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第三十五話 決着

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第三十五話です。

アリサの容態を気にしながら戦うマサキ達は遂に・・・。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、なんでもするかもしれません!


「「「アリサ!!」」」

 俺とネイリーン、ルシェラの三人はアリサの名を同時に叫んでいた。その中で最も早く反応したのはネイリーンである。彼女は剣を抜くと同時にアリサを串刺しにした者、俺が一度は倒したはずのエルフ女へと斬り掛かる。

 だがそれは、後ろから現れた盾を持った重装戦士によって阻まれてしまう。どうやら、こいつらはゴルディゾーンを倒した俺達に雪辱戦を仕掛けて来たようだ。

「あんた達!!」

「ルシェラ、退け!」

 ルシェラがこれまで発したことのない怒声を上げながら矢を番えるが、アリサの肩から槍を抜き取ったエルフ女が彼女を襲う構えを見せたので、俺は後退を促すと入れ替わるように前に出る。アリサの容態を真っ先に確認したかったが、その欲求に耐えるだけの判断力を俺は持っていた。

「お前は!」

「ふん! 止めを刺さないお前が甘い!」

 同じく怒りを込めて発した俺の声と剣を敵は蔑みを持って受け流す。その返事に怒りの炎は更に燃え上がり、理性が吹き飛ぶ寸前となるが、同時に後悔の念も懐いていた。

 現在の状況は俺が招いたのだ。エルフ女へ確実に止めを刺していれば、アリサは・・・その槍で刺されることはなかったのである。全ては敵が一人だけと見誤った俺の甘さと愚かさが元凶だった!

「クソが! 殺してやる!!」

 ただ目の前の敵を倒す! 俺はその欲望に支配され剣を振るう。だが、エルフ女との技量差は怒りでどうにかなるモノではなかった。斬撃を槍の穂先で弾かれると逆に左肩を掠められて血しぶきが舞う。ゴルゾディーンのブレスで鎧を焼かれた俺は僅かな下着を着ているだけで、上半身は丸裸も同然なのだ。

「マサキ! 私は無事だ! 落ち着いてくれ!」

 俺の戦い方はよほど危なげだったのか、槍で刺されたはずのアリサが、か細い声で訴える。いずれにしても彼女が生きていることを知った俺は冷静さを取り戻す。アリサは自身のダメージを癒すことが出来る魔術士である。命に別状はないと思われた。少なくても今は!

「きゃあ!!」

 そんな俺の読みを嘲笑うかのようにルシェラの悲鳴が響く。前のエルフ女の隙を窺いながらも半身になって後ろを確認した俺の目に、黒髪の二刀流使いと魔術士タイプの攻撃に喘ぐルシェラの姿が映る。

「お前達! よくも白き翼を倒してくれたな! その仇を撃たせて貰うぞ!」

 二刀流使いはルシェラをその双剣で圧倒すると、そう啖呵を切った。


 状況は極めて不利だった。ゴルディゾーンの復讐に燃える敵に不意を突かれアリサが負傷し、前後を挟まれルシェラが二人からの攻撃を晒されている。彼女は弓の腕こそ達人級だが、接近戦は得意ではない。なんとか応戦しているが、数的にも不利で倒されるのは時間の問題だ。

 そして彼女が倒されれば、次は俺かアリサの順で背後を突かれるのは確実と思われた。

「光の精霊よ、その力を持ってあの者達に幻影を見せよ!〝ミラージュ〟!」

 再び、エルフ女と向き合って攻撃を剣で受け流した俺の耳にアリサの詠唱が響く。本来なら自身の治療に専念をするべき貴重な時間を使って、彼女は俺達を援護してくれたのだ。

「おのれ!!」

「この!!」

 アリサの魔法を受けた黒髪女と魔術士は悪態を吐くと、目の前にいるルシェラへの攻撃を中断し防御体勢を取る。何が見ているのかは不明だが〝ミラージュ〟によって視覚情報を惑わされているのは間違い。その間にルシェラは身を退きながら魔術士に矢を射出する。それは彼の喉元に突き刺さり、前のめりとなって崩れ落ちた。

「〝リムーブマジック〟!」

 だがもう一人の敵、二刀流使いは自身に魔法効果を打ち破る回復魔法を掛けると再びルシェラに襲い掛かろうと迫る。秩序の使徒はその多くが回復魔法の使い手なのだ。

「いつまでよそ見をしている!」

「ぐ!!」

 非難の声とともにエルフ女から強烈な突きが繰り出され、穂先が俺の右脇腹を掠める。お返しとばかりに敵の伸びきった腕を狙って剣を振るうが、それはギリギリで躱された。元より強敵だが、後ろのアリサとルシェラの戦況が気になって集中力が散漫になっている。これは非常にまずい状況だった!


「〝パラライズ〟!」

 俺が果てしない焦りと重圧に抗っていると、暗黒魔法を唱える声を耳にする。その途端に対峙するエルフ女の構えが崩れ、顔に苦悶の表情が浮かび上がった。麻痺が効いている証拠である。

「お兄さん! そいつは私に任せて! 代わりに痛めつけて上げるから!」

 いつの間に現れていたのか、一号が俺の隣に立っており、そう告げる。今の彼女はローブこそ身に纏っているが、両手には鋭い鉤爪を生やして臨戦態勢にあった。

「い、一号! 助かった! 頼む!!」

 突然の一号の参戦に俺は歓喜で答えると、早速とばかりに後ろに向き直る。思えば彼女に課せられた〝ギアス〟は天秤の使者に害を与えないという誓約である。秩序相手にはその力を存分に発揮出来るのだ。くそ! こんなことされたら、わりと本気で好きになってしまうではないか!

「うおお!!」

 背後の憂いの無くなった俺は、今まさにルシェラを攻撃しようとしていた黒髪女に斬り掛かる。

「何!!」

 ルシェラの背後から迫りくる俺に気付いた敵は驚きの声を上げると、攻撃を断念し防御体勢を取る。だが俺はそれでも構わずに敵の脳天を目掛けて剣を振り下ろした。

 激しい火花が散るとともに金属がけたたましい絶叫を上げる。俺の渾身の一撃を黒髪女は小剣を十字状にすることで受け止めたのだ。

 しばらくは力の押し合いが続くが、黒髪女が俺を蹴ろうと足を上げたので、それに合わせて後ろに退く。腰の部分をブーツの底で蹴りつけられるものの俺も反撃は忘れない。

「〝エナジードレイン〟!」

 今回は〝ドレイン〟ではなく〝エナジードレイン〟で相手の精神力を吸い取る。連戦で俺の精神力はほぼ枯渇していたからだ。〝エナジードレイン〟の発動にも精神力を消費するので、場合によっては赤字になる可能性もあるのだが、今回は相手の抵抗力に勝ったようで僅かながらも精神力を回復させていた。

「く! やはりお前は混沌の者か?!」

 俺の暗黒魔法に敵は疑問を示す。天秤に属する俺が暗黒魔法を使うのが不自然で仕方がないのだろう。

「俺は混沌よりの中立なんだよ!」

 答える義務はないが、なんとなく思いついた返事を口にしながら俺は敵に斬り掛かった。その攻撃は踏み込みが甘かったためか、敵に易々と躱されて空を斬る。・・・だが、それは俺にとって計算内のことだった。

「ルシェラ!」

 俺はルシェラに呼び掛けると、射線を確保するために横に逸れる。もちろん打ち合わせはしていないが、彼女ならこのタイミングで援護してくれると信じていた。

「ええ、最高のタイミング!」

 ルシェラの返事とともに風を切る音が響き、黒髪女に矢が放たれる。俺への反撃に動いていた彼女にそれを避ける余裕があるはずもなく、矢は右太ももに突き刺さった。

「風の精霊よ、その力で我が敵を抱け!〝ブレードストーム〟」

 更にアリサの魔法が発動し、小型の竜巻に巻き込まれた二刀流使いは遂に床に倒れた。

 それを見届けて後ろを振り向いた俺の目に、アリサとルシェラの無事な姿と、床に倒れるエルフ女とそれを見下ろす一号、更にはネイリーンによって降伏させられた重戦士が映る。

 既にアリサは自分だけでなくルシェラのダメージも合わせて治癒したらしく、健康には問題ないように見える。とはいえ、彼女の左肩には血で出来た染みが広がっており、苛烈だった戦いの痕跡が残されていた。

「これで本当に終わったかな?」

「ああ、マサキの傷も治療しないとね!」

 俺の問い掛けにアリサは笑みを戻すと早速とばかり詠唱を開始する。今度こそ本当に秩序の使者達を倒したのだった。

ご愛読ありがとうございました。

次回で一区切りとなって第一章の完結になります。よろしければ感想や評価をお待ちしております!

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