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第三十三話 タイマンそしてドラゴン戦

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第三十三話です。

過去のトラウマを乗り越えたネイリーンとマサキはアリサ達を追うのだが?!

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、なんでもするかもしれません!

「〝パラライズ〟!」

 俺は早速とばかりに先日覚えたばかりの暗黒魔法を敵に繰り出す。暗黒魔法は発動させるための呪文詠唱が少なく一声だけで掛けられるのが利点だ。そして〝パラライズ〟は対象者の身体に速攻性のある麻痺毒を発生させる魔法である。これが完全な状態で発動すれば一発で戦闘不能に陥らせることも可能なはずだった。

「ふ!」

 だが、女エルフは短い掛け声を漏らすと、先程と変らぬ速さで槍を繰り出した。俺は魔法が完全抵抗されたことを知ると、慌てて剣で槍の穂先を振り払う。金属が激しくぶつかり火花が飛び散るが、俺はその攻撃を何とか防ぎ切った。

 敵は更に追撃に移ろうとする動きを見せたので、俺はやや大袈裟に左手を向ける。これは魔法を使う気はなかったが、牽制のためである。案の定、エルフ女は踏み込みを抑え、防御姿勢を取る。暗黒魔法を警戒してのことだ。

 武器戦闘(刀剣)を20まで上げた俺だったが、未だに敵との技量には埋めがたい差があるのを感じていた。回避特化スキルでなんとか誤魔化してはいるが、武器を使った戦闘だけでは、このエルフ女に勝てる気はしない。

 切り札の暗黒魔法を駆使してなんとか逆転する作戦を立てるしかないだろう。それも可能な限り早く決着を付ける必要があった!


「なぜ俺を付け狙う?!」

 槍の弱点である懐に飛び込み、無理やり組み伏せ、零距離から〝ドレイン〟を連打し敵を倒す。それが俺の考えついた作戦だった。あまりスマートなやり方とは言えなかったが、戦いが長引けばそれだけアリサ達への援護が遅れる。俺は少しでも敵の注意を逸らそうと、適当に思いついた疑問を投げ掛けながら剣で斬り掛かる。

「ふん、卑怯者にはそれに相応しい死を与えるだけだ!」

 答えが返って来るとは思っていなかったが、敵はそう告げながら俺の攻撃を槍で捌く。どうやら、このエルフ女はゴルディゾーンへの援護だけではなく、以前の戦闘で俺個人に持った恨みから勝負を仕掛けて来たようだ。

 時間稼ぎは真剣勝負にあるまじき行為という理屈だろうか? だとしたら、彼女は見た目こそ精悍で美しいが、かなりの脳筋である。

 俺は逆恨みへの反論を飲み込むと、その懐に入ろうと間合いを詰める。攻撃を防がれることは想定済みだ。だが、エルフ女もそうはさせまいと、槍を回転させその勢いで槍の穂先とは逆の石突で俺の左肩を強打した。

 激しい痛みが肩と鎖骨に走るが、それを無視して俺は剣を捨ててエルフ女へと飛び掛かる。体格では僅かに俺の方が上回っている。掴んで倒せば勝機はあるはずだった。

「うが!!」

 だが、俺の手がエルフ女に届くよりも先に彼女の膝蹴りが俺の腹部に突き刺さる。これまで経験したことのない激痛に意識が朦朧となるが、俺は気力を振り絞り前のめりに倒れた。後ろに退こうとする敵の腕を辛うじて掴むと、俺は魔法を発動させた。

「〝ドレイン〟!」

「く!!」

 今度はエルフ女が短い悲鳴を上げる。俺は吸い取った敵の体力で痛みとダメージが軽減されると、そのまま動きを止めた彼女を押し倒す。直ぐに城壁の固い床の上に叩きつけられた衝撃が伝わるが、下にいたエルフ女の方は堪ったものではないはずだ。

 それでも、もがいて振り解こうとする敵を抑え込みながら、俺は再びドレインを浴びせ掛ける。エルフの美女に上から圧し掛かる絵面は大変見苦しいと思われたが、勝ち方に拘れるほど俺は強くはないのだ。

 三度発目の〝ドレイン〟を入れたところでエルフ女の動きが止まり、俺は様子を見ながら離れるが、これまでのダメージの積み重ねによって敵は意識を失っていた。

 本来なら止めを刺すに違いないが、戦いの最中ならいざしらず、無抵抗の者の命を盗るほどの度胸と冷酷さは俺にはない。とりあえず、槍と予備と思われる短剣を見つけて出して城壁の下に投げ捨てると、俺は南門を目指して走り出す。上を見ればゴルディゾーンが再び降りて来ようとしているところだった!


「ネイリーン!!」

 白い怪物は城壁の上に立つ鎖帷子を纏った大柄の戦士に向って急降下を開始する。それがネイリーンだと知ると俺は思わず悲鳴を上げていた。彼女は自分をドラゴンの標的とさせて被害を抑えるつもりなのだ。

 もっとも、南門の周囲は集まって来た兵士と冒険者達の悲鳴と怒声が既に鳴り響いており、俺の声はその中に溶け込んでしまう。

 降りてきたゴルディゾーンの巨体がそのまま城壁に激突しネイリーンを押し潰すのかと思われたが、ドラゴンは寸前で身体を上昇させると、去り際にブレスをネイリーンに吐きつける。

 その灼熱の炎がネイリーンを襲うが、彼女は城壁の隅に伏せて直撃を免れる。彼女なら即死しない限り傷を癒せるはずなのでまだ大丈夫のはずだ。

 その期待に応えるように再び動き出したネイリーンの姿に俺は一先ず安堵の溜息を漏らすが、再び上空に逃げようとするゴルディゾーンに〝ドレイン〟を放つのは忘れない。ドラゴンには効果の薄い魔法攻撃ではあったが、ほんの少しでもダメージを与えられる可能性あるのならばやるしかない。

 そして、その想いを持っていたのは俺一人だけではなく、周囲の兵士達によって様々な攻撃魔法と矢がゴルディゾーンに対して一斉に放たれた。

「風の精霊シルフと水の精霊ウンディーネよ、その力を複合させ、雷となって敵を撃て!〝コール・サンダー〟」

 その中でも最も効果があったのは、やはりアリサだった。騒ぎつつある戦場にあっても俺の耳は、彼女の凛とした魔法の詠唱を聞き取る。呪文の完成とともに上空に出現した雨雲から雷が降り注ぎ、アリサの魔法がゴルディゾーンの巨体を撃った。

 雷撃によって、さしものドラゴンもある程度のダメージを負ったのか、ゴルディゾーンはバランスを崩して上昇する速度を落とす。その間に俺は声のした方角からアリサとルシェラの位置を確認し、南門の脇に築かれた砦の中に居た二人と合流する。

「二人とも無事か?!」

「もちろん!」

「うん、でもなかなか動きが早くて、射ることが出来ないよ!」

 俺の質問に二人は答えるが、ルシェラが珍しく泣き言を口にする。彼女はあのミスリル銀の矢を番えて射撃体勢を取っているが、外すのを恐れて絶好のタイミングを待っているに違いない。

「く!・・・アリサ、今の魔法をもう一度やれるか? 俺とネイリーンで奴を城壁の上におびき寄せて・・・」

「で、出来るけど・・・今は逃げた方が良さそうだ!!」

 アリサに問い掛ける俺の声は彼女の警告によって遮られる。窓からの外にはこちらに迫りつつも顎を大きく開くドラゴンに姿が迫っていた。

 ゴルディゾーンは先程、自分に手痛い攻撃を行った魔術士の存在に気付き、復讐をするつもりなのだ。


「アリサ! ルシェラ! こっちだ!」

「きゃ!」

 俺は咄嗟にアリサの腕を手繰り寄せると、そのまま抱きかかえて反対側の窓から彼女の身体を城壁に向って放り投げる。比較的小柄な彼女とは言え、そんなことが出来たのはまさに火事場の馬鹿力だろう。

 そして次はルシャラの身体を引き寄せるために後ろを振り向くが、俺の目に映ったのは真正面からゴルディゾーンに弓の弦を引き絞る彼女の後ろ姿だった。

 ルシェラは目前でブレスを吐こうとしているこの瞬間を最大の好機として、ミスリル銀の矢を射出しようとしているのだ。

「マサキ、ルシェラ!! 早くこっちへ!!」

 先に城壁に飛び移ったアリサが悲鳴を上げる。その声に従い俺もこの場から逃げたかったが、ルシェラを見捨てることは出来ない。その刹那、彼女の背中越しにドラゴンの咢から湧き上がる炎が見える。

 俺はルシェラが矢を放すのを見届けると、彼女に飛び付ついた! そのままルシェラの身体に覆い被さるように抱き締めて〝ショートリープ〟を唱える。

 だが、それは一瞬だけ遅かったらしい。俺の身体はゴルディゾーンのブレスに包まれて瞬間移動を開始した。

ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。

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