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第十五話 精霊の証言

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第十五話です。

ルシェラの案内でマサキ達は本格的な捜索を開始する。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、なんでもするかもしれません!


 ルシェラと合流した俺達は村を出て失踪現場の捜索を開始する。隊列は案内人であるルシェラを先頭にアリサ、俺、ネイリーンと続き、失踪者達が使ったとされる放牧ルートを辿るため村の北側へと向う。

 疎らに木々が生え、やや傾斜のある道をひたすら歩き続けると森に入り、しばらくして小さな泉へと行き当たった。

 底から済んだ水が湧き出ているようで、泉の淵から溢れた透明な水がせせらぎとなって下流へと流れ落ちている。日本なら観光スポットになりそうな風光明媚な場所である。

「北側に向う時はここで休憩をするのが、私達の定番なんですよ」

 ルシェラはそう説明しながら、泉の水を両手で掬って喉を潤す。生水には抵抗のある俺だが、泉の透きとおるような清純な水に誘われるように泉へと手を入れる。

 思えば既にトリムでは街中の井戸水を飲んでいたのである。今更、気にしても意味がないのだ。それに、一時間ほど歩き通しで身体は火照り喉も充分に乾いている。生ぬるい水筒の中身よりも泉の水が遙かに魅力的だった。

「どう、美味しいでしょ?!」

「うん、凄い冷たく美味しい!」

 水を口に含んだルシェラが問い掛ける。今の彼女は長弓を担ぎ、幅広の鉈(なた)と矢を入れた包を腰に下げた完全武装である。更にこの世界では外着の定番とも言えるフード付きのマントを纏っており、なかなか貫禄のある姿だ。

「ふふふ、この泉はレクサ村の自慢なんだよ!」

 それでも、俺の同意を得たことで微笑む彼女は可愛らしい。元より整った顔だが、小麦色の肌に銀の髪が映えて非常に美しく見える。アリサに白い肌も素晴らしいが、褐色も悪くないなと俺は思う。

 エレンディアに転生した当初は、いきなり森の中に放り出されたので天秤の女神にクレームを突きつけたい気持ちで溢れていたが、アリサはもちろんだが、彼女のような異種族の美少女とも知り合えたのだから序盤のハンデは許容すべきだろう。実年齢も今では気にならなくなっていた。

「本当に冷たいですね。それに水質も素晴らしい!」

 近くにやって来たネイリーンが籠手を外した右手で泉の水を掬い感想を述べる。まるでアリサだけでなく、俺とルシェラとの触れあいも邪魔しに来たようだ。

 ネイリーンのことは嫌いではないが、レズッ気のあるグラマーな女性ほど、年頃の男にとって扱いの困る存在はいない。アリサには誤解されるし、本人は男の俺にパーティーメンバー以上の感情を持つことがないのだから、生殺しもいいところである。

「たぶん、この泉よりも澄んだ水はなかなかないと思いますよ!」

「確かにそうかもしれませんね。・・・そうだ、マサキはこっちに来てからまだ日が浅いようですから知らないと思いますが、冒険者には〝水とツケは限界まで溜めておけ!〟という格言があるのです。水は頻繁な補給を心掛けて、ツケは相手に催促されるまで放っておいても構わないという意味です。そんなわけで、この泉に限らず水源を見つけたら面倒でも細目な補給をお薦めします」

「・・・なるほど」

 ネイリーンの言葉に俺は素直に頷く、確かにこの世界で水は蛇口を捻れば簡単に出て来る代物ではないし、飲み物の販売機はもちろんのこと、商店すら街や村の外にはない。水は何よりも貴重で最優先で確保すべき資源なのだろう。

 そんなわけで、俺は心の中で邪険していたネイリーンにお詫びをすると、アドバイスに従って水筒の中身を入れ替えた。


「では、喉も潤して水筒への補給も終わったことだし、本題に入るかな」

 全員が泉の水で喉を潤し水筒を満たし終えると、それまで大人しくしていたアリサが告げる。それを聞いた俺を含めた三人は表情を真剣な面持ちへと変えた。当然だが、俺達はピクニックに来たわけではない。失踪者の捜索が目的なのだ。

 アリサが何かしらの魔法を使おうとするのを察した俺達は自然と呼吸を浅くしてその出方を待つ。やがて彼女は泉から離れて立つと、例の黒い杖を右手に構え魔法の詠唱を開始する。

「大地の精霊よ、その姿を現して我が問いに答えよ!〝サモン・エレメンタル〟」

 アリサの力ある言葉が周囲に響き渡ると、一瞬の静寂の後に何かが擦れる音が響き渡った。その音源を探ろうと辺りを見回す俺の目に、アリサの足元の地面からせり上がってくる土の塊が映る。見守っている内にその土塊は彼女の半分ほどの人型のサイズに姿を変える。人型といっても胴が太く、手足が短くてズングリとした体形である。太ったおっさんを連想させた。

「あれは大地の精霊のノームです。アリサはこの周辺の大地の精霊を呼び出して直接、事件に関することを聞いているのでしょう」

 ネイリーンが魔法に疎い俺とルシェラに小声で説明する。彼女自身は精霊魔法スキルを持っていないらしいが、アリサがどんな魔法を使い、何をしようとしているのか正確に理解しているようである。

 やはり、冒険者としてネイリーンはかなり優秀のようだ。さっき程優しくされたこともあり、俺は彼女の評価を上げざるを得なかった。

 そして、肝心のアリサはノームらしき土の精霊と話し込んでいるようだが、その声は俺達には届かない。これは彼女らの声が小さいのではなく、テレパシー的な方法でやり取りしているのがと思われた。おそらくは精霊魔法スキルがなければ聞き取れないのだろう。

 しばらくすると、アリサが満足したのかノームは現れたのと逆の動きで土の塊に戻ると大地に帰っていった。


「何かわかりましたか?!」

 待ちきれないとばかりルシェラがアリサに問い掛ける。この中で最も失踪した村人の安否が気になるのが彼女である。

「残念だけど、これという内容は聞けなかった。ただ、精霊が人間ではない何者かの気配を感じていることはわかったよ。やはりこの森には精霊も怯える何かが潜んでいるに違いない。更に奥を調べてみよう」

 以前にアリサから聞いた話によれば精霊は自然界のどこにでも存在し、このエレンディア世界を支える力の一つであるらしい。そんな精霊と意志の疎通の出来る精霊魔法の使い手からすれば、森の中は土の精霊に限らず多くの精霊が宿っている目撃者の宝庫だろう。

 いずれにしても、物理的に見つけることのない証拠をアリサは魔法を通じて手に入れることが可能であり、この地点ではダメだったが、正しい場所でなら手掛かりを見つけることが証明されたのだ。

「そうですか・・・では案内しますね!」

 アリサの報告にルシェラは一瞬だけ残念そうな表情を浮かべるが、直ぐに期待を取り戻して森の奥に続く道へと俺達を誘う。あとは脚を使って更に手掛かりのある場所を探すまでである。ルシェラが張り切るのも無理はなかった。

「もちろんさ」

「ああ、行こう!」

「ええ!」

 アリサの言葉を合図に俺達は隊列を整えて森の奥を目指した。

ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。

次回は失踪事件の黒幕が明らかになり、マサキに危機が訪れます。

よろしければ感想や評価もお待ちしております!


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