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意味深な捨て台詞


ゴキブリとは男女共通で苦手な人が多い生き物だ。鈴も例外なく、あの予測不能な動きに身を震え上がらせていた。


「大丈夫か??」


心配そうにグレンが顔を覗きこんでくるが、鈴は何とか冷静に頷いて見せた。テディベア型モンスターとは違う地を這う動きに背筋がゾワゾワとする。ブーンッと不快な音と共に飛んでくるゴキブリに黒凪を振り下ろす。


「……ッ!?!?」


カキィッと甲高い弾かれた音がなり、鈴は息を呑みこんだ。黒凪はいとも簡単に弾き返されたのだ、反動で押し返され目を見張る。ゴキブリ型モンスターには一切の傷は無く、昆虫特有の口がモゴモゴと動いている。


ゴキブリの体は鋼のように硬く、剣の攻撃が一切聞いていない。グレンも剣で応戦しているものの決定的な攻撃は出来ていない。ノアも魔法を使って攻撃をしているがこれも一時しのぎでしかない。


「《纏え》」


電気を帯びた刃をモンスターへと向けて放つが、先ほどの様に上手くはいかず一瞬動きを止める程度で全然効いていない。グッと歯を噛み締めた。


イナトは群がってくるモンスターを跳ね除けては、放電を繰り返しているが明らかに先ほどと様子が違う。だれもこのゴキブリ型の対処を知らないようだ。


「フフフ、困ってるわねぇそうよねぇ。新種のモンスターだもの」


顎のラインに長く綺麗な指を沿わせて、高みの見物をしてるレルムは、それはそれは面白い演目でも見ている観客の様に笑みを浮かべていた。


レルムが言っている事は、本当だろう。彼らが対処法を知らないなんてない、新人ではないかなり腕の立つ二人だ、すでに対処できていない所を見えると仕方が分からないのだろう。


どうする、どうすればこの状況を回避できる??グルグルと脳内で考えようとするが飛んでくるゴキブリを弾き飛ばしながら考える事はかなり難しくいい案なんて出てこない。


「なにか、なにか、なにかいい案は!!」


《あいわかった。このジジィが今一度力を貸そう》


幼い声、聞き覚えのある声にハッとする。あの日、あの夜に聞いた声だ。食屍鬼に襲われたあの夜に聞こえた幼い子供の声。その声は妙に近くから聞こえ、バッと振り返るがそこには何も居ない。


どこかお爺さんの様な喋り方で、落ち着く。ボーっとしていると、耳元でまた子供の声が聞こえた。


《人の子よ、ボーっとするな死ぬぞ》


ハッと前を見れば飛んでくるゴキブリ。唐突に出たのは自分でも驚きな回し蹴り、ブンッと飛んでいったゴキブリは壁へとめり込む。倒したかと思ったがイゴイゴと元気そうだ、こちらの方がダメージを受けた様で痛む足を鈴はさすった。


《奴らの弱点は口だ。口だけは鋼の体の様にガードできん。そこからなら致命傷を与える事が出来る》


弱点が分かったとしてもこの状況でピンポイントに口元を狙うのは難しい。どうにか動きを一瞬でも止める方法があればと脳内をフル回転させる鈴の頬に一筋の汗が伝う。


《今から、ワシが奴らの動きを封じる、そこを叩け》


コクリと頷いた鈴は黒凪を構え大声で叫んだ。レルムに聞こえずグレンたちだけに伝える事は不可能だったため、仕方なく大声で叫ぶ方法を取った。


「皆さん!!弱点は口元です!!そこへの攻撃は有効です!!」


グレンとノアは襲い掛かるゴキブリを跳ね除け、鈴へと視線を向けた。本当かと肩で息をするグレンとノア、イナトはさすが主じゃ!!と尻尾を振っている。


レルムの表情が一気に曇る、彼女は表情に出やすいので分かりやすい。そこが弱点であっているとバラしているようなものだ、逆手に取って騙すなんて事もあるだろうが今回は本当のようだ。


華柱炎(ピラーフレイム)


真っ暗な天井からメラメラと燃え上がる炎が幾つも降り注ぎはじめる。それは、一本の長い槍の様にゴキブリを貫く、グワッと大きく口を開けもがく姿に、ここで攻撃をするのかと鈴は黒凪を構え大きく開いた口から剣先を入れ引き裂いた。


外は硬く剣で貫く事ができず困っていたが、どうやら剣先が入りさえすれば攻撃は難しくないようで、そこからは先ほどの様に苦戦することなく退治することが出来た。数分もすれば、立っているのは鈴達とレルムだけになった。


全員の視線は今度こそ、レルムへと注がれる。


「上手く良くと思ったけれどぉ、今回はワタシがヒントを与えすぎた所為ね反省しないと……」


悪戯が失敗してしまった子供の様にチェーッと近場にあった小石を蹴って転がしていたレルムは、チラリと鈴の方へ視線を向けニタリと笑った。


「今日はこの辺にしとくねぇ、でもこれが最後じゃない。これは始まり、我々の世界の……ね??」


レルムの姿が徐々にかすれ始める、ノアとグレンが足早に走って向かうが間に合わず彼女は姿を完全にくらませてしまった。


「逃しましたか」


悔しそうに呟くノアに、グレンは頷いた。彼はいつも通り無表情ではあるが、力強く握りブルブルと震える手から悔しさがにじみ出ていた。


意味深なセリフを吐いて消えたレルムという魔族の存在、そして新種のモンスター。報告する事が多いですね、面倒くさいとノアは重いため息を漏らした。



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