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第十話 冒険者ギルド

異世界転生に勢力争いの要素を加えた作品の第十話です。

アリサと正式に仲間となったマサキは冒険者の本拠地に向う。

初めまして方はどうぞ第一話から読んで下さい。お願いします!

読んでくれたら、懲りずになんでもするかもしれません!


 天秤の女神の加護か、単なる幸運か、必死の思いで使用した交渉(土下座)スキルは不発に終わったが、アリサは俺を正式な仲間として認めてくれた。これで一先ずはボッチで野たれ死ぬ可能性から解放されたわけだが、いつまでも足手まといのままならいずれはアリサに愛想を尽かされてしまうだろう。

 俺としては早くこのエレンディアの生活に慣れ、何かしらのスキル、使い道のない外れスキルではなく、戦闘で役に立つスキルを実戦レベルで身に付ける必要がある。

 そんな事情もあり、俺はアリサに続いてトレムの城門を潜ると、まずは拠点となるトリムの様子を知ろうと括目するのだった。


「この大通りを進むと中央広場と元首の城に出る。そして北門を背にして外周沿いの通りを右手側に行くと職人街で、その反対の左は歓楽街が連なっている。まあ、そっちは興味がないから、私も詳しく知らないけど。あと、東門はその先を出た街道が港町に続いているためか舶来品を扱う商店が多かったり、西門周辺は街の創世期に造られた区画で金持ちが多く住んでいたりと、街の中にも場所によって色々な特徴があるんだけど・・・一度に説明しても覚えられないだろうから、まずは冒険者ギルドに案内するよ」

 アリサは北門を基準に街の説明をしてくれるが、俺の頭に入るのは極一部だ。中世のヨーロッパ、それもスイスかドイツ辺りだろうか? それらを連想させる街並みに俺は圧倒されていた。建物の多くが石材で建てられており、異国情緒を漂わせつつもノスタルジーを刺激させる街だった。

 これまでの旅路で訪れた集落や村も日本とは異なる文化圏であるように思えたが、木造建築が多かったのと、旅の途中ということもあって、それを感じる余裕がなかったのかもしれない。

「・・・うん。ちょっと街に慣れるまで、細かい地理は無理かな」

「だろうね、まずは軽く眺めながら私に着いて来て」

「ああ! そうする!」

 今の気持ちを素直に告げると、アリサは石畳で綺麗に舗装されたトリムの通りを先導して歩き出す。それに俺も喜色を表わして続く。安全が確保されると未知の場所も期待に変るのだ。


 荷馬車から商品を店の中に運び込む様子や、木の棒を剣に見立てて遊ぶ子供達、通りの端でお喋りをする中年の女性達、そのような街の営みを横目で眺めながら、俺とアリサに連れられてトリムの街中を通り過ぎて行く。

 世界や文明に違いや差があっても、人間である以上、街中で暮らす人々に大きな差はないのかも知れない。そんなことを考えて歩いていると、アリサが足を止めてこちらを振り返る。どうやら目的地に着いたようだ。

 その建物は思っていたよりも大きかった。三階建てで、ちょっとした学校くらいはあるだろう。石材で建てられているのはこれまでの街中の建物と同じだが、やや無骨な印象を受ける。どちらかと言えば砦のような印象を受けた。

「ここが冒険者ギルド・・・」

「そう、ここが冒険者ギルド。一階はギルドの各種設備で、二階から上は旅籠屋と同じようにギルドに所属する冒険者が寝泊まりする居住区となっている。まあ、今までの安宿と大して変わらないけど、街中で他の宿屋や部屋を借りるよりは割安かな。私もトリムではここが拠点さ。それと、一階は仕事の斡旋や報酬を受ける窓口の他にも冒険者に必要な道具を扱う売店、食堂を兼ねたロビーがある。さっきのマサキのように、仲間が欲しい冒険者はこのロビーで相手を探したり、募集したりするんだ。もしかしたら、私よりも熟練の冒険者がいるかもしれないよ。どうする?」

 俺の呟きに反応して、ギルドの説明をするアリサだが、最後は試すように思わせぶりに問い掛ける。その顔にはいたずらっ子のような無邪気な笑みがあった。

「どうするって言われても・・・俺にはアリサを裏切るつもりはないし、二人だけって数が決まっているわけでもないんだから、別に俺達の仲間になるように勧誘すれば良いだけなんじゃないか?」

「・・・マサキ。そこは『俺みたいな雑魚冒険者がアリサを裏切るなんて恐れ多くて出来るはずないですだ!!』くらい言ってもらわないと!」

 おそらくは俺の声色を真似たつもりなのだろう。アリサは微妙に口調を変えて、彼女にとっては正解だったとおぼしき返答を告げる。

「なんだそれは? 俺がクソ雑魚なのは認めるけど・・・『ですだ!』なんて言ったことないだろう!」

 土下座までして仲間になったアリアだが、さすがに俺もカチンと来て言い返す。

「ふふふ、冗談さ。やっぱり、マサキの反応はわかりやすくて面白いな! 仲間にした甲斐がある。まあ、それは置いといて早速中に入って昼食を食べよう。詳しい説明はその後だ」

「もう、わかったよ」

 その返事を聞くまでもなく冗談だとはわかっていたので、俺も苦笑で返すとアリサに頷いた。


 観音式のドアを抜けて俺達はギルドの中へと入る。まずは広間になっており、中央にはあの天秤の女神を模したと思われる見事な大理石像が置かれていた。

 フードを被った姿で現されている女神像だが、隠されている冷然とした表情やローブの下にあるはずの女姓的な肉体をも見事に表現されており、なかなかの傑作と言えるだろう。ここがまさに天秤の本拠地であることを来訪者に知らしめていると思われた。

 その厳かな空間を先に進むと、銀行のような横長のカウンターが現れる。ギルド側の運営者と思われる受付嬢が五人おり、その前には冒険者と思われる様々な武器や格好をした者達が列を作っていた。

「そっちが窓口で、こっちが掲示板。この掲示板から仕事の依頼や仲間の求人や商売の勧誘など、自分にあった用件や情報を見つけ出して窓口で詳しく相談したり、奥の食堂で待機している同業者に話を持ち掛けたりするってわけ」

 アリサに指摘されて俺は反対側に視線を移す。そこには真剣な面持ちで壁を窺う人影が多数あり、その視線の先には説明どおりにハガキ大の紙が壁一面に張られていた。

「・・・しかし、あの中から自分に合った内容の仕事や情報を探すのは大変そうだ」

「うん。マサキはそういうところは鋭いな。掲示板には暗黙のルールがあって、仲間用の求人は右側とか、熟練者用の依頼は真ん中に出すといったある程度の法則性はあるよ」

 思いついた疑念を口にするが、アリサによって直ぐに解決する。やはりこの手のルールはどこでも自然発生的に生まれるみたいだ。

「まあ、今はカウンター回りの説明はそれくらいでいいかな。それじゃ、奥のロビーを兼ねた食堂に行こう。どちらかというとこっちが冒険者にとってはメインの施設だからね」

「そっちがメインなのか・・・」

 俺は建物の奥に目を向ける。そちらはロビーを兼ねた食堂と聞かされていたが、どちらかと言うと酒場を兼ねた兵士の溜まり場に思える。

 まだ昼を過ぎたばかりだというのに、既に半分ほどのテーブルが武装した冒険者達で埋まっており、どのテーブルにも麦酒と思われる盃が置かれている。一人でここに来ていたらそのアウトローな雰囲気に萎縮していただろう。

 もっとも、どの冒険者の顔にも程度の差はあれ笑顔が浮かんでいる。まるで、ここが我が家であるように。

ご愛読ありがとうございました。一日一回、三千字程を目標に更新しますのでこれからもよろしくお願いします。

次回、新キャラが登場します。どんな娘かは実際に読んで確かめて下さい。

また、よろしければ感想や評価もお待ちしております!


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