命令口調のロ、幼女登場
「え??」
急なお願いに、その場に居た鈴以外は吃驚したように目を丸めた。しかし時間がないので鈴はそんなの気にせず再度連れて行くようにお願いした。
「ど、どうするつもりですかリンさん」
「やってみます」
ノアは目が飛び出しそうなほど、目を見開いた。普通はかなりな顔になるはずだが、美男は目を見開いても美男だった。まぁ、それは良いとチェスターに案内してもらいシスターの部屋へと向かった。
シスターが眠っている部屋は先ほどいた居た部屋からかなり近い場所にあり、部屋を出て一分も経たない間に部屋の前に着いた。チェスターは一瞬躊躇しつつドアを開けた。
「どうぞ」
薄暗い部屋の中女性のうめくか細い声が聞こえる。ベッドの膨らみの傍まで向かった鈴とノアとグレンはそのシスターの姿に言葉を失った。
彼女は薄暗い部屋の中からでも分かるほど肌が変色していた。くすんだ紫色が顔を侵食している、これが体中に広がったとき彼女は死んでしまう。そうチェスターが説明する。
「ノアさん呪文を」
「……は、はい。では」
ノアが呪文を唱える。それを何度も口にし覚えると、シスターに手をかざした。大丈夫私ならできると自分を鼓舞し口を開いた。
「傷つき苦しむ者に、どうぞ癒しの御恵みを 癒光」
苦しみ眉を寄せていたシスターの表情が和らぎ始める。薄暗いはずだった部屋が明るくなり始め、彼女の顔を侵食していた変色していた部分が消えていく。
「すご、い」
チェスターはゴクリと唾を飲み、鈴から視線をそらせずにいた。少しの間時間を共にしてきたグレンやノアも例外なく彼女に驚いていた。
程なくして、シスターは完全に穏やかな寝息を立てはじめた。もう大丈夫だろうと、かざしていた手を下ろた。無理かもしれないと一瞬思いもしたがこの様子なら成功したようだ、良かったと安堵のため息を零す。
「……あり、がとう。有難うございます」
ホッとする鈴をチェスターは飛びつくように抱きしめた。ギューギューッと抱きしめるチェスターに鈴は吃驚して目を白黒させた。
「貴女は救いの女神ですリンさん、いえリン様」
嬉しいのは分かるが苦しいともがく鈴。というよりリン様ってなにとプチパニックになっていたが、すぐに助け出される。
「大丈夫か」
救出されグレンの腕の中にいる状況にデジャブを感じざる終えないが、お礼を言う。すぐに離してくれるのかと思いきや、グレンは鈴をいつになっても離す気配が無い。
「あ、のグレンさん??」
目をぱちくりさせる鈴にノアはハァッとため息をついた。
「グレン、嫉妬したのは分かりますが離しておやりなさい。リンさんが困っていますよ」
「嫉妬なんてしてない」
ぶっきらぼうに言いつつ、グレンは腕を解いて鈴を離した。チェスターは鈴の元へ飛んでくると失礼な事をしたと何度も何度も頭を下げて謝った。
「大丈夫です気にしてませんから。……その辺にしてシスターの傍に居てあげてください」
「……はい、このご恩忘れません。本当に有難うございます」
ギュッと手を握り、涙を浮かべながらお礼を繰り返し言うチェスターに鈴は笑顔を浮かべた。
「では、我々は旧神殿へと向かいたいと思います」
グレンは先に部屋を出ていて、ノアはペコリと頭下げた。チェスター真剣な目をして頭を下げた。
「よろしくお願いいたします。ご武運を……リン様もお怪我のございませんように」
「あ、あの……リン様じゃなくてリンって呼んでください。様付けはムズムズしちゃうので。……その、有難うございます」
シスターの傍に立っているチェスターを残し、部屋を出て祭壇まで戻り身廊を通って教会の外に出た。外では一足先に出ていたグレンがノアと鈴を待っていた。
「さて、仕事をしましょうか」
ノアは顔を上げる。グレンも鈴もコクリと頷いた。気合を入れ、旧神殿へ向かって歩き出そうとしたそのときだった。
「ちょっと待って!!!!」
高く可愛らしい声が、三人の足を止めた。振り返ると、ピンク色の髪をした大きな瞳の少女が立っていた。彼女は何処から走ってきたのか息絶え絶えで、それでも待ってくれと三人を止めた。
何度か深呼吸をして、息が整ったであろう彼女はビシッと指を前に突き出した。
「私も連れて行きなさい!!」
まさかの命令口調に、鈴は吃驚して目を丸めた。命令口調の幼女とか可愛すぎるだろと真顔のまま少女を見下ろした。グレンとノアは呆然と少女を見下ろすだけ。シーンッと誰も喋らないまま時間が過ぎた。




