第三十一話 決戦前
異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第三十一話です。
いよいよ、物語は佳境に。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、なんでもするかもしれません!
ネイリーンと一号、エレンディア世界で既に実績のあるこの二人から貴重なアドバイスとスキルを授けられた俺は、現在持つ経験値を使って成長を完成させる。最終的には武器戦闘(刀剣)スキル20レベル、暗黒魔法スキル10レベル 回避特化スキル10レベルとし、ほぼ残っていた経験値を使い切った。
実は暗黒魔法を10にするか近接戦闘を29まで伸ばすかで、かなり迷ったのだが、結局は前者を選択した。暗黒魔法には〝エナジードレイン〟〝ショートリープ〟以外にも相手を麻痺させる〝パラライズ〟熱を視覚的に感じ取れる〝スネーク・センス〟夜の闇に溶け込む〝シャドウ・マント〟などの有用な魔法が数多く揃っていたからだ。単純な剣の腕よりも応用力を優先させたというわけである。
暗黒魔法スキルを延ばしたせいか悪役っぽくなってしまったが、この魔法体系は俺の目指す素早さを売りにした戦士タイプにも似合うので、もうこのスタイルで行こうと思う。
装備の方もいくつか新しくし、懸念だった革の鎧はワックスで煮固めたもっと頑丈なタイプ、いわゆるハードレザーアーマーに買い替え、魔法の強度を高める指輪も手に入れた。
鎧以上に高くついたのはこの指輪で金貨2枚もしたが、これは魔法の成功に+2となる効果を持っており、暗黒魔法スキルがそこまで高くない俺には大枚をはたいてでも手に入れる価値があった。
「今日も私達は西の塔の見張りだよ」
まだ、夜が明けきらない早朝、おなじみのギルド一階の食堂、いつものテーブルに集まった俺達はリーダーのアリサから今日の任務内容を聞かされる。
トリムの冒険者ギルドに所属する冒険者達は、ほぼ自動的にゴルゾディーンからトリムを防衛する役目が与えられおり、ドワーフの里から戻った俺達も二日後から防衛担当区域を割り当てられていた。
特に俺達のパーティーには四本しかないミスリル銀の矢を持ったルシェラが在籍しているので、責任と期待は大きい。そのため、日の出から日没まではほぼ毎日、担当区域となった西の塔に張り込んでいる。夜間は他のパーティーと交代するが、ゴルディゾーンはこれまで夜襲を行なった記憶がないため、おそらく次も日中に襲撃があると予想されていた。
「水と食料はちゃんと持ったね? では行こう!」
何しろ陽が出ている間は持ち場を離れるわけにはいかないので、アリサが装備の最終確認をする。それに俺達は無言で頷くと、いよいよギルドを後にして西の塔に向うのだった。
今回の任務で初めて塔の中に足を入れたが、見張りの塔は八階建てであった。日本人の感覚からすると大して高くないように思えるが、トリムの街の建物の多くはせいぜい三階建てで、街自体も平原の中に造られているので随分と高く感じる。
塔は中腹で城壁と繋がっており、それを伝うことで街に出ることなくそのまま他の塔や城門に行けるよう設計されている。また内部には兵士の詰所や武器や食料の貯蔵庫、それ以外にも生活に必要な様々施設が存在し、この塔だけでも籠城戦に耐えられるようになっていた。
俺達が任され待機しているのは塔の四階部分である。一番遠くまで見通せるのは当然八階屋上だが、ゴルディゾーンが必ずしも西の塔に現れる保証はない。そのため他の拠点に出現した場合を想定し、対ドラゴンの切り札の一人であるルシェラがいる俺達のパーティーは遊撃に備えて中間の四階を持ち場としていた。
そして、いつ来るかわからないドラゴンの襲撃にずっと緊張したまま立ち尽くしていては気力、体力ともに持つわけがない。何しろ待機期間は今日で六日目になろうとしている。そんなわけで、外を見張る監視役は四人でローテーションを組んで回し、その時の担当者以外は楽な姿勢で待機するようにしていた。
今はネイリーンが監視役となり外に目を光らせ、ルシェラは前回の報酬で新しく購入した高品質の長弓の調子を真剣な面持ちで確認し、俺とアリサは壁に寄り掛かって座りながりながら、その時を待っていた。
「そのゴルディゾーンってドラゴンを俺達・・・いや、トリムの軍で倒せると思う?」
特に私語が禁止されているわけではないが、俺は隣のアリサに今まで気になっていた質問を小声で問い掛ける。既に何度も話し合った内容だが、手持ち無沙汰であったし確認の意味もあった。
「正直、難しいだろうね。・・・ゴルディゾーンは自身の飛行能力を最大限に活かすため、ほとんど地上に降りることなく戦う。それによってトリム側の有効な反撃手段が例のミスリル銀の矢と高位魔術士の魔法くらいしかない。矢で眉間をピンポイントで打ち抜けば、倒すことも不可能ではないけど・・・身体のどこかに手傷を与えて退散するのを願うのが現実的だろう。奴も回復魔法を使えるが、刺さった矢は抜かない限り身体に残り続けるからね」
アリサも暇を持て余していたのだろう、饒舌に答えてくれた。もっとも、彼女の言葉は適切でありながらも冷淡だ。予想出来た答えではあるが、俺は更に新たな質問を続ける。
「アリサの魔法でもドラゴンには効かないのかな?」
「うん・・・戦ったことがないのではっきりとは言えないが、ドラゴン族の高い魔法抵抗力からすると、効果はあまり期待出来ないね。・・・仮に私かそれ以上の使い手がニ十人くらい集まって、それぞれが誇る最強の攻撃魔法を一斉に放てば・・・もしかしたら倒せるかもしれない。まあ、私よりも優秀な魔術士はトリムに片手で数えるほどもいないはずだから、無理だけど」
「なるほど・・・結局はお帰り頂くしかないわけだ・・・」
その返答に俺は暗澹たる思いとなる。アリサの実力は俺も充分に知っている。だから、彼女以上の魔術士を二十人も集めるのが、机上の空論であることが言われなくてもわかっていた。
「うん、今更だけど私達の役目はルシェラがゴルゾディーンを射るための隙を作りだし、彼女を護ることにある。危険な役目だがやり遂げるしかないね。・・・まあ、私達が駆けつける前にドラゴンにミスリル銀の矢を射るのは他のパーティーがやってくれるかもしれないけど。覚悟はしておかないとだ!」
「ああ、その時はアリサとルシェラは絶対に護ってみせる!」
「だけど・・・いや、期待してるよ・・・」
それで俺達は会話を一旦終えると再び待機に戻る。ゴルゾディーン襲来の報せが響くのは、それからしばらく後のことだった。
ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。
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