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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
魔竜騎の章
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31/129

芽生え

 


 ギルバートとサランの出会いは、サランが工場へ来て、すぐの事だった。

 ギルバートがいつも通り食堂へ行くと、自分よりも少し年下の田舎者丸出しな2人が、キョロキョロしながらウロウロしていた。

 困っているのかと思ったギルバートは声をかける。


「やぁ、君たち、何か困り事かな?僕で良ければチカラになるよ?」


 リュウローとサランは、突然キラキラとした美青年に優しい言葉をかけられて戸惑う。

 それを見たギルバートは更に声をかける。


「いや、すまない。何か困っているのかと勝手に思ってしまった。僕の名はギルバート。事務部で働いているんだ。君たちは?」


 リュウローは、モジモジしながら


「お、俺はリュウロー、こっちはサランです。オトイの村から出稼ぎに来たんですけど…何だか食堂のメニューが沢山あり過ぎて…2人でどれ食べようか悩んでたんです…」


 ギルバートは額に手を当てて、ヨロめいている。


(な、なんという事か…この世にこんな心の美しい生き物がいるなんて…)


 ギルバートは気を取り直し2人に話しかける。


「それなら、この食堂名物のチキンステーキ定食にするといい。とても美味なんだ」


 厨房の前には沢山の人が列を作っている。

 その上の壁に食堂のメニューが大きく書いてあり、2人はその中からチキンステーキ定食の文字を探す。


 〖チキンステーキ定食 :1200〗


 の文字を見て固まった。


「どうしたんだい2人共?」


 とギルバートは声をかける。


 2人はカタカタと小刻みに震えながらギルバートの方を見て


「た、高すぎませんか…な、なんなんですか…アレ…」

「リュ、リュウロー…アタシ、玉子丼にするよ…」


 ギルバートからすると、これが初めて聞いた記念すべきサランの第一声である。

 この時ギルバートは、今まで感じた事の無い物言えぬ感情が全身を駆け巡って居た。

 そして次の瞬間、ギルバートは迷わずにこう言う。


「僕が奢ろうっっっ!!!」


 と。


 リュウローとサランは全力で断ったが、ギルバートはそれを許さなかった。


 3人で同じ席に着く。

 2人は美味しそうにチキンステーキ定食を食べている。


「あ、アタシ、こ、こんな美味しいお肉食べた事ないよぉ、リュウロぉ」


「そうだな!サラぁン」


 2人は満悦の笑みだ。

 それをギルバートは微笑みながら頬ずえをついて、ただ眺めて居た。


「さぁ2人とも、僕のチキンもあげよう…」


 そう言ってギルバートは、チキン中央部の大きい部分をフォークとナイフで取り分け、2人の皿へそれぞれ置いてあげている。

 2人は断るが、ギルバートは笑顔でそれに応える。


 そしてギルバートは、それから半年間、2人に近付く事が出来なかった。

 と、言うよりもサランに近付く事が出来なかったのだ。


 次の日もギルバートは2人を見つけて、声をかけようとした。


 が、その時だった。


 サランの横顔を見た時、何故か胸が鈍く重くなった。

 しかし何か暖かい鼓動もギルバートは感じたのだ。


(クッ…!な、なんだこれは、む、胸が…く、苦しっ…いっ…)


「どこか悪いのかもしれない。休憩所で少し休もう…」


 それからと言うもの、ギルバートはサランを見る度に気分が悪くなり、近づく事が出来ないで居た。


 そして、それは3ヶ月も続いたのだった。


 そんなある日、様子がおかしいギルバートを見かねたナスラが声をかける。


「ギルバートくん、大丈夫?ずっと食堂へも行ってないみたいだけど…何か悩み事でもあるの?仕事の相談なら私でも何か出来る事があるかもしれないけれど…話、聞こうか?」


 ナスラはこの時、ギルバートの1年先輩で、たまに仕事の話をするくらいの仲だったが、見る度に痩せていくギルバートを見かねて声をかけたのだった。

 そしてギルバートは素直に、自身に起こっている事象をナスラに話す。


 するとナスラの口から思いもよらぬ言葉が飛び出して来た。


「それって…その…サランちゃんって女の子の事が好きなんじゃないかな?」


 それを聞いたギルバートは、ナスラの顔をただ黙って見つめているだけだった。


 次の日


 ギルバートは食堂へと足を運び、柱の影から胸の辺りのシャツを握り、サランを見つめていた。


(ぼ、僕は…キミ…いや、サ、サランちゃんの、事が…す、すすすっ、すすっすっっすすすすっ!うぐっ!…お、おち、落ち着け…ギルバート、落ち着くんだ…。僕はサランちゃんが好きなのだ…知らなかった。恋というものが、こんなに胸を締めつけ、自分を変えてしまうものだったとは…)


 そんな事を考えながら息を荒くしつつも、気持ちを抑えようとしている。


 そうしているうちに、リュウローとサランの2人は席に着き食事をする。

 ギルバートは慌てて自分もチキンステーキ定食を買い、2人が座る席へと急ぐ。


「や、やぁ!君たち!ご機嫌いかがかな?少しはここの生活にも慣れたのかな?!あはは、ここ…座っても…いいかっな…?」


 以前の雰囲気と少し違うギルバートに戸惑いながらも、2人は快く席に着いて欲しいと言った。


 少し世間話をしたのち、サランがギルバートに突然、感謝の言葉を話し出した。


「あ、あの…。あの時は、ありがとうございました。チキンステーキ、とっても美味しくて、これからここで頑張れば、こんなにも美味しい物が食べれるんだな。って思って…不安だった気持ちが晴れました!まだ少しお給料が少なくて無理なんですけど、もう少し余裕が出来たら、私っ!差し出がましいかも知れませんが、ギルバートさんに、その、チキンステーキご馳走させてください!お願いします!」


「あ!サラン自分だけずりぃぞ!お、俺にも奢らせてください!お願いします!」


 と


 2人に頭を下げられてギルバートは…


 泣いていた。


「うっ、うぐっ!ふ、2人ども、あ、あだまをあげでぐで…ううぅっ」


 気持ちを落ち着けたギルバートは、2人に答える。


「その気持ちだけで十分だよ。リュウローくん、サランちゃん。2人が頑張って働いてくれれば、それで僕は満足さ…」


 そう言うと2人は笑顔で顔を見合わせて笑い、元気よく


「はい!頑張ります!」


 と答えた。


 その時だった。

 また、ギルバートは心に何か、今までに無い感情を感じる。

 何かウズウズとした苦しさだ。

 しかし以前とは違う気分の悪さがある。


 そして以前はサランを見た時に、心の変化を感じたのだが、今度はリュウローを見た時に、何か胸の様子が変だと感じる。

 ギルバートは少し考えた。


(以前は…サランちゃんの時に…似たような事が…。ナスラさんは、これを恋と言った。しかし今回は…)


 と黙ってリュウローを見つめる。


(いやいやいやいやっ!な、なんという事だ!ギルバート!貴様は一体どうしたというのだ?!いやいやいやいやっ!)


「しっ、失礼するっ!」


 そしてギルバートは事務室へと走り、事務室の扉を勢いよく開き…


「ナ、ナスラさぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!!」


 と


 叫んだ。




 部長は不在で、事務室にはナスラだけが居た。

 事情を聞いたナスラはすぐに答える。


「それは…ジェラシー、嫉妬よ…少し厄介な感情ね。でも恋をすれば大小あるけど、誰もが少しは心に抱くものよ。落ち着いて対処しましょ…」


 ギルバートは、これが風の噂で聞く、都市伝説だと思っていた


 〖嫉妬〗


 という感情なのだと知る。


 そしてナスラはこう続けた。


「その、、、リュウローくんと、サランちゃんって、2人は…どういう関係なのかしら?」


「?どういう関係…とは?」


 不思議そうに首を傾げるギルバート。


「そ、その、言い難いんだけど…出身も同じ村だし、仲も良さそうなんでしょ?ギルバートくんが見ているだけで嫉妬するぐらいに…。もしかして2人は、恋人同士なんじゃないのかしら?」


「は?」


 ギルバートは思いもよらなさ過ぎる言葉に素が出てしまった。


「あ!し、失礼しました。ナスラさん!と、言いますか…こ、こいっ、こここ、こっこっこぉっ!」


「恋人よ…」


「うひぃっ!!」


「2人はもう恋人の可能性があるわ…」


「んげえっ!!」


「少しサランちゃんに出会うのが…遅かったわね…ギルバートくん…」


「あばばばばっ!!」


 ナスラはお腹を抱えて笑っている。

 ギルバートは真っ白になっていた。


「ご、ごめんなさいね。人の恋心をからかうなんて、私、どうしちゃったのかしら…えへへ。大丈夫よ。ギルバートくん。私もこないだ気になって、その2人を食堂で見つけて観察していたの。恐らく今は普通に同郷の友ね。安心していいと思うわ」


 それを聞いてギルバートの色が戻る。

 そして目を輝かせて立ち上がり


「ナスラさん!ありがとうございました!俺、頑張りますっ!」


 そう言って仕事に戻るギルバートを、ナスラは見つめたまま手を優しく胸に当て、僅かに動くその鼓動を感じていた。。。


 サランとギルバートは、出会って半年の月日が流れていた。

 そして、また食堂で3人は食事をしている。


「サランちゃん、僕のお肉あげようか?食べる?」


「えー、マヂですかぁ?テンションあがりますぅー」


「サ、サランちゃん?少し雰囲気変わったね?」


「えー、そうっすかぁ?」


「コイツこないだ2人で街に買い物行ってからずっとこうなんですよ。すいません。ギルバートさん」


「…へぇ…2人で…ね…」


「キャラ変えってかぁ~、マヂ憧れててーみたいな?って…や、やっぱり、変でしょうか…私?」


 急にいつものサランに戻り、ギルバートは戸惑うが


「なっ!何を言うのさ!僕はサランちゃんがどんな風になろうと、サランちゃんをあっ!」


 そこでギルバートは固まり何も言わなくなる。


「あ?」

「あ?」


 2人は不思議な顔をしてギルバートを見ている。


「し、失礼する!」


 そう言ってギルバートは席を立つ。


「あの人、、、いつも急にどっか行くよな…」


「んー、チョー忙しメンなんじゃん?」


「…お前…」


「何?」


「もうちょいキャラ固定…いや何でもねぇ」


「大丈夫、私も思ってるから…」


「そうか…」


 サランは少し赤面していた。。。


(ああああああああ!あっぶないっ!あっぶなかったあああっ!!!僕はいったい何を言おうとしたのだ!そろそろ限界が近いのでは無いか?!もうこの気持ちを抑えておくのも難しい…サランちゃん!!)


 そしてギルバートは工場の外へ出る。


 人気のない工場横の木が数本、植え込んである場所へ行き、月を見つめ…


 大きな声で叫ぶのだ。



「サランちゃあああああああん!!」



 と。


 そしてギルバートは気付いていないが、この木の奥壁の向こうは、プラント7工場の外で喫煙所になっている。


 タバコを吸っているプラント7工場の喫煙者一同は思った。。。




(うわっ!ビビったぁ。急に大声出すなよ、誰だよ…てか…サランちゃん…って誰?)



 と。




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