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第十七話 事件の真相

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第十七話です。

マサキの貞操の危機に仲間達が駆けつけるのだが・・・。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、なんでもするかもしれません!


「であ!!」

 接近したネイリーンが金髪女へと両手で握った長剣の切っ先を向けて突きを放つ。それは全身を覆う鎖帷子を纏っているとは思えないほど、しなやかなで素早い攻撃だった。もしこの突きが俺に向けられていたら、避けることも捌くことも出来ずに胴に風穴を開けられていただろう。

 彼女が本格的に戦うところは初めて見たが、期待どおりかそれ以上の動きだ。だが、金髪女は俺を掴んでいた腕を離すと後ろに飛んでその突きを紙一重で躱した。

「畜生! 仲間がいたのね!」

 金髪女は俺に非難の声を上げるが、ネイリーンが俺と彼女の間に割って入る動きを見せたので更に奥に退く。見ればその手には、いつの間にか鋭い鉤爪が生えている。それで引っ掻かれていたらただでは済まなかったろう。

「ロスエンダ、逃げるよ!」

 その間に黒髪女が俺から離れながら仲間に撤退を示唆する。彼女達に逃げられてしまうと、攫われた男達の行方を探る手立てはなくなる。俺は覚悟を決めると空に飛び立とうとする黒髪女目掛けて飛び付いた。

「こいつ! 今さら抱き付いてきやがって!」

 剥き出しの腹部に顔を埋めながらも俺は必至に飛び立とうとする女を抑えつけるが、それでも女は背中の羽を広げ上昇を続ける。どうやら人間一人程度は楽に運べる力があるようだ。と、いうかこれは不味い! 俺にとっては致命的な誤算だった。

「マサキ!」

 捕まえるどころか逆に連れ去られようとする俺の名をネイリーンが叫ぶ。とたんに左足が重くなり、その勢いで飛び上がろうとしていた黒髪女諸共に地面に落ちる。

 おそらくはネイリーンが俺の足首を掴んで引っ張ったのだろう。さすがのフライングビッチも完全装備のネイリーンまでは持ち上げる事は出来なかったのである。

 とはいえ、墜落に巻き込まれた俺もただでは済まなかった。頭を打ったのか、意識が朦朧とし全身が打撲の痛みで悲鳴を上げている。

「風の精霊よ、その力で我が敵を抱け!〝ブレードストーム〟」

 限界に達しつつあった俺の耳に今度はアリサの声が響く。それはゴブリンを一気に殲滅した彼女の恐るべき攻撃魔法の詠唱だった。それで勝利を確信した俺は意識を失う。あとはアリサ達が上手くやってくれるに違いないと信じて。


「起きて下さい、マサキ!」

 呼び声と全身の痛みが和らぐ温かい感覚を覚えると俺は目を覚ました。そこにはネイリーンの姿があり、俺に向けて右手を差し出している。

「あ、ありがとう。戦いには勝ったと思うが・・・あの女達は?!」

 俺は礼を告げて彼女の手を掴んで立ち上がると、待ちきれないとばかりに問い掛ける

「ネイリーンの回復魔法が効いたみたいだね。残念ながら一人は取り逃がしたけど、もう一人はマサキの活躍で捕まえることが出来たよ。お手柄だね! これから攫った被害者の居場所を聞き出すところだ」

 横からアリサの声が聞え、俺の質問に答えてくれる。そちらに視線を送るとルシェラに両腕と蝙蝠の羽を丸ごと胴に縛り付けられた黒髪女の姿があった。既に観念したのか顔を隠すように項垂れている。

「金髪の方は逃げられたのか・・・」

「うん・・・私も渾身の魔法で、まずは羽に傷を負わせて飛べないようにと思ったんだけど、逃げられてしまった。それでも、かなりの深手を与えたと思うから、再襲撃の可能性は低いと思う」

「なるほど・・・それなら良かった。ふう・・・」

 俺は自分の苦労が報われたことを知ると安堵の溜息を吐いた。

「あそこで逃げられていたら、もう打つ手がなくなっていたでしょうね。マサキはよくやりました!」

「いや、こっちこそ助かった! ネイリーンがいなかったらやばかった!」

 俺は怪我を治してくれたのがネイリーンであることを思い出すと、お互いの健闘を讃える。以前はアリサを間に挟んだ微妙な関係だった俺達だが、今では真の意味で仲間と認め合える仲になっていた。・・・特に彼女の胸の感触に慣れていなかったら、俺は誘惑に負けていたかもしれないのだ。

「では、次の段階に入ろうか」

 アリサは呟くように告げると捕虜となった黒髪女に視線を向けた。


「こんなところに隠れていたのね!!」

 崖に空いた洞穴の中でルシェラが怒りと非難が入り混じった声を上げる。その洞穴の奥には男達がどこかの魚市場のマグロの如く横たわっていた。その数は五人であり、失踪していた村の牧童達に違いなかった。

 俺が決死の覚悟で捕まえたフライングビッチこと黒髪女は、命は助けるという条件で自身達の隠れ家のありかを白状し、この場所まで俺達を誘導したのである。

「うん、魔法で眠らされているだけで、命に別状はないみたいだ」

 早速とばかりに横たわる牧童たちを確認したアリサの言葉に俺達全員がそっと胸を撫で下ろした。

「これで事件解決か!」

「いや、彼女たち、サキュバスともバーバンシーとも呼ばれている混沌勢力のエリートである魔族が、なぜこの村の男達を狙ったのかが未だに不明だよ。単なる偶然も可能性もあるけど、それがわからないと再発の可能性もあって、依頼の条件を完全に満たせないね」

 俺の勇み足とも言える意見にアリサは訂正するように付け加え、最後にはその当事者を見つめる。

「・・・それはもちろん、裏切り者が落ち延びた村であるからよ!」

 視線を受けた黒髪女はさらに後ろに控えるルシェラを睨みつける。

「混沌の裏切り者・・・特に種族単位で恩恵を受けたはずのダークエルフが天秤の勢力で抜けぬけと暮らしているなんて許せるわけないわ! 代わりに五、六人の男を貰わなくちゃ勘定が合わないじゃない!」

「・・・でも、ルシェラの両親が逃げて来たのは、もう100年以上前のことじゃないのか?」

「これだから人間は・・・長寿種の私達からすれば100年なんてそんな昔のことでないの! それに混沌は裏切り者には必ず報いを払わすのよ!」

 黒髪女の主張に疑問を持った俺は質問をぶつけるが、彼女は呆れたように種と時間的価値観の違いを強調する。どうやら魔族も人間とは比べものにならないほどの寿命を持つようだ。

「・・・やはり、私が関係していた・・・」

 俺にすれば呆れるほどしつこい逆恨みにしか聞こえないが、ルシェラにはもしかしたらという思いもあったのだろう。逃げてきたのは彼女の両親だが、その娘であるルシェラはまるで全ての元凶が自分であるようにショックを受けていた。


「ところで逃げたあんたの仲間はこれからどうすると思う。村に報復へ現れるかな?」

「そ、そんなこと正直に話せるわけ・・・いえ、たぶん捕まった私を助けに来るとは思うし、そいつがいる限り村は標的になるはず・・・」

 しばらく気まずい沈黙が続いたが、アリサがそれを破る。彼女の問いを拒否しようとした黒髪女だが、ネイリーンが動く気配を見せると考えを漏らす。どうやらこのフライングビッチも先程の尋問でネイリーンがヤバイ奴だと勘付いていたようだ。明らかに怯えた仕草を見せていた。

「やっぱりそうか・・・しかし、ここを聞き出すために捕まえたが、彼女の扱いは考えさせられるね。生かして解放すれば、また村を襲う可能性もあるし、命は助けるって約束した手前、殺すのにも・・・ちょっとだけ抵抗がある・・・」

 予想した答えだったのか、アリサは顎に手を置きながら考え込む仕草を見せると物騒なことを口にする。

「ち、ちょっと! 嘘でしょ! 助けてくれるってしっかり約束したじゃない! ねえ、そこのお兄さん助けて、なんでもするから!」

 アリサに限って約束を破ることはないと思うが、そんなことは知るはずもない黒髪女は怯えながら俺に懇願する。この中では唯一の男であるし、色仕掛けが通用すると思ったのだろう。

「・・・約束もあるし、犠牲者は出していないのだから、命をまで盗るのはどうかと思う」

「ね、そうでしょ! そのお兄さんの言うとおりよ!」

 色仕掛けに乗ったわけではないが俺は助命の判断を示した。まあ、正論だろう。決して、さっき顔を埋めたお腹の肌触りが名残惜しいとか、もったいないとか思ったわけではない。

「マサキは甘いですね。サキュバスやバーバンシーによって廃人にされた男は少なくないのですよ。・・・とはいえ、さすがに降伏した者の命を奪うのは私も賛成は出来ません。ここは半殺しで済ませましょう。もう二度と悪事を働くことが出来ないくらいにして!」

 反対に回るかと思われたネイリーンだが、俺と同じく一応の助命に賛成を示す。さすがの彼女も無抵抗の者を殺めるほど非情ではなかった。とはいえ、そこはやはりネイリーンである。無傷での解放は論外のようである。

「なるほど、ルシェラは?」

「私も・・・命までは奪う必要はないと思います」

 最後にアリサは今回の事件の当事者であるルシェラに確認をする。その表情には一瞬だけ葛藤が見えたが、やはり助命を選択した。

「では、このサキュバスは・・・面倒くさいけど、捕虜としてトリムの街まで連れて行こう」

 アリサはリーダーとして結論を下し、それを聞いたフライングビッチは安堵の溜息を吐く。ついさっきまで敵だったとは言え、その姿は少しばかり不憫である。もっとも、俺としても笑いごとではない。このエレンディアでは約束の保証はないのである。降伏は一種の賭けでしかないのだった。

「ここで犠牲者を眠りから起こすと、そのサキュバスの影響を受けて抵抗するかもしれないね・・・村人達を呼んで担ぎ出してもらい、安全な村で起こした方が良さそうだ」

 アリサにとって捕虜の処遇は既に終わったことらしく、本来の目的である失踪者の救出の段取りへと移る。

「ええ、でも逃げたもう一人のサキュバスのもいますし、我々が護衛に付かないといけませんね」

 ネイリーンがそれに頷き、俺達は失踪事件解決の後片付けに入った。

ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。

ヒロイン役の登場人物が出揃ったので、新キャラとの絡みがしばらく続きます。そちらを楽しみにしている方は期待してください!

よろしければ感想や評価もお待ちしております!


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