↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/58

第十一話 女戦士ネイリーン

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第十一話です。

正式な冒険者となったマサキとアリサのパーティーに参加希望者が現れるのだが・・・。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、そろそろなんでもするかもしれません!

「うむ、どうしようか・・・」

 ギルドのロビー、事実上の酒場のテーブルで俺は考えを巡らせていた。既に昼食を終え、更には先程のカウンターでギルドへの登録も済ませている。これで俺は天秤に所属する正式な冒険者となったのだ。

 その際、エレンディアに転生したばかりであることを考慮され銀貨50枚の支度金を渡されていた。かなりの太っ腹にも思えるが、命を賭けた戦いに参加することを考えればもっと多くても良いような気もする。

 更にトリムに辿り着いたことで俺は経験値を1000入手していた。このエレンディアでは敵を倒すだけでなく、何かを成し遂げると成長の要となる経験値が手に入るシステムになっている。そのようなわけで俺は金と経験値の使い道を悩んでいたのだった。

「装備を整えるにしてもスキルとの兼ね合いがあるからね。マサキがどんなタイプの冒険者になりたいかで金の使い道も変わってくる。良く考えて決めるべきだね」

 唸り声を上げる俺に、テーブルの向かいに座るアリサが麦酒で喉を潤しながらアドバイスをくれる。これまでの旅で既に知っていたが、彼女はかなりイケル口だ、大酒飲みとまでは行かないが体質的にもアルコールに強いのだろう。既に二杯目に突入していた。

 特に彼女は先程、俺と出会うきっかけとなった依頼を完了させており、報酬を受け取ったばかりである。麦酒も弾むに違いなかった。

「そうなんだよ、どうしよう? 戦士タイプを目指すか、アリサのような魔術士タイプか・・・」

「本来なら転生時に備わったスキルを活かすよう装備を整えるんだけど、マサキはスキルから入手しないとだからね、まずはそこから決めないとだ」

「うん・・・やっぱり、武器や防具を揃える戦士の方がお金は掛かりそうかな?」

 俺は周囲の戦士タイプの冒険者達に目を向けながらアリサに問い掛ける。今腰に下げている安物の剣でさえ、銀貨2枚、もしくは銅貨四十枚はしたのだ。彼らが着ている身体を覆うような板金鎧と鎖帷子ではいくら掛かるか想像できない。あれを製造する手間を考えたら金貨一枚では済まないだろう。

「いや、そうでもないんだ、マサキ。・・・確かに魔法はスキルがあれば使えるようになるけど、魔術士はその効果を上げたり、抵抗される率を下げたりするために、私の杖のような補助具を装備するのが望ましい。例えば、私が人食い鬼のオーガーと戦うことになっても序盤に麻痺の魔法を成功させれば、もはや敵ではない。だが、失敗すれば万全のオーガーと接近戦を繰り広げることになる。少しでも良い補助具を持ちたいと思うのが魔術士の実状なのさ。この杖はとある冒険で手に入れた代物だけど、持ち主の攻撃系魔法スキルを+5ほど補助する力を持っている。その手の店で買ったら金貨30枚はするはずだよ」

「なっ! この杖はそんなにするのか!」

 魔術士タイプでも予想外に出費がかさむ事実よりも、アリサの持つ杖の価値に俺は驚きの声をあげる。魔法を使う際には常に手にしていたのには気付いていたが、そこまで重要で高価だとは思っていなかったのだ。

「うん、この世界では装備をケチる者はいないよ。皆、少しでも良いモノを手に入れようと狙っている!」

「どっちにしても金が掛かるわけか・・・」

「ああ・・・だけど、曲者タイプのスキルはあまりお金が掛からないかもね」

 異世界でもやはり金かと、しょぼくれる俺にアリサはアドバイスを続ける

「曲者タイプ?」

「そう、盗賊系のスキルのように直接の戦闘では役にたたないけど、情報収集や探索等で役に立つスキル。そういえばマサキの逃げ足もこの手のスキルだね。欠点は地味だし、メインに持つようなスキルじゃないってことかな。私も野外生活スキルを持っているけど、今より上げるつもりはないからね。これをメインにする者は職人であって、冒険者とは言えないと思う」

「むむ、やはり一つは戦力になるスキルが必要なんだな」

「ってことだね。私からするとマサキには盗賊系のスキルを持ってもらうと助かる面もあるけど・・・まあ、強制はしないよ」

「確かに仲間内で持っているスキルはあまり重複しない方が良いか・・・。でも、盗賊系のスキルはどうやって入手したら良いのだろう? その手のスキルを持っている冒険者を仲間にするしかないのか?」

「いや、そのためのギルドだよ。さっきの掲示板があったでしょ? そこにはスキルを伝授するって売り込みも張られているんだ。前に言ったけど、レアなスキルほど報酬額も高いけどね。お金や報酬を出せば大概のスキルは入手可能ってわけ。だから、スキル取得のためだけに必ずしも仲間、ここではチームを組んだ冒険者のことをパーティーとかパーティーメンバーと呼ぶけど、パーティーメンバーにする必要はないよ」

「ああ、なるほど。ギルドだもんな、そういうことか。じゃ、逆に俺も他の人にスキルを教えられるのか?!」

 アリサの説明に納得しつつも、俺は自分もスキルの伝授者になれる可能性に気付く。

「うん。ただし、伝授出来るのは一人前とされる20レベル以上のスキルだけ。マサキが出来るのは土下座と、もう一つは良く分からない特異体質だっけ? その二つだね。欲しがる冒険者はいないんじゃないかな? ふふふ!」

 そう告げると、アリサはテーブルを叩きながら笑い出す。・・・この状態になったら、しばらくは放っておくしかない。しかも、内容が事実だけに反論の余地はなく、俺は黙って彼女の発作が止むのを待つしかなかった。


「なんだ、一際大きな笑い声がすると思ったら、アリサじゃないですか! いつにも増して上機嫌のようですね!」

 アリサが会話を出来る状態にないので、再びスキルについて考えていると唐突に背後からの声を聞く。内容からするとアリサの知り合いだろう。俺は好奇心に駆られて身体を捻ってその人物を確かめる。

 後ろに立っていたのは若い女性だった。歳は俺よりも上で二十歳くらいか? 彼女は赤味を帯びた髪を肩の辺りで切り揃えていて、背がかなり高い。やや細身で手足も長いが、そのわりにヒョロイ印象は受けない。バレーボールのトップ選手のように身体付きはがっしりしている。

 そして、その恵まれた体格に鎖帷子を纏っており、腰には長剣を帯びている。それらの装備には見事な細工が施されており業物であることが窺える。これだけなら男の戦士か騎士と見間違うかもしれないが、その赤毛の女性は鎖帷子の上からでもそれとわかる胸の膨らみを持っていた。・・・それは実に素晴らしい特徴だった。

「ええ! しかも男と一緒! まさかアリサ! あなたに彼氏が出来たの?!」

 振り向いた俺と目が合った赤毛の大女は、更に驚きの声を上げる。胸に気を取られていたので、顔付きまでしっかり確認していなかったが、なかなかの美人だ。

 同じ美形でも人形のようなアリサとは違う、大人の女の魅力を感じさせる。それでいて、混沌の女神のような下品さはない。年上はあまり好みではないが、それを差し引いても魅力的な女性に思えた。特にその胸が!

「なんだ、ネイリーン。あんたもギルドにいたのか。・・・誤解しているようだけど、マサキは彼氏ではないよ。新しい転生者でね。私がたまたま近くにいてトリムまで連れてくる役目を頼まれて、そのまま仲間として受け入れたってわけ」

 やはり、知り合いだったのだろう。ネイリーンと呼ばれた女性の誤解に、悲しいことにそれは誤解なのだ。アリサはいつものそっけない態度で返す。

「なんだ、彼氏じゃなかったのですね。・・・それでもアリサが仲間を受け入れるなんて! 以前、私が一緒に組もうと誘った時は断ったのに! あ、とりあえず、座らせてもらいますね」

「ネイリーンはソロでも活動出来る腕前を持っているから私と組む必要性はあまりないし、望めば他のパーティーでも引手数多(ひきてあまた)だろう? マサキはロクなスキルを持たずにこのエレンディアに転生した可哀相な男なんだ。事情が違うよ」

「ああ・・・そういうこと・・・」

 さりげなくアリサの横に空いている椅子へ座ったネイリーンは、悟ったような生暖かい目で俺の顔を見つめる。ステータス表は見せていないが、俺が彼女をかなりの腕前の戦士か騎士だとわかったように、ネイリーンも俺の実力が駆け出しレベルであることに気付いたに違いない。

「そうそう、一応紹介しておこうかな。マサキ、この色々とでっかい女はネイリーン。見てのとおりの戦士職で剣の腕前は私も上回り、更に回復魔法も扱える、なかなか有能な冒険者だ。そしてネイリーン、こっちの平凡な男はマサキだ・・・以上」

「あ、あれ、いくらなんでも俺の説明が短すぎ、短すぎなくない?」

 微妙な空気になりかけたところでアリサがネイリーンを正式に紹介してくれる。仲が良いのか悪いのか判断しかねる二人の関係だが、説明からするとアリサなりにネイリーンを高く評価しているようだ。そして扱いの差に俺は軽く抗議する。

「いや、こんなものでしょ。・・・逃げ足と土下座が得意とか、むしろマサキの評価を下げる気がしたので敢えて外したんだけど?」

「そうだった・・・」

「え、何? 彼は逃げ足と土下座が得意なのですか?」

 それまでは生暖かい目を送っていたネイリーンだったが、今では好奇の視線で俺を見ている。まるで珍獣を見つけたような気配だ。・・・俺は自ら墓穴を掘ったことに気付いた。


「なるほど、マサキ君は本当に外れスキルしか持っていないようですね。それじゃ、さすがのアリサも放っておけないか。・・・だったら、尚更私をこのパーティーに加えるべきじゃないですか? 当分の間、彼は戦力にならないだろうし、本格的な前衛役がいた方が良いでしょう! いや絶対に私を入れるべき! 私とアリサが組めば殆ど敵なしですよ!」

「私はソロで解決できる程度の依頼をマイペースで片づけるのが好きだったんだけどね・・・」

「だったでしょ! 今まではその理由で諦めていたけど、もう二人ではないですか! 二人で良いなら三人もそんなに変わらないはず! 私も仲間に加えて下さい!」

 自分からボロを出したこともあって、しばらくは俺のスキルをネタに雑談を交わしていたが、ネイリーンは思い出したかのようにアリサに自分を仲間に加えるよう懇願する。

「いや逆、二人ならそこまでソロと変らないと思ってマサキには許可を出したんだよ。それにマサキは私にべたべた触ってこないし、わりと性格も合うからね」

 客観的に見れば、俺よりも同性で実力もあるネイリーンの方が仲間に相応しいようにも思えるがアリサは難色を示す。というかネイリーンはアリサをベタベタ触るようだ。

 確かに人形のように可愛らしい彼女を触りたくなる気持ちはわかるし、親愛の印なのかもしれないが、それでは逆効果だろう。猫のように気紛れなアリサには近すぎもせず、遠すぎもしない微妙な立場が良いのだ。これは土下座を失敗して得た俺の教訓である。

「そんな・・・」

 ネイリーンははた目でもわかるほど肩を落として溜息を吐く。彼女のルックスと実力なら俺達のパーティー以外にも需要がありそうだが、どうしてもアリサと組みたいのだろう。ついさっきまで同じ立場でいた俺としては、ネイリーンを助けたい気持ちとなる。

「・・・俺が言うのもなんだけど、一回、彼女とパーティーを組んで試したら良いんじゃないか? もちろん、アリサにベタベタ触らないことを前提にだけど。それでも約束を守れなかったり、相性が合わなかったりしたら、本当に諦めてもらうのはどう?」

「うむ・・・ネイリーンが私に変なことをしないと約束するのなら、一回くらいは試しても良いかな・・・」

 アリサは乗る気ではないようだったが、それで妥協しようとしたのか俺の提案を渋々と受け入れる

「する! 約束するします!」

 ネイリーンはそれまでの落ち込みようが嘘のように目を輝かせながら条件を飲んだ。


「じゃ、ちょっと席を外すよ。あ、ネイリーンは来なくていい! マサキ、彼女の相手をしてやってくれ」

「ああ、いってらっしゃい」

 ネイリーンの仮加入が決定し、どのような仕事や依頼を受けるかで話し合っていたが、しばらくするとアリサが席を立って告げる。既に麦酒を二杯ほど空けていたので、おそらくはトイレだろう。旅の間にも何回か同じようなことがあったので、俺も野暮なことは聞かずにそのまま見送る。

「・・・マサキ君、さっきはありがとう感謝します!」

「いや、そんなことはないですよ。本格的な戦士職の冒険者は確かに必要ですから」

 二人きりとなったことで、ネイリーンから礼を伝えられた俺は満更でもない気分で謙遜する。年上の美人に感謝されて悪い気がするはずもないし、鎖帷子を脱いだ彼女の胸がどうなっているのか気になって仕方のない俺としては、一先ずとはいえネイリーンが仲間になったことは喜ばしいことなのだ。

「・・・実は、あのままアリサにパーティー加入を断られていたら、腹いせにあなたを半殺しにしてやろうかと思っていたのだけれど、マサキ君が私の味方になってくれて本当に助かったましたよ!」

「・・・そ、そうですか。ははは」

 唐突に物騒なことを口走るネイリーンに俺は乾いた笑い声を上げる。質の悪いギャグか冗談にも聞こえるが、その目は笑ってない。やると言ったら本当にやる、覚悟を越えた者だけが持つ本気の念が込められていた。

「でも、もう大丈夫。私は受けた借りは必ず返します。これから一緒にがんばりましょう! あなたが一人前の冒険者になれるよう私も助力を惜しまないから!」

「・・・ええ、お、お願いします」

 俺は先程の何気ない選択をした自分を褒めるとともに、アリサがネイリーンに難色を示した本当の理由を知った。

ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。

これは秘密にしておきたかったのですが、サブヒロインのネイリーンはエロ担当枠なので、ブクマと評価が増えるとエロ要素が増えるかもしれません!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。