未来
倒れている人物を、抱き起こし水を飲ませ、事情を聞くルーナ達。
「だ、大丈夫ですか?」
「ああ…ありがとう…」
倒れていた人物の名は、時空魔学士ラケシス。ルーンシティ、いや、この世界でも有数の魔学士だった。
「ところでよぉ!オッサン!」
「ちょっと、ヒック。あなたの話し方どうにかならないの?」
ルーナは、ヒックを叱る。
「あ?話し方なんてどうでもいいだろうが?」
「そんな事ないわ。話し方1つで、相手へ伝わる気持ちも変わるものよ…?」
「知るかよんなもん!」
「もう…すいません、ラケシスさん。私たち少し困っていまして…」
これまでの経緯をルーナは、ラケシスに話す。
「そ、そんな事が…可能なのかね…この世界で…いや、万物の法則の中で…」
そう言って、フォルをまじまじと眺める。
「おじちゃん!こんにちは、僕は悟って言います。よろしくお願いします!」
ルーナは、ノートPCをラケシスに向けている。
「へぇ、やっぱり、その中にいたんだな…たまげたぜ…」
ルーナは、ヒックからノートPCを隠す。
「…安心しなって、取り敢えず今は、それをどうこうしようって気はねぇ…」
「…ありがとう。あなたを信じるわ…ううん。信じるしかないみたいだし…」
ラケシスは、不思議な顔をしながら一同に問う。
「ところで、何故ワシの所に来たんだ?何が目的だ?」
「そ、そうだな、僕達も知りたい…」
ラケシスとズルワーンは、ヒックの方を見る。
「い、いや…オッサンなら、何とか出来るんじゃねぇかと思って…」
「え?!ワシがか?!この状況をどうしろと言うんだ!」
「な、だいたい!き、君は何なんだ!」
「だから、俺はバランスを守る…」
「それは聞いたわ!もっと詳しく教えてちょうだいっ!あなたは何処から来たのよ?」
「いや、分かんねぇ…」
「え?」
一同は、静まりかえる。
そしてヒックが、口を開いた。
「俺に記憶や、存在する理由なんてない、俺はこの世界のバランスを正すだけのものだ。世界の全てを知っている。ただ何処に居て、誰が作って、いつ生まれたのかは知らねぇ。ただ異常を見つけ排除し、修正する。それだけだ」
「…概念、的な存在って事なのかしら?」
「あんたらの解釈じゃ、そうかもな…。そのPCってやつ。変なシステムが流れて来たら、それを直すプログラム流すんだろ?そんな感じだ」
「なるほど、君は世界のシステムに異常があった際の、修復プログラムという訳か…」
「だからさっきから言ってんだろ!!」
「ふむ…実に興味深い。なるほど。死して尚、この世に存在する、この悟という子。その魂の所在地が不明瞭になってしまった事により、小さなズレが、この世界、全てに大きなズレをもたらす。という事なのだね?」
「そうだ。あと、そっちのちっこい奴も…」
そう言ってヒックは、フォルを見る。
ズルワーンは、フォルの前へと出る。
「だから、何もしねぇって言ってるだろ!!」
ラケシスは、お茶を入れる。
「さ、飲んでくれたまえ…疲れてるだろ。ここで良ければ、解決策が見つかるまで、居てくれてもいいぞ。私も研究が捗る」
「何だ、これ…うめぇな…」
「あなた紅茶も知らないの?」
「普段は、どんな生活をしてるんだい?」
ルーナとズルワーンは、ヒックの反応に驚き、質問する。しかしヒックはまたイライラする。
「だから!知らねぇつってんだろ!!」
「そんなに怒らなくてもいいじゃない。ねぇ?」
「そうだよ、イライラするのは良くないよ?」
「…お前ら、自分たちが根源だって事、忘れんなよ…」
痛い所を突かれた。というような表情をするズルワーンとルーナ。
そして、その日から研究は始まった。
手がかりが無く、何をして良いかも分からない研究だった。
「結局、何をどうすれば悟と世界は繋がるの?」
ルーナは、ヒックに相談する。
「そいつはイレギュラーな存在だ。このままじゃ似たような事が、世界のアチコチで起きる。そして、そのうちにそれが普通なっちまう」
「人が死んでも、この世界に留まってしまうって事?」
「いいんじゃないのかい?悲しみが減るじゃないか…」
「いいか?お前ら。お前らは知らないだろうけど、この世界は魂の繰り返しで成り立っている。もし、そんな事が起こったら、この世界は最終的に魂だけの世界になっちまうだろうが!!頭良いんだろ?!ちょっとは考えろよ!!」
「な…」
一同は、また静まりかえる。
「そ、それじゃぁ…この世界の、人はみんな、魂になって行くというのか?全てが…」
「そうだ…」
「そんなの、死者の世界じゃない!」
「そうなんだよ…だから、そいつを破壊して、元の流れに戻してやる必要がある」
「…そんな、私達は…ただ…」
「…ル、ルーナ…大丈夫かい?」
頭を抱えて倒れそうになるルーナを、ズルワーンが支える。
「あ、あたしは、どうなるの?」
フォルだった。
「あたしは、なんなの?」
「お前は、その中間って言うか…魂の融合体みたいな奴だけどなぁ…とりあえずは保留だ!!」
「ほ、保留…」
ズルワーンは、何故かホッとため息をつく。そしてラケシスは、それを怪訝な顔で見ている。
「いや、しかし…これは参ったな…私は魂の研究はしていない。魔法と、時空の研究者じゃ。この世界以外にも、やはり世界があった事を確認出来ただけでも、私自身の研究は捗る…」
「オッサンを喜ばせる為に来たんじゃねぇんだよ!俺はコイツの必死さを見て、なんとかなるなら、何とかしてやろうと、少し…思っただけだ!!」
「…ありがとう。ヒック。でもあなたは話し方と、声の音量を少し調整する必要があるわね」
「うるせえっ!!」
「うるさいのは、君だよ…」
ヒック以外は、笑っていた。
「あ、そうだ…言い忘れてたけどよ…このズレを直せるのは、1ヶ月だ。それまでに何とかしろよ。じゃなきゃ、俺は迷いなく、そいつをぶっ壊すからな!」
「なんでそれを早く言わないのよ!!ラ、ラケシスさん!!早く!!何とかして!!」
「ラケシスさん!!僕からも頼みます!!お願いします!!」
「私も、お願いするわ…」
ルーナ、ズルワーン。そしてフォルまでもが頭を下げる。
「いや…そう言われても…困ったな…トホホ」
― 虹之町 ―
ロッシーは、困っていた。
「ねぇ…ニアちゃん…私の働いてたコンビニ…潰れちゃうんだってぇ~」
「…そうなんですね。何となく、そんな気はしていました…」
「え?!な、なんで?!」
― 惑星グラン ―
フォルとズルワーンは、森を抜ける。
そこには、ロズウェル一同が居た。
「やはり、いらっしゃいますね…」
「…あ」
白装束のフォルは、ニコやかに、ズルワーンはバツの悪そうな顔をする。
「わ!何か出てきましたよ?!…綺麗な人ですね…博士…」
「そ、そうだな…モイラ…」
「お、俺らを殺しに来たんすかね?」
「ホーラぁ!パルカ怖いんだけどぉ?!」
「大丈夫よ…悪意は、感じないわ…多分…」
その時、白装束の後ろから浮いたフォルとズルワーンが、風船の様に森から出て来る。
「…?わ!わわ!ア、アイツらは!?」
― 空間 ―
女神アルテアは、ギルバートへ語る。
「世界は、今、深刻な事態へと陥っています…ギルバートさん。あなたがここへ来る事も分かっておりました。残念な事ですが…しかし、この世界を守る為に…あなたのチカラが必要となります…」
「アイツらのせいなのですか?女神さま…世界。いいえ、サランを守れるのならば、僕は…」
それを見て、アルテアとゼウスは柔らかく微笑む。
「だからワシらは君を選んだ。人の想い。それこそが、世界を動かす。世界を想う心などではなく、人、1人を想うその心こそが…」
「ギルバートさん。私たちの思惑に、あなたの運命を悪戯に使ってしまう事を、許してくださいますか?」
「…僕は…死して尚、サランちゃんの為に何か出来る事を、誇りに思っています…」
「ありがとう」
「ありがとうございます。ギルバートさん。この償いは致します。どうか、ご無事に帰って来てくださいね。今からあなたには…」
「未来へ、転生してもらう…」





