結成
ヒックは、アイスティーを啜っていた。
「う、うめぇ!なんだコレ!」
喉が乾いていた事を差し引いても、トップクラスの美味しさだった。
ラフィールの紅茶。
(艦長が興奮すんのも無理ないぜ…へへ)
そしてヒックは、ラケシス艦長に(紅茶、最高だな…)とアイコンタクトを送る。ラケシス艦長は、それをウインクで返した。
そんなヒックの周りには、まだ全員がへばりついていた。
「あの…それで…先程の…」
艦長とヒックの間に、何か良からぬ絆が生まれているのでは…と心配しつつ、話の続きが気になるモイラが、ヒックへと語りかける。
「あ、わ、悪ぃ…。お、俺たちの事か…そ、そうだな…ど、どっから話そうかな…えーと…」
アホなヒックを見かねて、イライラしたギルバートは口火を切る。
「早く話さないか!分かった!では、こちらからの、質問形式にさせて貰おう!!」
「君は僕達の世界の人間かい?!」
「いや、違う。俺は、んー、俺自身は違う世界から来た。ちなみに俺の中には、いち…にい…さん…しー…あ、3かな?ん?4?くらいの魂が混雑してるんだ」
(???)
一同は、頭にクエスチョンマークが浮かんだが、とりあえず続ける様、ギルバートに視線を送る。
「何故、君はそんなに、時空の事に詳しいんだい?」
「そりゃ、俺が時空魔竜騎の魂を持ってて、色んな世界へ行ったし、サトゥルーナとか、色んな奴に会って来たからだよ!」
(時空魔竜騎…)
一同はまたも、頭にクエスチョンマークが浮かんだが、とりあえず続ける様、ギルバートに視線を送る。
「うんうん。それでねぇ…ヒック君~、あのぉ、髪の長い女性はなんなのかなぁ?」
ギルバートの口調が、だんだん子供と話す様な口調に変わってきている。
「あ、サトゥルーナの事ね。俺もビックリしたんだよな。まさか、この世界でまた出て来るなんて、それも急に。まぁ、最初も急に出て来たけど…なんか色々あったみたいだぜ!サトゥルーナも!」
(色々…)
一同の顔は、だんだんと変わりつつあるが、とりあえず続ける様、ギルバートに視線を送る。
「じゃ、じゃあ…最後の質問だよぉ?いいかなぁ?ちゃんと答えてねぇ~?あの~、青い白髪のメガネを掛けたぁ、男性は誰ですかぁ?」
ギルバートも限界ギリギリだ。
「アイツな。アイツはズルワーンっていう奴で、俺たちを追いかけ回してんだ。俺の持ってる魔竜騎の魂を狙ってて、それと奴の持ってる魔竜騎の魂を1つにすると、9つの世界も1つになって、また最初からやり直せるんだとよ。でも、それをすると、それをした世界、それをした自分だけが、最初からになって、後の全ては無くなるんだ。ってサトゥルーナが言ってた。だから絶対に渡しちゃダメよ!って、めっちゃ怖い顔で言ってたな…」
イライラマックスだった一同の顔は、鳩が豆鉄砲を食らった様な顔になり、全員でヒックに詰め寄る。
「な、なんでそれを先に言わないんだ!」
「え?それホントの話?!」
「ふふ、その話を詳しく聞かせてもらえるかしら?」
「おいっ!お前は何なんだよ!」
「時空魔竜騎とは何なのかね!」
「ま、マヂ卍~!」
「そのメガネかけた人、パルカ知らな~い!」
突然、興奮し出す全員の圧に押されて、ヒックは後頭部から、カーペットへひっくり返る。痛さよりも、まだ迫って来る全員に、イライラしたヒックが叫んだ。
「うるせええええええええええええっ!!!!!」
一同は静かになり。
サランがまた、ちょこんと、ヒックをカーペットの上に置いた。
「す、すまなかった…。と、突然ちゃんとした説明が来たものだから、僕ともあろう者が、興奮してしまった」
他の皆も謝っている。
「よく信じれるな、こんな話」
一同の顔は、一瞬にして怒りの顔になり、またヒックへと詰め寄る。
そしてヒックはまた、後頭部から地面に突っ込む。
しかし今度はカーペットでは無く、カーペットが無い、ロズウェルβの硬い床だった。
ヒックは後頭部を強打した事により、また気絶する。
皆は心配し、それぞれに声を掛ける。
その時だった。
突然ヒックの身体が青く燃え始める。
そしてロランが出て来た。
ギルバートとサランは、トラウマが蘇り無表情になり、ロズウェルβ一同は部屋の片隅へ猛ダッシュして、固まっている。
「な、なんなの?!ヒック君死んだの?!」
「フフ…幽体離脱を、この目で確認出来る日が来るとはね…」
「パ、パルカ怖いよぉ~、ホーラァ!」
「お、俺、ホラーはダメなんす!」
「キ、キャーーーーッ!!!」
ラケシス艦長が、1番乙女していた。
「あ、あの…す、すいません。驚かせて…」
一同は叫ぶ。
「しゃ、喋ったああああああああああっ!!!」
そこへギルバートが、一同に声を掛ける。
「あ、あの皆さん、落ち着いて…彼は無害です。見た目ちょっとアレですけど…」
「み、見た目アレとはなんですか!僕だって好きでこんな…。そ、それは置いといて。皆さん!大事な話があります!アホヒックが起きる前に話してしまいたい」
それを聞いた一同は、所定の位置に座り直す。
ファンシーな部屋に、気絶したヒックが燃えて、青白い少年が立っているという、シュールさに皆は馴染めないでいた。
「ま、まぁ…普通の反応ですよね…それが。では、率直に言います!早く次の世界へ、このロズウェルβを戻してください!先回りされてはズルワーン達に遅れをとります!それとヒックの腕を直す技術は、お持ちで無いですか?どんな形でも結構です。片手でも。いえ、小指と認識出来るモノがあれば結構なんです。恐らく、この科学が発達した世界にあるはずだと思って、ロッシーに探す様に言ったんですけど、ニアが何処かに連れて行ってしまってて…あなた達だけが頼りなんです!お願いします!!」
青い幽霊少年に、頭を下げられ、困惑する一同。
「私は生物学者では無いので、あまり腕を戻す技術は知らないんだが…」
「僕は、機兵の設計なら出来るんだけど、あれを小型にまで縮小するのは、なかなか…費用も凄いと思う…」
他の皆も、困った顔をする。
「義手で、良いなら…私達の世界に帰れば作れると思うけど…連邦が…」
モイラは神妙な顔をしている。
「あのグレイって奴…まさか、それを見越して…」
ロランも何か考えている様子で、各々に何かを思っていて、誰も話さず部屋は静まり返っていた。
その時だった、赤い小さな光が全員の目の前を通り過ぎて行く。
それを目で追うと、ロランの青い炎の中へと入って行く。
「アンタたち!何を躊躇してんのよ!!」
その赤い光は、ロランの炎に触れると、青い少女へと姿を変える。
一同は驚愕したが、その言葉に胸を打たれた。
「いい?!このままの状態だと、この寝てるアホから直ぐに魂抜かれて、世界が無くなるのよ?!さっきの話聞いて無かったの?!」
(そうだった…)
全員、そう思っていた。
「それにそこの白いバカップル!いえ!夫婦!あんた達にはチカラがあるのよ!大丈夫よ!あと、そこの5人も!こんな船でここまで来れたのに、これからどうするつもりなのよ!?良い?絶対にロランの言う事を聞いて、その通りにしてよね!!」
そう言うと、ロランに抱きつこうとするフォルだったが、またロランの身体ごと、すり抜けてしまい涙目になる。
「そうだな…我々にこそ、その役目は相応しい…こうなったのも私の責任なのだ…」
ラケシス艦長が立ち上がり、皆に言う。
「巻き込んでしまった事を、ここに詫びよう…」
そう言って、深々と頭を下げる。
「博士!私は貴方を信じて着いて来ました!止めてください!」
モイラが立ち上がり、艦長の傍に寄り添う。
「そうですよ、艦長…」
「フフ、そうね…」
「ルンルン♪」
他のクルーも、艦長に寄り添う。
「みんな…」
そしてギルバートとサランも、ロズウェルβクルー達へと近づく。
「僕達は強いです!きっと大丈夫ですよ!貴方達をお守りしましょう!」
「そ!マヂチョベリグ~な感じで!卍パワーってやつ!」
ロランとフォルは、顔を合わせて笑っている。
「皆さん!ありがとうございます!」
「困ったら、このアホヒックを気絶させれば私達がチカラになるから!」
「そ、それはちょっと…それに僕達あの調子だったし…」
「そ、そうね…。そ、相談役にはなるから!!」
「あ、ヒック…が…目を…」
ヒックは、後頭部の鈍い痛みと共に、目を覚ます。
そして
何やら盛り上がっている一同を見て。
頭にクエスチョンマークが飛んだ。





