痕跡
「ちょ、ギ!ギルバート!?ギルバート?!」
声を出してギルバートの名を呼ぶが、サランは驚いて動けない。
右手には宝石が握られている。
ギルバートは胸の痛みから、うずくまって顔を地面に着ける。うつ伏せの体勢となり息を荒くするギルバート。
しかし、その息はすぐに消え、大地に赤い液体が広がる…。
ギルバートが着ている白色の戦闘用事務部工場着が、鮮やかに赤く染まる。
それを見たサランの手は震え、声も出せずに見ているだけだった。その顔色は悪い。
「ギルバート!!返事してよ!!ギルバート!!!ねえ!ねぇってば!」
サランは普段の言葉使いも忘れて、ギルバートへと寄り添う。
「んもう!なにこれ邪魔!」
そう言ってサランは持っていた宝石を投げ捨てた。
「ギルバート!しっかりしてってば!マヂで!!ねぇっ!!」
サランは、ギルバートを仰向けにし、ギルバートの顔に手を当てて叫ぶ。
その声と、手の温もりにギルバートは目を覚ます。
「や、やぁ…サ、サランちゃ…ん…無事で、何、より…だ…、け、ど、にげ、ろ…」
そう言って目を閉じてしまうギルバート。その胸にはハート型の宝石が刺さり、そこからはまだ流血している。
「きゃああああっ!!!」
魔竜騎リュウローが、後ろからサランを掴み上げる。
「ダメじゃないかサラン…君は、ぼぼ、僕の…ヴッェ…僕…ザッ…ッ!」
そしてサランは頭に、何かを思い出す。
幼少期から一緒に居たリュウローを。
8歳、
誕生日に、花をくれたリュウローを。
10歳、
「大きくなったらリュウローのお嫁さんになってあげるね」と言い、頬を染め、家まで走って帰った事を。
13歳、工場へ行く前の夜、2人で空を見上げ、流星をリュウローと探した事を。
15歳、
一緒に働いてリュウローと、お昼ご飯を毎日楽しく食べた事を。
そして、
リュウローという名の、何かが居た事を。
リュウローという名を、考えていた事を。
そして
何を考えていたかという事を…。
「…リュウ…ロー…?って…何?」
そして魔竜騎リュウローはサランを握ったまま、赤く燃える工場へと走り出す。
「ヴッ、グ、ゴゥワァァァァァァッ!!!!」
魔竜騎リュウローの顔に付いている、マスクの様な物が叫びと共にパージして、中からは牙が沢山生えた、口が現れた。
ズルワーンとフォルは、サランが投げた宝石を拾い、見ていた。
「コチラでは無いようだ…。フォル、ズルワーンを呼べ、もう1つを回収して次へ行く。もう、この世界に用は無い…」
半分に割れたハート型の宝石を、手の上で左右に揺らし、その輝きを見つめながらズルワーンは言う。
「かしこまりました、ズルワーン様。ズルワーンの所へ、少し行って来ます。お気をつけ下さい」
そう言い残し、上空へ飛行してズルワーンへと飛ぶフォル。
その場に残った青白髪のズルワーンは、ギルバートに刺さったハート型の宝石を回収する為に近付こうとする。
が、そこにギルバートの姿は無く。
赤い痕跡だけが、その場に残されて居た。
ヒックは、先程の吹き飛ばされた場所で気を失っていた。
その上を赤点のフォルが、クルクルと回りながら飛んで居る。
(ロラン~?!大丈夫なのー?!)
フォルの声は、誰にも届かない。
頭で考える事しか出来ないようだ。
(ロラン~!ロランロランロランロランーッ!!)
と思いながらヒックの上を輪が出来る程に高速回転している。
(あ、あの…ちょっと、だけ、静かに…してくれないかな?)
突然、聞こえて来た声に驚き、動きを止めるフォル。ゆっくりとヒックへと近付く…と、ヒックの身体が突然青く燃える。
その炎にフォルは驚くが突然の事で、炎の中へ入ってしまう。
「や、やぁ…さっきぶり…。ヒ、ヒック大丈夫かな?だいぶとボロボロだと思うんだけど…」
ヒックの青く燃えた身体から、ロランが浮かび上がっている。
「ちょっ?!な、何よこれ?!」
その声がする方を見ると青く燃える身体のフォルが、自分の手や身体を見て驚いている。足もあるようだ。
「話は後だ、恐らくこのままでは取り返しのつかない事になりかねない。少し不正な方法だけど、緊急事態だ。君をコチラ側に取り込んだ…あ、ロッシーが離れたのはこの為なのかな?でも…そんな…」
とブツブツ独り言を言っているロランに抱きつくフォル。
「うわっ!!な、なんだい?!てか、人に抱きつかれるの久しぶり…」
と言いながら少し顔が赤くなるロラン。しかし青い炎でよく分からない。
「ロラン~!少し小さいロラン~!かっわいい~!さっきからコレがしたかったのよぉ~!!」
と言いながらフォルは、ロランに頬ずりしている。
「ちょ、ちょっと離れて…んぐぐっ…チ、チカラ強っ…」
「うふふふふふふふっ」
くっつくフォルと、それを押し返すロランの攻防は続く。
To be continued…
「って!そうじゃないんだよ!早く僕とユニリンクして!!」
「え?!ユニリンクって、こないだのアレ?!」
「そうだよ!戦わないと。今度は僕も手伝うから大丈夫!」
「あなたも…手伝う…の?」
どういう意味か分からないフォルだったが、ロランが小指を差し出すと、フォルは黙って自分の小指を引っかけた。
そして2人は叫ぶ。
「ユニリンクッ!!!」
と。
青白髪のズルワーンは、ギルバートがいた場所、血の痕跡が残っている場へと来ていた。
不思議な事に、歩いてどこかへ行った様な血の跡がない。
ズルワーンは黙って、その場で何かを考えている様だ。
その時、ズルワーンの後ろの木々が吹き飛び、フォルが呼びに行っていたズルワーンが倒れながら滑り込んで来る。
「ズルワーン様っ!」
そう言ってフォルはズルワーンの前へと滑り込むように飛んで来て、青白髪のズルワーンを飛び散る木々から守る。
「どうしたのだ?フォル?」
「そ、それが…」
そう言ってズルワーンが飛ばされて来た方を見ると…目を紫に光らせた魔竜騎ナスラの姿が見える。
「そうか…コイツも…これは、なかなかに…」
そう言って、ズルワーンとフォル、魔竜騎ズルワーンは戦闘態勢へと入る。
魔竜騎リュウローは、サランを握ったまま何故か工場の方へと走っている。
「ちょ!チカラ、強い…マヂ痛い!チョベリバなんですけど?!」
腰より下を、リュウローに握られて身動きが取れないサラン。
魔竜騎リュウローの様子がおかしく、手のチカラも強くなっていっている。
「…コウ…ジョ…ゥ…ッ…マッ…ロヨ…ラ……ン…」
「リュウロー!マヂ離してって感じで!ギルバートが大変なんだってば!」
その声を聞いて魔竜騎リュウローは少し足を止める。
そして握っている手を、自分の顔の前に持って行きサランを眺める。
「…ラ…ン…、サ…」
眺めながら魔竜騎リュウローは何かを話す。
そして魔竜騎リュウローは
サランを牙が沢山生えた
口の中へと
放り込んだ。





