第十三話 捜査開始
異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第十三話です。
本格的に捜査を開始したマサキ達は手掛かりを持つとされるエルフ女性と会うが・・・。
初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!
読んでくれたら、なんでもするかもしれません!
レクサ村にたどり着いた俺達は村人に来訪の理由を報せると、村長の家へと案内される。規模の小さいこの村には役場もなく、冒険者ギルドへの依頼も村長がその役割を担っているようだ。
アリサに続いて村の内部を案内されながらも、俺は辺りの様子を観察する。牧畜を産業をとしているらしく、羊達の姿を村のあちこちで見かけるが、どれも狭い囲いの中に押し込まれておりどれも窮屈そうだ。
「たぶん、失踪事件で外への放牧を控えているんだろうね。この村は羊や牛の畜産で生計を立てているようだから、やはりこのままだと本当に一大事だ」
俺の疑問にアリサが淡々と答えてくれる。なるほど、原因不明で失踪した男達が羊飼いだったのならば、羊達を連れて外に出るのもままならない。今の事態が長く続けば村としては死活問題である。報酬額の高さも頷けた。
エレンディアの産業や経済に疎い俺だが、ようやくことの重大さを理解し始めていた。
「では、どうかよろしくお願いします!」
歳の頃は60くらいだろうか? 頭髪が薄く、僅かに残った髪も白くなった男性が話を終えると俺達に頭を下げて頼み込む。
「ええ、任せて下さい。事情はわかりましたが、まずは幾つか質問をさせて下さい」
それを受けてリーダーであるアリサが快活に答える。老人はもちろんこのレクサ村の村長で、俺達は彼から改めて失踪事件の概要を聞き、依頼を引き受けたのである。
事件のあらましは既に知らされているとおり、羊の放牧に出た村の男達が次々と行方不明になったので、プロの冒険者である俺達に彼らの安否を確かめるとともに、原因究明と再発防止を図ってほしいとのことだった。
そして、当事者である村長からは幾つかの新しい事実が告げられている。失踪した男は合計五人で全員が比較的若いこと。五人目が出たことで村は放牧を含めて外出を最低限に抑えて、ギルドに依頼を頼んだわけだが、その甲斐あってギルドに連絡をしてから俺達が来るまでの五日の間には新たな被害が出ていないこと。村に住む狩人が村の周囲を調べたが、野生動物などに襲われた痕跡等は見つけることが出来ず、羊も減っていないことなのである。
「その狩人の方は無事だったのですね?」
アリサが俺も気になっていた狩人について村長に訊ねる。
「ええ、ルシェラはエルフ族の女性なのですが、種族がら弓に自信があるのでしょう。私達が止めておけと注意したのですが、捜索に出てくれまして色々と手掛かりを探ってくれたのです。今回の依頼もそのルシェラが先程申し上げたこと以上のことを見けらなかったので、あなた方にお願いしたというわけです」
「エルフ族ですか、トリムのような大きな街ではたまに冒険者となった彼らを見掛けますが、農村部では珍しいですね」
エルフの〝女性〟に反応したと思われるネイリーンが疑問を口にする。俺の知る限りにエルフ族は長寿で性別に関係なく美しい外見をしている人間の近類種だ。つまりエルフの女性=美女もしくは美少女なのである。彼女としては聞き捨てならなかったのだろう。
「ああ、確かにそうかもしれませんね。・・・なんでも私の祖父の祖父が子供の頃にエルフの夫婦がこの村に助けを求めて来たので、受け入れたらしいのです。その夫婦の方はこれまた祖父の子供時代に村を襲ったモンスターとの戦いで亡くなったのですが、村で生活している間に娘が生れまして、その忘れ形見がルシェラとういうわけです。村としては恩人の子供ですし、ルシェラの方も両親を受け入れたこの村に恩義を感じてくれているらしく、異種族ですが、我々はうまくやっています。彼女から詳しい話をお求めなら、呼び出しましょうか?」
「あ、いえ、大丈夫です。村の方々にもこれから話を聞くつもりですから、彼女からはその時にでも」
ネイリーンの発言は、人間の村にエルフがいる理由を変に勘繰ったわけではなく単純な好奇心からと思われた。だが、そのルシェラという名のエルフ女性の生い立ちが劇的であったためか、村長の説明は庇うような気配を見せる。そのためかどうかはわからないが、アリサも遠慮したように答えた。
その後は、やはりアリサが中心となって事件の手掛かり、村の周辺の地形や、失踪した男達が辿ったと思われる放牧ルートなどを聞き出すと、俺達は村長の家を後にして本格的な捜査を開始した。
「では、そのルシェラと言うエルフに会いに行こうか」
「ええ、どのような人物か興味もありますし、おそらくはこの村で一番手掛かりを持っていると思われるのが彼女でしょう!」
アリサの提案にネイリーンはやや興奮した面持ちで答える。彼女の言う通り、村を周り村人達から証言を得たが、村長から告げられた以上の情報はまだ得られていない。何かしらの新しい情報が出るとすれば、話題のエルフ女性からに違いなかった。
「そう言えば、この世界のエルフも美形で耳が尖っているのかな?」
村長から教えられたルシェルの家に向う途中で、俺はエルフについて詳しく知ろうとアリサ達に問い掛ける。
「ええ、その通り。マサキはこの世界にまだ疎いと思っていましたが、良く知っていますね。彼らは見た目が麗しく、頭も良くて器用で素早い。更には長寿な種族です。指摘のとおり耳の先が尖っているのが人間とは異なる外見の特徴ですね」
「ああ、やっぱり耳は尖っているんだ。俺の元いた世界ではエルフは伝説や架空の存在だったけど、一応は名前を知っていたんだ」
珍しくネイリーンに褒められたので俺は謙遜気味に答える。いつもこんな感じなら本当に良いお姉さんなのだが。
「そう。エルフ族はまさにそんな種族だ。捕捉するならエルフは人間よりも先にエレンディアに生まれた種族とされていて。森林を棲家として部族単位で暮らしている。性質は中立と秩序を好むけど、稀に混沌に忠誠を捧げる部族もいるらしい。気を付けなくちゃいけないのが、その寿命の長さで、一定の段階で成長と老いが止まるので外見で年齢は判別出来ない。まあ、今回会いに行くエルフは村長の話からすると200歳は越えていないからエルフの中では若手だね」
「200歳で若い方なのかよ・・・」
アリサの説明に俺は絶句する。人間で言えばババアどころではない、白骨化する年月である。事件の参考人として会うだけだが、俺の中にあるエルフへの神秘性と期待が萎えるのがわかった。
「うん。それが人間よりも優秀とされるエルフの弱点でもあるね。一世代の年月が長いから繁殖力が低く、時代の変化に追い付けないことがある。エレンディアで人間が主流となっているのも、そのためだと言われているよ。ああ、どうやらここのようだ」
そんなことを話している間に俺達は周囲を木に囲まれた小さな家に着く。家の作りは簡素な木製でログハウスのようだが、常に手入れをされているらしく小奇麗である。その点は好感が持てた。
「失踪事件を調べに来た者です。話を聞かせてもらえますか?」
早速とばかりに、アリサが代表して家の戸を叩く。これまで一人で冒険者活動をしていた彼女だけに、こういった場面で躊躇することなく行動が早い。初対面の相手には緊張してしまう俺には出来ない芸当である。
「はい、今出ます!」
中から声が聞えたので、俺は初めて見ることになるエルフ女性の出現を待つ。先程は彼女を化石扱いしていたが、その若々しい声にアリサとどっちが美人なのか興味が沸いて来る。我ながら酷い手の平返しである。
「本職の冒険者さん達の到着を本当に待っていたのですよ! それと私は天秤に属していますので、どうか間違わないで下さいね!!」
簡素な木の扉が僅かに開くと、期待と不安を混ぜたような声が漏れる。前者はともかく後者に疑問を持ちつつも俺は扉が更に開けられるのを待った。
「こんにちは、こんな外見ですが私は天秤に属しています!」
姿を現したのは確かに美しく若い女性、いや少女だった。アリサに勝るとも劣らない整った顔をしていて、癖のない銀髪を後ろで束ねてポニーテールとしている。尖った耳の先端が彼女の美しい髪の中かららやや横向きに突き出ているのでエルフ族に間違いないだろう。また、その身体付きは細身ながらも、革の胴着を着ていてもわかる女性らしいラインを描いていた。ネイリーンほどの膨らみはないが、充分にエロい・・・いや、魅力的な曲線である。
もっとも、その肌は俺の想像した静脈が透けるような白さではなく、褐色に染まっていた。黒というほど濃くはないが地球ならかなり日焼けした肌の色である。
「・・・ダークエルフ!」
それまで後ろに控えていたネイリーンはそう呟くと素早く前に出る。その単語で俺もエルフの中には邪神に忠誠を捧げた裏切り者のような存在がいたことを思い出す。それがダークエルフと呼ばれているはずだった。
ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。
新キャラはダークエルフ娘でした。元気&癒し枠を担当する予定です。
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