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時空魔竜騎アースガルンプロット.  作者: 一ノ元健茶樓
時空の章
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終焉

 

 ヒックの胸が光っているのが、ボヤけた視界でも確認出来た。


(何か嫌な予感がする…それに最初から私が戦わないとダメだったのに!

 私のせいで、あの2人はこうなったんだ。

 責任だけでも取りたい。

 嘘だって本当だって今はどっちでもいい!

 私は2人を守るわ!それだけよっ!!)


 ヒックの意識が無いのが気がかりだったロッシーだが、恐らく、この一瞬しかチャンスが無い事を知っていた。


 この一瞬を絶対、自分のモノにするのだと。


 強い想いを、このチャンスに、この一瞬に、全力を出して、賭けたのだ。


 ― そして ―


「ユニリンク!!!!」


 宙に浮くヒックの小指に、自分の小指を引っ掛けた時、それは当たりだった事に気づく。


 目の前が一瞬、真っ暗になり、辺り一面は黒い稲妻に覆われ、意識を失ったままのヒックは黒い魔竜騎ヒックとなった。

 ロッシーの服も、操縦服へと変化して行く。


 近くに居た敵フォルは、変身の衝撃で後方へ吹き飛んだが、青白髪の男が受け止める。


「あの娘は、なぜヤツとユニリンク出来るのだ?何なんだ、あのアイツは、、、」


 青白髪の男は、驚きを隠せないでいる。


「こないだの戦闘で、私はあの女に吹き飛ばされ意識を失い、その間に逃げられたのです」


 抱えてるフォルを一瞬、覗き見て、またロッシーの方へと視線を移す。


「私のフォルが負けただと?」


 青白髪の男は、メガネを上げる動作をして、表情を変える。


「わかった。もう相手は、この世界のフォルではない。私が出る。フォル、君はどこかで休んでいてくれ。行くぞ、ズルワーン。私が君を操る。いいな?」


 〈 分かりました。ズルワーン様〉


「ズルワーン、ズルワーン様、あとは頼みますね…」


 と言いながら、フォルは後方の岩場へと避難する。


 その間チャンスなのに攻撃を仕掛けないロッシーは、相手の出方を待って居たのではなく、ヒックが起きないので魔竜騎を動かせないでいたのだ。


(え、やっぱりユニリンクで変身は出来ても、2人の意識が無いと動かないんだ?!色もいつもと違うし。。。ど、どーしよー?!起きてヒック!起きて起きてよ!私よ!頑張るから!起きてー!)


 と何度も、心の中で叫んでいたが、遂に声が出てしまった。


「起きてー!ヒックー!!」


 それを青白髪の男は聞き逃さなかった。


「なるほど。ユニリンクしたのは見た目だけと言う訳けか?驚かされたよ。では、コチラも…ズルワーン!バイパス!」


 ズルワーンの小指に、自分の小指をつけた青白髪の男が、そう叫ぶと魔竜騎ズルワーンの形状が、蒼き雷撃と共に変化していく。


 魔杖スカーレットMark.06はパージされ消え。しかし、青いボディに色味の薄い青ラインが、顔や腕や身体や足などに増え、それは光を帯びている。

 全体的な大きさも細身がかったようになり、顔にあるマスクの様な物が外れ、中から牙が生えた口が現れ、恐ろしい表情の魔竜騎ズルワーンとなる。


「なんだかヤバそう…ヒック!ヒックてば!起きて起きて起きてーーー!!!」


 なり振り構わないロッシーは、もう叫ぶしか無かった。


 蒼き魔竜騎ズルワーンが、こちらへと攻撃を仕掛けようとして来るのが分かる。


「さぁ、決戦決闘の第2ラウンドだ、今度こそ貴様の魂、貰い受ける!」


 青白髪の男はそう言うと、魔竜騎ヒックへと回転蹴りを食らわそうとして来る。


「きゃあああっ!」


 とロッシーが叫ぶと同時に、魔竜騎ヒックの身体が一瞬で白く発光し、白基調の黒ラインが入った魔竜騎ヒックへと変化する。


『待ってたぜ!ロッシー!』


 そして魔竜騎ヒックは、ズルワーンの攻撃を僅差で受け止めた。


「なにっ?!」


 青白髪の男が驚く。

 その受け止めた足を、両手で掴んで回転し、ズルワーンをそのまま投げ飛ばす。


「どおおおりゃああああ!!」


 ロッシーの叫びが辺りに響く。


 投げ飛ばされたズルワーンは、空中で体勢を整え、倒れる事無く着地し、勢いで後ろへと引き下げられる。


「何だアイツは!何処から沸いて出て来たんだ !何故あんなに魔竜騎を操れる?!」


 ロッシーは、戦う意思を決めた。

 今ので自分は戦えると確信したからだ。

 もうこれ以上、自分のせいで傷つく人を見たくない。

 たとえ、相手を傷つける事になったとしても。


「はああああああああっ!」


 魔竜騎ヒックは、前方へ凄い速さで走り出し、ズルワーンの前で急停止すると、膝を真上に上げて、ズルワーンの顎へ足を伸ばして当てる。

 ズルワーンの顔と身体が、離れそうな程に伸びて、そのままの勢いで、身体ごと宙へと持ち上がり、ダラりとし体勢になる。

 そのままロッシーは、ズルワーンの腹部へ渾身の右ストレートを放つ。


 それは魔竜騎ズルワーンの腹部にメリ込んだ。

 魔竜騎ズルワーンは、決戦決闘結界の端まで吹っ飛び、壁にぶち当たって、うな垂れる。


「ズルワーン様?!」


 青白髪の男もその勢いで後ろに下げられる。

 それを心配したフォルが、青白髪のズルワーンの元へと飛んで近寄る。


「来るな、フォル、大丈夫だ」


 青白髪の男は、フォルを止めて立ち上がる。


 ロッシーは、このまま戦って勝ち目があるのか、勝敗が着くのか、少し戸惑っていた。また先程みたいな大技を使われでもしたら、対処出来ないと考える。

 黒い本に、何かヒントが無いか頭の中で検索している。しかし、戦闘中と言う事と、情報量が多過ぎて中々に思い出せないでいる。


 少し考え過ぎている間にズルワーンが、間合いを詰めて来ていて、それに気づくのが遅れる。


「この距離ならばっ」


 ズルワーンは、高くジャンプし、手から何かをばら撒いた。

 何が降って来るのか分からないロッシーは、ヒックの手の下に隠れ、ヒックも防ぐ体勢をとる。

 ばら撒かれた物は、ただの石で、普通の人間なら致命傷になる大きさと数だ。


 先程、遠くに飛ばされた時、近場の岩でも砕いて掴んで来たのだろう。

 そしてロッシーは、それが罠だとすぐに気づいたが遅かった。

 背後に着地したズルワーンは、ヒックの胴体をガッチリと掴み、そのまま体勢を後ろへと逸らし、魔竜騎ヒックをバックドロップする。


『クッゥッ!』


 ヒックは、後頭部に激しい痛みを感じ、ロッシーもダメージを受ける。

 ロッシーは、操縦士よりも魔竜騎の方がダメージの痛さが高い事を悟り、魔竜騎そのものが気を失う事こそ、負けを意味するのだと気づいていた。


 プリンセスと、それを守るナイトはどちらが欠けても終わりを迎えてしまうのだ。


 だが、それはあちらも同じ事。


(あの大技が、きっとこちらにも何かあるはずよ。それを向こうが先に出す前に必ず勝たないとダメだわ…。

 時空召喚という物が存在するのは読んだ。でもその方法までは流石の私も現実離れし過ぎてて、読んでても頭に入って来なかった、失態だわ。でも思い出せるはず…だから!)


 バックドロップの痛みが残る中、その体勢のままドラゴン形態へと変形し、その形状変化と翼の風圧で、ズルワーンから引き離す。そして上空へと一旦避難する。


「このまま時空に穴を開けて退避するのはどうかしら…決戦決闘結界の中では無理だと分かっているけれど、、、」


 〈それは危険だロッシー、恐らく俺達がその反射のダメージを受けてしまう〉


「そうよね、、、何か、何か無いのかしら…時間さえ稼げれば…」


 そして何かを思いついた表情をするとロッシーは、アレをもう一度試して見る事にした。成功すれば時間稼ぎか奇襲にはなると考えたのだ。


 ロッシーは、自分の髪の毛を1本、、、いや、数本抜いて目を閉じる。精神統一をして空間をイメージした。あの時の、怖い、空間を。


 そしてロッシーは、目を開ける。。。

 すると周りは真っ暗になっていた。


「ねぇ、ヒックいるの?!」


 〈あ、ああ!いる!今、俺の頭の上にいるんだよな?! 〉


「そ、そうよ!真っ暗で何も見えないのは私だけかと思ったわ」


 〈 いや、急に黒い物が視界を覆って何も見えなくなってしまった、これはどのくらいの範囲魔法なんだ?!〉


「分からないわ、、、試しにしてみただけだから」


 〈 まぁ奴らも動いてる気配はない。恐らく突然の魔法で驚いているのかもしれないが、ヤツもすぐにこれに気づぃ…〉


 その時ロッシーは、今まで感じた事の無い激しい痛みが両肩に走った。

 そして真っ暗だった空間は、すぐ元に戻る。


 《身体のチカラが抜けて、本能的に危ないと思い、私は地上へと降りた。途中に私は、普段の服に戻り、ヒックは、人に戻って気絶しているようだった》


 《私の方が早く地面に着地した。ヒックが落ちて来るのを、何とか受け止めようとした。何とかヒックの身体を私は受け止めた、だけど何が起きているのか分からなかった》


 ― 何故なら、ヒックの両腕が無くなっていたのだから ―


 ズルワーンの両手には、青く光る2本の刃物の様な物が、手の先から伸びている。


 そして青白髪の男が、凄いスピードでロッシー達の方へ飛んで来ている。

 そしてロッシー達の目の前で、急停止すると、眩い光が辺りを包む。


「魂を頂くっ!!」


 そう叫んで、胸のハート型の輝きから、迷いなく一瞬に魂を引き抜いた。

 すると決戦決闘の結界は消えて、荒れ狂う終わりを迎える世界へと同化される。


 そしてロッシー達が居る、浮かぶ大地は小島の様になり、世界へと落ちて行く。


 ロッシーは、目の前の光景を疑った。

 引力に逆らえないヒックを、抱きしめているロッシー。

 涙が、一瞬にして溢れ、ただ下へと落ちて行く。


 そして青白髪の男も、驚愕と苦悩に満ちた顔をしていた。


「もう、ロランに、手出しは、、、させない…」


 あの刹那、青白髪の男とヒックの間に入ったのは、この世界のフォルだった。

 魂を抜かれたのは、この世界のフォル。

 ヒックは、両腕を切り落とされた。

 1度負けたフォルの魂を抜く事で、決戦決闘は終焉したのだ。



 -私はただそれを見て、泣く事しか出来ていなかった-



 そして、その時またペンダントが光り、ロッシーたちが落下して行く先に小さな黒い渦が現れる。


 ロッシーとヒックだけが、それに吸い込まれた。


 フォルは言う。


「私のロランを、頼んだ、わよ…」


 そして、フォルは目を開けたまま意識を失った。


「な、何故だ…フォル…」


 青白髪の男は空中で、この世界のフォルを抱き、膝をついて停止している。その後ろにはドラゴンフォームの魔竜騎ズルワーンと、負傷したフォルが居た。


 青白髪の男は、フォルから抜いた魂を、抱いているフォルの胸元でハート型に光る魔法陣の中へと、戻そうとするが戻らない。


 抱きかかえられているフォルは、そっと目を閉じて眠るように、その蕾を閉ざした。


「…フォル、こちらへ来てくれ」


 青白髪の男は顔を伏せたまま、ズルワーンの頭に座って居たフォルを呼ぶ。


「はい」


 フォルはゆっくりと飛んで来て、青白髪の男の横へ停止して、青白髪の男に声をかける。


「大丈夫ですか?ズルワーンさま…」


 呼ばれて来たものの、何も言わない青白髪の男が、心配になったフォルは声をかけた。すると青白髪の男は、何も言わずにフォルの手を握った。


「…あっ」と小さく声が漏れ、頬を染めるフォル。


 すると青白髪の男は、フォルの手を引き、抱いているフォルの手を握らせた。

 そしてその真ん中には、先程手に入れたフォルの魂が宙に浮いている。


「あぁ…何度繰り返しても慣れないものだな、これは…」


 青白髪の男は、2人から少し離れると小声で何か呟いた。

 次の瞬間、魂が大きな光の爆発を起こし、2人のフォルを青い円球の光で包み込む。その光は中心へと向かって縮小して行く。


 そして2人のフォルを飲み込み、小さな手の平くらいの大きさまで縮小する。

 その青い玉はとても綺麗な、透き通った色をしていて輝いている。


「大好きだよ、フォル」


 青白髪の男は、それを手に取り握りつぶした。

 その手から青い光は消え、握った手からは赤くドロドロとした、血の様な液体がとめどなく溢れて来ている。

 それは人の形を形成し、フォルへと形をかえていく。その顔色はとても良く、先程の負傷したフォルとは別人の様である。


「ズルワーン様、ありがとうございます。私はまたひとつ完璧なフォルヒックトゥーナとなりました」


 と言いながらフォルは、スカートの裾を持って少し上げ、足を後ろに組んで、頭を下げる。その目は青く輝いている。


「おかえり、僕のフォル…。さぁ、アイツを見つけに行こう。早く完璧な、時空魔竜騎を完成させなければ…」


 すくと立ち上がり、白衣をひるがえしてズルワーンへと進む。

 フォルもその後を追う。フォルが詠唱すると、空は割れ2人のズルワーンとフォルは、黒い空間へと消える。


 全てが居なくなった惑星は、数光年離れた所からも時を超えて確認出来る程の爆発を生み輝いた。


 そして暗黒と同化し

 宇宙の藻屑となる。


 ただ、そこに小さな赤い光を残して…。




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