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65 深夜の初心者用ダンジョン二階層ボッチメイド

 俺はあまりの衝撃で一言も発することなく茫然と立ち尽くしていた。

 一言も喋らないことはいつものことだが、とにかく茫然ボッチだった


 信じられないものがいた。

 それはゆっくりと顔をもたげた。

 小さな美しい顔の輪郭に沿って透き通るような細く長い銀髪が流れる。

 その小川の流れのような銀髪の隙間からは切れ長の大きな赤い目、小さな口。

 そこから八重歯のような可愛らしい牙が生えていた。

 さらにその肌は信じられないほど白く透き通っていた。


「……」


 俺は細いボッチアイを限界まで見開いていた。

 息をするのも忘れ、ボッチボッチと余計なことを考える暇さえなかった。

 流れる銀髪が撫でた細い肩。

 お胸のサイズはいたって普通だ。

 ああ、なんだかずっと見ていられる安心サイズ。

 その顔は、そのスタイルはどこからどう見ても人間離れしていた。

 日本人離れ。外人離れ、いや人間離れしていた。

 美少女に魔物の要素を絡めたハイブリッド美女がそこにいた。


 どうなってる?

 ついさっきまで薄汚れたボッチのゴブリンだったはずだ。

 それがどうだ? ここにいるのはとんでもない美少女だった。


「……」


 言わずもがな。クロガウの時と同様、クロミズのコア核によって進化したのだ。

 そうこの美少女は元ゴブリン。ボッチのゴブリン、ボチリンが美少女に進化したのだ。

 その綺麗な肌を覆う汚い布切れがボチリンだった唯一の証。


「ゴワッ」


 ボチリン美女が自分の腕を見て驚き、自分の身体をペタペタと触りだした。

 ああ、お胸はそんなに触らないで、いや俺にも触らして。

 俺は声を出すのも忘れ、その圧倒的な美少女的存在に見惚れていた。

 待て待て、見惚れるな、興奮するな。慌てるな。

 あれは元魔物の元ボッチのゴブリンのボチリンだぞ。

 薄汚れたバッチイゴブリンだぞ。

 クロミズのコア核を食べて大きくなったボッチのゴブリンだぞ。

 落ち着け俺。あれは美少であっても人間じゃない。

 れっきとしたゴブリンなんだぞ。

 鼻の下を伸ばしている場合ではない。


 これは大問題ですぞ。魔物がコア核食べたら進化するなんて前代未聞。

 聞いたことがない。前例はクロガウだけで十分だ。

 ボッチのコミュ障で経験値不足の俺は元ケルベロスのクロガウですら、持て余しているのに美少女の進化存在なんて持て余すどころが、火傷しちゃう未来しか見えない。

 俺はコミュ障不能なポンコツ男子高校生だぞ。


 勘違いや。俺の見間違いや。あれは美少女じゃない。あれはゴブリンだ。

 そう俺の嫌いなゴブゴブのゴブリンだ。


「ギャギャウ」


 元ボチリンの美少女が長い首を大きく横に振った。

 銀髪が激しく乱れた。


「……」


 ギャギャウ? えっと、まさか違うって言ったのか?


「ギョウ」


 元ボチリン美女が大きく頷いた。

 銀髪が嬉しそうに舞った。

 待てマテまて、コミュ障の俺が美少女と流暢な会話をしている。

 まさか、俺は既にコミュ障の沼を脱出? 知らないうちに成長したのか?

 脱皮。ついにボッチの蛹から羽化したのか?

 狭い繭から広い世界に飛び出したテフテフ。

 そう、俺はボッチテフテフに生まれ変わったのか?


「ギャギャウ」


 元ボチリン美女が冷ややかな目で、面倒くさそうに首を振った。

 銀髪が嫌そうに揺れた。


「……」


 え? 違う? ボッチテフテフになってない?

 ――そうだよね。ポンコツの俺がそんな簡単にコミュ障脱出して、他人と円滑な意思疎通できるわけないよね。

 ははあん。分かったぞ。きっとあれだ。

 きっと俺の心を読んでるよね。

 うん分かる。分かる。そういうの慣れてるから。

 オシャベリヒメサマなんかもう俺の心読み過ぎて、男子高校生の極秘プライバシーが瓦解し崩壊しているからね。

 ここ最近の俺にとってはプライバシーや、個人情報や、一人の時間など皆無に等しい。

 口を動かさずに喋れるなんて逆に最高ですがな。

 ああ、全世界の人間が心で会話可能だったら最高だよね。

 誤解や、嘘がない世界。そこでは揉め事や犯罪なんて起こらないよね。

 きっと世界が平和になるよ。

 ああ、でも心の中で死ねって叫んだら殺害予告になって逮捕されちゃう?

 ああ、そんな世界はデストピア。やっぱり心が断絶されている今の世界のほうがいいな。


「ギャギャエ」


 俺が現実逃避気味に思考の袋小路に迷い込んでいると、目の前のボチリン美女が俺に指を指した。

 名前? 加賀坂通だ。

 くれぐれも区切るところを間違えないように。

 加賀 坂通君じゃないからな。加賀坂 通だ。

 決してサカトーリ君でもツウでもないからね。

 そして読み方はトールじゃない。トーリだ。

 そこんとこ絶対に間違るなよ。これまで間違えらたことしかない。

 キラキラネームほどぶっ飛んでいるわけでもなく、ただ微妙に読みづらいだけの名前。

 爺ちゃんがこの名前を付けたせいで俺はねじ曲がってしまったのだ。

 俺がボッチでコミュ障で、目つきが悪くムッツリスケベなのは爺ちゃんのせいだ。

 悪いのは俺じゃない。爺ちゃんだ。

 だから俺は悪くない。悪いのは大人。悪いのは学校。悪いのは政治。


「ギョーリ」


 ギョーリ? え?

 全然違うから。

 トーリ。俺はトーリだ。


「ギョーリ」


 え? だから違うってトーリだって。


「ギョーリ、ギョーリ」


 元ボチリン美女が大きく腕を振った。

 もう好きに呼べよ。

 ゴブ語では合っているかもしれないし、発音しづらいのかもしれない。

 俺の心は摩周湖ぐらい広いのだ。

 ――だから許そう。俺の名を間違って呼ぶことを許可しようじゃないか。


「ギョーリ、ギョーリ、ギョーリ」


 元ボチリン美女が腕を頭の上でフラフラさせながら踊り出した。

 なんとあれは伝説のボッチダンスではないか?

 ボッチにしか会得できないというボッチダンス。

 一人でいるときにしかできない恥ずかしいダンス。

 なんとボッチダンスをマスターしているとは、このゴブすこぶる好印象。

 ボッチ道の探求者仲間ここに見つけたり。

 もう他人の感覚がしない。

 まあそりゃそうか、クロミズのコア核の破片食べちゃったからクロミズの眷族だ。

 眷族は家族みたいなもんだろう。親近感しかわかなくて当然至極。


「ギャマエ」


 元ボチリン美女が自分を指してそう叫んだ。

 お前の名前なんて知らんがな。ゴブ子とかゴブ美とか、ゴブ恵とかじゃないのか?

 それとも洋風にゴブーネとかゴブシカとかかな? ゴブザベートとかか?


「ギャギャウ。ギョーリ、ギャマエ、ギョケル」


 突然、ボチリンが拳を握って怒りだした。

 え? 俺に名前を付けろって?

 あー名付けね。別にいいけどさ、俺の冴えわたるネーミングセンスが炸裂しちゃうよ。

 待て待て、人間は学習する生き物だ。

 俺はクロガウの件で学んだのだ。

 下手な名前を付けると頭からガブリと食われることを学んだのだ。

 ああ、美女に食われるならそれは本望。ここダンジョンだし、死なないし。

 変な名前を付けて喰われるという未来線もありっちゃありだな。大ありだな。


「ギャマエ」


 ボチリンが肩を揺らして俺を催促する。

 慌てるな。俺の冴えわたるネーミングセンスの導火線に火が付いたところだ。

 ドカンと爆発しちゃうから心して待つが良い。


「ギョイ」


 ボチリンが姿勢を正した。御意ってことかな?

 えーと、クロミズの眷属だから黒シリーズ……がいいだろう。

 シュバルツゴブ。ネロゴブ。ネロ?

 いや、綺麗な銀髪だからシルバー系……。

 シルビスゴブ。シルバ美。グレ子。

 いぶし銀ゴブ。黒牛守の時のように漢字がいいのだろうか?

 いや慌てるな。ここはミルフィーユのごとく慎重に慎重を重ねなければ――。


「ミルフィー、ミルフィー、ミルフィー」


 元ボチリン美女がボッチダンスを小躍りした。

 ミルフィーだって?


「ギョウ。ミルフィー」


 ボチリンが自分の顔を指さした。

 いやいや、それは名前ではなく洋菓子の名前であって、例え話で出しただけで、君の名前ではないのだが――。


「ミルフィー、ミルフィー、ミルフィー」


 元ボチリン美女がボッチダンスを小躍りし始めた。


「ギャギャウ、ゴブリンギャナイ。ミルフィー」


 ミルフィーがボッチダンスを小躍りし始めた。


「ギョウ、ミルフィー」


 ミルフィーが得意気に頷いた。

 ミルフィー。うーん本人が気に入っているなら仕方がない。

 完全に誤解なんだがコミュ障ボッチの俺はあえて誤解をそのままにしておくのだ。

 何故ならば口で訂正するのが面倒だからだ。

 それにミルフィーが喜んでいるならそれでいいではないか?

 ウィンウィンウィンの関係だ。

 だがボッチダンスを小躍りするのはそのへんで辞めて欲しいのやら、欲しくないのやら。

 チラチラと素肌が、横乳が、太ももが見えるのだ。

 ええい、これはボッチの教育上問題であるぞ。

 小汚い布切れ一枚をトーガのように纏っている美女のエロダンス。

 俺は誰だ。男子高校生だ。

 頭の中はエロい妄想しか詰まってない暴走列車なんだぞ。

 少しでもその白い肌が俺と接触してみろ。

 この誰もいない砦の片隅でなにか破廉恥事案が起こってしまう。

 だがダンジョンだぞ。誰も見ていない。こいつはゴブリン。

 いや待て。油断するな。

 副会長の鑑定眼に見抜かれる可能性がある。

 それよりなによりもミルフィーは眷族、家族なのだ。

 家族をそんな目で見る趣味はない。


 クロミズ何か服はないのか? 俺は目を伏せて心の中のクロミズに問いかける。

 クロミズが首を傾げて躊躇したような気がした。

 いやあるはずだろ。

 山のような武器があったようにそのアイテムボックスの中にはミルフィーにピッタリの可愛いお洋服があるはずだ。

 俺の中のクロミズが、ああ、あったわ的に手を叩いたような気がした。

 そうだろう。そうだろう。それでこそおんぶに抱っこの俺の神だ。

 クロミズが何かを取り出した。


「……」


 古めかしいデザインのメイド服が現れた。

 クロミズ。良い趣味してるじゃないか、どこで盗んだ?

 それは聞かない約束ボッチよ――とボッチ君がクロミズの代わりに答えた。

 どうせ、大暴れした時に倒した霊トレーサーの服だろう。

 するとメイドの霊トレーサーとか存在したということか?

 ふむふむ、それは大変興味深い。まだメイド喫茶もない時代にバトルメイドに先駆けてきな存在が昭和か明治か江戸に存在したとは流石クロミズ、先見の明がある。

 だがいいのか? いいはずだ。可愛い美少女は何を着ても似合うという宇宙の法則があるのだ。

 だからきっとこの昭和のメイド服はミルフィーにとってもよく似合うだろう。

 ミルフィー、これ着れるか?

 俺はそう心の中で言いながらメイド服を差し出した。


「ギャリガト」


 ミルフィーが俺の目の前で布切れを脱ぎ始めた。

 おっとこれはラッキースケベタイムの時間?

 だが、ミルフィーは眷族だ。家族だ。

 家族を卑猥な目で見ることは出来ない。


 訂正……ボッチの俺にそんな度胸はない。

 俺は紳士らしく後ろを向いて、衣擦れの音が終わるまで待った。

 もちろん妄想しながらだ。


「ギョゲナイ」


 ミルフィーが着れないといっているのか?

 そうかそうか、なら仕方が無いなあ、お兄さんが手取足取り着せてあげようか。

 そう不適な笑みを浮かべた瞬間、キンミズサマの触手が俺の背中から伸び、ごそごそと衣擦れの音が聞こえ始めた。

 キンミズサマがミルフィーに服を着せてあげているようだ。

 くっ。俺のラッキースケベイベントがあっさり消失した。


「ギョリガドウ、ギョロミズサマ。ギョーリギレタ」


 目を閉じていた俺の前にメイド服を着て、銀色の髪をなびかせた天使が舞い踊った。

 あら可愛い。メイド喫茶かコスプレイヤーかアイドルか? サイカワ。カワヨ。


「ん?」


 あれ? ちょっと待って、いくら鈍感の鈍い俺でも異変に気付く。

 なんかさっきのメイド服と色とか形が違くない?

 俺が手渡したのは昭和のメイド服だったよね。丈の長いひざ下まであるスカートの。

 それがミニスカになって太ももばっちり絶対領域が存在しタイツまであるのだ。

 何でメイドカフェのメイド見たく今風になっているんだ?

 メイドカフェ行ったことないけど。


 はっ。もしかしてキンミズサマ、なんかした?

 俺の中のキンミズサマがサムズアップした。

 なんかしたんかよ。


「ギョウ。ギョロミズサマにギャナオシ、シテモラッタ」


 キンミズサマにお直し?

 メイド服を着たミルフィーが嬉しそうに弾んだ。

 俺よりちょっと背が高いけどサイカワ。

 まさにスレンダーメイド天使長だ。

 これで武器を構えたら立派なバトルメイドの完成だな。


「? ギョーリ。ブギ、ギョーダイ」


 え? 武器ちょうだいって?

 ダメダメ。可愛い美少女が武器なんか振るったらダメです。


「ギョーリブギブギ。ギョブリンギョロス」


 ミルフィーがボッチダンスを踊った。

 くっ。俺はその可愛さにいとも簡単に屈した。

 ゴブリンには恨みがあるのだろう。

 それに元ゴブリンなんだから武器ぐらい使えるだろう。

 武器が。何がいいかな?

 アイテムボックスの中にはクロミズが貯め込んだ武器が山程ある。

 二刀流も棄てがたいがバトルメイドと言えば何だろう? 斧か? ハルバートか?

 そう悩んでいると俺の手に巨大は黒い斧が現れた。


「え?」


 これはクロウスの斧……黒炎断罪斧。

 俺が黒牛守を倒した時に手に入れた黒牛守の愛武器だ。

 クロウス。お前、本気か?

 これをミルフィーにやれってことか?

 俺の中の体育会系ゴリマッチョのクロウスがサムズアップした。


「ギャッター。ギョロウスギャマノ、ギョクエンギャンザイハ」


 ミルフィーがクロウスの斧を奪い取り振り回した。


「え?」


 信じられないことにミルフィーは巨大な斧を自由自在に振り回している。

 斬ったり、構えたり、回したり、ミルフィーが突然美しい演武を始めた。

 ブンブン、ギュンギュン、大気を割く音が狭い砦の中に響く。

 なぜか使いこなしている……っておかしいだろう。

 さっきまで囚われて死にそうになってたボッチのゴブリンだぞ。

 なんでそんなに元気なの?

 なんでそんなな斧技あるの?

 それになんだかキンミズサマや黒牛守のことも知っているようだけど、おかしくない?


「これはギョリヒメサマのカイギャゴ」


 ミルフィーが得意気に斧を肩に乗せてそう言った。

 キリヒメサマの下位加護だって?


「ギョウ、ギョーリのカギョ。ギョーリのカギョのカイギョカン」


 俺の加護? 俺の加護の下位互換?

 なんと俺の加護がミルフィーに受け継がれているのか。


「ギョウ」

「……」


 あーこれ絶対俺より強い奴や。

 クロミズのコア核の破片で進化して、キンミズサマに服を着せてもらい、クロウスが斧を与え、俺の下位互換のキリヒメサマの剣技を持ち備えるなんて――もう無敵やん?

 それで可愛いってもうボチの出番ない奴やん。主役交代やん。

 俺の物語は人気なくて終了してスピンオフのミルフィーの物語の始まりやん。

 題名はこうだ。

 元ゴブリンメイドはミノタウロスの斧でダンジョンを行く。

 あ、そっちのほうが面白そう。選手交代します。

 ボッチのダンジョン終了です。

 ええい、俺の物語は終わらないぞ。人気なくても続けていくんだ。

 笑われ、蔑まれ、忌み嫌われようとも俺の人生の物語は俺だけの物だからだ。


「……」


 妄想は寝る前だけにしておけ、今は目の前の事象に集中しろ。


「ギャハハハ」


 ミルフィーが狂ったように黒炎断罪斧を振り回し、衝撃の風が俺の前髪を揺らした。

 おふ。 俺は目頭を押さえた。

 少しは自重しろよボットモ達よ。

 そんなに簡単に強くなったら修行シーンとか要らなくなっちゃうだろ。

 それに主人公である俺より強いって反則じゃね?


「ギョマセテ。ミルフィーギョテキ」


 任せてミルフィー無敵と言ったのだろうか? ミルフィーが斧をぶん回して構えた。

 斧はぶれずに空中に静止したままだ。

 恐ろしい娘。こういう子は絶対に怒らせたら駄目だ。

 俺はそれを姉ちゃんで身を削って学んだのだ。

 俺は頭を振って姉ちゃんの幻想を消去した。

 ここはまだダンジョンだ。油断大敵なのだ。

 まだこの階層のボスにも会っていないのだ。


「ギャマセテ。ギョッチ」


 任せてこっち、と言ったのだろうか?

 ミルフィーが俺の先にたって歩き出しだ。

 俺は手下よろしくミルフィーの後にコソコソ歩く。

 綺麗な足だ。ああ眼福。もう少し近付いてもいいかな。

 俺がミルフィーの背に急接近しようと目論んでいるとミルフィーが止まった。


 なっ、まさか感づかれた? 俺のラッキースケベイベント強制作動がばれていた?


「ギョコ」


 そこには大きなボス部屋のような扉があった。

 えっと、ここって砦の裏ですよね。

 そんなとこになんでまたボス部屋っぽい扉があるんですかい?

 さてはもうここのダンマス、ダンジョン作るの飽きたっぽいな。


「……」


 この中にボスが? 俺はミルフィーを見る。


「ギャブン」


 ミルフィーが首を傾げた。多分? おいおい知っててここに俺を案内したんじゃないのかよ。

 まあいい。この扉の意匠は間違いなくボス部屋の扉だろう。

 なぜならば扉の向こうからシュインシュインという効果音のメンタル霊が溢れ出ているのだ。

 間違いない。この扉の向こうには強敵がいる。

 このメンタル霊圧はキリヒメサマ級。

 俺の首を刎ねたキリヒメサマと同格のヤオロズがいるに違いない。

 ここは用心を用心をミルフィーユ状に重ねて進まねば。


「ミルフィーがギク」


 え? ミルフィーは俺の静止を聞かずにノックもせずに扉を開けた。

 おいおい、それは俺の専売特許ですたい。

 失礼にも無言で扉を開ける最低の技。

 面接でそれやったら伝説になるという無言の扉開け。

 流石、我が弟子じゃ。よー分かっとるやないか。


「ギョヘヘ」


 ミルフィーは振り返って笑った。

 内部はクロミズの部屋によく似た部屋だった。

 ボス部屋の風格漂う大きな部屋だ。


「ギョーリ」


 ミルフィーが部屋の中央を指さすとそこにメンタル霊が渦を巻き、その中から何かが現れた。

 膨大なメンタル霊の霊圧が俺の黒髪を揺らす。

 ミルフィーの細い銀髪が舞う。


「なっ」

「ギョギョ」


 メンタル霊の暴風の中心にそれはいた。

 それは圧倒的なメンタル霊を放出しながら俺達を睨んだ。

お読みいただきありがとうございました。

誤字脱字修正いたしました。

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