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89 トーリは遠慮しておきなさい

「お兄ちゃん日曜日は朝九時に出るからね」


 日曜日? 何か欲しいものでもあるのか? でもお前と買い物行っても荷物持ちさせられ、挙句の果てには使えないと吐き捨てられるのはコリゴリなんでこっちから願い下げなんだが?――という顔で俺は首を傾げた。


「うわ、やっぱり忘れてる? これだから使えない」


 妹の園が可愛い顔で大きなため息をついた。


「え?」


 使えないってお兄ちゃんに言う言葉じゃないよね?

 まだ役立たずって言われたほうがましだ。

 いや、役立たずもかなり凹むのだがまあ、口を利いてくれるようになっただけでも前進。

 だが今後は敬愛する兄上を敬うように言葉を選びなさい――という顔で俺は優しいボッチアイ睨んだ。


「なにその目は? 自分が悪いくせに逆切れ? 忘れてるとかマジでありえないんですけど?」


 可愛い園が姉ちゃんのように悪魔の表情を浮かべた。

 うわあ。流石姉ちゃんの妹だけあって悪魔の才能あるわこいつ。


「……えっと? 日曜日って何かあったっけ?」


 俺は幼き日の恐怖体験のデジャヴを覚え、小さな声でおどおどと尋ねた。


「……日曜日に舞夢ちゃん家に行くって言ってたでしょ?」

「あっ」


 俺はボチフリーズした。

 すっかり忘れてた。


「メイギュ?」


 ミルフィーが何それ美味しいのという顔で首えを傾げた。


「舞夢ちゃんっていうのはね。お兄ちゃんが偶然助けた小学生の可愛い女の子で、助けたお礼にご馳走してくれるの」

「ギョチギョー」


 ミルフィーが唐揚げを咥えながら立ち上がった。


「こらこら。ミルフィーちゃんお食事中はお行儀よくね」


 母親が母親らしいセリフを言った。


「ギャイ」

「ミルフィーちゃんも一緒に行く?」

「イギュ」


 しょんぼりしたミルフィーがその言葉で復活して立ち上がった。


「こらこら。ミルフィーちゃんお食事中はお行儀よくね」


 母親が母親らしいセリフを言った。


「ギャイ」


 ミルフィーがしょんぼりして、唐揚げを一口で頬張った。


「お母さん、ミルフィーちゃんと行ってもいいよね?」


 それを見かねた園が母親にお願いする。


「イギュ」

「ええいいわよ」

「やった。だからお兄ちゃんは来なくてもいいから」

「え?」


 どういうこと? 俺も誘われていたはずだが?


「行くけど?」

「忘れてるぐらいだから来ないで」

「えええ?」


 なんでお前にそんな権限があるんだよ。

 舞夢の家はハイソサエティ金持ちだ。

 そんな家の夕食のご招待なんて行かない理由がないだろう。

 シェフがいるんだぞ?

 そもそも舞夢を助けたのは俺だぞ?

 俺への感謝イベントなのに、なんでお前が行くことになってんの?

 つか、舞夢からのお誘いが俺にでなく、園に連絡いくってどうなってんの?

 俺を素通り? 無視? 空気? エアーボッチ?


 だが俺は以前のような寡黙なサイレントボッチではない。

 言う時はガツンと言うアクティブボッチなのだ。


「……だから俺も行くってば」


 俺は小さな声で自己主張した。


「は? 何言ってんの? いやいやいや忘れてたんだから行く権利ないでしょ?」


 園が目を細めて俺を睨んだ。

 その目は俺のボッチアイの数倍強烈だった。

 目が大きい奴が目を細めた効果は絶大。

 俺みたいな糸目が目を細めてもビフォーアフターがないから効果減。


「ひっ?」


 俺は素っ頓狂な声を出した。

 忘れてたのは事実ですが? 思い出しましたから行ってもいいですよね。

 俺に行く権利があるかないかって言ったらあるでしょ?

 俺は舞夢の命の恩人ですぞ? 舞夢の未来を救ったんだぞ?

 舞夢が科学者になって人類を救う存在となって、それを救った俺は人類の救世主になるかもしれないんだぞ?

 俺は救世主。お前はその妹。いわばオマケでしかないんだぞ――と俺が口を開けようとしたその瞬間――。


「トーリは遠慮しておきなさい」


 母親が箸を置いて俺を睨んだ。


「え?」

「あんたみたいな挙動不審なボッチのコミュ障が可愛い小学生の女の子の家にお伺いするのは、かなり問題があるような気がするわ。いやあるわ。大問題。通報事案よ事案」


 母親が母親らしからぬ発言をした。


「ええっ?」


 今なんつった?

 挙動不審なボッチのコミュ障だって? それが可愛い息子に言う言葉なの?

 なんか俺を危険人物扱いしたいようだが、俺は無害のボッチだぞ?

 そんなツルペタの小学生に手を出すわけがないだろうが。

 俺の周りはナイスボディの巨乳天国なんだぞ?

 生徒会長とか副会長とかリンダ先生とか?

 そんな環境にいる俺にはツルペタ小学生には興味のきょの字もない。

 だから安心してください。触りません。匂いも嗅ぎません。変な目で見ません。

 ちょっとは将来を想像して胸元を未来視しちゃうかもしれないけど。


「はあ。あんたが他人の子だったら間違いなく家に入れないわ」

「えええっ?」


 酷い言われようだな。そりゃ俺はコミュ障かもしれないけどそこまで危険人物じゃないぞ――という目で無言で訴えた。


「お兄ちゃんの代わりに私達が美味しいもの食べてくるから、帰ったら食レポするから安心して」

「おいおい?」

「お兄ちゃんがキモイから悪いんだよ。爽やかなイケメンだったら連れてってあげてもいいけど残念ボッチだからね。今からでも遅くないから転生してきなさいよ」

「くっ」


 イケメンじゃないのは百二十パーセント同意しますが、転生しろって死ねって言ってるのと同音異義語だぞ? 兄に向かって間接的に死ねってどういうことだよ?


「ギョーリキモイ」


 ミルフィーがご飯粒を頬に付けながら笑った。

 なんでキモイだけ訛ってないんだよ。


「……」

「何が出るかな? シェフがいるって言ってたもんね。フランス料理かな?」


 園が顎の下で手を組んで天井を見上げてニヤニヤし出した。


「ギョエ」


 ミルフィーが涎を垂らしながら天井を眺めた。

 くっそ。俺もシェフの料理を食べたかった。

 舞夢の家は金持ちだから何が出て来ても絶対美味しいに決まっている。

 だが案ずるな。俺も金ボチだ。

 そう俺は金持ち予定なのだ。

 この世に金で解決できないことはない。

 舞夢の家の料理が食べられなくとも、また旨いものでは食いにいけばいいだけだ。

 今の俺の良そう財力ならば万々軒の全乗せ鬼マシマシトッピングとか余裕だろう。


「クックックッ」

「何笑ってるの? キモイんですけど?」

「ギョーリキモイ」

「トーリ。あんた最近変よ。まあ、生まれた時から変だと思ってたけど、最近ますます悪化してるわ。大丈夫? 一度病院行っとく?」


 母親が目を細めた。


「まあ、反抗期になるよりはマシだろう」


 これまで存在を消し、無言だった父親がフォローになってないフォローをした。

 そうよ。言ってやって言ってやって。男子勢の反撃開始よ。


「反抗期のほうがはるかにマシよ」

「お兄ちゃんが反抗期になってもお姉ちゃんにボコられて反抗期一瞬で終わりそう」

「……」

「……」


 姉ちゃんの名前が出て話題は断ち切られ、食卓が沈黙に包まれた。

 ミルフィーだけが黙々と唐揚げにマヨネーズをぐるぐるかけている。


「……ごちそうさまでした」


 俺は食器を軽く水洗いしてから食洗器に放り込むと逃げるように逃げ出した。


「あ、キモ男が逃げた」

「キモオ、ギゲタ」


 くっそ。なんでそこまで言われなくちゃならないんだよ。

 最近、我が家の女系連中の勢力が増大している。

 ミルフィーが来てからとくにそうだ。

 男女比の問題だろうか? いやミルフィーを連れてきた俺はグッジョブなはずだ。

 何か他に原因があるのか?


「お兄ちゃん最近とくにキモイし」


 妹が俺の目も見ずにそう吐き捨てた。


 はっ、まさか?

 俺がリンダ先生の座ったソファで転がったからか?

 それ以外に考えられない。

 まさかソファジタバタ事件がここまで尾を引くとは正直思わなかった。


「キモイキモイ」


 しかもミルフィーまで園に懐柔され裏切り者になった。

 俺の使い魔であるはずのミルフィーは今では園の使い魔なのだ。

 まあいい。金ボチ喧嘩せずだ。

 雨の日の水たまりのように広い心で暴言を許そうじゃないか。

 だがそう簡単に理不尽感は消えない。

 そこで俺は方眼ノートを取り出し、意地悪ダンジョンの設計を開始した。

 メンタル霊が溜まり、俺のダンジョンが創られるその日を夢見て、極悪な罠を妄想する。

 何も知らないウェーイなリア充パーティーが俺のダンジョンに入って来た。

 そして突破不可能な連続極悪罠にかかって死ぬところを想像しながら眠りに落ちた。




 ――翌朝。コンビニ前。


「おう、トーリ君久しぶりだな。おはよう。さっぱりして男前だが、まるで暗殺者だね」

「ああ、おはよう」


 背中にバスターソードを背負ったサラリーマン。略してサラリーマン冒険者が笑った。

 心優しい穏便なボッチの俺のどこが暗殺者に見えるんだよ。

 こうなったら本当に暗殺者になっちゃうよ?

 幸いにも俺は空気的存在だ。いたの? とか、いつからいたの? とか言われちゃうほど存在感が希薄な俺は暗殺者に向いているかもな。タハハッハー。

 いや待て。タハハの暗殺者に弟子入りして変な笑い方が移ったら益々キモイ扱いされてしまう。


「トーリ君。少しいいか?」

「へ?」


 俺が厳しい暗殺修行を想像していたところサラリーマン冒険者に現実に呼び戻された。

 少しいいかって? なんかしたか? 先日の続きで斬られる?

 眩しい朝日がサラリーマン冒険者の背のバスターソードに反射し、俺の細い目を焼く。


「最近会わなかったけど何をして……ん? マテ? おいおいおい。彼女は人間じゃないな? まさか使い魔か? 現実に具現化しているとは二段階存在? しかも希少種ハシヒメ種か? 初めて見たぞ。いやー君には毎回驚かされるな。もう使い魔を従えているとは……こりゃあ勝てないな。ハッハッハッ」


 サラリーマン冒険者が笑顔で俺の背中を叩いた。


「ミルフィー」


 ミルフィーがカロリーバーを掲げながら自己紹介した。


「俺は深山鉄だ。トーリ君とはライバル? いや修行仲間かな」

「ミルフィーもギャカマ」

「ん? 何と言ったんだい?」

「ミルフィーも仲間だって」

「おお、そうか。それは心強い。俺がピンチになったら駆けつけてくれ」

「ギャイ」

「ん? 何と言ったんだい?」

「はい……と」

「おお、そうか。そうだ。トーリ君、俺は遠征に出る」


 サラリーマン冒険者が遠い目をした。

 遠征? バスケの大会みたいに言うけど試合かなんかかな?


「実はな……巨大ダンジョンタワーが発見されたんだ。全国から腕っぷしの霊トレーサー達が選抜され、攻略レイドが組まれた。俺も参加する予定だ」

「おおおお」

「ギョオオ」


 俺とミルフィーが感嘆の声を上げた。

 巨大ダンジョンタワーだと? 何その美味しそうな――もとい攻略がいのありそうなダンジョン。行きてえ。


「だから新人戦は観戦できない。ごめんよ」

「はあ」


 別に応援してもらわなくてもいんですけど?


「絶対勝てよ」


 サラリーマン冒険者が満面の笑顔で俺の肩に手を置いた。


「はあ」


 勝てよって応援されても出ないから、出ても一回戦で負ける予定だから。


「ギョイ」


 ミルフィーが俺の代わりに最敬礼した。


「ん? 何と言ったんだい?」

「はい……と」


 俺はミルフィー語を訳した。


「おお、そうか。今は使い魔も新人戦に出れるのか?」

「いや出れない」

「おお、そうか。ミルフィーちゃん。応援席でトーリを応援してやってくれ」

「ギャイ」

「ん? 何と言ったんだい?」


 サラリーマン冒険者が眉をしかめた。

 それ通訳いる? いらないよね?


「はいってさ」

「おお、そうか、実はな、トーリ君。俺は君に出会えて感謝しているんだ」

「え?」

「俺は最近スランプというか、成長が止まってな。煮詰まってたんだ。俺は充分強いからこのままで問題ないと自分に言い聞かせていたんだ」

「はあ?」


 その話長くなる? 朝練があるんですけど?


「自分の通ってきた道を勝手に唯一無二の道だと思い込んでいた。今までのやり方を変えられない自分がいた。だが君と出会ったことで常識が打ち破られた。そして若い頃を思い出したんだ。無茶なことをしていた若い頃を。俺は若いつもりだったがいつの間にか考えがガチガチに固まったオッサンになっていた。その常識は捨てた。過去の栄光は捨てた。だからこの遠征に参加してもっと強くなる。そしたらまた剣を交えよう」


 サラリーマン冒険者が熱い長台詞の後で笑った。


「……はい」


 俺はぎこちない苦笑いで答えた。


「まだ若いトーリ君には理解できないだろうけど、若いっていうのは幸せなことなんだよ。それに君は強い。その力を自分の欲に使うなとは言わない……だがなるべく敵は作るな」

「はあ?」


 その忠告もう遅いんだよな。

 いろいろぶっ殺したし。

 そもそも向こうから突っかかってくるんだよな。


「まあ、一言で言うと好き放題やったほうが楽しいってことだ」

「はあ?」


 全然分かりませんと返事をした。


「ま、とにかく戻ったらメールするよ。ダンジョンタワーのこと聞きたいだろう?」

「ええまあ」

「ギャイギャーイ」

「ん? 何と言ったんだい?」

「バイバーイってさ」

「おお、そうか」


 サラリーマン冒険者が手を振りながら去っていった。

 その背のバスターソードには陽光の反射がいつまでも輝いていた。


「ミルフィー。急ごう」

「ギャイ」


 ダンジョンタワーか?

 いつか俺も行ってみたいものだ。

 それにしてもダンジョンってタワーもあるのか。

 俺の作り出すダンジョンタワー、その名も孤高のセルフボッチタワー。

 うわあ。なんかもう名前からして弱そう。

 だが入った途端に転移の罠でダンジョン最奥に飛ばされる仕組みだ。

 後悔するがいいリア充共よ。ボッチタワーにおいそれと足を踏み入れたことをな。

 くっくっくっ――と妄想しながら登校していると。


「トーリ君、ミルフィーちゃんおはよう」


 クラスメイトのミケが笑顔で手を振っていた。

 こっちから見ると女の子、反対から見ると男の子。

 俺達は一緒に髪を切りに行ったデビュ友だ。


「ギケ、オハギョー」

「おお、おはようミケ早いな?」


 ミルフィーと俺はミケに挨拶を返した。


「うん、なんか原因不明のバグが取れなくて、ちょっと授業が始まる前にソースを見直そうかと思って早めに来たんだよ。サーバーを使わないから処理が重くて」


 ミケが嬉しそうに答えたけど何言っているのか全く理解出来なかった。

 ソースだと?


「俺は醤油派だが?」

「ミルフィーもギョーユハ」

「ミケは目玉焼きにソースなのか?」

「えっと。プログラムの話だよ。それよりトーリ君は朝練? ん? 生徒会に朝練なんてあるの?」


 ミケが顎に指を当てて首をひねった。


「……ある。厳しい特訓だ」


 メンタル霊の消費を抑える為の体育会系の走り込み特訓があるんだ。


「……そうなんだ。なんかよく分かんないけど大変だね」


 ミケは素直なのか疑いもしない。

 ああ、ミケに嘘をつくのは心がチクチクする。

 だけど実は俺は生徒会執行部員ではなく、俺はダンジョン部の部員なんだ。

 ――なんて言えないから俺は何も答えない。


「ミルフィーちゃんは何部に入るの? この学校は部活に入らなきゃならないんだよ。まだ決めてなかったら僕の部に入らない?」

「ギャイラナイ」

「そうだよね。言ってみただけ。電算部ってさあオタクイメージあるよね」

「すまんな」

「ううん。トーリ君ともっと早く知り合ってたら電算部に誘ったのに」


 ミケが頬を膨らませた。

 こいつ、朝から可愛い。

 男のくせに可愛い。


「これからはオタクの時代なんだよ。シンギュラリティによってプログラムがAIによって自動化されても、それを確認するのは人間だから、将来安泰の職業なんだよ?」


 ミケが何やらブツブツと呪文を唱え始めた。


「ギョウダナ」

「そうだな」


 ミルフィーと俺は適当に相槌を打った。


「そう言えばトーリ君、前にオートマッピングのアプリが欲しいって言ってたよね」

「ああ」

「ベータ版が出来たからスマホ貸してくれたらインストールするよ」

「え? もう? マジか?」

「う、うん。サーバーの処理が重くてリアルタイム性に欠けるっていうのはあるけど、ちゃんと動くよ。ほらこれ見て」


 ミケがスマホの画面を俺に見せた。


「おおおお」

「ギョオオ」


 俺とミルフィーが驚きの声を上げた。

 ミルフィーはきっと分かっていないに違いない。

 画面には方眼ノートのようなブロックが敷き詰められており、歩いた軌跡が塗りつぶされている。


「マジか? すげええ」

「ギャジキャグゲエエ」


 俺はミケのスマホに細い目を近づけて凝視した。

 これだ。俺が求めていたのはこれだ。

 これがあればダンジョンで通った道を覚えておかなくてもいい。

 だがダンジョンでGPSが使えるのだろうか?


「屋内でも使える?」

「うん。三軸加速センサーから位置と方向をサーバーのAIで予測計算しているからGPSが届かない屋内でも使用できるはずだけど、後処理するから少し遅れるんだ」

「少しってどれぐらい? 半日ぐらい?」

「うーんと、一分ぐらいかな」

「え? そんだけ?」

「そう、サーバーの性能が足りなくて時間がかかってるんだよ」

「いやいや、充分だ」

「ほんと? でもこれ何に使うの?」


 ミケが不思議そうな顔をした。

 くっそ、男のくせにかわええ。


「趣味だ」

「ギュミギャ」


 俺はぶっきらぼうに答えた。

 ダンジョンで使うなんて言えない。


「ふうん。この状態で良ければ直ぐにいつでもインストールできるからね」

「助かる」

「ギャスカル」

「いえいえどういたしまして」

「ギエギエ」

「いえいえ、こちらこそ」

「ギエギエギエ、ギョチラギョソ」

「それでミルフィーちゃんはやっぱり洋菓子部に入るの?」

「ギャニ?」

「何?」

「洋菓子部だよ。ミルフィーちゃん食いしん坊だし名前も洋菓子っぽいしね」

「ギャイる」

「うちのクラスの女子に洋菓子部いるから聞いてみるといいよ」

「ギャイる」

「へえ、そうなんだ」

「ギャイる」

「でも洋菓子部の子に話聞いてからにしたら?」

「ギャイる」


 俺とミケとミルフィーは意味のない会話をしながら登校した。

 友達と並んで登校するなんて一か月前の俺が知ったらなんて笑うかな?

 確かに俺はアバロンが指摘したようにボッチではないのかもしれない。


「ミルフィー朝練は?」

「ギカナイ。ギケトギョウシツギク」


 行かない? ミケと教室に行くって?

 ああ、いってらっしゃい。洋菓子部のこと聞いておいで


「ギャイ」

「じゃあ、またあとでねトーリ君。それでうちの学校には料理部がいろいろあって、国ごとに分かれてるんだよ。日本料理部、フランス料理部、イタリア料理部とかね」

「ギョオオオ。オオモリギャンギャーグブは?」

「うーん、ハンバーグ部はどこだろう?」



 俺はミルフィーとミケと別れて一人ダンジョンに向かった。


「カガッチおはよう。待ってたっスよう。クックックッ」


 早朝のダンジョンに悪い顔をしたチャラ男がいた。

 その横にはアタッシュケースがあった。


「おはよう。クックックッ」


 重そうな中身がぎっしり詰まったアタッシュケースがあった。


お読みいただきありがとうございました。

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