95 痩せたら可愛いって言ったらぶっ殺す
そこにいたのは巨漢。
いや、今のは例えが悪かったな。
そこにいたのはボリューミーな女子達。
しかも何もかも大ボリューム。声もガタイも胸も腰もデカい。
これ以上の描写は人権団体からクレームが来るから差し控えよう。
ふくよかでポッチャリでなんというか――デブだった。
こんなことを言ったらポリコレ団体から大クレームなのは分かっている。
だが言わせてほしい。
美少女慣れした俺の目にとっては猛毒。
「私が部長の市川よ。貴方が有名な転校生ね。あらやだ可愛いわオホホホ。ちなみにそこの目付きの悪い男子。私のことを痩せたら可愛いって言ったらぶち殺しますわよ」
これは御丁寧に挨拶していただいて、って最後になんて言った? ぶち殺すって言わなかった?
まあ、俺は穏便で心がガンジス川のように澄み渡っているガンジーボッチだから、こんなことでは怒らない。
だが出会って早々宣戦布告なんてしたら戦闘民族の末裔である俺の眷族が黙ってるはずがない。
「ギョア」
案の定、ミルフィーの眉間に深いヤンキーばりの皺が刻まれた。
そして噴出する殺気。
ミルフィー待て、それは人間だ。魔物じゃない。
俺は怒っていない。例え目付きの悪いボッチだと言われても怒ってはない。
こんなことで反応するな。
ちょっとだけ、ふくよかな、太った、ええい、デブだけど人間だから早まるな。
「ギョイ?」
ミルフィーが疑念の目を俺に向ける。
本当だ。こんな所に魔物がいるわけないだろ?
「ギモ」
でもじゃない。
オークにちょっぴり似てるかもしれないけど、クロオークはミルフィーのボットモだろう。
あれはクロオークに似ている。
だからクロオークが悲しむぞ。
そもそも今抜こうとしているダブルアックスはクロオークのものだろう?
「ギョエハギョマル」
そう、それは困るだろう。
ネゴシエーターボッチたる俺の説得でミルフィーが納得し始めた。
そうだ。だからここは落ち着いてクロオークの話を聞こうじゃないか。
「ギョイ」
「我が洋菓子部は全国大会を目指す本気の生徒から。彼氏にお菓子を作る甘ーい生徒まで幅広い層の生徒がいるのよオホホホ。そこの目付きの悪い男子。痩せたら可愛いって言ったらぶち殺しますわよ」
「……」
ミルフィー。慌てるな。俺は心の中でミルフィーに言った。
「ギョ、ギョイ」
「だから心配しなくてもいいのよ。オホホホ。さあ。まずは試食してみる。私達全員、毎日洋菓子食べ過ぎで太っちゃったのよオホホホ」
そりゃ毎日高カロリーの洋菓子を食ってたらそうなるわな。痩せたら可愛いって連呼してるってことはよく言われるのだろうか?
確かにパーツは整っている。
脂肪が邪魔して陥没パーツもあるが――これ以上はいけない。
俺は粗探し大会を辞めたのだ。クロオークの良いところを探そう。
このふくよかなデブな部長の良いところを。
クロオークに似ている。柔らかそう。
ダメだ、良かった探しをしているつもりでも悪い所探しになっている。
これではポリアンナ効果の真逆だ。
「ギッテギテギイ?」
ミルフィーが行ってきてもいい? と俺を見る。
洋菓子に釣られたのか?
ああ、行ってこい。
「ギョイ」
ミルフィーはボリューミーな女子達に連れて行かれた。
心配だ。ミルフィーは暴れないだろうか?
食いすぎないだろうか?
上手くコミュニケーションできるのだろうか?
コミュニケーション能力でいえば俺よりも遥かに上だ。杞憂だ。
だが可愛いミルフィーを見ず知らずの部屋で一人にさせるなんて本当に大丈夫だろうか?
「トーリ君。後は私がミルフィーちゃんの面倒観るから大丈夫よ。終わったらメールするね。アドレス教えるからスマホ貸して」
俺がミルフィーの身の上を無駄に案じていると高山さんが手を差し出してきた。
なんだその手は? 金が? 金が欲しいのか?
俺が金ボチだと何故知っている?
「スマホ出して」
「はあ」
命令口調で上から目線で言われた俺は慌ててスマホを高山さんに差し出した。
「うわ、何だかベトベトする」
「……」
それはそうだろう。
俺のスマホはクロミズのボット細胞で覆われてヌルヌルだからな。
現役女子高生の高山さんに触られてクロミズも嬉しそうだ。
いつもよりテカっている。
「はい」
高山さんが俺にスマホを投げ、ハンカチで手を拭き洋菓子部に入って行った。
俺のスマホを触った後に手を拭くなんて失礼だろうが?
だが怒ってはいけない。ミルフィーの面倒を観ると言ってくれたのだ。
信じられないことだが俺のスマホにまた一人、女子のアドレスが追加された。
洋菓子部員の高山静穂さんだ。
「トーリ君はこの後執行部行くの?」
俺が心配そうに洋菓子部の扉を見つめているとミケがそう言った。
「いや、今日はもう行かない」
「じゃあ、うちの電算部来る? 例のアプリインストールしようか?」
ミケの笑顔が開いた。
「おお? 例のアプリってまさか」
「そうオートマッピングのアプリだよ。ベータ版だけどトーリ君のスマホでテストしたいし」
「おおおお」
――電算部。
「ようこそ。電算部へ」
ミケが手を広げた。
「入って入って、ああ、みんな集中してるから気にしないで」
そこは冷房の効いた暗い部屋だった。
姿が見えないがキーボードの音の聞こえる。
よく見れば、光るモニターを一心不乱で見つめる生徒達がいた。
皆、キーボードを見ることなくカタカタしている。
そして俺が入っても誰も見向きもしない。
この圧倒的な無視。なんだかほっこりする。
最近クラスメイトの社交性に当てられ、少しクラクラしていたんだが、こういう他人を抹殺する無視はむしろ心地良い。
何だかとても親近感を感じる。ああ、無視ってやっぱ最高。
無視してくれてありがとう。
「ごめんね。愛想悪くて。座って座って」
ミケが椅子を俺に勧めた。
ミケの机なのだろうか? 参考書の山の綺麗な文字の付箋がモニターに貼られている。
「トーリ君、スマホ貸して」
「ああ」
「ロック解除して」
「ああ」
「じゃあインストールするね」
「ああ」
ミケが何やらカタカタターンとキーボードを叩いた。
ロード画面のようなメーターがスマホとパソコンに表示された。
「前にも少し説明したけど、スマホの三軸加速センサーから位置と方向をサーバーのAIで予測計算しているからGPSが届かない屋内でも使用できるはずだけど、処理にタイムラグがあるから気をつけて」
「はあ?」
「サーバーの性能が上がればタイムラグは減るんだけど、流石に高くて買えないからね」
ミケが電算部の奥のガラス張りの部屋を見ながらそう言った。
「いくらすんの」
「五千万ぐらいかな」
「は?」
「スマホの性能が年々向上しているからそれに期待と、将来的にはカメラで周囲の映像が撮れると三次元データ化できるんだけど」
「いやそこまではいらない」
「そう? 自動運転のAIボードが出始めてるからそっちを使えるとまた変わってくるかもね?」
「はあ?」
もうミケが何言ってんのかまるで理解できない。
それにそこまでの性能は必要ない。
そもそもダンジョン内でカメラを構えて進めないしな。
「はい。完了ッと。起動するにはこのアイコンね」
ミケが細い指で俺の可愛いアイコンをタッチして、起動させた。
そこには方眼紙のようなグリッドが並び、赤い三角が点滅していた。
「すげー」
俺は心底感動した。
「いえいえ、ショボくてごめんね」
「いや。凄い。でもアプリってこんな簡単に作れるのか?」
「うん。簡単のならね。パテント関連も個人使用だから問題だけど問題ないから」
「はあ テント?」
「とにかくテストテスト。歩いてみよう?」
「ああ」
俺達は電算部を出て廊下をスマホを前にかざしても歩く。
「トーリ君。歩きスマホになっちゃうから、ポケットにしまってても大丈夫だよ」
「え? そうなん」
「うん。三軸加速センサーはカメラじゃないから」
「へえ」
「トーリ君。へえとか禁止って言われなかった?」
「ああ。おっと、鞄に入れててもいいのか?」
「うん。バッテリーの消費が激しいけど」
俺とミケは校内を歩き始めた。
時折スマホを取り出し、二人で眺める。
歩いた方眼が塗りつぶされていた。
凄い。俺の足跡が、ボッチの生きた証がここに刻まれた。
「上手く動いているみたいだね」
完璧だ。これさえあれば手描きマッピングから解放される。
「凄い。あとはこれがダンジョンでも動けばいいが」
「え? ダンジョン?」
ミケが俺の顔を覗き込んだ。
「え? なななな、なんでもない」
俺は激しく動揺した。
「今ダンジョンって言ったよね?」
「……」
俺は無言で答えた。
「もしかして流行りの位置ゲーでもやってるの?」
「そ、そう。俺も位置ゲーやってみようかなって」
なんか知らんが助かった。
それにしても危なかった。思わずダンジョンって口に出していた。
「あーなるほど。他のアプリと同時に立ち上げることを失念していたよ」
ミケはダンジョンに入れないはずだ。
いや本当に入れないのか? もしかしたら入れるかもしれないだろ?
入れなくともクロミズのコア核の破片を食べさせて無理矢理、眷族化する方法もある。
だが真面目で善良な市民のミケを殺伐とした弱肉強食のダンジョン界に巻き込みたくない。
「ミルフィーの様子が気になる」
俺は話を逸らすように言った。
「じゃあこのまま洋菓子部まで行ってみようか」
俺の作戦は成功し、俺達は洋菓子部の前に到着した。
中から女の子達の歓声が聞こえてきた。
とっても悪い胸騒ぎと悪い予感がする。
「なんだろうね? 入ってみようか」
「え? いいのか」
「いいでしょ。失礼します」
ミケが洋菓子部の扉を開けると、ボリューミーな部員達がミルフィーを囲んでいた。
食われている?
いや、逆だ。食っているのだ。
「ミルフィーちゃん凄い。まだ食べれるの?」
「ミルフィーちゃんが食べてくれると助かるわあ」
「作ったの捨てられないしダイエットできなく困ってたのよね」
大食い選手権が開催されていた。
「ミルフィーちゃん、お昼結構食べたよね?」
ミケが呆れたように呟いた。
「ああ」
俺は呆れたように相槌を打つ。
ミルフィーがミルフィーユを両手で口に放り込んでいた。
共食いじゃん。
「あ、ギョーリ。ミルフィーギョウギャシギュにギャイル」
ミルフィーが洋菓子部に入ると言った。
確かに食材に溢れたここはミルフィーにとっては天国だろう。
「ああいいぞ」
俺はダンジョンで一人ボッチだったミルフィーを思い出し、泣きそうになる。
良かったなミルフィー。腹いっぱい食えて。みんながいて。
そしてここなら皆に必要とされる。
自分が必要とされるのは素晴らしいことだ。
「ギャイ」
ミルフィーがクリーム塗れで笑った。
「あら、トーリ君、こっちから連絡したのに。はいこれ食べて」
高山さんが俺に崩れたミルフィーユを差し出した。
「ありがとう」
俺は受け取ると同時に一口で食べた。
「うまい」
「え? 本当? 甘すぎない?」
「いや、うまい」
「そ、そうなんだ。まだあるけど?」
高山さんが崩れたミルフィーユを指さした。
「失敗したから捨てようかと思ってたの」
「勿体ない食べる」
「え? 本気?」
「ああ、それに」
俺は飛び散った卵や凹んだボールを眺めた。
聞かなくとも分かる。ミルフィーがやらかしたんだろう。
「ああ、あれは気にしないで。それにミルフィーちゃんなら卵混ぜ大会で優勝できるかもね」
高山さんがウィンクした。
洋菓子部員の高山さん。思ったよりもいい奴じゃないか。
ミルフィーも彼女に任せれば安心だ。
「は、はは」
俺は愛想笑いを浮かべた。
ミルフィーが卵混選手権で優勝することを思い浮かべて。
「怖いんですけど? 真顔で笑わないでくれる?」
高山さんが俺のことをゴミを見るようにな目で見たその時、滅多に鳴らない俺のスマホが震えた。
俺は恐る恐るスマホを取り出した。
「生徒会長?」
生徒会長からの着信だった。
俺は高山さんに画面を見せると電話に出た。
「モモモシシシ」
「トーリ。今どこじゃ?」
「よよよ洋菓子部、ミルフィーの見学」
「そうか、ミルフィーの部活にはピッタリじゃな。それよりこの後時間はあるか?」
何だろう。生徒会長がいつになく真面目な口調でそう言った。
今日は部活が休みのはずだが?
暴走ダンジョンでも出現したのだろうか?
「はあ。特に予定はない」
「緊急事態なのだ」
「え?」
「では駐車場まで来い」
「え?」
俺が聞き返そうとするも電話は切れていた。
緊急事態って何だろう?
やはり暴走ダンジョンでも出現したのだろうか?
「行かなければならない」
俺は名残惜しそうに高山さんが作った残骸を見る。
「そう。生徒会長の呼び出しなら仕方ないわね」
「すまない」
「包むから持ってく?」
「え? 頼む」
「え? 本気?」
「後で食べる」
「分かった、ちょっと待ってて」
高山さんがそう言いながら失敗作を包みだした。
「ミケ。買い物は今度な」
「生徒会長の呼び出しなら仕方ないね。みんなには説明しておくね」
「すまん。ミルフィー行くぞ」
「ギャダ」
ミルフィーがクリーム塗れの顔を横に振った。
生徒会長の何やら緊急事態の呼び出しだ。
魔物でも出たのかもしれない。
「ギャダ。ギャダ」
ミルフィーが駄々っ子のように拒否した。
「また明日くればいいだろう。ミルフィーはここに入るんだろ?」
「ギャイ」
「新入生ゲットよ」
「しかも話題の美少女」
「これで我が洋菓子部は安泰。無敵」
ボリューミーな女子達が拍手して喜んだ。
「ミルフィーちゃんの分も包みましょうか?」
「ああ、頼む」
「ギャッタ」
ミルフィーが手を上げてボッチの歓喜ダンスを始めた。
俺とミルフィーは大きな紙袋を抱えて駐車場に向かうとそこには黒い高級車が止まっていた。
「遅い。何をしておった?」
生徒会長が車の中から手招きした。
乗れということか?
こんな高級車乗ったことないんだが?
「何をしておる? 乗らんか」
生徒会長が怖い口調で命じた。
機嫌が悪い? もしかして俺達が洋菓子部に行ってたことを怒ってるのか?
「どうぞ」
運転手らしき若い綺麗な女性が車を降り、一礼して後ろのドアを開けた。
三人掛けで俺は生徒会長と密着するという前代未聞のラッキースケベイベントはミルフィーが真ん中に乗って発生する前に立ち消えた。
「では頼む」
「はい。お嬢様」
高級車が音もなく走り出した。
お嬢様ってやっぱりそりゃそうだよね。
運転手付きってどんだけ金持ちなんだろうか?
聞きたい。でもこの雰囲気は空気を読めない俺でも分かる空気だ。
この空気は読むんじゃない。
吸うんだ。
生徒会長と同じ狭い密室空間にいる今がチャンス。
吸え。俺の心の中の奥底から沸き上がる衝動を悪い俺が肯定する。
だが怪しく深呼吸したら疑われる。
ここは欠伸という生命の生理的活動を利用して自然に呼吸しよう。
「スー」
ゆっくり吐いてから、大きく息を吸おうとしたその瞬間――。
「お嬢様窓を開けますね」
「うむ。なんだか甘い匂いがするしな」
「ギャテテ」
ああ、貴重な生徒会長と同じ空気が逃げていく。
俺は八つ当たり気味にミルフィーを睨んだ。
「ギャテテ」
「なんでしょう? ケーキの匂いですね」
「えっと、洋菓子部の試食を」
俺は年上の綺麗な女性にはちゃんと答えるのだ。
それが礼儀、マナー。姉ちゃんの拳骨でパブロフの犬状態で仕込まれたのだ。
「そうなんですか。それは良かったですね」
「ギャイ」
「……」
「……」
「……」
それ以降会話が消えた。
沈黙空間が続く。
このサイレントエアーこそが俺にとっては快適空間のはずだが。
だが今は何故だが快適ではない。
生徒会長の醸し出す雰囲気がいつもと違うのだ。
ただの無言ではない。怒気が含まれているような緊張するような空気なのだ。
怒っているのだろうか?
ああ、怒った生徒会長も可愛い。アングリープリティ生徒会長だ。
でも今からどこに行くのだろうか?
暴走ダンジョンだろうか?
そろそろ何か説明してくれてもいいですよね?
ああ、状況説明してくれる副会長もミケもいないと話が進まない。
「……」
ミルフィーがさっきから静かだと持っていたら寝てるし。
なんだか気まずいサイレント空間。
生徒会長が俺の手の紙袋を見つめている。
他所のケーキを食べたから怒っているのか?
それとも欲しいのだろうか?
「これ? 食べます?」
「ああ」
一応食べるんだ。
俺は紙袋を生徒会長に渡した。
残念なことに手が触れるというラッキースケベイベントは発生しなかった。
「ミルフィーが寝てしまったか。丁度いいトーリの家に送っていってくれ」
「了承しました。お嬢様」
丁度いいってどういうこと?
俺と二人ボッチになりたいってこと?
俺は妄想に激しく胸を膨らませていると俺の家に到着した。
「ミルフィー起きろ。寝るならソファで寝ろ」
「ギャイ」
ミルフィーが車を降りてフラフラと歩きだした。
「ミルフィー、そっちじゃない。家は反対」
「ギャイ」
ダメだ。方向音痴に拍車がかかっている。
俺は車を降りてミルフィーの背中を押して玄関に押し込んだ。
「ではトーリ、行くぞ」
「はあ?」
どこに行くのだ? 暴走ダンジョンか?
とにかく邪魔者は消えた。俺と生徒会長の間にはミルフィーはいない。
これで密着できる――わけでもなく。
俺は呼吸を多めに密室空間を堪能した。
「……」
「……」
「お嬢様。間もなく到着しますがよろしいので」
「うむ」
何がよろしいのだろうか?
車は高級住宅街に入ったのか大きな家が目立つようになってきた。
「あら、天道様もお帰りですよ」
運転手の女性がとんでもないことを言った。
テンドー君だと?
なんてタイミングだ?
「むむ」
「お嬢様。いい加減仲直りしてくださらないと周りの者が迷惑します」
「むむ」
「……」
ちょっと待って、だからなんで天道君がいるの?
「テンドー君?」
俺は窓の外を歩くイケメンを睨んだ。
テンドー君が車に気付いたのかこっちを睨んだ。
だから何でこんなところにテンドー君が?
偶然? それとも俺の中の残り少ないクロミズを狙っているストーカー?
「ああ、ここは奴の家だからな」
「え? は? はああ?」
俺はあまりの衝撃的な事実に大きな声を上げてしまった。
イケメンで賢くて金持ちってもうチートやん。
しかも俺から奪ったクロミズでダンジョンにも入れるようになってからに。
きいいい。悔しい。俺は車内の天井を見上げた。
「そして元、私の家だ。まあ奴のことは気にするな。今日は関係ない」
「え?」
俺はまたまた襲い掛かってきた衝撃的な事実に言葉を失った。
ここが生徒会長の元の家? どういうこと?
今の家じゃないってこと?
そういえば、分家とか本家とか言ってた。
お家騒動でなんかあったの?
車は大きな門を通って、長い私道を走り屋敷の中を走る。
えっと、ここって敷地内ですよね?
どれだけ広いんだよ。
俺の疑問は手入れされた大きな木の間を抜けていく。
「旧屋敷まで頼む」
「え? お嬢様。皆にご挨拶はされないのですか?」
「ついこの間会ったばかりであろう」
「……」
そして車はある大きな屋敷の前で停車した。
「さあ、トーリよ。ついてこい。私の部屋で話そう」
生徒会長が車を降りて歩きだした。
えっと、私の部屋? ってことは生徒会長の部屋?
マジで?
お読みいただきありがとうございました。




