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第十四話 ダークエルフの少女ルシェラ

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第十四話です。

村に住む狩人とはダークエルフの少女だった。思いがけない展開に緊張するマサキ達だったが?!

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、もりもりなんでもするかもしれません!


「それじゃ、あんたの両親は混沌から離脱して更にこのレクサ村にやって来て、天秤に加わったということかな? そしてその子であるあんたも天秤の使者であると?」

「そうなんですよ! こんな見た目なので誤解されますが、私はれっきとした天秤の使者なんです。まあ、まだ164歳のヒヨッコですけど!」

 アリサの問い掛けにルシェラは自分の事情を理解された安堵から笑みを浮かべる。あっさり実年齢を暴露したが、その外見は俺と同世代程度にしか見えない。口調も若いため、落ち着いたアリサとは対照的に映る。


 俺達は今、ルシェラの家の中で小さなテーブルを囲んで談義していた。本来なら失踪事件について聞き込みに来たはずであったが、彼女がエルフはエルフでもダークエルフだったことが発覚し、まずはその属性を知ることから始まったのだ。

 今回はルシェラが事前に外見に関する予告をしていたため大事に至らなかったが、アリサとネイリーンの二人は彼女の姿を見た瞬間に警戒レベルを上げるのが見てとれた。特にネイリーンに至っては前衛としての役目を果たすためにアリサの前に出る寸前だった。

 これには訳があり、このエレンディアでもダークエルフは混沌に忠誠を捧げたエルフ族の末裔であったからだ。自身の所属する属性と陣営を変えられるエレンディア世界の住民ではあるが、やはりダークエルフ=混沌の使者というイメージが強いらしく、二人は本能的に強い警戒反応を示したようだ。

 そして敵意を見せていないルシェラの言動と態度、そして何よりの証拠であるステータス表の表示によって彼女が天秤の使者であることが明らかにされたのだった。今更だが、ステータス表は身分証明書でもあるのだ。


「さっきは疑って申し訳なかった。許してほしい」

「ええ、誤解は解けたみたいなんで、気にしませんよ!」

 一番警戒していたネイリーンが謝罪を口にするが、ルシェラは軽い口調であっさりと許す。両親をエルフの感覚で言えば早くに亡くしているはずだが、擦れた様子や悲愴感はない。前向きな性格をしているようだ。

「村長さんも一言、警告してくれれば良かったのにな」

「ああ、それはですね。村の人の気遣いだと思います。私をダークエルフと呼ばないようにしてくれているみたいです。まあ、私の方はあんまり気にしていないんですけどね。なんせ、この村の住人の殆どを私が小さい頃から面倒見て上げていましたからね! 弟や妹みたいなものなんです。 今の村長のチー坊なんて私に後にくっついて、よく泣いていましたしね。ははは!」

 俺のちょっとした指摘にルシェラは笑いながら答える。見た目が同世代なので実感がわかないが、やはり彼女は間違いなくこの村で最高齢の人物のようだ。

 俺にとってはレクサ村の村長は老人でしかないが、彼にも当然ながら若い頃や幼い頃はあったはずで、ルシェラは彼が物心付いた時にはすでに年上のお姉さんであったのである。そして若い頃の姿のままでいるルシェラは彼や村の住人にとっては、今でも美人で優しいお姉さんであるに違いない。そんな彼女を混沌の勢力を連想させるダークエルフと呼びたくなかったのだろう。

「どうやら、あんたは村の皆に愛されているみたいだね。早速だけど、失踪事件に関する質問に入るよ。調べたけど、狩人であるあんたにも、これといった手掛かりは見つけられなかったとか?」

 そんな俺の推測をアリサが一言でまとめると、訪ねてきた本件を切り出す。

「そうそう! 私のことよりも事件のことを話さないと!  チー坊、いや村長から話は聞いているみたいだけど、この村で戦えるのは私ぐらいだから、ミスロ、バルドン、セトス、アインス、ダリオがいなくなったのが心配でこの子達を探しに行ったんだ! けど、手が掛かりらしい手掛かりを見つけられなくてお手上げなんだよ!」

 ルシェラはそれまでの陽気な様子を引っ込めると、自分と村の抱えている実状を訴えた。


「・・・なるほど、野生動物に限らず襲われた形跡がなかったみたいだね?」

 内容の多くは村長の説明と重複していたが、アリサは確認するように質問を続ける。

「そう、この村の周囲にはたまに狼が現れるから、最初に消えたミスロの時はそうだと思って、徹底的に調べたんだけど、その手の痕跡はまったくなかったんだ。それに羊も全部無事だったんで、ミスロが家出をしたってことで片付けられた。そうしたら、三日後ぐらいにバルドン、セトスも消えて、さすがにおかしいってことになり、村の皆で探しに出掛けたんだ。だけど、その捜索でアインス、ダリオの二人が更に消えてしまって。これでもう村の手には負えないってことになってトリムの冒険者ギルドに頼んだってわけ。もちろん、私はその後も探しに出掛けたんだけど・・・成果なし・・・狩の腕にはそれなりに自信があったのだけどね」

「そうか・・・」

「ルシェラさんは魔法スキルを持っていないのですか?」

 ルシェラが自嘲気味に説明を終えるとアリサはこのダークエルフの少女を吟味するように見つめる。その光景は、俺にも感じるモノがあり。気になっていた質問を口にする。アリサは頼りになるリーダーだが、任せきりではいられない。特に俺は実戦的なスキルが低いので、こういった面で頑張らねばならない。

「ええ、そうなんです。私は82歳で両親を亡くしてしまって魔法スキルを習得する機会がなかったんですよね。野外での暮らし方や弓などの使い方は、それまでに教えてもらったので、自分で磨くことが出来たのですが」

「この村で魔法を使える者は?」

「ええ、もちろんいません。ああ、やっぱりこの失踪事件は魔法絡みなんですね」

「必ずしもそうだとは言いきれないけど。あんたの狩人の腕前は見た感じ、それなりにありそうだし、痕跡を何回も見落としたとは考え難いしね。ましてや村の周辺はあんたの地元だ。この失踪事件には何かしらの形で魔法かそれに準じた力を使える者が関与しているのは違いないと思う」

 おそらくは既に目星は付いていたに違いないが、アリサは現時点での結論を口にする。


「・・・では、予測される脅威も見えて来たことだし、実際の捜索に入ろう。物理的に見つけられない証拠でも、私の精霊魔法で何か見つけられると思う」

「でしたら、私がご一緒して現地を案内します!」

 しばらく問答を続けた後にアリサは断言するように告げ、それにルシェラが提案をする。

「ありがとう。実はお願いしようと思っていたので助かるよ!」

「いえいえ、当然のことです。準備しますから家の前で待っていて下さいね」

 彼女が俺達に付き合う義務はないが、同じ村の仲間の安否が掛かっているのである。家で待っている気にはなれなかったのだろう。いずれにしても俺達は、現地の協力者を得ることが出来た。


「・・・さっきのマサキには助かったよ。エルフとしては若いとは言え、ルシェラに魔法が使えないのか、とは聞き難いからね」

 家の前でルシェラを待つ間、アリサは俺に小声で告げる。

「え、なんで?」

「森で暮らすエルフはその多くが精霊魔法の使い手なんだ。それだけじゃなく、自身の魔法能力を誇りにしていることさえある。エルフには魔法に関しては迂闊なことは聞けないんだよ。・・・まあ、ルシェラは気にしていないみたいで話が進んで良かったけど」

「そうだったのか・・・」

 あの時はアリサが何か考えごとをしているなと思って会話に入ってみたが、俺はわりと地雷を踏みそうになっていたようだ。ルシェラが屈託のない性格で助かった。彼女が臍を曲げていたら捜索の同行を断られていたかもしれないのだ。

「そうです、私もマサキのあまりにストレートな質問には驚かせられました。もう少し穏やかな表現でも良かったと思います。それとアリサに近すぎるのでは?」

 さっきのもあれは私も賛成できないとばかりにネイリーンは俺を窘めた。更に耳打ちするような距離でアリサと会話を交わす俺に嫉妬を催しているのか、彼女は腕を掴むとさりげなく自身の方へと手繰り寄せる。『サイコパスもどきのネイリーンにはだけ言われたくない!』と心の中で思うが、俺の背中に当った何かの膨らみとその弾力がそんな感情を霧散させて黙らせる。

「・・・もしかして二人は本当に仲が良いのかな?」

 その光景を見たアリサは右手を形のよい顎に当てながらポツリと呟く。

「「違う!!」」

 俺とネイリーンは誤解を解く為に再び声をハモらせて否定した。

ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。

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