第三十話 相談二人目一号
異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第三十話です。
暗黒魔法スキルの相談に一号と会うマサキだが、その対価に自身のアレを要求される!
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、なんでもするかもしれません!
「あら、お兄さん! 私に会いに来てくれたの?!」
待ち合わせをしていたわけではないが、俺がギルドの裏庭に足を運ぶと、いつの間にか一号がその姿を現して俺に向って抱き付いて来る。
こちらとしても休憩時間中の彼女に会いに来たわけだが、そのあまりにも早い出現はさすがに予想外である。だが、俺の身体は無意識にその動きに対処する。近接攻撃スキルと回避特化スキルの相乗効果で一号の抱擁を紙一重で躱すと、反撃の構えを取っていた。
「もう! お兄さん本当に強くなったのね!」
「うん、なんとか一人前ぐらいにはなったかな」
一号の褒め言葉に俺は苦笑を持って答える。接近戦能力なら対等近くに追い着いたと思うが、彼女は暗黒魔法という切り札を持っている。おそらく総合的な戦力はまだまだ一号の方が上だろう。そして俺はその暗黒魔法スキルについて相談するため、彼女の下にやって来たのである。
「・・・暗黒魔法について聞きに来たのね?」
「うん。色々聞きたいがとりあえず、10レベルまでにどんな魔法を覚えられるか教えて欲しいんだ」
人目を避けるためギルドの厩舎裏に一号を連れた俺は早速本題に入る。
「ふふふ、どうしようかしらね?」
俺の頼みに一号は惚けたように答える。昨日は自分から説明しようしていたくせに、これである!
「まあ、無理にとは言わないさ・・・だめならネイリーンに回復魔法を教えてもらうし・・・」
「もう、冗談よ!! でも、教えて上げるんだから、お兄さんも私にやさしくしても良いんじゃない?」
「・・・まあ、確かに少しくらいなら」
「うふふ。約束よ! それじゃ、教えて上げるわね・・・」
一号の扱いには慣れ始めていたので俺も嘯きながら駆け引きをし、その後は10レベルまで覚えられる暗黒魔法について聞き出すのだった。
「昨日言っていた10レベルで覚えられるのが〝ショートリープ〟って魔法なのか!」
俺はやや興奮気味に一号に確認する。昨日、彼女が語ろうとしていた暗黒魔法についてである。
「そう、この魔法は瞬間移動することが出来るの。移動範囲は人の背丈の三倍程度と狭いけど、術者以外にも触れている仲間にも適用出来るし、視線の通っていない鍵が掛かったドアや壁の向こう側にも行けるのが特徴。移動魔法で覚えられる〝リープ〟の方が移動距離は長いけど、あっちは障害物を越えられないから少し役割が違うわね!」
「なるほど・・・これなら部屋の中に入るのに鍵を開ける必要もないし、罠があったとしても引っ掛かることもないか。・・・確かに凄いけど、これって泥棒か暗殺者向けの魔法じゃないか?」
一号が自慢するだけあって〝ショートリープ〟はかなり有用な魔法と言えるだろう。障害物を無視して移動出来るのだから、この魔法を覚えていれば色々な場面で活躍出来ると思われる。もっとも、お世辞にも英雄向けの魔法とは言えない。
「もちろんそうよ! お兄さん、私が何か忘れてない?」
「ああ、そうか! そうだよな!」
一号の指摘に俺は一瞬唖然となるが、直ぐに彼女の正体を思い出すと相槌を打つ。彼女は単なるお色過剰なエロいお姉さんではないのだ。おそらく一号はこの〝ショートリープ〟などの暗黒魔法を駆使して標的の暗殺や寝込みを襲っていたのだろう。
今更だが、恐るべき闇の住人なのである。俺という囮を使って不意を突かなかったら、アリサ達でも苦戦していたに違いない。
「そうよ、だから約束のご褒美をちょうだい! サキュバスって、たまには人間の精気や精神力を吸わないと衰弱しちゃうのよ! うふふ」
「そ、そうなのか! いやでも、まだ俺には・・・」
「もう! いつまでもはっきりしないわね。とりあえず今日は〝エナジードレイン〟で精神力を半分くらい貰うだけだからいいでしょ! 私もそろそろヤバイのよ!」
「・・そか、なら仕方ない。死なれても困るし・・・暗黒魔法のお礼もあるしな」
一号の口ぶりからこれまでの冗談めいた調子が消え、逼迫した気配に変ったので俺も彼女の要求を受け入れことにする。何しろ一号は天秤の使者に危害を加えられないよう〝ギアス〟を掛けられているので、相手の同意がない限り精神力を吸収するのは不可能なのである。
また〝エナジードレイン〟は暗黒魔法スキル2レベルで覚える魔法で〝ドレイン〟とは逆に体力ではなく標的の精神力を吸い取る攻撃魔法だ。こちらも派手さはないが、魔法の使用で枯渇した精神力の回復を可能とするため、使い方しだいでは戦局を左右する魔法と思われた。
もっとも、説明を聞いている時は、その標的にされるとは思いもしなかったのだが!
「ありがと、お兄さん! 〝エナジードレイン〟!」
「う!!」
一号から魔法を掛けられた俺は、意識が遠くなる脱力感に襲われ短い悲鳴を上げる。それは自分という存在が盗まれ、切り取られるような奇妙な感覚だ。本能的な嫌悪感が沸き立つが、それを齎した相手が黒髪の美女という事実でなんとか耐える。
世の中には女性に叩かれて喜ぶ男がいるらしいが、その気持ちが少しだけわかったような気がした。
「ごめんね、苦しかったよね。でもお兄さんのは・・・凄く美味しかったよ! おかげで、私も元気が出て来たし! どう? 私の部屋で休んで行かない? うふふ」
「そんなことしたら、よけいに疲れるわ! 帰る!」
軽い虚脱感を覚えながらも俺は一号に別れを告げる。とりあえず目的は果たしたので長居は無用である。精神力は体力と違い睡眠で回復することが出来るので、自分の部屋に戻ってひと眠りするつもりだ。
「もう! でもまたしばらくしたら頼むわね!」
一号から何か恐ろしい言葉を聞いたような気がしたが、俺は逃げるようにその場を後にした。
ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。
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