表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
アースの章
PR
46/129

過去

 


 ― 東京 ―


 鍋を食べ終えたロッシーとニアは、銭湯へと向かっていた。

 ニアが持っている風呂桶には、タオルと石鹸に、小さな黄色いアヒルが入っていた。


「…ロッシー姉様…何…見ているの?…」


 ロッシーは、何故か、空を見上げながら歩いていた。ニアにそう言われ、我に返るロッシー。


「え?!あ、ううん。何でもないの。ただ…」


「…ただ?…」


「何だか、とても…なんて言うか…えーと、んー、な、何て言うかぁ?」


「…着いた」


 気付くと、銭湯の前へと着いていた。


 そして2人は話をやめて、銭湯へと入って行く。



 ― 数分前 グラン 森 ―


 ズルワーンは、青白髪のズルワーンと、フォルの安否を確かめた。

 そのズルワーンの姿は五、六才の子供の姿である。


「よ、良かった…二人とも、息、してる…」


 そう言った次の瞬間、森の茂みが動く音がするのに気付いたズルワーンは、左、右と首をキョロキョロさせながら、1人、ズルワーン達をその場に置いて、木の影に隠れる。


 そして、茂みの中から出てきたのはフォルと顔がそっくりな人物だった。

 しかし服は全く違う物で、全身真っ白な装飾が施してある布で、頭から足まで全体を覆い隠す様に覆い、顔だけが見える様な服を着ていた。


 そして白装束のフォルは、ズルワーン達に近づき、青白髪のズルワーンが抱いているフォルの顔を見て、少し驚いた顔をする。


 そしてズルワーンが隠れている、木の方を向いて


「出て来ても大丈夫ですよ。私はアナタ方の敵ではありませんから」


 と言う。


 ズルワーンは、木の影から顔だけを出して、白装束のフォルを眺めていた。


 白装束のフォルは、穏やかな顔で微笑み、ズルワーンへと近づこうとすると、ズルワーンは木の影に顔を引っ込めてしまう。

 そして白装束のフォルが、動いていないと感じると、また顔を出す。


 それを数回、繰り返している内に、フォルが口に手を当てて、笑い出す。


「な、なんなのですか、プッ…アナタは…フフフッ」


 笑うのを我慢しているが、盛れてしまっている。目には涙粒が溢れる。


 それを見たズルワーンは、木の影から出て来てこう言う。


「あなたフォルヒックトゥーナって言いますよね?」


「…え?!」


 突然の言葉に驚いて、笑いが一瞬にして止まる。


 2人はただ、何も言わず見つめ合っていた。



 ― 9年前 ドイツ ―


 ズルワーンは、大学で細胞の研究をしていた。細胞を培養し、皮膚や、身体の一部を再生する研究をしていたのだ。


 学生ではあったが、その知識は教授を越えていた。


 ズルワーンはいつも、家から持って来たサンドイッチを食べながら、中庭でパソコンを触り、本を読むのが日課だった。


 そんな、ある日の事だった。


 いつもの中庭に、見慣れない1人の女性が居た。背中の中程まである黒い髪、白い肌に、黒縁メガネ。

 顔はとても美しく、聡明で、本を片手にサンドイッチを食べている。


 その可憐な見た目とは裏腹に、サンドイッチを歯で、引きちぎるように食べている姿が、ズルワーンからはとてもアンバランスに見えた。


 それから数日、中庭に行くと必ず、その人は居た。


「今日もまた、本にサンドイッチか…」


 独り言の筈だった。

 ズルワーンにとっては。


「なんか文句あるの?いつも私の事ジロジロ見てるけど…」


 その人は振り向き、ズルワーンへと怪訝そうな顔を向けていた。


「っえ!い、いや…その…ぼ、僕はズルワーン。よろしく…アハハ…」


「答えになってないでしょーが。私はルーナよ。あなた、いつも何、読んでるの?あとそのパソコンも見せて」


 それから2人は昼になると、中庭で読んだ本の事、学んで来た事、世間話などをする様になっていた。


 そんなある日の事だった。


「あ、あのさ、今度、ぼ、僕と…その…え、映画でも行かない?」


「…」


「…え?な、なんか言ってよ」


「いや、映画とか観る趣味あったんだ、と思って意外だったの」


「そ、そりゃ僕だって映画くらい観るさ!」


 そして2人は、外で会う機会を増やしていった。


 半年が過ぎた頃だった。


「ねぇ、私たちって、恋人かしら?」


 突然の質問に、ズルワーンは固まった。


「…」


「なんか言いなさいよ」


「え、えーと、、、君が、その気なら…僕は、喜んで…」


 するとルーナは、大声を上げて笑っていた。

 それからズルワーンの手に、自分の手を繋ぎ、ズルワーンを引っ張った。


「行きましょ!私の恋人さん」


「ちょ、そんなに引っ張らないでよ!あと、その恋人さんって変じゃないかなぁ?」


 2人の交際は順調であった。

 そして、出会いから1年が過ぎた頃だった。


 彼女が現れたのだ。

 フォルヒックトゥーナ、その人である。

 彼女はドイツでも1、2を争う、人気バンドのボーカルを務めていた。


 ズルワーンは、そういった類いの曲など普段聴かないのだが、ルーナと行った、映画の主題歌に使われていたのを期に、そのバンドのファンとなっていた。


 そして

 2人の出会いは、偶然と突然が重なり合い、その物語が始まった。


「ルーナ、遅いな…」


 ルーナを駅で待つ、ズルワーン。

 もう、かれこれ15分は待っていた。

 そこへルーナから、メールが送られて来る。


『ごめんなさい、急に飼ってる猫の調子が悪くなったの。今、病院なんだけど、ごめんなさい、今日行けそうにない』


 ズルワーンは、返信をする。


『大丈夫かい?僕もそっちへ行こうか?』


『ううん、大丈夫よ。私も突然の事で慌ててしまって。連絡遅れてごめんなさいね』


『本当に大丈夫?こんな時こそ、僕を頼りにしてくれてもいいんだよ?』


『あなた、猫を飼ってた事あるの?』


『い、いや、無いけど。そういう事じゃなくて、僕が必要だよね?って事さ』


『ごめんなさい、あなたが何を言ってるのか分からないわ。また落ち着いたら連絡するから』


『そんな言い方ないんじゃないか?僕は君の事を思って言ってるだよ?』


『私の事を思ってるなら今は関わらないでもらいたいわ…』


 ズルワーンは、その後もメールを送るが、ルーナからの返事は、その日、1度も帰って来なかった。


 ズルワーンにとって、こんな気持ちは初めての事で、その気持ちを1人で持て余していた。


 ルーナと会えないのならと、家に帰り、気晴らしに音楽をかけ、本を読んでいた。気分も少し落ち着き、小腹が空いたのでキッチンへ行く。

 その途中にあるCDデッキへ寄り道をし、音楽を変えようとCDを物色する。


 CDを数枚、手に取り選んでいる時だった。その中の1枚が、手から零れ落ちる。あまり聴かないバンドのCDだった。


「ルーナと一緒に行った、映画の曲だ…」


 ズルワーンは、そのCDをデッキに入れ再生ボタンを押した。


 そしてルーナにメールを送る。


『さっきはごめん。あと何度もメール送った事も。大事な猫ちゃんだって、いつも話してたもんね。心配過ぎて、心が荒れてたのに、あんな風な言い方してごめん。また君の気持ちが落ち着いたら、連絡してよ』


「ルーナの事だし。多分しばらくは連絡、来ないだろうな」


 そう言いながらも、少し微笑むズルワーンは、気を取り直し、音楽にノリながらキッチンへと向かう。


 サンドイッチを作ろうとするが、冷蔵庫の中がカラッポなのに気付く。


(そうだ、今日はルーナと外食するはずだったから、帰りに買って帰ろうと思ってたんだった…)


 ズルワーンは、買い物へ行く事にした。

 それは近所で、歩いて5分。


 特に着替える事無く、Tシャツにジーンズというラフな格好で、部屋のドアを開けた。


 すると隣の部屋のドアも、同時に開き、中から帽子を深々と被った、サングラスをかけた、女性と思わしき怪しい人物が現れた。


「あ、こんにちは…」


 と、条件反射的に言葉を出したが、その女らしき人物は、何も言わずに階段を降りて行った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ