼りにしているし、腕試しを引き受けてくれた感謝の気持ちもあったが、俺はいつか彼女に『参りました!』と言わせてやると心に誓うのだった。
ご愛読ありがとうございました。二章からは一日ごとの更新が厳しくなってきたので、一日ごろの更新となります。
ペースが落ちてしまいましたが、これからもよろしくお願いします。




