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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
時空の章
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18/129

ロッシー

 

 魔竜騎ヒックは、軍服フォルが操縦士となった途端に、魔竜騎ズルワーンへと攻撃を仕掛けた。

 その戦術は、フォルの大好きな、ロランの体術を思い出させる。


「剣はないの?武器とか?魔法は私が使える魔法しか使えないの?!もっと凄いの何かないの?!直接攻撃はこれが限界よ!」


 軍服フォルは、ズルワーンへと攻撃を繰り出しながら、ヒックに話す。が。


 〈今は出せないが何とかしてくれ!〉


 と答えるだけだった。


「圧されているぞ、フォル」


「分かっています、でも…っ!」


 青白髪の男に言われて、困惑の表情となる敵フォル。


「アレの使用許可を…」


 ヒックから繰り出される体術を、避けて大きなダメージは喰らわないようにしている赤服フォルだが、そろそろ限界という風で、何か奥の手を出そうとしている。


「私が出てもいいのだが…相手がフォルだからな…分かった。使用許可を受理する」


「ありがとうございます。ズルワーン様」


 赤服フォルは、青白髪の男にそう告げると、ヒックの隙をついて後方へ吹っ飛ばす。そこから距離をとり、詠唱を始める。


「我が、フォルヒックトゥーナの名の元に!魔竜騎ズルワーンの名を昇格せん!時空の覇者へと名を馳す!赤き雷光、蒼き咆哮!時空召喚!出てきなさいっ!我が愛しの魔杖スカーレットMark.06!」


 その叫びと共に、空には大きな黒い渦が出来る。

 その中心より現れしは、薔薇の様な形と色をした巨大な杖であった。

 それは魔竜騎ズルワーンの前へ、空から降りて来る。

 魔杖スカーレットMark.6は、形状を変え分裂し、ズルワーンの頭、肩、胸部、足へと装備される。

 それを確認した赤服フォルは、静かに唱える。


「いでよ、ドラグランサーロンド… 」


 すると魔竜騎ズルワーンの右手に、赤い稲妻で出来た槍が現れる。その赤い巨大な稲妻は、ズルワーンの肩まで伸びて来ている。


「ちょ、、、先越されたわよ!なにあのヤバそうなやつ!!」


 軍服フォルも、その強力な魔力兵器にたじろいでいた。


 〈流石にあれはヤバい、なんとか避けてくれ!〉


「なんとか避けてくれじゃないわよ!」


 流石に、ここまで優勢だった軍服フォルと魔竜騎ヒックも、どんな攻撃が来るのか分からないので困惑している。


 魔竜騎ズルワーンが、さらに後方へ下がると、投擲の構えとなり、走って、その巨大な赤い稲妻の槍を投げる。


 それをただ見ていた、軍服フォルと魔竜騎ヒックだった。


 いや見ていたというよりも、槍の速さが早すぎて、投げたと同時に消えたのだ。

 次の瞬間、軍服フォルと魔竜騎ヒックは、身体に凄まじい電撃を受けた感覚が走り、辺りは赤い稲妻が、薔薇の蕾となり、それは開花して薔薇となった。


 その衝撃でヒックもかなりのダメージを受け、声が出せないで居たが、魔竜騎が受けたダメージと、直接広範囲の雷撃に巻き込まれた軍服フォルは、気を失い森の中へと落ちて行ってしまった。


 すると魔竜騎ヒックのボディから赤いラインは消え、全身が白に戻ってしまう。操縦士が居なくなってしまったヒックは、勿論動けなくなり、魔竜騎ヒックも意識を失ってしまった。


 それを離れた大木の下で、ただ何も感じずに、眺めていただけのロッシーの目の中に、光は無かった。


 (私は、何を見ているのだろう。夢かしら?あの子が戦う様になってからヒックの声も聞こえなくなったし、痛みも感じなくなってしまったわ。服も元々の服に戻ったし。こんな所に居るのも場違いな気さえする…)


 ロッシーは、あの黒い本の内容を思い出していた。

 

 (そうあれは時空魔竜騎、そして私が受理したのは決戦決闘、あの子が出したのは時空召喚、そして今、ヒックとフォルは負けた。決戦決闘に負けた者は、その魂を相手に差し出す…)


 動かない魔竜騎ヒックに、魔竜騎ズルワーンが近づく。

 軍服フォルは、森へ落ちたまま反応は無い。


 (私は、昔から本が好きだった。物語が好きだった。そうじゃ無い本も好きだった。本の世界の中で想像して、そこで色々な冒険がしたかった。ドキドキが待っていた。心を揺れ動かされた。そして今、それは現実となり、私はそれを受け入れないでいる。

 あんなに望んでいた本の世界を、私は今、目の前で見ている、感じている、ううん。私が主人公だと思っても良い。あんなに憧れたものが現実となったのに、私は恐れて虚偽だと思い、世界を否定している。説明が無いと怒り、無理矢理に巻き込まれたと思っている。

 嫌ならもっと断るべきだった、嫌ならもっと逃げるべき時があったと思う。私はわがままなのかしら?)


 魔竜騎ヒックの身体が、元の人間の身体へと戻ってしまった。そしてヒックもまた、意識を失ったままだ。


 (ううん。最初は楽しんでいたわ。怖かったけれど、不思議な体験を。不思議な人との出会いを。不思議な本との出会いを。でも加速していく物語に、私は置き去りにされ、着いて行けなくなってしまった。

 自分の物語なのに、自分の物語だけ置き去りにされてしまったような怖さを、感じずにはいられなかった。私が止まっても物語は進んで行くの。それは私が止まっても。時間は止まらないからだわ…。

 たとえ私が主人公だとしても。何もしなくても。物語は刻刻と進む。この自分で乗った物語を、また動かすのも自分。望んだ世界で生きれない私は、どの世界で今後生きれると言うの?

 私の世界、私の物語。他の誰のモノでもない。

 私の覚悟が足りないまま、物語が進んで、その物語が、いつか迎えに来るのを待ってるだけの私。例え、誰かに助けられる物語だとしても、ここに来る途中、その物語さえも壊れてしまったら?私はずっと止まったまま、ここに1人で居るの?居れるの?

 何が正しいのかなんて分からない。だけれど…。今を。

 この今を生きている物語から、降りて歩くのも…走るのも、私。

 私っ…私は…っ!…!!)


 ズルワーンが、人に戻ったヒックの前へ来ている。

 赤服フォルが、ズルワーンの肩からヒックの前へと降りて来た。


 泣き顔のままロッシーは、立ち上がった。

 そしてヒックへ向かって、全速力で走り出す。


 息をする事も忘れる程に、走る事だけに集中する。


「…ッハ!」


 と肺が、悲鳴をあげて酸素を取り込む、息を荒くし、足が動く速さは、今までの自分が知らなかった速さだ。だから、ただ前へと走った。ズルワーン達に気づかれない事を祈って、ただ走る。


 あと

 100メートル、、、


 赤服フォルが、ヒックの胸に手を当てている。

 ヒックと赤服フォルの胸に、ハート型の光りが浮かび上がる。


 80メートル


 青白髪の男が、走って来るロッシーに気づいた。


「おや?あの少女は、まだ居たのか…」


 70、65、


 赤服フォルも 走って来るロッシーを、肉眼で確認する。


 50、46、43、、、


 ヒックの身体が、宙に浮く。

 ヒックの胸に浮かぶハート型の光の中に、フォルが手を入れる。


 30、28、26、22、、


(まにあわっないっ!!)


 そう思うロッシーの顔は、全く諦めていなかった。


 赤服フォルが、ヒックの胸から、手を一気に引き抜こうとした時。

 ヒックの首に掛かっている青いペンダントが光り、小さな魔法陣が現れる。その魔法陣から急に、爪の長い手が出て来て、赤服フォルの手を凄いチカラで握る。


「いっ!痛いっ!!」


 驚いた赤服フォルは、ヒックの胸の中で握っていた何かを手放し、ハート型に光るヒックの胸部から手を引き抜いた。


「何だと?!」


 青白髪の男も、驚きを隠せないで居る。


 3!


 その事に気を取られている隙に、涙を拭うロッシーが、走って来ている。


 2!


 ヒックの目前まで迫るロッシー。


(しまった…っ!)


 と思った赤服フォルと青白髪の男は、ロッシーを止めようとする。


 1!


 ロッシーは、宙に浮いたままのヒックへ向かい、思い切り大地を蹴って、飛んだ。


 そしてヒックの小指に、自分の小指をかけて、こう叫ぶ。



「ユニリンク!!!」


 と。





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