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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
アースの章
39/129

グレイ

 ― 巨大戦艦ロズウェルβ 艦橋内部―


 ここはロズウェルβの操縦室。中には沢山の見慣れない装置が並び、その前には椅子が置かれている。

 そして、その1つ1つに意味があり。

 その後方、部屋の中心部には、この艦の全責任を担う、艦長の席が、皆よりも高い位置に設置してある。


 その艦橋内部では、体格の良い艦長を取り囲み、3人の女性と、1人の男性が、歓喜していた。


「や、やりましたね!博士!…あっ!艦長!!」


「ほんとに時空間を移動出来るなんて感動っす!!」


「ふふっ…アタシは、タロットで見ていたわ…」


「ちょっと、怖かったですぅ…けど!ハッピーハッピーですね♪」


「モイラ、クロートー、ホーラ、パルカ、みんな良くやってくれた。流石は我らトロイヤの先鋭部隊だ」


 そう言って、皆の頭を1人1人撫でて行く。

 撫でられた皆は、頬を染めて、少し嬉しそうだ。


 モイラが口を開く。


「ですがラケシス博士…あっ!ラケシス艦長!」


「うん、どっちでもいいよ。私、博士と艦長兼任みたいなもんだし…君は元々、私の助手なんだし…」


「だ、ダメですよぉ!せっかく連邦から奪取してまで強行実験をして、華々しく世界に、いえ!この宇宙に、名を残す1人になったんですから!」


 そこへクロートーが口を挟む。


「そうです。やはり博士の、いえ!艦長の仮説は正しかった、この世界、宇宙には時間という物質が、空気の様に漂っている。そして、その時間物質は、この世界の1人でも動けば押され、それは広がって行く。そして時は動きだすっすよね!」


 ホーラが続ける。


「だからこの世界は止まる事がない。もし星の動きが止まり、風が無くなっても、星で生き物が動く限り、何かが動いている限り、時は押され、進んで行く。運命のカードの様に…」


 パルカも話す。


「パルカは難しい事は分かんないですけどぉ!博士が見つけたタイムライトって物質が、時間の粒でぇ~、それを1点に集める事で、時間の凝縮を起こして、光のエーテル粒子と合体させて放出する事で、時空間を割る事が出来て中へと侵入出来る?でしたっけぇ?」


 それを聞いて艦長が答える。


「なんで君みたいなのが、このチームに居るのか不思議だったけど、めっちゃ詳しいじゃないか…。いや、まぁ、その通りなんだ!私の仮説は証明された。これで私を馬鹿にした、アイツらにほえずらかかしてやれる!」


 すると艦橋のスライド式自動ドアが開き、1人の青年が入って来る。


「成功したみたいですね。良かったですよ。僕もチカラを貸した甲斐がありました…」


 そう言うと、ほくそ笑む青年。


「ああ、君には感謝している。グレイ君…君の、あの、不思議なチカラが無ければ、この艦の奪取も難しかった…いや、この人数では不可能だったはずだ…」


「いえ、それほどでも…」


 そう言ったグレイの顔が更に、にこやかになった。


 その時だ。

 艦橋の正面防壁ガラスに、何かが当たっている様な音がする。

 戦艦クルーと艦長は、ガラスの方を見て、固まる。


 そこには凄い剣幕で、ガラスを叩く空飛ぶ黒髪のオバサンと、白い服の2人。

 それと白い服の青年に、お姫様抱っこされている、木の葉に包まれた青年が居たからだ。青年の頬は少しピンク色で目はウルウルしていた。


 それを見た艦長は突然、豹変する。


「ンキャーーー!ビ、BLよ!!突然のラッキービーエルだわぁ~~~!!ンキャーーー!!!!」


 モイラが命令する。


「クロートー!ホーラ!艦長の発作が出たわ!!エマージェンシー type BPでお願い!!!」


 するとクロートーとホーラは、艦長の両脇にスっと立つと、左右からボディにパンチを1発ずつ食らわせる。


「っくは…」


 と言いながら腹を抱えて、膝から崩れ落ちる艦長。そして、直ぐに立ち上がり


「…ゴホンッ!す、すまない。取り乱してしまった。と言うか…な、なんなんだ!アイツらは!!!」


 すると窓を叩いていた一同が、少し距離をとってガラスから離れる。


 そしてギルバートは、抱えていたヒックをサランに預けた。


「い、いいんですか?サトゥルーナさん??」


「良いも悪いも無いわ!アイツらが何処から来たのか聞かないとダメなの!!仲間と敵とか関係無くよ!!それと、あの青年、何かおかしいわ!私には時間が無いの早くしてちょうだいっ!!」


「分かりましたっ!!!」


 そう言うとギルバートは全速力で、手を光らせながら、艦橋のガラスへと走る。


 眩い光を放ちながら、走って来る白い服の青年。

 戦艦クルー達は本能的に、全員、部屋の後方へと逃げる。


 グレイという青年以外は。


 ギルバートは、ガラスへ全力で光るパンチをぶつけた。そして光が弾け飛び、視界は真っ白になる。


 ギルバートは手の先に、何かの感触があったので、ガラスの破壊に成功したのだと思った。チカラを抜き、サラン達の居る後方へ下がろうとした時だった。


 ギルバートは手が動かない事に気づく。


 次の瞬間、身体は空気の抵抗を全身で受ける。そして、それに抗えないまま視界は凄い速さで過ぎ去って行く。


 艦橋のガラスは割れていない。


 ガラスの前に、右手を横にしたままの体勢で、サトゥルーナ達を笑いながら見ているグレイが居た。


 彼も宙に浮いている。


 ギルバートは、グレイに片手で投げ飛ばされたのだ。

 そしてギルバートは、空を飛ぶチカラがあるにも関わらず、そのチカラに抗えないで居た。


「ギルバート!!!」


 サランはヒックを抱えたまま、ギルバートを全速力で追った。


 サトゥルーナと、グレイは、お互いを観察している様な表情で見つめあっていた。


 その時だった。


 森の方から、赤い閃光弾が数個、サトゥルーナに向けられて放たれる。その後ろから魔竜騎ズルワーンが森の中から飛び出して来る。


 サトゥルーナは、指をグレイの方へ向けた。すると、その赤い閃光弾は全てグレイへと向かって飛んで行き、艦橋ガラスの前で全て爆発する。


「アナタが頼りだわ…」


 魔竜騎ズルワーンは、サトゥルーナの横を通り過ぎ、空に開いた青い輪の中へと入り、この世界を後にする。


 爆発が終わり、グレイの姿が見えた。

 サトゥルーナは、ソレに向かって全速力で飛び瞬間移動する。そのままグレイの肩を掴んで押し付ける。


 バリンッ!とガラスの割れる様な、大きな音を立てて、艦橋ガラスでは無く、グレイの後ろの空間が、小さく割れ、黒い空間が広がって行く。


 そしてサトゥルーナは、グレイをそこに押し込めるが、自身もその中へと入る。


「クソババァめっ…」


 グレイは、その笑顔を無くし、サトゥルーナを睨み言葉を吐いた。


「おだまり。私のヒックに手出しはさせないわ…」


 2人が割れた黒い空間に、全身吸い込まれると、割れた箇所は、中心部より元に戻って行く。


 ヒックを抱えたサランとギルバートは、ロズウェルβまで戻って来ていた。


 戦艦クルー達は、呆然としている。



 辺りは静まり返っていた。


 その巨大な戦艦の存在を、忘れさせる程に。




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