神様
戸惑うギルバートに、また1つ、火の玉が飛んで来る。先程と同じ、紫色をした魂だった。
〖あなた、やっぱり何か変ね…〗
〖そ、そうでしょうか?少し、この世界の事を、その…覚えて無くて…〗
〖そうなのね…魂がくっつく時に、記憶が混ざったのかもね…〗
〖は、はぁ…それで…ここは?〗
〖ここは魂の場。肉体が滅びた生命の、生き場所よ。どう?思い出した?〗
〖い、いえ…全く…〗
〖あら?あなた、動物の魂とでも混ざりあったんじゃない…?それにしては綺麗な色してるけど…〗
〖正直に言います。僕は過去から来ました。もう少し、ここの事を教えてください…〗
〖本当に変わってるわね、あなた…私の名前はナスラ。あなたは?〗
それを聞いたギルバートの火の玉は、一瞬、ボッと燃え上がる。
〖え、あ、いえ、ぼ、僕は…ギルバート、です…〗
〖あら?名前は覚えてるのね。よろしく。ギルバートくん〗
〖は、はい。よろしくお願いします。ナ、ナスラさん…〗
(だ、大丈夫かな…まさか、フォルスじゃないだろうな…)
〖フォルスって何?〗
心の声が漏れている事を、忘れていたギルバートの炎は、少し赤みががった気がした。
〖ねぇ、ギルバートくん。ほんとに何も覚えてないの?〗
〖覚えて無いというか、何と言うか…〗
〖いいわ。じゃ、教えてあげるわね。人は遥か昔、肉体という、魂の器を持っていたのよ。そして、それが朽ち果てると、それまでの記憶は無くなり、また肉体という器に入れられる。そういったサイクルで、生命というものは成り立っていたの。でもね、いつの頃からか、そのサイクルは無くなり、魂はこの世界に残る事になる。それが私たちよ。思い出した?〗
〖なっ?!それじゃ、人は?生命はどうなったのですか?〗
〖それが私たちよ…それと…そろそろね…〗
すると、この白い街の遠くに見える海から、巨大な手が出て来る。それは這いつくばりながら、砂浜へと上がり、立ち上がる。
その姿は魔竜騎そのものだった。
それが何体も出て来る。
〖少し、隠れましょう…飲み込まれたら、終わりよ…〗
そう言って火の玉のナスラは、白い建物の中へと入って行く。
ギルバートは、後を追った。
建物の中から外が見える様になっている。ガラスではなく、モニターの様なものだった。
〖あれを見て、ギルバートくん〗
そう言って、壁一面の画面を見ると、海から上がって来た魔竜騎は、街を徘徊する。すると、一体の魔竜騎は変形し、ドラゴンの様になり、大空を飛び回る。
何十体、何百体もの魔竜騎が空を舞い、魂を捕食して行く。
それを見てギルバートは、驚愕する。
〖な、何なのですか?!あれは!ナスラさん!〗
〖あれは魔竜騎。魂を食い漁る、元は肉体と呼ばれたものよ。今でも、ああやって魂を求めて飛んで来るの。あれに食べられたら、私達は飲み込まれて消化されてしまうの…〗
〖そ、そんな…た、戦わないんですか?〗
〖こんな私たちが、アレと戦える?〗
そう言われてギルバートは、自身を見る。と言っても意識を自分に向けるだけなのだが。
〖魔竜騎は、普段、海の中で眠っているの。夕刻から夜になると、暗くなる。私たち、暗闇で光るから…〗
〖なるほど…理にかなってますね…〗
思わず納得してしまうギルバート。
〖魔竜騎に意思はないのよ。ただ、魂を食べに来るの…肉体という鎖から抜け出せなかった生命の亡霊とも言われているわ…〗
〖女神さま達は、こんな所で僕にどうしろと言っているんだ…〗
〖女神さま…って、なんなの?綺麗な言葉ね…〗
〖え?女神さまを知らないんですか?神様ですよ?〗
〖神様?なんだろう?今度は私が、ギルバートくんに教わる番かな?〗
ギルバートは、外が見えるモニターを見ている。
〖ここへは…来ないんですか?アイツらは…〗
〖んー、たまにぶつかったりするけど、中までは来ないわね。ただ目の前にある魂を追いかけてるだけだと思うの…弱って逃げ遅れた魂を食べるのよ…ほら、私たち、火が弱くなると混ざるじゃない?あれを繰り返すと、不純が混ざりあって、魂として弱くなってしまうから…〗
〖そんな…それでは…〗
〖そうね、いずれ私たちは、存在しなくなるわね…〗
〖ば、馬鹿な!なんて事だ!そんなの間違ってますよ!ナスラさん!〗
〖間違ってるも何も…仕方のない事でしょう?〗
ギルバートは、それ以上、何も言えなかった。
夜が明け、魔竜騎達は海へと帰って行った。
魂は眠らなかった。眠たくなる。というものは無いらしい。それは魂体となったギルバートも同じだった。
1晩中、弱った魂が魔竜騎に捕食されて行くのを、ただ黙って見ているだけだった。
ナスラとギルバートは、外へ出る。
晴れていた。
〖うーん!やっぱり外は良いわね。あ、ギルバートくん。あんまりアチコチ行くと、時空の風に流されるから気をつけてね…〗
その時だった。
白い街には、一際、大きな塔があった。
そして、その頂上の外壁が開き、中から青い巨大な炎が現れる。
その大きさは、ギルバート達の100倍はありそうな程、大きい。
〖な、なんですか?!あれは?!〗
〖あれはね、この世界を作った魂よ。ズルワーンと言うの。何でも遥か昔から存在していて、魔竜騎もあの大きさじゃ食べないみたいなんだけど…そして、いつも私たちを見ているのよ…あ!神様ってズルワーンの事なのかしら?勝手に変な名前で呼ぶと、また変な魂だと思われるわよ?〗
〖ズ、ズルワーン…〗
ギルバートは、この時、何とかすべきは、アレしか無いのだと思った。
〖あ、あの…ズルワーンは、僕らみたいに話が出来るのですか?〗
〖いいえ、ズルワーンは、ただあそこに居るだけよ。遥か古代のシステムを使って、夜は閉まり、朝になると、ああやって出て来るの。近くに行くと、あの大きな炎に吸い込まれてしまうわ…〗
〖そんな…じゃぁ、どうすれば…〗
〖何をどうするの?〗
〖僕は、アイツと話をしなければならないんです。恐らく…〗
〖え?ズルワーンと話すの?!そ、それは無理じゃないかしら…あ!ギルバートくん?!〗
ギルバートは、ナスラの話を聞かず、ズルワーンが居る塔へと、進む。
高く飛ぶに連れて、この白い街の全貌が見えて来る。
白い街は、島の様になっており、辺りは海に囲まれていた。
そして
少し離れた所にも島がある。
しかしそこは、街ではなく。気が生い茂る本当に島の様な場所で、そこにも塔があり、その上には赤い巨大な魔竜騎が座っていた。
ギルバートの後を、ナスラは着いて来ていた。
〖危ないわよ!ギルバートくん!戻って! 〗
ギルバートは止まり、ナスラにあの赤い魔竜騎は何かと聞いた。
〖あれは、魔竜騎の姫、フォルヒックトゥーナよ…〗





