偽物
- 現在 プラン8工場地帯 近辺山中 -
赤い光のフォル、サランとギルバート。
3人は、今からロランが何を話すのか、全く予想すら出来なかった。口を開いたロランの言葉に、その場に居た全員が耳を疑った。
「君たちの中に〘偽物〙が居る…それはとても危険な存在で、厄介だ。恐らくズルワーンは、この世界に来てすぐ、それに気付いたんだと思う」
3人は、その〘偽物〙が何なのかハッキリと分からない。
この状況下でも辛うじて対応出来るフォルが尋ねる。
「その偽物ってなんなの?私たち3人の中に居るって事?」
ロランは、フォルの方を見て、しばらく黙っていた。そして口を開く。
「君はどうやって、この世界まで来たんだい?君はこの世界のフォルでは無いだろう?そして、この世界にフォルは居ないみたいだ。君が存在しているからね。分魂していないのが、その証拠だ…」
ロランはフォルに、人差し指を向けて言い放つ。
「偽物は君じゃないっ!!」
真剣な眼差しでドヤ顔をしているロランに、フォルが怒る。
「なんなのよ!それ!ビックリするじゃないっ!私は気付いたら赤い光になって、この世界の空をフワフワ飛んでただけよ!んで、騒がしい山の方へ来てみたらアイツらが居るし。それでアンタたちが入って行った方へ来たら、この姿になったのよ。。。」
と、言ってフォルは、自分の足があるはずであろう場所を見て…ため息をつく。
「ああ、ここは時空フィールド内だからね。外と切り離された空間と時間が流れてる。まだ残っててくれて良かったよ。それに君!ヒックを気絶させてくれてありがとう。おかげで僕が出てこれたんだ」
ニッコリ笑って手を振るロラン。ギルバートは身を震わせて飛び上がり、頷いて黙っていた。怖いようだ。けれどサランを庇う姿勢は崩さない。
「結論から言うと。偽物と言うのは、あのリュウローという青年。アレはこの世界のズレなんだ。あと、もう1人の女の子は謎だね。まさか魔竜騎になるなんて思って無かったよ」
サランが、ロランに質問すべく、右手を天に向かってまっすぐに上げる。ロランはそれを許可する。
「はい、そこの女の子、どうぞ」
「マヂ魔竜騎って、なんなのって感じ~」
「簡単に説明すると、人間の進化系だよ。いずれはみんな、ああなる。らしい…僕もその辺はあんまり分からないんだ、サトゥルーナがそういうのに詳しいんだけど…今はもう居ないのかな…?」
ギルバートが、口を挟む
「し、進化系って…あ、アレは機兵ではないのかい?!人と言うよりもロボットに近いだろう。それに、大きすぎるじゃないか…」
「進化の過程で、生命として繁栄する相手を見つける為に、その相手を奪われない為に、存在を誇示しようとする。そして人は争う。身も心も、守る為に。。。君にも似たような感情がありそうだけど?違うかな?」
ロランは無邪気な意見を言ったつもりだけれど、ギルバートには何か刺さる物があったようである。
「ただ、その反対もあるみたいなんだけどね…」
少し暗い顔になるロラン。
「じゃ、これはマヂ何なの~?!」
サランが両手を大きく上げる。その手には持ちっぱなしだった、2つに割れたハートの宝石が、煌めく。
「それは契約石さ。先人から受け継がれる心…とでも言うのかな。ただ、全員の気持ちが1つでは無かったみたいで、割れちゃってるけどね…なかなかに、みんなの心を1つにするのは難しいね」
ロランは、そう言ってニコやかに微笑む。
フォルが宝石の方へフワフワと飛んで行く。
サランとギルバートは怖くて震える。
それをフォルは睨んで
「逃げたら承知しないわよ?」
と脅すと、ギルバートとサランの顔は、青くなる。
「綺麗ね…あの解けなかった、コードに似ているわ…」
と言ってフォルが、宝石を触ろうとした時だった。
巨大な爆音と共に、周りの世界が大きく割れて砕け散る。
何か大きな影が、動いたと思い、皆が気配のする方を見ると、魔竜騎となったリュウローが、木と木の間から、こちらを覗いていた。
「ぎいいいいやあああああああっ!!!」
「うわあああああああああああっ!!!」
ギルバートとサランは、2人で叫びながら逆方向へと走る。
フォルは赤い光へと戻ってしまっていた。
「時空フィールドが無理矢理、外から割られてしまった…そんな事…あっ!ヒックが起きそうだ!2人とも!その宝石を何としても、あの紫の魔竜騎の胸に押し当てて…ユニリンクと…叫ん…で…ぇ。。。」
ロランの姿は消えて行き、ヒックが目を覚ます。
「あ、あれ…俺は…一体…」
「うわあああああっ!」
「ちょべりばあああっ!」
寝ぼけるヒックの横を、サランとギルバートが走り過ぎる。
そして魔竜騎リュウローが、こちらへ進んで来る度に、木々が割れて大きな音がする。その音でヒックは我に返り、飛び起き上がって走り出す。
「ぎょんわああああああ!!!」
ヒックは足が早いので、サランとギルバートを追い越して逃げて行く。
「サラン!僕だよ!リュウローだよ!サラン!」
魔竜騎からリュウローの声がして、サランは立ち止まり、振り向く。
「振り向いてはダメだ!サランちゃん!」
すると魔竜騎リュウローの手が、サランの目の前で広がりサランを掴もうとしていた。
足の遅いギルバートは、自分の横を巨大な手が通り過ぎ、サランに近付いて行くのが見えていたのだった。
サランの姿が、魔竜騎の手でギルバートから隠れて見えなくなる。
そこへ赤い光のフォルが、魔竜騎の目の前を高速で移動して視界を遮る。
ギルバートは、一生懸命に走った。
そして、サランの手を取り、引っ張って全力で走った。
「ギルバート…!」
魔竜騎の手に驚いて硬直していたサランは、ギルバートに手を引かれる事で、また走り出す。
「ありがと!」
感謝の言葉を述べるサランだったが、ギルバートは走る事で精一杯で、返事をする余裕はない。
するとサランは、ギルバートの前へ出てギルバートの手を取って走った。
魔竜騎リュウローは、虫のように手足を地面に着いて動かし、木々をなぎ倒しながら、四足歩行で追って来る。
「サ、サラン…」
2人の走る先にヒックが、見えた。
しかし、走るのを止め、立ち止まっている。
その理由は、ズルワーンとフォルが、目の前に立ちはだかって居たからだ。
サランとギルバートは、ヒックの元へ辿り着いたが。
前方にはズルワーンとフォル。
後方には魔竜騎リュウロー。
という状況である。
ヒック達3人は、アイコンタクトをして、左右に走り出す。
ヒックは左へ。
サランとギルバートは右へ。
すると魔竜騎リュウローは、サラン達を追って行く。
そしてズルワーン達もサラン達を追う。
それに気付いたヒックは
「え?!ちょ、ちょっと?!俺は?!」
と言って、方向転換をして、全員を追いかける形となる。
なぎ倒された木々を避けながら、サランとギルバートの元へ行こうとするヒックに、ズルワーン側のフォルが、軽めの魔弾を放つ。
飛んで来た木片の1つを避けたヒックだったが、フォルが放った魔弾を、顔面で受け止めてしまい、爆発で吹き飛ばされて気を失ってしまった。
魔竜騎リュウローの速度は早くギルバートが、魔竜騎リュウローの、その片手に捕まってしまっている。
そして。
サランまでも、もう片方の手に握られてしまった。
2人を掴んだ魔竜騎リュウローは、立ち上がりその場に制止する。
サランは、胴体部分を握られている為、魔竜騎リュウローから両手が出ていて、その手には輝く石がしっかりと2つ握られている事が確認で出来る。
「さぁ、サラン…それを僕の胸に当ててくれよ。サラン…」
魔竜騎リュウローは、自分の胸に手を近付けて、サランが持つ宝石を胸に当てさせようとする。
「ちょ!ホントにリュウロー?!ま?!」
サランは戸惑っている。
そこへズルワーンが、飛来する。
「さぁ、その宝石をこちらへ…」
ズルワーンは、サランへ手を差し出す。
「サランちゃん!」
ギルバートは、反対側の手の中でジタバタしている。
「それを早くズルワーン様に渡しなさい!」
フォルも続く。
しかしリュウローが、ギルバートを手放し、その手でズルワーンとフォルを追い払う。
ギルバートは、そのまま木の枝に引っかかりながら、茂みへと落ちてしまう。
フォルは、魔法を放ち、魔竜騎リュウローへ攻撃する。その際にサランを握っていた手が緩み、魔竜騎の手から落下し山道へと落ちる。
この高さから落ちたら無事では済まない。
サランが、そう考えた時だった。
茂みからギルバートが、飛び出して来る。
サランには、横目でそれが見えた。
ギルバートは、一生懸命に走っていた。
サランは、落下しながら空を見る。
ギルバートは、間に合わないと思い、足からスライディングして、サランと大地の間に滑り込む。
そしてギルバートは、胸でサランを受け止めたが、そのチカラを受け流すのに、2人して大地を転がる。
泥だらけになる2人。
少しの間、動けずに居た。
「だ、大丈夫かい?サラン…ちゃん…」
上体を起こしたギルバートは、自分の胸に居るサランへと声をかけた。
「…いてて…マヂ感謝!ありがとう!ギルバート…」
涙目の笑顔をサランは、ギルバートへ向けた。
ギルバートは、サランを守ったのだ。
しかし、すぐにギルバートは、上体を後方へ倒してしまう。
「だ、大丈夫っ?!ギルバート!」
そう言ってサランは、体を起こしてギルバートの上から退く。
「サランちゃん…無事かな…?」
少し力無く答える。
ギルバートの胸には。
ハートの宝石の片方の一片が。
刺さっていた。





