お茶会
サラン・ヒック・ギルバートは
ロズウェル内部に居た。
ここは戦艦ロズウェルβに設置されたサロン。
エリア51である。
内部はとてもファンシーで、乙女趣味となっている。
そこのソファーや椅子、カーペットの上などに艦長とクロートー、ギルバートとサランに、ヒックが座って居た。
ギルバートと、ラケシス艦長が話をしている。
「ありがとうございます。僕達を艦に招きいただいて…」
「いや君たちに敵意が無いのなら、我々は歓迎する。いや、むしろ歓迎されざるは、我々の方かもしれない…」
そこへヒックが入る
「あんた達はどっから来た?!フォルが居た世界は、決戦決闘の後、ボロボロになったか、亡くなった筈だ…。まさか…フォルが居た世界の、別の惑星から来たのか?」
ラケシス艦長は、少し困惑した顔をしている。
「別の…いや、私達は宇宙を旅して来た訳ではない。グランという星から来た、と言うと、少し混乱してしまうかな。違う世界から来たと言った方がいい様な…」
ラケシス艦長は、その体格の良さからは想像出来ない、人差し指を口元に当てるという、可愛らしい仕草で、どう説明するか悩んでいる。
ヒックは、少し怪訝な顔をしつつ、質問を続ける。
「あんたの世界に、魔導というものはあるか?」
「ま、魔導っていうのは、君たちが使う魔法みたいなものの事かね?グランは科学が発達した世界だ、そういったものは無い。と、思う」
「やっぱりだ。アンタたちは、世界の流れを逆流して来たんだな?!」
「ぎゃ、逆流?世界の流れとは…」
その時、エリア51サロンの扉が開く。
モイラ、ホーラ、パルカが、ティーワゴンを1人1台ずつ運んで来る。
「ハーイ!ハーイ!!打ち上げ用の、お茶とお菓子持って来ましたァ!ルンルン♪」
パルカが、そう言いながら陽気に小躍りしている。
「な、何か大事なお話中でしたか?博…艦長!!」
「ああ、少し大事な話をしていた。打ち上げは、その後に…」
ホーラがティーワゴンに掛けた、レースを取りながら話す。
「あら、そうですか。お茶が冷めてしまうわね。せっかく、この日の為にラフィールの紅茶を手に入れていたというのに…」
艦長の表情が変わり、ホーラのワゴンへと駆け寄る。
「えぇ~!うっそー!ラフィールのお紅茶だなんて!どうやって手に入れたのよォ!!アタシなんてネットで調べたら、2年待ちとかだったのにぃ!!」
突然、艦長が豹変した事に、ヒック達は目が点になる。
モイラが、艦長とヒック達の間に入り、手を開いて上下に振りながら、見えない様にしている。
「アハハ!なんでもないんです!いつもの発作で!ホーラ!クロートー!」
type BPを喰らった艦長が、腹を抱えて蹲る様を、ヒック達は眺めていた。
― 数分後 ―
「それでは!時空層間移動戦艦ロズウェルβの初発進、及び、初成功を祝い!カンパーイ!」
モイラが乾杯の音頭をとると、皆はティーカップを高く掲げた。
「あーん、とっても良い香りだわぁ。ねぇ、モイラぁ~、どーやって手に入れたのよォ教えてよォ~」
「うふふ、ヒミツです」
残念ながら艦長の発作は治っていなかった。皆は談笑しながら、お茶とお菓子を楽しむ。
ギルバートとサランはイチャつき、ヒックは猫の様に熱い紅茶をペロペロと舐めている。
「と、ところで、先程の話なのだが…」
元に戻った艦長が、ヒックに話しかける。
「え?!あ、ああ!」
お茶をどうやって飲もうかという事に、専念していたヒックも、我に返る。
「その世界の流れ、逆流とは何なんだね?」
「この世界、俺達が確認出来る世界は、9つあります。たまに似たような世界が無限にある。だなんて言う人もいますが…俺達が確認出来うる、認知しているのは9つ」
「ああ、それなら僕達の世界でも、似たような話を聞いた事があるな。無限に広がる並行世界…」
とギルバートが話に入る。
「あ、それ、私でもマヂ知ってるしぃ~!でもそれって、作り話、みたいなぁ?」
サランが付け加える。その後にモイラが続く。
「私達も最初はそう思っていました…けど…」
「そう。我々は、その世界がある事を発見した。ある1人の青年の協力のおかげで…」
「それがアイツか…アイツは何なんだ?」
ヒックは、身を乗り出して、ラケシス艦長に聞く。
「彼は、私が時間の粒子タイムライトを発見したと、学会で発表したのを聞き、私の元を訪れた青年だ…しかし、彼には不思議な能力があった…」
「不思議な能力?」
「彼は私の思考の先を読み、時空という存在の定義を差し出して来た。私はそれを元に、この戦艦ロズウェルβの元となる、時間と光を同時に凝縮放射する装置を作った」
「そ、そんな事が可能なんですか?」
ギルバートが、驚いた顔をして艦長に聞く。
「私もそんな事は不可能だと思っていた…。けれど、彼は、グレイ君は、その悩みを尽く、砕いてくれたのだ。私の研究は急速に前進した。そして、それを学会で発表し続けた。そこへ連邦の軍が、声を掛けて来たのだ…」
モイラ達は、少し暗い表情となる。
「まぁ、その話は置いておこう。我々は連邦の資金とグレイ君の助言により、ロズウェルβを完成させ、時空間へと進路を取る事が出来たのだ。しかし我々は、時空間で漂流してしまった。進めど進めど、外に出れなくなってしまった。グレイ君は、そこから何も話してはくれなくなってしまった。絶望した私達は、このまま、この艦と共に死に行くのだと思っていた…」
「では、何故、僕らの世界へ突然、現れたのですか?」
ギルバートは興味津々だが、サランはもう話に着いていけてない。
「それは突然だった。いつもの様に艦橋で、脱出する手掛かりがないか模索していた時だ。レーダーに時空の流れの異変と、不明物質の感知に成功した。我々はそれをコンパス代わりに、全速力で前進し、時空の壁を突き破ったのだ…」
「それで、今、ここに居るって事か…そりゃ最初から逆流してたって事だ…。そん時は反対向きゃ良かったんだよ。無理してるから出れなかったのさ」
ロズウェルβクルー全員が驚愕する。
そして全員で叫ぶ。
「その発想は無かった!!!!!」
ヒックが続ける。
「いいか?この世界は9つの円になっている。その時の流れは一方方向だ。その流れに逆うなんて事は出来ない。あんたらは時空間で、進んでるつもりだったかもしれないが、流れに邪魔されて1つの場所に留まってたのさ…」
艦長がヒックの傍に駆け寄り、ヒックを両手で掴み上げる。
「き、君はなんなんだ!!凄いな!!!あっ…殿方に触れてしまったわ…い、イヤン!」
そう言って、両手をヒックから離し、モジモジしている。ヒックはカーペットへと落とされる。
「い、痛てぇ…」
「あ、ごめんね…」
そのままの体勢でヒックは話を進める。
サランが起き上がらせようと近づく。
「そのグレイって奴は、この艦の出力なら、時空間の逆走が可能だと知ってた筈だ。そしてズルワーンか、もしくは誰かが、この世界で時空の穴を開けるのを待っていた…サトゥルーナが押し込めた理由はそういう事か…」
サランが地面に、ヒックをちょこんと置く。そしてヒック1人が納得した様子だった。
「と、ところで君は何なんだね。やけに詳しいが…この世界の学者か?そ、それか…森の妖精かね…」
「それは僕達も聞きたいと思っていた。あと先程の黒い髪の女性についても。あと、あのズルワーンという男についてもだ…」
ギルバートとサランは、ヒックの間近まで詰め寄る。ロズウェルβクルーと艦長も全員、ヒックの間近まで周りに集まっていた。
ヒックは言う。
「と、とりあえず…話して喉が乾いたから…ホットじゃなくて、アイスティーくれる?ストロー付きで…。俺、腕が両方ないんだよね…」
と言い、苦笑いする。
ホーラは
「あらっ、気づかなくて、ごめんなさいね」
と言いながら、慌てて調理場へと向かって行った。
そしてヒックは、腕の事を話した瞬間、ロッシーとの今までを走馬灯のように、思い出していた。。。





