神獣らしいです、わぉ。
歴史書に載っている写真に目を向け、イナトは尻尾を揺らした。写真の横には、神獣と記されており鈴は吃驚して目を丸めた。
いや待って、神獣と主従契約って出来るものなの!?と一人パニックになるが、二人と一匹はそこにはあまり触れない。あれぇ気にしてるの私だけ!?と鈴は喉まで出てきそうな驚きの声を何とかおしとどめた。
「懐かしいのぉ、ざっと千年ほど前じゃな」
イナトの言い方に確信したように、ノアは身を乗り出した。
「ではやはり、あたながあの伝説の雷獣【トゥネール】」
「そう呼ばれておった事もあった。が、今はイナトと言う名を主より貰い受けた。トゥネールではない、我はイナトじゃ」
トゥネールと呼ばれた雷を操る獣は、太古の昔。モンスターにより世の均衡が乱され、人々が苦しみの悲鳴を上げていた時代。勇者に力を貸し、モンスター殲滅に一役買ったようだ。そこから神獣と人々に祭られるようになったらしい。
歴史書の一部には、そう書かれている。かなりスローペースで読んでいたが、読み終わって顔を上げるとノアが未だにイナトの全身を細かく観察している最中だった。ジーッと見続けられるのが嫌で仕方ないのか、尻尾が力なくへたれていた。
「……あれ、モンスターの殲滅。ってことはモンスターは滅びたんですよね??」
そうなれば、二人とであったとき自分が倒したのは??あれもモンスターと言っていたよな??と鈴は脳内がこんがらがった。歴史書には殲滅は成功、とも書かれているのだ。
「モンスターが再び姿を現したのは今から、およそ百年前だ。突如あらわれ、平和だった世の中の雲行きが怪しくなった」
鈴の疑問にすぐに答えが返ってくる。グレンは何処か遠くを険しい表情で見ていた、鋭く射抜く視線は向けられていないはずの鈴を震えあがらせるほど。イナトの観察を終えたノアもコクリと頷く。
「最初に報告されたのは百年前ほどで、凶暴化し人々を襲い始めたのは三十年前からです。魔族の力が強くなった所為ではないかと言う方もいらっしゃいますが……正確な事は誰も分かりません」
ノアは続けて、自分たちの所属しているギルドについても簡単に鈴に説明した。
モンスターが凶暴化し始めた頃、王都はその対策としてモンスター討伐ギルドを設立。入団しているメンバーは各地方からの討伐救護申請を受け、王都より出向きモンスターを討伐するそうだ。
入団は誰でも出来るわけではなく、試験に合格した一部の者のみ。毎年行われる入団試験には、数千人の受験者が集まり、その中で合格できる者は大体数十名とかなり難関のようだ。
「村を襲い、人を襲い、家屋を焼く。モンスター達は知恵をつけ、着々と人間の脅威となっているわけです」
平穏な異世界ライフは一体何処へ??人間関係でゴタゴタしていたときと、どっこいどっこいで嫌だと鈴は頭を抱えた。
シンッとなった部屋に、ポンッと手を叩く音が妙に大きく響いた。音を立てた主はノアで、彼はゴソゴソと探るような手つきで鞄の中を漁った。そして、御目当てのものを見つけ取り出す。
「貴女へのお金です」
ノアが探していたのは、町長から貰った麻袋で中から金貨を三枚渡された。それを受け取り、ジッと眺める。これいくら位の価値があるの??と考えた。
「……それではご不満でしょうか!?」
考えている鈴の表情を見て、とたんにノアはオロオロし始める。それに気づき、違います違いますと首をブンブン振った。
「あの、これって金貨??ですよね。変な質問ですが、これで大体何が買えますか??」
どれほどの価値なのかを知るべく、ノアたちから話しを聞く。聞いた事からまとめると、大体銅貨は百円・銀貨は千円・金貨は一万円・大金貨は十万円ほどの価値のようだ。質問が質問だけに、信憑性は低いが、まぁ目安にはなるからいいだろう。
とりあえず、勉強会は終了。それぞれ疲れているだろうと眠る事になった。おやすみなさいと布団に入れば、イナトもモゾモゾと一緒に入ってくる。頭を撫でてやれば、もっとしてくれと手に擦り寄ってきた。可愛いやつめと撫でていると、次第に視界がぼやけ始める。
ゆっくりと心地の良い気分に飲み込まれていく。温かく、柔らかく、……あぁもう駄目だと、鈴は意識を手放した。




