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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
アースの章
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42/129

漂流

 



 全員が、戦艦ロズウェルβの艦橋に集まっていた。


 ロズウェルβの前部が、垂直に割れ開いて行く。その中からは、巨大なクリスタルの様な装置が現れる。


 巨大なクリスタルが、細かな光を放出し出す。そして一際大きな光を放出すると、巨大なクリスタルから黒い円形の板の様なモノが、何枚も前方へ放射される。


 モイラが艦長へと伝える。


「準備、整いました!」


 ホーラが続く。


「マルハチ、フタマル!全方位に敵影無し、全艦装備、設備、異常無し!」


 クロートーが叫ぶ。


「タイムライト凝縮放射炉、充填完了!行けます!!」


 そして、艦長の声が艦橋に響き渡る。


「時空層間移動戦艦ロズウェルβ、我らが母星グランへ向けて…発進!!」


「了解でーす」


 中央に設置された舵横のレバーを、前方へ全力で進めるパルカ。

 続けてラケシス艦長が叫ぶ。


「ロズウェルβ、主砲、断時空破壊光線ネクストブライト、発射!!!」


 舵を取る為の船輪が、中央から割れると中からは、トリガーの付いたレバーが出現する。


「ネクストブライト!発射しますっ!!」


 パルカが、トリガーを引くと、ロズウェルβの巨大なクリスタルから、眩い巨大な光線が発射される。


 それは黒い板を通る程に細くなり、凝縮されて行く。その細い光線が空の一部に当たると、その中心が黒い点を産む。


「未だ!縮小板を当てろ!!」


 艦長がパルカに命令する。


「了解です!」


 ロズウェルβは、進行速度を早め、後方から黄色い光を大量に放射する。


「当てまーす!!!」


 その黒い点に、ロズウェルβの前方で展開している黒い縮小板を当てる。

 黒い点に縮小板を当てると、縮小板は割れて消えて行く。


 そしてロズウェルβから1m前方、最後の縮小板が黒い点に当たると、空は割れ、黒い空間が前方へ広がる。


 そのままロズウェルβは、時空間へと進入して行く。


「やりました!2回目の成功です!!」


 モイラが、艦長へ報告すると、艦橋に居る全員から歓声が上がる。


 割れた空の黒い空間は、水の様にうねり、ロズウェルβを吸い込んで行く。

 その速度は遅く、出力を最大にしても、前進するスピードは遅い。


 ロズウェルβが、闇に沈む中、ギルバートとサランは手を繋ぎ、肩を寄せ合い、自分たちの世界を見ていた。


「ねぇ、ギルバート…何だか寂しいね…」


「なぁに、少し遠い新婚旅行さ。ヒックの話なら、また1周してくれば帰って来れるみたいだよ?」


「そうだよね。よっし!世界と私たちの世界!守るっきゃないって感じでぇ!チョベリグでウケる!ね?ギルバート…」


「そうだよ!僕もチョベリグ~な感じさ!」


 2人は、笑って世界に手を振り、闇の中へと吸い込まれて行く。


 ヒックは、ロッシーの事を思い出していた。


(ニアが傍にいる。大丈夫だとは思うけど…無事で居てくれよ…)



 ― それから1ヶ月 ―



「きょ、今日も…ダメでしたね…」


 モイラが自分の席で項垂れる…。


「ま、また、こんな事になるなんて…ガックシですぅ…」


 いつも元気なパルカですら、元気が無い。


「まさか、こんな事になろうとは…」


 ラケシスも頭を抱えている。



 ― ロズウェルβ出発より2時間後 ―



 クロートーが艦長へ報告する。


「艦長、データを分析しましたが何も出ません…」


 ホーラも続く。


「何の反応も無いわ…出力は安定してるけど…」


 ギルバートとサランは黙っている。


 ヒックは、艦橋の装置や画面を眺めていた。


「んー…」


「うむぅ…まったく分からん…」


 ラケシス艦長は悩んでいた。



 ― ロズウェルβ 時空間へ進入5分後 ―



 クロートーが艦長へ聞く。


「艦長、座標はどうしますか?」


「我々の世界!我々の出発点だ!さぁ!全速力で前進するぞ!!」


 まだ熱が冷めやらないラケシス艦長。


「それが、その…出発点の座標って…何処ですか?」


 それを聞いたラケシスは、何かを思いついた顔をする。そして、額からは汗が流れる。


 艦橋に居る全員が、艦長へと視線を向ける。


「え、あー、あのぉ、えーと…」


 だんだん皆の顔が曇り出す。

 不穏な空気が、艦橋を包んだ。


「分からん」


「…」


「座標、分からん…」


 艦長以外の全員が、高い位置にある艦長席の周りへ、一斉に集まって何やら叫んでいる。


「ちょ!艦長!てか博士!行きの時と同じじゃないですか!!」


 モイラが他を制して、艦長へと講義する。


「いや、さっき彼が逆流に逆らわなかったら戻れると…」


 ラケシス艦長は、ヒックを指さしている。


 全員の矛先がヒックへと向かう。


「どうなんですか?!ヒックさん!」


「ど、どうなんですか…て言われてもな…それは出発した時の話だろ…逆にアンタら、どうやって帰るつもりだったんだよ…」


 ロズウェルの面々は、痛いところを突かれたという顔をしている。

 特に艦長は、両手で顔を覆ってしまっている。


「アンタら、さては…アホだな」


 そう言った瞬間だった。

 ホーラが、ヒックの後頭部を、フライパンで殴り、ヒックを気絶させた。


 すぐに全身が青い炎に包まれ、ロランが出て来る。


 全員にもう恐怖心は無く、ロランの顔の直前まで顔を寄せている。


「あ、あの…ヒックは不老不死だけど、痛さは感じるから、もう少しやさし…く…」


 そんな事を言っている場合ではなさそうだと、ロランは、咳払いをして話を変える。


「分かりません」


「え?」


「分かりません」


「ん?」


「分からないんです」


「へぇ…」


「ちょっと!ロランが分からないって言ってんのよ!このボンクラ共!!自分たちで考えなさいよ!!」


 何度もロランに、聞き返して来る一同に、文句を言うべくフォルも青い魂となった。


「ロラン!こんな奴らユニリンクして蹴散らしましょ!」


「ちょ!ま、待って、落ち着いて、フォル!こ、この船には、座標を決めるっていうか、何か、こう、エネルギーを感知するような技術は、搭載されていないんですか?」


 ロランの視線を感じたラケシス艦長は、手の指だけを動かして、目だけをこちらに向けている。


「…ある。けど、それの感知範囲は狭い…正直、時空間の距離感が、まったく分かっていない…」


 ロランは続けた


「あるだけでも、凄い事なんですが…それでよく出発する気になりましたね…」


「グレイ君が…」


「アイツのせいか…こんな未装備のまま出発させたのも、これを…間違いなくアイツは…」


 また全員が、ロランの顔に顔を近づけている。


「…すいません。相談はここまでです。失礼しました」


 そう言うとロランは青い炎となり、ズルズルとヒックの両腕部分の黒い空間へと戻って行く。


「え!ロラン!ちょ!」


 そう言うとフォルも赤い光に戻る。


「え!ま、待ってくれ!君が1番まともな意見言えそうなんだ!」


 ギルバートは、青い炎を掴もうとするが、手はソレを掴めないまま、ただ気絶したヒックだけを残し、静寂が訪れる。


 サランが、ヒックを掴み、縦や横に振る。


「…うが…う、うわわわ!な、何してんだ!!」


 ヒックが目覚める。

 サランは、ヒックを手放し、地面に落とす。


 一同は黙ったまま持ち場へ帰る。

 サランとギルバートは、艦橋を後にする。


「え?!え?な、何?!俺?!俺のせいか?!え!えええええ!!!!」


 時空間にヒックの悲しい叫びがコダマする。



 ― そして現在 ―



「これ…本当に1ヶ月経っているのかしら?戻ってるのか、進んでるのかも分からないし…」


 モイラが時計と、艦橋の外を見つめながら呟く。


「そうね…外は真っ暗ですものね…」


 ホーラも呟く。


「この2ヶ月で陽の光を見たのって、ギルバート達の世界に出た時だけっすよね…」


 クロートーも沈む。


「私…舵を握ってるだけの人形みたい…」


 パルカは、本当に舵を握って、突っ立っている。


「ギルバート達、今日はどうしてるのかしら…」


 あの後、ヒックが寝ている時に出て来たロランが


「ヒックの腕を治すと、何とかなるかも…」


 という言葉だけを頼りに、ラケシスとギルバートは、あれやコレやと作業をしていたが、神経接続が出来そうにない、ヒックの腕の黒い部分に悩まされていた。


「私が見るに、コレは…無理だな…」


「ラケシスさん!諦め無いでくださいよ!」


 諦め気味の艦長を、ギルバートが励ます。


「ヒック君の、この黒い部分。私が見るに、この世の物とは到底思えない。いや、ヒック君自体が私たちの認知を超えた存在だ」


「確かに…僕達の科学力…しかも、こんな閉鎖された船の中では…これ以上…」


 ギルバートとラケシス艦長は、ヒックを置いて部屋を後にした。


 研究室に取り残されたヒックは1人で呟く。


「…好き放題言うな、アイツら…でも、もう1ヶ月も過ぎたのか…ロッシーもだが、ズルワーン達の事も気になる。早く何とかしないと…」


 そう言って部屋を出ようとした時だった。


 ロズウェルβが激しく揺れて、ヒックはよろけて壁に頭を激しくぶつけ、気を失った。




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