人型
― 未来 ―
島と島の距離は、そう離れては居なかった。
間には海があり、塔と塔が向かい合う様な形となっていた。
魔竜騎の島。そして、魂の島。
〖フォルヒックトゥーナって…あの少女と同じ名前だ…〗
〖あの少女?〗
〖いえ、こちらの事です…〗
2人は、ズルワーンの近くまで来ていた。
その辺まで来ると、何か風の様なものを感じる。
〖なんでしょう?追い風のようなものを感じますね…〗
〖これは風じゃないのよ。ズルワーンが、私たちを吸い込もうとしているの…〗
〖え?そ、そうなんですか?…これは一体、何なんでしょうか?本当に入っては危険なのですか?〗
〖危険かどうかは、分からないけれど…入って出て来た魂なんて聞いた事ないから…あ!ギルバートくん?!〗
ギルバートは、その巨大な青い魂へと向かって、飛んだ。
ナスラが、追いかけて来ている気配は無い。
(良かった…ナスラさん。あなたはそこで、見ていてください…)
そして青い炎の中へと、突っ込むギルバート。
そこは、ただ青い空間が広がっていた。
その中をフワフワと漂うギルバート。
(これは…一体…)
するとギルバートの炎が少しづつ、燃えカスの様なものになって剥がれて行く。
〖な?!〗
少しずつ少しずつ、剥がれ落ちては、空へと昇る。
〖ズルワーン!ズルワーン!居ないのか?!ズルワーン!!僕だ、ギルバートだ!〗
しかし返事は、なかった。
〖くそうっ!〗
ギルバートは、外へ出ようとするが、今度は向かい風が強く、なかなかに出る事が出来なかった。
その時だ。
前方からナスラが、飛んで来る。
〖え?!ナ、ナスラさん!?〗
ナスラの魂は、ギルバートよりも数倍早く、燃えカスが飛んで行っていた。
〖ギ、ギルバート…くん…〗
〖な、なぜ来たんですか?!〗
〖だ、だって…ほっとけないじゃない…〗
〖くそう!ナ、ナスラさんっ!ぼ、僕の中へ入ってください!〗
〖え?!〗
〖一か八かです!早く!〗
そう言って、ナスラとギルバートは、近くへ行き、2つの魂が螺旋を描く。
〖ナスラさん、今です。ユニリンクと叫んでください!行きますよ!?せーのっ!〗
〖え?!あ、はいっ!〗
『ユニリンク!!』
すると2つの魂は輝きだし、魂の姿ではなく、魂のまま、人の形へと変化する。
それは、遥か昔、捨てられた存在。
光る魂の人型となった2人は、手を繋ぎ、青い炎の外へと走り出す。
「い、行けますか?!ナスラさん!」
「え、ええ、でも…これって…」
「話は後で!行きます!」
「は、はい!」
そして2人は、青い炎から飛び出し、塔から飛び降りる。
そのまま下へと落ちて行く2人は、ユニリンクを解除する。
すると、魂の姿へと戻る2人。
〖大丈夫でしたか?!〗
〖あ、は、はい。でも…今のは…〗
〖僕もあまり詳しくないのですが、あなたがチカラを貸してくれたんですよ…〗
〖え?わ、私が…?〗
その時だった。
「お前達!何をした!!」
魂の2人は、上空へと意識を向ける。
すると青く燃えて光るズルワーンが、空から落ちて来ていた。
〖な、なんでズルワーンが?!〗
すると人型魂のズルワーンは、ギルバートとナスラを掴み、そのまま塔の上へと、また飛び上がる。
先程の青い巨大な炎があった場所へと移動する。
しかし巨大な青い炎は、無くなっていた。
「お前達は何をした?!ユニリンクか?!」
〖は、離せ…ぼ、僕は良い…ナスラさんは、関係ないだろう…〗
「貴様とユニリンクした、この魂が関係ない訳ないだろう!そもそも…お前はなんだ?何処から来たんだ…」
〖わ、分かるのか?!僕のことが…?〗
「いや、初対面のはずだが…お前は…なんだ…」
ズルワーンのチカラが弱まり、解放される。
〖ぼ、僕の名前はギルバート…か、過去から来た…〗
「な、なに?!過去からだと?!笑わせる。そんな小さな魂で…何が…」
その時、ズルワーンの目には、ギルバートの中にキラキラとした、欠けたハートの宝石の様なものが見えた。
それは幻の様に、うっすらと揺らめいて消えて行く。
「お前は…一体…」
― 過去 田舎の村 ―
ラケシスは、一同を連れて家へと帰っていた。
「はい、お茶よぉ~!お菓子もあるから食べてん!命の恩人ですものね…」
「ねぇ、このオジサン、男なの?女なの?!」
「こら!フォル、だからそれは止めなさい!」
そう言ってズルワーンは、またフォルの口を押さえる。
「あら!いいのよォ~。お嬢ちゃん、教えたげるわね。オジサンは…男でも女なでもない、スーパーオジオバサンなのよぉ!オホホホホッ」
「…変なの、ズズッ」
フォルは、それを聞いて、興味を失った様にお茶を飲む。
「褒め言葉ねん♪」
何故かラケシスは、嬉しそうにしていた。
「と、ところで、先程の…」
「ああ、匂うって話?別に体臭の事じゃないから気にしないでね。そこのイケメンくんが、人じゃないんじゃないかなぁって思って!」
一同は固まった。
その時だった。
ドアを開けて入って来る者がいた。
それはとても小さく、フォルと同じくらいの年齢だった。
茶髪の少年。すると子供は、ラケシスを見て大きな声で話し出す。
「なぁ!ジーちゃん!フォルとギルバート、明日、森の中に行くんだってぇ!2人してズリぃよなぁ?!俺も行きたいって言ったら、パパとママに反対されるからダメ。とか言って…」
「あぁ、ロランちゃん!ごめんなさいねぇ、あたしのせいだわ…およよ」
その時、ロランは、ギルバートとフォルを見て、固まるのだった。
「な、なんかでっかいギルバートと、フォルが居る!」
すると、ルーナが尋ねる。
「こ、この子、あなたの孫なの?」
そしてロランは、フォルに近づき匂いをかぐ。
「フォルだぁ~、ん?でも、なんか違うな…クンクン。なんか…匂いが…」
「こぉら!ロラン!お客様に失礼な事しないの!ほら…手を洗って、うがいしたら、お茶とお菓子食べなさい」
「はぁい!裏の川で洗って来る!」
そう言ってロランは、家を出て行った。
「ロランが、戻って来る前に言うけど、あの子、私の子じゃ無くて…山で拾ったの…。それに私、この辺じゃ、少し変わり者として迫害されてるのよォ。それにあの子を巻き込んでしまって…」
「たしかに変わってるもんね」
「こ、こら!フォル!」
「でも、あたしは嫌いじゃないわ!」
フォルは、そう言いながら机に強く腕を叩きつけた。
そう言われてラケシスは、優しい笑みでフォルを見る。
「ありがとう、お嬢ちゃん…良かったら、ロランとも仲良くしてあげてね…」
「分かった!」
それを見て、ルーナとズルワーンも微笑む。
机の上にはノートPCがある。
その中の悟も、フォルを見て、
「僕も!」
と叫ぶ。
一同は、笑っていた。
そこへロランが帰って来るが、何故みんなが笑って居るのか理解出来ずに、不思議そうな顔をしている。
そしてもう1人。
部屋の隅の椅子に座り、ヒックも少し難しい顔をしていた。





