みんな
― ともしび荘 ―
六畳一間の畳部屋に、テレビと布団、ちゃぶ台に少しの棚が置かれた部屋。
そこにロッシーとニアは、2人で住んでいる。トイレはあるが、風呂は無い。
「はぁい、ニアちゃん、出来たわよぉ~。ロッシーお姉様特製ブタ肉のお鍋よぉ」
そう言いながら、ちゃぶ台に置いたコンロの上に、煮えた鍋を置く。
「…わぁい」
と嬉しそうな顔をすると、ニアは食卓に食器を運ぶのを手伝う。
そして鍋をつつく2人。
「…ロッシー姉様…美味しいです…」
それを聞くとロッシーは、胸を張り、両手を腰に持って来るポーズをとる。
「そりゃそうよ!1人で住んでた時だって、面倒臭いから鍋ばっかりだったしぃ!それに、みんな美味しいって言って…」
突然ロッシーは、話すのを止める。
「…ロッシー姉様?」
「私…1人で住んでたのかしら…みんなって…誰…?」
窓の外には、ビルとビルの間から、赤いタワーが見えていた。
― 同時刻 時空間 ―
ズルワーンが、張っている魔法壁の上で魔竜騎ヒックとなった、ロランとフォルは、寝そべっていた。
(い、良いかい?フォル。手だけ、手だけに集中しよう!)
(わ、分かってるわ…く、首の事だけは考えないでよね…)
(りょ…了解。まず手だけを動かして上半身をおこす。そして足だけに集中して立ち上がり、ドラゴン形態になって、時空に無理矢理にでも穴か…最悪、ヒビを入れよう!)
(分かったわ…行くわよ!)
(せーの!)(せーの!)
すると魔竜騎ヒックは、右手を肘から後方へと上げる。それから魔法壁に、勢いよくパンチする。
「「ええええええ!!!」」
驚き過ぎた2人の声が、時空間へと吸い込まれて行く。
そのパンチは止まらず、しばらく続く。
「くっ、フォル!まだか?!私の魔法壁では、魔竜騎の攻撃に耐えれそうにない…魔導スクエアを…早くこちらに…」
「は、はい…で、ですが…ズルワーン様…時空間での…魔導スクエアが…思った以上に…」
フォルのオッドアイが点滅している。
その点滅の速さが段々と、速くなっている。
「このままではズルワーンの口に入る事も出来ない…フ、フォル…耐えてくれ…」
「少し…無理をします…お許しを…」
そう言うと、フォルの点滅していた目が、強い光を放つ。そして魔導スクエアの半分は、時空間の闇へと落ちて行く。
そして残りの魔導スクエアの光が、赤くなり、速度を上げて魔竜騎ヒックへと向かっている。
(ま、まずいわよ!あの四角いのが、こっちに来る!)
(仕方ない!このままドラゴン形態へ移行しよう!)
(あ、あのさ…)
(な、なに?)
(ド、ドラゴン形態になる感覚、分かんないんだけど…)
(うわ!あの四角いのが来る!とりあえずやって!!)
(せーの!)(え!ちょ!)
すると魔竜騎ヒックは、両手を魔法壁に着け、両足を後方へ上げる。
そして、そのまま両膝を、魔法壁に叩きつけた。
魔法壁は砕ける。
それを悟ったズルワーンは、瞬時に魔竜騎ヒックの両膝を避けた。
そして魔導スクエアを操作するフォルは、それに驚き振り返る。そして魔竜騎が、上から落ちて来ている事に気を取られ、魔導スクエアの制御が緩む。
制御を失った魔導スクエアの大群が、フォルと、魔竜騎ヒックを攫って行く。
すると直ぐに魔導スクエアの光が消え、前方から順に時空間の闇へと落ちて行く。
魔竜騎ヒックも、その一部だ。
ズルワーンのフォルは、気絶していた。
ズルワーンの顔は、青白くなり、魔竜騎ズルワーンと、バイパスを行う。
そしてフォルを探そうとするが、魔導スクエアに阻まれ、見つける事が出来ない。
魔竜騎ヒックは、なんとかドラゴン形態になるも、思った方向へと進まず、スピードロズウェルへと突進して行く。
フォルをなんとか見つけ出したズルワーンだったが、魔竜騎ヒックが魔導スクエアに当たった破片が、頭部に当たる。
頭から血を流しながらも、フォルを抱きかかえ、魔竜騎ズルワーンへ命令する。
「時空間に穴を開けろ!それを僕がこじ開ける!」
「わ、分かったよ…ズルワーン、フォル、大丈夫かな?」
「心配ない、さぁ、早く!」
ズルワーンの顔は、ほんの少しの間、優しい笑顔となっていたが、直ぐに険しい顔となる。
魔竜騎ズルワーンは、何もない時空間へ衝突して行く。すると、そこにはヒビが入り、指の先くらいの穴が開く。
そこへ青白髪のズルワーンは、拳を作り、それを叩きつける。すると、そこへ時空間の、人間1人が通れる程の穴が開く。
そこへ魔竜騎ズルワーンは、突撃する。
時空の穴は広くビビ割れて行き、ズルワーン達は光の外へと消えて行く。
スピードロズウェルへ突進した、魔竜騎ヒックは艦橋手前で、変身を解いた。
ヒックはスピードロズウェルへ落下するが、モイラがハッチを開けて中へと入れる。
「スピードロズウェル!時空の穴に向けて全速前進!!」
「パルカ突撃しまーす!」
スピードロズウェルは、魔竜騎ズルワーンが
開けた小さな穴へ向かって突撃する。
その穴にロズウェルの先端がぶつかると、周りの時空間がひび割れて行き、大きな時空の裂け目となり、スピードロズウェルを吸い込んで行く。
艦長は思っていた。
(短い旅だった。しかし、ここからが正念場だな…)
と。
故郷へと帰って来た、ロズウェルクルー達は歓声を上げて喜んでいた。
1名を覗いて…。
ホーラが呟く。
「艦のエネルギー、切れました…」
すると惑星グランの空を飛んでいたと言うよりは、勢いの推進力で進んでいたロズウェルは、その勢いを落とし、後方へ傾いて行く。
そして、そのまま重力に逆らえず落ちて行く。
下は、湖だった。
ドラゴン形態の魔竜騎ズルワーンの背に乗り、グランへと戻って来たズルワーン達だったが…森へと落ちて行く途中に、頭へのダメージが大きかったのか、青白髪のズルワーンが気を失ってしまう。
すると魔竜騎ズルワーンは消え、3人は森の中へと落ちて行ってしまう。
青白髪のズルワーンは、気を失うもフォルを抱きかかえたままだった。
そして薄れ行く意識の中、抱きかかえているフォルの顔を見つめ…
思い出が、走馬灯の様に…
蘇っていた。
《フォル…僕は…君を…》
ルーナとの出会いは、ズルワーンが20歳の時であった。
《あれからもう、8年も経とうというのか…》
その1年後、ズルワーンは、フォルヒックトゥーナという、運命の女性と出会う。
《君を絶対に、死なせはしない…》
森の中へと落ちた、ズルワーン達3人は、何とか意識がある様だった。
それを確認したのは、小さな子供の姿をしたズルワーンと。
魔導ノ君人フォルヒックトゥーナ
その人だった。





