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第三十二話 ドラゴン襲来

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第三十二話です。

南門を襲うドラゴンと対するため、マサキ達は援護に向うのだが・・・。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、なんでもするかもしれません!


「ドラゴン! ゴルゾディーンが現われたぞ! 南側だ!!」

 その悲鳴にも似た警告が階上から発せられると、塔の内部は慌ただしく動き始めた。それは俺達も例外ではなく急いで立ち上がると窓際に走る。もちろん件の怪物を見るためである。

「あそこです!」

 窓の反対側に身を隠すネイリーンの視線に誘導され、俺をその方向に顔を向ける。雲のない青い空に浮かび上がる何かしらの影がそこにはあった。時折、翼を羽ばたかせているので鳥のようにも見えるが、異様に膨らんだ胴体部と身体から出る幾つかの突起物が特徴的で、鳥としては不自然な体形をしていた。

 それは見つめている内に徐々に大きくなり、やがて頭から角を生やし、背中に翼を持った巨大な蛇の姿となる。いや、よく見れば手足が四本生えているので蛇ではない。それでも蜥蜴と呼ぶには抵抗のある、美しくも恐ろしい白い生き物だった。・・・それがゴルゾディーンを初めて見た俺の印象である。

 その姿に見惚(みと)れている間にドラゴンは、身体を覆う真珠のような鱗を見分けられるほどトリムの街まで迫っていた。比較対象がないので、わかり難いが確かにデカイ! ゴルディゾーンの体長は控えめに見ても10メートルは下らないだろうと思われた。

 やがて白く美しい怪物は、街の真上で旋回すると、見上げる俺、いやトリムの人々を威嚇するように咆哮を上げた。

「く!!」

 鼓膜を揺さぶるドラゴンの絶叫に対して俺は、下っ腹に気合を込めながら耐える。弱い人間はこの咆哮を聞いただけでパニックに陥ってしまうらしい。それでも俺は意識をなんとか保ちゴルゾディーンを視線で追う。

 しばらくしてドラゴンは街に目掛けて降下を開始する。咆哮には耐えられた俺だが、徐々に大きくなる白い巨体を前にして『こっちに来ないでくれ!!』と無意識に願っていた。

「あいつ! 南門に向ったみたいだよ!」

 窓から姿を消したゴルディゾーンに対して、いつの間にか俺の背後でゴルゾディーンを窺っていたルシェラが声を上げる。彼女の息が耳に掛かるほどの距離だが、それを気にする余裕は俺にはない。

「水の精霊ウンディーネよ! その力で我らを護りたまえ!〝ウォーター・フィルム〟」

 アリサは水筒を取り出して中身を床にばら撒くと、魔法の詠唱を完成させる。その途端に水は飛び上がりながら体積を増すと、俺達の身体に絡み付いた。

「これで少しは炎のブレスを軽減できるはず! 南門に援護に行こう!」

「「「おう!!」」」

 水の精霊の加護を得た俺達はアリサの指示に応じると、下に向う階段に駆け出した。


 城壁に降りた俺達はその上をネイリーン、俺、アリサ、ルシェラの一列になって南門に向って走る。城壁には人が三人ほど並べる幅があったが、持ち場に立つ兵士や他の冒険者達をやり過ごすためである。南門は南の塔と西の塔の間にあるため、ほぼ一直線で辿り着けるはずだ。

 前を進むネイリーンの肩越しに、空中でホバーリングしながら南門の城壁にブレスを吐き掛けるゴルディゾーンの姿が映る。赤色というよりは黄色に近い炎の息が、門を護っていた兵士達の上を降り注いだ。

 その一瞬後に数人が炎に包まれながら城壁から零れ落ちる。先程、アリサに掛けてもらった精霊の加護が、まさに焼石に水のように思える苛烈な炎だ。

 生き残った兵士達が果敢にも弓とクロスボウで反撃を与えるが、白いドラゴンは素早く上昇し回避行動を取る。一本の矢がその尾に当たるが、まるで岩の塊にでも当たったかのように弾かれてしまった。

 その突然の惨劇はいかに人間がちっぽけで無力な存在であるかを知らしめているようだった。

「う!! ああ!!」

 俺自身が悲鳴を上げて逃げ出したい恐怖に駆られていたが、突如前を走るネイリーンが呻き声を上げてその場に膝を付いて立ち止まる。そのため、直ぐ後ろにいた俺は彼女の背中にぶつかって転んでしまった。

「マサキ、私達は先に行く! ネイリーンを頼む!」

「わ、わかった! ネ、ネイリーン大丈夫か?!」

 倒れた俺とネイリーンを上手く避けたアリサとルシェラはそれだけを言い残すと、そのまま南門に向って走り続ける。ゴルディゾーンの攻撃を近くで見ても戦意の衰えない彼女達の姿に勇気付けられた俺は、返事を行うと当時にネイリーンに呼び掛ける。このまま後衛であるアリサとルシェラの二人だけでドラゴンに立ち向かわせるわけにはいかなからだ。

「・・・あ、あの時・・・父上・・・」

 ネイリーンは俺の声に反応するが、目の焦点は定まっておらず明らかに動揺していた。零した声からすると、子供の頃に見たドラゴンと自分の父親との戦いがフラッシュバックとなって呼び起こされていると思われる。

「しっかりしろ、ネイリーン!! 俺達がアリサ達の壁役にならないと!! 立ってくれ!! 俺達にはネイリーンの力が必要なんだ!!」

「ああ・・・皆焼かれて・・・落ち・・・」

 俺は必至にネイリーンに訴えるが、彼女の耳には届いていないようで目も虚ろなままだ。


「・・・ネイリーン、落ち着いて聞いてくれ。・・・辛いのはわかる。俺だって逃げ出したい! でもアリサ達を、このトリムの街を救うために一緒に戦おう!」

 その時、俺は自然と彼女を抱き締めていた。なぜそんなことをしたのかは俺にもわからない。気付いた時には、ただ優しく抱擁し彼女の耳元でそう呟いていた。もしかすると、幼い少女のように狼狽えるネイリーンを単純に慰めたかっただけかもしれない。

「父上・・・いや・・・マサキ・・・」

 俺の想いが通じたのか、ネイリーンの言葉にいつもの覇気が戻る!

「ああ、俺だ! 正気に戻ったか?! アリサ達が先に向っている! 直ぐに追い付かないと!」

「・・・そうだ! 私は!」

「ああ、行こう! うわ!」

 ネイリーンの様子が元に戻ったのを確認した俺は抱擁を解いて立とうとするが、右腕を彼女に掴まれ引っ張られてしまう。

「ま、待て! これは仕方がなかったんだ! ネイリーン!!」

 抱き締めたことを責められると思い言い訳を口にするが、逆に今度は彼女の方が俺を激しく抱擁する。突然のことに驚く俺だが、なんとか渾身の力を込めてネイリーンの体重を受け止める。それは実際には数秒のことだったに違いないが、長い時間に感じられた。

「・・・マサキ、ありがとう。おかげでゴルディゾーンに立ち向かう勇気が出て来ました!」

「いや、俺もだ!」

 自分を抱き締めてくれる仲間がいる。その事実はむしろ俺の方にこそ、ドラゴンに立ち向かう勇気をくれていた。改めて抱擁を解いた俺達はお互いを支えあっって立ち上がると、再び南門に向って走り出す。一刻も早くアリサ達に追いつくために!


 だが、城壁を走る俺達の前に小さな歪みが発したかと思うと、その場に一人の人物が突如として姿を現した。何らかの移動系魔法が使われたに違いない。その者は美しい金髪に精悍で整った顔、そして長く尖った耳を持っていた。そう、俺とネイリーンの行く手を阻んだのは、以前に対決した秩序の使者の一人で槍使いのエルフ女だった。

「クソ! こんな時に!」

 俺は悲鳴にも似た悪態を吐くが、エルフ女は槍の切っ先をこちらに向けて静かに戦意を表わす。

「・・・こいつは俺が相手をする! ネイリーンはアリサ達の下へ!!」

 エルフ女を剣で切り付けながら俺はネイリーンに叫ぶ。戦力を考えるとこの場は俺が敵を食い止めて彼女を先に行かせる方が、アリサ達にとって有益と思われたからだ。

「頼みます! 待っていますよ、マサキ!!」

 ネイリーンは意図を汲むと、俺の攻撃を槍の柄で防いだエルフ女の脇をすり抜けて行く。すれ違い様にネイリーンも長剣で攻撃を行うが、敵は城壁の端に飛び上がってそれを避けた。

「尋常に勝負してもらおう!」

 通路側に飛び降りながらエルフ女は俺の頭蓋を目掛けて槍を振り下ろす。その攻撃を後ろに退くことで逃れた俺にエルフ女は静かに言い放った。駆け抜けて行くネイリーンには興味を示さないところを見ると、彼女はタイマンを望んでいるようである。

「・・・いいだろう!」

 いずれにしても、このエルフ女を倒さない限りアリサ達の援護に加わることは出来ない。俺は出来るだけ格好をつけてそれに答えた!

ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。

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