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73 加賀坂家の動乱

「お話は良く分かりました。ですがこんな可愛らしいミルフィーちゃんがバカ息子に懐くなんて信じられません。何か善からぬことをしてミルフィーちゃんを脅しているのでは?」


 母親がリンダ先生を睨む。


「そんなことはないと思いますが……?」


 リンダ先生が自信なさげに目をそらした。


「ですからミルフィーちゃんの身の安全のことを考えると、ホームステイに関してはお断りするしかないですね」


 母親が俺から目を離さずにそう言った。

 ちょっ、ちょっと酷いよ。脅しもすかしもしてないよ。少しは何も言わない息子のことを信じてよ。


「はあ、確かにトーリ君は無口かもしれませんが悪い子でないです、そんな脅しなんて……」


 リンダ先生の言葉尻が小さくなる。

 そんなことよりもその長くて綺麗な太ももが俺の視線を鷲掴みにして離さない。

 なんという奇蹟の黄金曲線美。太くも無く細くもなく美しい黄金曲線の至高存在。


「そもそも自分の意思表示もできない無口なバカ息子が良い子であるはずがありません」


 母親がリンダ先生のフォローを一刀両断した。


「まあ、確かに無口ですが……」


 生徒会長が頷いた。


「無口ですけど……」


 副会長も頷いた。


「ギョイ」


 ミルフィーも頷いた。

 少しは俺の肩も持てよ。かばえよ。応援しろよ。

 俺の味方はいないのか?

 驚く事なかれ、叫ぶ事なかれ、なんと加賀坂家の狭くてバッチイ居間にはこの世の奇蹟たる絶世の四人の美神が降臨していた。

 ボロソファの中央に座っているのは褐色美人の破廉恥教師のリンダ先生、その隣には二振りの太刀を背負った生徒会長と副会長。

 そしてその横できょろきょろしているのが、俺の使い魔――元ボチリンのミルフィーだ。

 ミルフィーを人間として数えていいのか微妙だが、見た目は可愛らしい美少女だ。

 ここは四人の美女による美女オンザ空間だった。

 母親と妹の園と俺はその対面に座っている。


「……」

「……」

「……」


 居間の時計の針が沈黙の居間を太鼓のような大音量で打ち鳴らす。


「……それで無口のトーリから何か言うことはある?」


 隣の母親が俺に疑心暗鬼のビームを放った。


「……」


 もちろん言うことなんてない。

 それよりもリンダ先生が座ったソファにはリンダ先生の良い匂いが移り香しているはずだ。

 いや生徒会長と副会長の座ったソファの温もりも捨てがたい。

 ああ、三人の座ったソファに激しく頬ずりしたい。

 いや待てよ。このソファで寝れば女神達との疑似添い寝になるのでは?

 そんな破廉恥な誘惑が俺の頭の中で渦を巻き、濁流となって流れていた。

 キモいのは分かっている。だがしかし男子だったら分かるはずだ。

 絶世の美女が我が家に降臨したんだぞ? アイドルかモデルか芸能人が来たよりもはるかに格上の存在がここにいるんだぞ。

 興奮不可避。落ち着いていられないのがデフォ。

 俺のテンションはオゾン層を超えていた。


「トーリ? 聞いているの?」


 えっと何の話しでしたっけ?


「……」

「ほら、こんな息子ですよ? 心配になるのが分かるでしょう?」

「……そんなことはないですよ。トーリ君は今必死に話す内容を考えていると思いますよ」


 副会長の鋭い目線が俺の頭の中で渦巻く煩悩の本流を堰き止めた。

 俺がエロ方面の卑猥なことを考えていたことが見透かされているのだろうか?

 えっと? 何の話だっけ? ミルフィーのホームステイの件だろ。

 それに関してはしっかり事前準備してあるさ。

 俺はミルフィーを見て頷いた。ミルフィーやれ。


 俺の目の合図を感じ取ったミルフィーが立ち上がった。

 そして母親の前でしゃがんだ。


「オネギャイ。ギョコにギョイテ」


 ミルフィーユが両手を合わせて目をウルウルさせた。

 くっこれはカワイイ。前もって知っている俺でさえクラクラするほどの可愛さだ。

 部室で何度も練習したミルフィーの上目遣いのクネクネお願い攻撃が炸裂した。

 TNT換算にすると一キロトン程の破壊力があったはずだ。

 案の定、母親がワナワナと震えだした。


「ミルフィーのことギライ?」

「う、別にミルフィーちゃんが嫌だから言ってる訳じゃないのよ。ミルフィーちゃんの身の安全を考えるとここは危険なのよ。もっと安全な家にしたほうがいいのよ」

「オネギャーイ」


 ミルフィーが母親の言葉を待たずにオネギャイ攻撃の第二射を放った。


「うっ」


 第二射の攻撃をゼロ距離で直撃した母親の目が泳ぎ始めた。

 くっくっくっ。効いてる、効いてるぞ、その調子で頑固な母親をメロメロにしてやれ。


「お母さん。ミルフィーちゃんを置いてあげて、行くとこないみたいだし。海外から一人で日本に来て可哀そうだよ。ミルフィーちゃんは私の部屋で一緒に寝るから安心して」


 ミルフィーの攻撃の余波を浴びた妹の園もメロメロになっている。


「お、お、おおお母様。あのトーリ君は、た、確かに何を考えているのか分からないし、人の話を全く聞いていませんし、無愛想ですが……」


 生徒会長が噛みながら立ち上がる。

 俺の細いボッチアイはその揺れるお胸を見逃さない。


「トーリ君は私達を助けてくれたのです。彼は優しいのです。そそそ、それはこの生徒会長のわわわ、私がホホホ、保証します」


 噛み噛み生徒会長が頭を下げると、お胸と背中の太刀が追従した。


「……はあ、そこまで買いかぶってくれて申し訳ありませんが、そもそも自分の意思もまともに主張できないこの子が生徒会執行部でちゃんとお仕事できているんでしょうか?」


 母親の言葉に生徒会長と副会長とリンダ先生は同時に下を向いた。


「「「そ、それは……」」」


 三女神が完全に言葉をなくし、沈黙した。

 おいおい俺の十八番のダンマリを決め込むなよ。

 しっかりしてるよね?

 誰も俺と目を合わせようとしない。


「この子が何考えている分からない卑猥な目で生徒会長さん達を見ていないか心配になります。触らなくても痴漢っていいますしね。警察に通報してもいいんですよ」


 おいおい、それが実の息子に言う言葉かよ。


「「「……」」」


 全員が黙って俺を見る。

 え? 何? その分かる――って激しく同意するって目。


「あ、あのお母様。いくらムッツリスケベのトーリ君でも、犯罪行為を実行するほどの勇気はありませんよ」


 副会長が俺を睨んだ。

 ん? チョマテヨ。今、ムッツリスケベって言った?

 ウェイウェイマテマテマテマテ。

 寡黙でボッチのクール無言キャラ決め込んでいたつもりだったんですが?


「「確かに」」


 母親と妹の園が同時に頷いた。


「それにこの子はボッチで無口のくせに寂しがり屋で楽しそうな人達を妬むし馬鹿にするし、友達だっていやしない。もう呆れて物も言えません」

「「「「確かに」」」」


 反対側のソファに座る美女達が一斉に同意した。

 なんでミルフィーまで頷いてんだよ。お前だけは俺の味方じゃなかったのかよ。

 それにボッチに誇りを持って何が悪いんだよ。

 誰だって譲れないもの一つぐらいあるだろう。

 それがたまたまボッチだっただけだろ? 俺からボッチを取ったら何も残らないんだぞ。


「……」


 ――という目で睨んだ。


「トーリ。ほら、そうやって黙ってないで、あなたから何か言うことはあるかしら?」


 母親が俺を睨み返した。

 む、無口のオラから何かもの申せと仰るのですか?

 君達さっきから、俺のことをムッツリスケベやらヘタレやら何考えているのか分からないやらボッチ界の御曹司やら好き放題言ってくれるじゃねーか。


「……」


 俺は大きく深呼吸した。

 美女達が吐き出した空気を吸うつもりで吸い込んだ。

 いいだろう。耳の穴をかっぽじいて聞くがよい。


「……風呂は覗かない」


 俺は自信満々に答えた。


「え?」

「はい?」

「は?」

「……えっとお兄ちゃん?」

「……」


 居間が沈黙に包まれた。

 あれ? 失敗だった? なんか間違えた?

 俺の口からとくに述べる内容はない――以上。


「育て方間違えたわ。でも港も園もしっかり育ったのになぜこの子だけ?」


 母親が俺の頭を軽くて叩いた。

 衝撃無効のクロミズの加護により痛みはない。

 港とは姉ちゃんの名前だ。加賀坂港――どっかの漁港かよ。

 俺が商店街通りで、妹が公園――爺ちゃんの命名ってろくなもんじゃねえ。

 そんなことよりも姉ちゃんがまともだと?

 意義あり。あの暴虐王女がまともなら俺は神になれるぞ。


「……あのお母さん、お姉ちゃんの育て方も間違えたような」


 園がこっそり言った。

 同意。激しく同意の助。初めて妹と分かり合えた気がした。


「とにかく、こんな子がミルフィーちゃんとまともに接することなんてできませんよ」


 くっそ。俺はミルフィーを見て頷いた。

 作戦を続行せよという合図だ。


「オネ、オネ、オネギャーイ」


 ミルフィーが激しく身体をくねらせて母親の顔を覗き込む。


「うっ」


 母親が言葉を失った。くっくっくっ効いてる効いてる。


「お、お母様。お願いします。ホームステイ先が見つかるまでの間でいいのです。ミルフィーは日本に来るのを楽しみにしていたのです。ですが我々の手違いでホームステイ先が見つからず困っておりました。そこを優しいトーリ君が声を上げてくれたのです」


 リンダ先生が一気にたたみ掛ける。

 そう、リンダ先生達と前もって決めておいたのだが、ミルフィーは留学生という設定だ。

 俺が考えていたよりもダンジョン協会の力は凄まじく、その無茶な設定を現実のものとしてしまった。


「で、でも、なにかあったら親御さんに申し訳ないし」

「お母さま、ミルフィーちゃんには両親も家族もおりません」

「え、そうなの? ミルフィーちゃん」


 母親が口に手を当てた。


「ギョウ。ギョロサレタ」

「え? 殺された?」


 震える母親。


「そうだったの。可哀想なミルフィーちゃん。いいわ。今日から私がお母さんよ」


 母親はあっさり陥落した。


「ギョ?」

「ええ、ホームステイ先はここよ。卒業するまで居てもいいのよ、いえ、卒業しても居てもいいのよ。もうずっと日本に居てもいいのよ」

「オギャアサン」


 ミルフィーが母親に抱きついた。


「今度の休みに一緒にお洋服を買いに行きましょう。生活必需品は私が買ってあげます。なぜなら私がお母さんだからです」


 母親が泣きながらミルフィーに抱きついた。


「本当ですかお母様」


 リンダ先生が顔の前で手を合わせて立ち上がった。

 胸部の圧倒的な何かが嬉しそうに揺れた。


「はい。私が保護者となりましょう」

「ありがとうございます」


 母親の言葉にリンダ先生が頭を下げた。


「ギャッター」


 ミルフィーがボッチダンスを繰り広げた。


「良かったね。ミルフィーちゃん。私が今日から妹よ。グス」


 園も泣きながらミルフィーに抱きついた。


「ギョノー」


 同時に妹も落ちた。

 ミルフィーの出自に関して家族に嘘をついて心苦しいがミルフィーをダンジョンで拾ったなんて言っても信じてくれないだろう。


「ありがとうございますお母様。トーリ君、くれぐれも変なことしないでよ」


 リンダ先生が俺を睨んだ。


「……」

「トーリよ。風呂は覗くでないぞ」

「……」

「トーリ君。寝顔も覗かないでよ」

「……」

「お兄ちゃん。キモイ」

「……」

「ギョーリキモイ」


 だから俺は身内の風呂を覗くほど落ちぶれてねーぞ。

 それにミルフィーにキモイなんて悪い言葉教えんなよ。

 キモイという単語は男子が一番言われたくない言葉なんだぞ。


「だからミルフィーちゃんは私の部屋で寝ようね」


 妹の園がミルフィーに笑いかけた。


「ギャダ。ギョーリのゲヤ」


 ミルフィーが首を振った。


「「「「「ダメ」」」」」


 三女神と母親と妹が同時に叫んだ。


「「ギョエ」」


 俺とミルフィーが素っ頓狂な変な声を出した。


「ではトーリよ。これからの打ち合わせも兼ねてお前の部屋に行こう」


 生徒会長が悪い顔をした。


「ええ、そうね」


 副会長が悪い顔をした。


「あらあ? それはいい考えね」


 リンダ先生がエロい顔をした。


「ギョーリのゲヤ」


 ミルフィーまでも悪い顔をした。

 ダメだ。ダメだ。ノーと言え俺。


「……いや、散らかっているから」


 俺は必死に拒否するも誰も聞いていない。


「そう? じゃあ片付けるの手伝ってあげましょうか?」


 副会長が天井を見上げた。


「そうだのう」

「あらあら」

「ミルフィー。テツギャウ」

「いいってば」


 俺は必死に拒否するが誰も聞いてない。


「ちょうどいいから片付けたら?」


 母親が面倒そうにそう言った。


「お兄ちゃんの部屋はこっちです」


 妹の園が立ち上がり、面白そうな顔で案内しようとする。


「いや、その、あの」


 俺は必死に拒否しようとするも言葉が出てこない。


「楽しみだのう」

「会長。絶対パソコンとか開いたらダメですよ」


 副会長のこの顔。知っている。確実に何かを知っている顔だ。


「うむ。何か隠し事をしているかもしれぬしな」


 生徒会長が能天気に不思議そうな顔を浮かべた。


「あらあらあ、それは大変ねえ」


 リンダ先生が流し目で俺を見る。

 くっそ。ミルフィーなんとかしろ。


「ギャダ」


「ミルフィー、トーリを抑えておけ、トーリの部屋を臨検だ」


 生徒会長が悪い笑顔でそう命じた。


「ギョイ」


 ミルフィーも悪い笑顔で敬礼し、俺を羽交い締めにする。

 くっそ、ミルフィーのお胸が背中に当たっているのに衝撃無効で衝撃に襲われない。


「トーリの部屋はどこだ?」

「こっちです。案内します」


 妹の園がノリノリで階段を駆け上がる。


「会長、慌てて転ばないでくださいよ」


 副会長がその後につづく。


「子供じゃあるまいし転ばぬは……ギャ」


 ドテッという音が一瞬だけして、階段を駆け上がる音が続いた。

 今、絶対転んだはずだ。スカートをひるがえして転んだはずだ。

 ええい離せミルフィー。ラッキースケベイベント発生中なんだ。


「ギャメ」


 お前はどっちの使い魔だよ。


「ギマはブチョウ」


 今は部長だと? なんでそんなに世渡り上手なの?


「ギョヘヘ」


 照れるミルフィーの隙をついて俺は階段を駆け上がる。

 すると俺の部屋の前で中の様子を伺っている会長と副会長がいた。

 何してるんだよ。そこまで来たら部屋に入れよ。

 入れ、入れ――と俺は念を送る。

 女神達よ。そのまま進軍し俺の部屋に入れ。

 そして俺の男臭いベッドにその高貴な身を休めるのだ。

 さすれば契約は結ばれよう。

 もたもたしてんじゃねーよ。


「なんか想像と違うの」


 生徒会長が残念そうな声でそう言った。


「そうですね」


 副会長も同様だ。


「あれ? なんか部屋が綺麗になってない? そんなバカな、お兄ちゃんいつの間に掃除したの?」


 妹の園が大きな目で俺を振り返る。


「え? ――昨日」

「いやいや、そんなはずはないでしょ、朝はぐちゃぐちゃだったはず」


 ふふ。くっくっくっ。

 くっくっくっ。俺がこの事態を想定していないと思っていたか?

 俺のコミュ障ボッチのセブンセンシズを、危険回避能力を舐めるな?

 俺のボットモは何だ? 何でも収納しちゃうスライムなるぞ。

 見られたら困るこの部屋にある危険物は全てアイテムボックスの中だ。

 エロ画像満載のパソコンも、中二設定ノートも全てアイテムボックスの中だ。

 俺は帰宅して直ぐにボットハンドを部屋まで伸ばし、危険物を根こそぎ収納したのだ。

 俺の加護は現実でも作用する。

 はっはっはっ――と俺は心の中で高笑いした。


「もっとこう、ぐちゃっとしたのを想像していたのだがな」

「つまんないですねえ」


 絶世の美少女である生徒会長が俺の部屋に入った。

 よし、そのまま俺のベッドに座れ、その小さなお尻で俺の寝床と密着しろお。

 俺のボッチハートは暴れん坊状態だった。


「会長、そろそろお時間です」


 なんと副会長が生徒会長を引き留めた。


「え?」


 俺の口から素っ頓狂な声が出た。


「なぬ? もうそんな時間か? まだエロ本もパソコンも開いておらんぞ」

「残念ですが今度にしてください」

「ふう。トーリよ。命拾いしたな?」


 生徒会長が俺の肩をポンと叩き、階段を下りて行った。


「ええまあ」


 俺はガッカリ気分を顔に出さずに無表情でそう答えた。


「また今度ね、トーリ君」

「ええまあ」


 俺は副会長を睨まないように下を向いてそう返事をした。

 ぐぬぬ――またしても、またしても副会長によってラッキースケベイベントが阻止された。




「ではお母様。また連絡いたします」

「はい。トーリが学校で何かやらかしたらお電話ください」

「トーリよ。分かっておるな?」


 生徒会長が俺を睨んだ。


「……」


 ――何をだよ? 口で言わないと分かんねえよ。


「トーリ君。くれぐれも……」


 副会長が俺を睨んだ。


「トーリ君……」


 リンダ先生が色っぽく口を動かした。

 だから最後まで言えよ。

 ボッチのコミュ障じゃあるまいし、思っていることあるなら口で言えよ。

 人は線で繋がってないんだから、口で説明しないと分かんねえんだよ。


 二人の美女と生気を吸い取るダークサキュバスは疑惑気な目線を残し帰っていった。




 美の嵐が過ぎ去った狭い居間には女神達の残り香が漂っていた。

 母親達がミルフィーの服を探しに姉の古着を漁りに出て行った今、ここには俺は一人だ。

 俺は背後を確認するが誰もいない――今じゃあぁ。


「スーハー、スーハー」


 俺は美女達が居た居間の空気を思いっきり吸い込んだ。


「ケホケホ」


 吸い込み過ぎて咽せる。

 だが女神達の空気が俺の肺と心を満たした。

 キモイとか、変態だと笑うがいい。

 だが、こんな機会二度と訪れないのだ。

 健全な男子高校生ならば皆同じことをするだろう。

 分かるだろう? 男子ならば?


 続いてリンダ先生が座ったソファを睨む。

 ゴクリ。俺の喉が鳴った。

 今ならまだリンダ先生の火照った身体の余熱が残っているはずだ。

 俺はボッチダイブでソファに飛び込んだ。

 そして無我夢中でソファに高速頬ずりした。

 さらに副会長、最後は生徒会長の座っていたソファに寝転んだ。

 美の粒子が染み込んだソファに頬を付けた。

 やったぞ。疑似添い寝コンプリートだあ。

 やった、やってやったぞ。寝とってやったぞおお。

 この世界にこんな恵まれた男子高校生は俺しかいない。

 女神達の原子が、分子が俺に吸収されたはずであろう。

 俺は融合したのだ。女神達が俺の中にいるのだ。

 幸福原子だ。女神原子だ。巨乳原子だああ。


 湧き起こる達成感に、充実感に幸福感が怒濤のように押し寄せる。

 俺のテンションは成層圏を、太陽系を超え、ボイジャーすら追い越すほどの速度で上昇していた。

 爺ちゃん。俺はやり遂げたぞ。

 女神達と疑似的接触を果たしたぞ。


「……何してるのお兄ちゃん」


 背後から冷酷な妹の声が響いた。


お読みいただきありがとうございました。

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