決断
ルーナは、震え、ヒックに掴みかかる。
「何を考えているのよ!あなたは!!悟が居なくなるなんて、許せる訳がないでしょう!?今まで私たちは何をして来てたのよ!!」
あまりにも怖い顔で怒る、ルーナを見て、フォルとロランは、泣き出してしまう。それにつられて悟も泣く。
ルーナの手を払いのけ、ヒックはしゃがみ、フォルとロランの頭を撫でる。
「なぁ、アンタ。この子達を見てどう思う?」
「どうって…」
「それにあの悟って奴も。あれで幸せだと思ってんのか?」
「それは…」
「あんたは、この世界の法を破り、見事に自分の子を、この世界に留めていた。それはまさに、愛の結晶だと俺は思う。そいつはスゲェ事だ。そんじょそこらに転がってねぇよ」
「…。」
「でもな、ルーナ。あの悟って奴は成長すんのか?あの中で?あのままってんじゃないよな?もし、あのままなら、悟ってガキは、お前が死んだ後どうなるんだ?誰かがずっと充電を繰り返して、あいつをずっと子供のまま、あの中に閉じ込めとくのかよ?」
「だから、私は…こうして…」
「お前も人の親ならよ。子の成長を、どんな形でも、迎えてやるのがスジってもんじゃねぇのか?」
ルーナは、ただ泣いていた。
「なぁ、悟。お前、大人になりたいか?そん中だと、ずっとそのままみたいだぜ…」
すると泣いていた悟は、泣きやみ、答える。
「ボクは…大人に、なって…ママや、パパみたいに…なりたい…!」
それを聞いたルーナの涙は止まり、胸を針で刺された様な痛みが走る。
そしてルーナは、ノートPCへと駆け寄り、悟を見つめる。
「ごめんなさい…悟!私は…私は…!」
そしてヒックは、ルーナの傍に行き、背中をさすってやる。
「特別なんだぜ、こんな事。喜べよ…」
ルーナの咽び泣く声は、しばらく続いた。
ルーナが、ひとしきり泣いた後だった。
再び、話し合いが始まる。
ズルワーン、ルーナ夫妻は、ロッシーという存在に、命を与えてあげたいが為に。
悟は大人になる為に。
ルーナは、子に成長を与える為に。
ヒックの提案を受け入れようとしていた。
しかし。ルーナは1つ提案する。
「ズルワーンの、意見を、聞いて居ないわ…こんな大事な話、それにフォルも…」
「そりゃそうかも知れねぇけどよ、時間もねぇぞ。世界の変動が始まるまでに、もうそんな余裕ねぇよ。アイツらが、俺無しでココに来れる事はまずねぇからな…」
「でも…」
「あ、そうだ…忘れてた。後、俺が居なくなった後なんだけどよ。時空フィールドが無くなっちまう。だから、お前ら2人は、分魂しちまうから気をつけろよ」
「え?!」
「え?!」
「なんだって?!」
2人のルーナと、ズルワーンは驚く。
「仕方ねぇだろ。じゃ、そういう事だから、行くぞ!」
「ちょ、ちょっと待ちたまえ!キミ!」
そう言って、ヒックに近寄るズルワーン。
「ルーナが居なくなっては困る!何とかならないのか?!」
「ほんっと!お前らってワガママだよなっ!!」
全身から光を放っていたヒックの身体は、元に戻る。
「んだよ!じゃあ、どうしろってんだよ!」
「そりゃ勿論みんな無事で、尚且つ、ロッシーと、ルーナを二人とも助けて欲しい!」
「無理に決まってんだろ!?んなもん!」
その時、悟のノートPCの傍に居たルーナが立ち上がる。
「分かったわ…私が居なくなればいいのよね?私を次の世界に送ってちょうだい!」
「それでも良いけど、時空をずっとさ迷う事になるぜ。出る方法知らないだろ?あんた。それに…悟の事も忘れちまうし。気づいたら暗闇で1人だぞ?良いのか?」
「よ、良く、無いわね…それは…」
その時、ズルワーンが話に割って入る。
「す、すまない。少し質問なんだが、ロッシーは、君の魂の半分しか与えられないのか?それで、ロッシーはしっかり生きれるのだろうか?君の先程の話では、補充が居るように思うのだが…」
「それをすんのはアンタらだろーが」
「え?」
「親なんだから、魂を少しくらい分けてやれよ。死なねぇ程度に」
「ええ?!た、確かに…それはそうなんだが…」
「それによって、ロッシーとか言うそこに寝てる奴も、魂混合絶対特異点となる。俺のも、もう少し分けてやっから…まぁ、それで何とかなんだろ」
「そ、そんなアバウトな…」
一同が唖然としてると、小さなフォルとロランが口を開く。
「俺達は、何かしなくていいのかぁ?」
「私もお手伝いしたい」
それを見て、ルーナは2人に近づいて行く。
「ありがとうね。じゃぁ、2人にも手伝ってもらおうかな?」
「いいぜ!何でも言ってくれよな!」
「私も~」
「お、おい!てめぇ、こんなガキの魂まで奪おうってんじゃねぇだろうな?!」
「バカね!そんな事する訳ないでしょ?!」
「じゃぁ、何を手伝わすんだよ…」
そう言って、2人の頭を撫でながらルーナは微笑む。
「2人には、悟の入ったヒックと、ロッシーのお友達になって欲しいの。いいかしら?」
「いいよぉ!」
「わかったわ!」
「ありがとうねっ。2人とも。さて、私はどうしようかしら…ねぇ、そんな不思議な事が出来るのなら、2人を1人にする事は出来ないの?」
「は?」
ヒックは、呆れた顔をしている。
「やっぱり、私たちの魂を分け与えてアナタの魂と、それじゃロッシーちゃんには足りない気がするのよ。不安だわ…。だからどうせ、魂がバラバラになるなら、私の魂を半分ロッシーちゃんにあげて欲しいの。ヒック、あなたにもあげてもいいわ…」
「じゃぁ、お前はどうすんだよ」
「どっちにしろ、居なくなるんでしょ?悟っていう存在も消えるなら、私の魂と、悟の魂、それをあなたの中に入れておけばいいじゃない」
「なんだか、ややこしくなってきたな?」
ズルワーンも、頭を抱えている。
しかし、フード姿のルーナも前へ出て来る。
「それなら私の魂の半分を、ロッシーへ!」
「そう言うと思っていたわ…ルーナさん。だから、私たちを1人にして欲しいの。出来ないかしら?私は、ズルワーンは、ミアとフォルを1人の中に収めていると思うの…だから…」
「分かった!じゃぁ、お前ら『ユニリンク』しろ!」
「え、何であなたがそれを知っているのよ…」
「ん?なんでって、この世界全ての共通した合言葉だ。魂と魂を繋ぐ。逆になんでお前がそれを知ってるんだよ…」
「そ、それは…」
「どっちにしろ、俺らはユニリンクで、魂のやり取りをする。じゃ、話は決まりだな。丸く収まって良かったぜ。それなら2人の記憶も多少は残るぜ。万々歳だな!!」
「そうなのね…ズルワーン、ごめんなさい。こんな大事な話を勝手に決めて…」
ルーナは、目を瞑り、何処か遠い所を見ていた。
「まぁ、俺らと一緒にユニリンクすりゃ、時空も超えられる。1周して会いに行ってやれよ。アイツらに、それにこの小さいの2人も、村に届けなきゃなんねぇだろ?悟が入った俺によろしく頼むぜ。あ、あとよ…」
「次から次に出て来るわね…何?」
「悟って名前は、俺の名。ヒックに変わる。お前らも、合体するから、存在が変わっちまう。何か、その、悟って名前を忘れねぇ様な名前を、自分の魂に刻んどけよ」
「え、そんな事、急に言われても…」
「サトルと、ルーナで、サトゥルーナでいいじゃん!」
すぐに口を開いたのは、ロランだった。
みんなは目が点になる。
そして笑った。
時空フィールド内は、分魂しないと言うので、フード姿のルーナはこちらへ来る。
「そんじゃ、行くぞ!」
「ええ!」
「分かりました!」
「おっけー!」
「わかったぁ」
ズルワーンとフォルは、離れた所で見ていた。
カプセルから取り出され、施術台の上に寝かされるロッシー。
そして、ヒック、ノートPCを持ったルーナ、フード姿のルーナと、ロランは、小指を繋ぎ。
「って!なんでお前が入ってんだよ!ちょっとどいてろ…」
そう言ってロランを横にどけ、ルーナと小指を繋ぎ直す。
そして一斉に叫んだ。
『ユニリンク!!!!』
しかし、その時だった。
ルーナの影から、2つの黒い。
影が現れたのは。





