夏の虫
ユニリンク後、ギルバートとサランの記憶、この世界、全てから。
リュウローと、サランの存在は、消えていた。
この魔竜騎が、どんな想いから造られたのか。この2体の魔竜騎、そして2人の操縦者。
ここに、どんな繋がりがあり。
ここまでの道のりが、どんなものだったのか。
その全ては、書き換えられる。
世界は2つを選べない。
選ばせては、もらえない。
ギルバートと、サランは、手を繋ぎ、青い四角い物体が、密集している箇所へ、繋いだ方の手を向ける。
すると後方に居た、魔竜騎2体は、ドラゴン形態へと変化し、時空の上部へと飛翔する。
魔竜騎が口を開くと、それぞれに、ピンクの光と、ゴールドの光を蓄える。
そして、その蓄えた光を、青い四角い物体の密集地へと、2体は一斉に放射する。
サランの魔竜騎は、太いピンクに光る光線を吐き。
ギルバートの魔竜騎は、細いゴールドの光線を何本も、色々な方向へと、シャワーの様に飛ばしていた。
そして青い四角い物体は、黒い闇の中で、激しく爆発していく。
しかし数の多さから、処理がしきれず、超振動エアーフィールドを突き破り、数体、中へと進入して来る。
それをギルバートとサランは、パンチとキックで、破壊して行く。
空にはドラゴン形態の魔竜騎が、光を放ちながら舞い踊り、艦の大地では、ギルバートとサランが、接触ギリギリで、光を放つ手と足で、破壊する。
という攻防が続いていた。
「き、きりがない…」
「ちょ、マヂキツい…」
その時だった。
壊し損ねた、一体の四角い物体が、ロズウェルβの外壁へと、衝突してしまった。
しかし、それは爆発する訳でも無く、ただそこに、接触しているだけなのだった。
2人は顔を見合わせ、他の物体を迎撃しつつ、それを観察する事にした。
そして…ギルバートが、その四角い物体に、背を向けた時だった。
その四角い物体の色が、赤に変化し、その角から細い、赤い光線を射出して来た。
そして上に居る、全ての四角い物体の色も赤に変化して行く。
そして、その全てから赤く細い光線が、ギルバートへ向かい、降り注ぐ。
サランは、それに気付き、ギルバートへと手を伸ばす。
「ギルバート…ッ…!」
ギルバート本人も、その赤い光線の束に気付くが、サランを見つめる。
そして次の瞬間、ギルバートの魔竜騎が、口にサランを入れる様に飛んで来る。
サランの視界から、ギルバートの姿が無くなり、暗い、魔竜騎の口だけが視界を覆う。
「…サラン…ちゃん…」
赤い光線の束が、ギルバートの姿を見えなくする。
その赤い光が、消失すると、そこに、ギルバートの姿は。
無かった。
「ギルバァァァァァァァァァトッ!!!!!」
ギルバートの魔竜騎の口部分から、身を乗り出し、その一部始終を見ていたサランの、視界には何も見えなくなっていた。
時空の流れに、その涙も流されて行く。
そしてギルバートの魔竜騎の存在も、薄れ行く。
サランは飛ぶことも出来ずに、ロズウェルβへと落下して行く。
そこへ何故か、サランの魔竜騎が、サランの操作とは関係無く、受け止める様に飛んで来る。
そして、サランの魔竜騎は、そのまま時空間に穴を開けて、何処かへ
飛び立ってしまったのだった。
そして…四角い物体は光を失い、ロズウェルβへと落下して来る。
そして超振動エアーフィールドを抜けて来た物体は、ロズウェルβに接触すると、爆発して行く。
「か、艦長!このままじゃ!」
モイラが艦の損傷具合を確認しつつ、ラケシス艦長へと報告をする。
「…ここまでか…」
艦橋に居た5人は、時空の狭間で、命が終わるのだと。気持ちを切り替えていた。
そこへ
「何、諦めてんだ!!前へ進めよ!!光は見えてんだろ!!!」
気絶していたヒックが、目を覚まし、艦橋へ来て叫ぶ。
「ここで死ぬくらいなら!絶対にあのズルワーンの後ろに突っ込め!!」
叫ぶヒックに、ホーラが口を開く。
「でも、もう、時空壁は閉じてしまっているわ…光なんて、何処にも…」
パルカも続く。
「そうだよぉヒックくん!パルカ達、ここでおしまいなんだぁ~…」
それを聞いたヒックは、少し沈黙する。
「ネクストブライトは撃てるか?」
沈黙していたヒックは、それを艦長へと向けて質問する。
「完全じゃ無くて良い、ほんの少しでも撃てれば…」
クロートーが答える。
「現段階では、エネルギー残量、走行エネルギー僅か、凝縮放射炉…は正常です。艦長!」
一同は、艦長を見つめる。
物体の落下爆発からか、ロズウェルβが片方へと傾く。
艦橋も揺れて、立っているヒックは、よろめいて転ぶ。
超振動エアーフィールドは、その出力が下がり始める。
「艦長!」「艦長!」「艦長!」「艦長!」
皆の視線を、一斉に受け、困惑する艦長だったが。
唇の両端が、上へと上がる。
そして
「よおぉぉぉぉぉぉぉぉぉしっ!!みんなっ!帰るわよぉ!!!私たちの世界へぇぇぇぇぇっ!!!!」
「きゃー!」「そう来なくちゃ!」
「ふふ…」「パルカ!行っきまーす!!」
「ロズウェルβ!!全速前進!!何としても、時空の壁を突き破り!我々の世界へと戻るのだ!!!」
「そうだ!お前らの世界愛を、アイツにぶつけろぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
ロズウェルβの後方部分が、パージされ、その全長は半分程になって行く。
そしてタイムライト凝縮放射出力部が、3個から大型の1つとなる。
「艦長、ロズウェルβ、後方パージ完了。出力特化型、スピードロズウェルへと移行、完了しました。続けて、前方ハッチ開きながら前進を始めます!」
「エネルギー充填、不十分!走行エネルギー、不十分!タイムライト凝縮放射炉、良好!!」
「目的座標、あの眼鏡の男の後ろ側…母星…グラン!!」
「真っ直ぐだから、もう舵取らないけど、レバーは押して!トリガーもパルカが引きよぉ!!」
モイラが、艦長を見る。
「みんなでぇ!!!突っ込むわよぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「「「「了解!!!!」」」」
今までとは段違いのスピードで、前方へ爆進して行く、スピードロズウェル。
その間も、前方のハッチが開き、巨大なクリスタルが姿を現す。
前方へは黒い丸い板が放射されており、その距離は前方へ進んでも変わる事は無い。
四角い物体が、ズルワーンの前方へ集まり壁を作ろうと集まって来ている。
が、スピードロズウェルの方が早い。全部戻って来る前に、その物体の壁へと突っ込む。
前方の縮小板と、四角い物体が接触すると爆発が起こる。
縮小板は、爆発共に前方より無くなって行く。しかし、それが壁に穴を開けるドリルの役割となり、少しずつその中心へと穴を開けて行く。
「もう絶対に帰れると信じて、超振動エアーフィールドに残りエネルギーの半分を回してちょうだい!!そして一瞬でも、あの男が見えたらパルカ!私の命令が無くてもいいから、ネクストブライトを緊急発射よ!クロートー、出力調整お願いね!ホーラ、タイミングをパルカに、後は他に敵影が無いかも確認してて!それとモイラ…」
「は、はい!艦長!!」
「今まで、ありがとうね…」
その時、四角い物体の壁の向こうに、ズルワーンの姿が見える。
「パルカッ!」
「了解!ホーラ!ネクストブライト緊急発射!!!」
そう言うと、スピードロズウェルの前方のクリスタル部分が、その暗闇に大きな希望の光を、輝かせる。
その光は前進し、ズルワーン達の目前まで迫る。
その時だった。
フォルの目が、左右に赤と青に輝くと、
ドラゴン形態の、魔竜騎ズルワーン後方の見慣れない装置が起動する。
その装置は3つに分裂し、三体の小型ロボットへと変形する。それは魔竜騎ズルワーンの前方へ、三角形のシールドらしき物を展開した。
そして、そのシールドに当たると、ネクストブライトは、散布して、その威力を失って行く。そのまま前進をし続けていたスピードロズウェルは、クリスタル部分から、三体のロボットが出すバリアに衝突する。
けれど、そこでスピードロズウェルの前進が止まる。
たった三体の、小さなロボットが出す、バリアに、スピードロズウェルは止められているのだ。
「艦長!全く前進しません!!」
「このままではエネルギーが!」
「後方から、四角い物体が多数!」
「もうレバーも!トリガーも!動かしても何も起きないよぉ!!」
全員が艦長を見つめて報告する中。
艦長だけは、黙って前を見ていた。
と言うよりも、前方部を映すモニターに、目が点だった。
それを、他の、みんなも感じ取り、モニターを見る。
唖然とした。
何故なら。
「うっおおおおおおおおおおおっ!!!!」
スピードロズウェルの上を、ズルワーンに向かって、ヒックが全速力で走っていたからだ。その横には赤い小さな光が、並走している。
「こんのっ!!バカ青白髪眼鏡ぇ!!!!!!」
そう言ってヒックは、スピードロズウェルを踏みしめて、飛んだ。
そして三体のロボットが、展開するバリアを飛び越えて、魔竜騎ズルワーンの上部へダイブする。
フォルは驚くが、何やらいつもより動きが鈍い。
代わりにズルワーンが、ズルワーン上部に魔法壁を張る。
「待ってたぜ、それを…」
ヒックは魔法壁に頭から、つっ込む。
そして頭を強打し、魔法壁の上で気を失う。
「ヒック…お前は…飛んで火に入る夏の虫とは、この事か…。フォル、もういいぞ、疲れたろ…」
ズルワーンが、魔法壁の上で、気を失うヒックを見つめながら、フォルの肩に手を置く。
ヒックの身体が、青く燃え出す。
そこへ赤い光が突撃する。
「…その…夏の虫が燃えて復活したら…」
「それは、もう、虫じゃないんじゃ、ないかしら、ね?」
ズルワーンが、驚く間も無く、2人は小指を絡め、叫んだ。
「ユニリンク!!!」
と。





