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64 深夜の初心者用ダンジョン二階層ウェーイ砦

「ノスフェラトゥフレイム、オールオーバー」


 俺は迫る魔物の群に対して無慈悲に最強魔法を放った。

 魔物を燃やし喰らい、さらに燃え上がる最強魔法を。

 遠慮も自重もしない。

 ここは初心者用ダンジョンではない。極悪非道ダンジョンなのだ。


「え?」


 だがメンタル霊を糧にして燃え上がるノスフェラトゥフレイムが燃えない。

 魔物が燃料となるメンタル霊を持っていない? そんな馬鹿な。どんな魔物でもメンタル霊を持っているはずだ。

 一体どうなっているのだ?

 ボッチレーダーは魔物の反応が多すぎてよく分からない。

 俺は劇細の目を開けた。

 ようやく光に慣れた光景が見えてくる。


「なんだこりゃ?」


 そこにあったのは骨。骨、骨、骨の壁。

 そう、魔物はスケルトンだった。

 その向こう側の魔物もスケルトン。全部スケルトン。

 骨だから燃えない? そんなことはないはずだ。


「カタカタカタ」

「ケケケケタタ」


 スケルトン達が馬鹿にするように笑った。


 ノスフェラトゥフレイムが効いていない?

 そんな馬鹿な俺の最大級黒歴史魔法だぞ。


「ケタケタケタ」

「ケラレララレ」


 くっそお。集団で俺を笑いやがったな?

 俺のプライドはオゾン層より高いんだぞ。

 集団で囲んで笑う。こいつら、こいつらは絶対許さねえ。


「ビッグバンストーンレイン……花の舞」


 俺はボットガン放った。

 ただ闇雲に、ただ無秩序に、放たれた石はまるで花の舞のよう。

 狙いは必要ない。前方は全て敵なのだ。

 河原の石が前列のスケルトンに命中し粉砕し貫通する。

 そしてその背後のスケルトンも粉砕する。

 その背後も、その背後も、射線上のスケルトンが爆散する。

 ビッグバンストーンレインは効果絶大。スケルトンの壁に大穴が開いた。

 爆散した骨が床に落ちる音が雨霰のように鳴り響く。

 最強魔法ノスフェラトゥフレイムが効かなかったがボットガンは有効。

 馬鹿の一つ覚えではダメだ。敵に合ったTPO攻撃が必要だ。

 周りのスケルトン達が笑うのを止めた。


「グギギギ」

「ギコギコ」


 俺は再びビッグバンストーンレインを放つ乱射する。

 バキバキと骨が砕ける音、粉砕される音と断末魔の叫び声がモンスターハウスを埋め尽くした。


 やがて全ての音が消え、残ったのは骨の山、剣の山、盾の山。

 スケルトン軍は俺のビッグバンストーンレイン花の舞で完全に消滅した。

 またしてもボッチの圧勝。強すぎて自分が怖い。

 全てクロミズのおかげなんだが、そこはほら俺の連れスゲーだろ的な感覚と同じ。

 俺の連れの功績は俺のものってやつだ。


「あれ?」


 だが何かおかしい。

 魔物を倒したらメンタル霊となって飛散するはずだ。

 魔石が残して蒸発するはずだ。

 だが、床一面の骨は消えずに残ったままだ。

 まさか――まだ終わっていない?


「ケタケタケタ」


 案の定、床の骨山が動き出し、集結し始めた。

 砕けた骨が合体し、延長していく。

 俺の目の前に巨大な骨の何かが構築され始めた。

 だが俺は待ってやらない。

 俺はヒーローの変身シーンもロボの合体シーンも早送りするたちなのだ。


「……馬鹿め」


 ボスの復活などボッチの三次問屋の俺が許さねえ。


「ファイナルビッグストーンボットガン」


 俺は河原で拾った石の中で一番デカい石をボットガンで放った。

 あまりのデカさで圧縮し、発射するまで時間がかかる。

 だがそれはほんの数ミリ秒だ。

 俺から巨大な石が、いや岩石が飛び出した。

 衝撃波が俺の黒髪を揺らし、前方の空気が歪んだ。

 ただ暴風。ただ圧倒的な大音量。

 その圧倒的な威力によって再集合しかけていた巨大な骨の何かはバラバラに吹き飛んだ。

 突き抜けた岩石がボス部屋の壁に激突して部屋を振るがした。

 余韻の衝撃波が部屋を駆け巡る。

 そして今度こそ巨大な骨の何かはメンタル霊となって飛散し、俺の身体に経験値となって吸い込まれた。


 こうして俺と巨大骨の何かとの激闘は戦う前に幕を下ろした。

 目には目を。卑怯には卑怯で。

 俺は敵が出現する前に敵を撃破した。

 坊主、よくやった。今のは良い判断だったぞ。

 ありがとうございます師匠――と俺は心の中の妄想の師匠に頭を下げた。


 経験を積むためだけに巨大な骨の何かを戦うという選択は俺にはない。

 コスパの権化ボッチの俺は無駄が嫌いだ。

 改善につぐ改善ボッチなのだ。


 沈黙に包まれたモンスターハウスの奥には下に降りる階段があった。

 俺は無言で無表情で階段を降りた。


「え?」


 そこには信じられない光景が広がっていた。


「外?」


 そこはダンジョンの中ということを忘れるほどの広大な空間であった。

 あまりの巨大な空間に霞む天井。

 目の前には深い堀があり、頑丈そうな橋が掛けられたその先には砦のような建造物があった。


「城、砦?」


 なんとダンジョン内に砦があった。

 高い壁には細長い縦長の穴が開き、その中からゴブリンの腹立つ顔と矢が覗いている。


 ここはゴブリン、いやリア充の巣窟。リア城だ。

 毎晩、DJとVJによる乱交パーティーが開かれている悪の巣窟。

 よい子が絶対に立ち入ったらいけない悪い場所。

 ボッチの俺には無縁な神聖な場所。

 リア充の巣窟ウェーイ砦と命名する。


 だがそのウェーイ砦に向かうには中央の橋を渡るしかない。

 だが障害物のない橋を渡れば格好の的だ。

 砦の窓からはウェーイの矢がちらほら覗いている。


 このウェーイ砦を攻略するには一人では無理だ。

 魔法か弓矢による遠距離援護が必要だ。

 そして橋の上での近距離戦。

 ソロの限界がここにあった。

 ここはパーティー必須のダンジョン。

 攻略したかったらパーティーを組めというわけか?


 だが俺にパーティーなんか組めるはずがないし、組みたくもない。

 俺は長距離攻撃も短距離攻撃も備えたオールマイティボッチなのだ。


 ということで、俺は砦の窓に向かって右手を差し出した。

 毎度毎度お世話になってます俺の十八番――。


「ボレイガン」


 俺の伝家の宝刀ボレイガン……ボットガンを放った。

 アイテムボックスの中にある河原の石が高圧力で発射され、砦の窓に吸い込まれるように消え、大きな音が響いた。


「ギャアアア」


 轟音の隙間からリア充、もといゴブリンらしき断末魔が響き、薄汚いメンタル霊が飛散する。

 驚異の威力。流石俺のボットモ。

 だがボットガンは直線軌道――要塞内の敵を殲滅するには不向き。

 それを感じ取ったクロミズがボットガンを放物線起動で放った。

 河原の石が砦の壁に命中し、轟音を奏でた。

 そうだな。発射の威力を弱めれば放物線で放てる。

 障害物を超えて撃つことも可能だとはさすがはクロミズ先生だ。


 砦がざわつき始めた。

 橋の向こうの門が開きゴブリン軍団がワラワラリアリアと現れた。


「ボレイマシンガン」


 俺の身体から発射された石が高速で橋の上を駆け抜ける。

 そして描写するのを躊躇するようなゴブリン達のグロテスクな破片が舞い、メンタル霊と魔石だけが残った。


「ギャニ?」

「ギャソギャロ?」


 静寂に包まれる砦。

 この距離から攻撃されるとは思っていないだろう。

 それは俺も同じだ。ボットガンの威力を目の当たりにして、俺もちょっと引いた。

 やりすぎだってばよう。クロミズ先生。


「ギョビラをギャメロオ」


 慌てたゴブリン達が門を閉めた。

 籠城か。よい判断だ。高い窓から矢が飛来する。

 だが俺がいる所までは届かない。

 同時に魔法も放たれるが同様にここまでは届かない。

 遠距離攻撃は射程距離が長い方が勝つ。

 次は俺のターン。


「ノスフェラトゥフレイム」


 俺の紫炎の極悪魔法が砦の壁に命中した。


「ギャハハハハ」


 壁に阻まれ、飛散する魔法を笑うゴブリン達。

 だが笑っていられるのも今のうちだ。

 ノスフェラトゥフレイムは消えることはない――メンタル霊がある限り。

 小指の先ほどの炎でも残っていれば復活する。


「ギャワワワワ」


 砦の窓が紫色に光った。

 内部のゴブリンに燃え移り、そのゴブリンを燃料にしてさらに燃え上がる。

 隣の窓も紫色に染まる。

 叫び声と同時に紫色の窓が増えていく。


「「「ギャアアアアア」」」


 砦の中からゴブリン共の悲鳴がこだまする。

 そう、これがノスフェラトゥフレイムの極悪たる所以。

 全てを喰らい尽すまで止まらない地獄の炎。


 今度、元地獄の門番だったケルベロスだったクロガウにも教えてやろう。

 クロガウ今頃何してるかな?

 出会ってすぐに黒牛守のダンジョンに隔離したのは可哀そうだったかな。

 紫色のノスフェラトゥフレイムを纏うクロガウって見た目だけでクールやん――と妄想をしている間にノスフェラトゥフレイムの炎が砦全体に広がっていく。


「ギャギャギョ」


 逃げろと言っているようだが、俺のノスフェラトゥフレイムから逃れられない。

 メンタル霊がある限り、燃え上がる燃料がある限り、お前らが存在する限り消えない。


「……」


 俺は無情にも非情にも燃え上がる砦をぼんやりとボッチに眺める。

 冷静に考えると滅茶苦茶だなこの魔法。

 もう少し威力の低い魔法の開発が急がれる。

 今度寝る前に考えよう。俺は寝る前の妄想タイムが大好きなのだ。

 多分、俺が小説家だったら未完の百冊は書いているね。

 宇宙ボッチ物語から、異世界ボッチ紀伝から、タイムボッチまで……。

 おっと、そんなことより今は目の前のことに集中しよう。

 燃えるものが無くなったのか、砦の穴から見えていた紫色の光が消えた。

 飛散したメンタル霊の粒子が俺に向かって舞い降りる。


 ゴブリン砦攻略完了。

 最強ボッチの俺の面目躍如――ということで俺は威風堂々と一本橋の真ん中を渡り、閉まっている大きな扉を蹴った。

 加護によって身体強化されたボッ蹴りによって内側に吹っ飛ぶ扉。


「ギャアアア」


 生き残りのゴブリン共が扉に潰されて、メンタル霊となって飛散した。

 他にも生き残りがいるかもしれないな。

 俺は分身ボッチーズを多数派遣し砦の中の探索を開始した。


 悪い敵はいねえかあ?

 悪いお宝はねえかあ?

 だが帰還したボッチーズからの残念な報告が届いた。

 敵も宝もない。

 ノスフェラトゥフレイムの圧倒的な威力によって砦の中はゴブッ子一人いない。


「ん?」


 だが帰還したボッチーズの情報に見逃せない情報があった。

 なんと生存者がいる。

 窓がない部屋のようでノスフェラトゥフレイムが届かなかったのだろうか? これは牢獄か?

 まさか誘拐された美女か? それとも拷問中の半裸のイケメンか?

 これがアニメか漫画だったらお色気シーンのはずだ。

 ラッキースケベ、いやトゥルースケベイベントの開始フラグが立ったはずだ。

 俺は悪い笑みを浮かべてそこに向かった。


「あれ?」


 だがそこにいたのは半裸の美女でも拷問中の半裸のイケメンでもなかった。

 ゴブリンだった。

 狭い通路の奥にある牢獄の中には一匹の小さなゴブリンが鎖で繋がれていた。


「ゴブッ、ゴブッ」


 咳で肩を揺らす囚われのゴブリン。

 極悪非道の俺でも流石にこれは攻撃不可能。

 ノスフェラトゥフレイムの餌食にならなかったのは何故だ?

 その理由が直ぐに分かった。

 このゴブリンからはメンタル霊が感じられないのだ。

 正確にはメンタル霊が切れかかっていて死にそうだった。


「ギャ」


 俺を見て怯えるゴブリン。鎖が揺れた。

 そもそも仲間のゴブリンが何故牢に?

 そしてその囚われのゴブリンの身体の傷は古い。

 俺の攻撃によるものではない――以前ここに来た別の霊トレーサーか?


「はっ」


 ゴブリンは鎧を着ておらず粗末な布地を纏っているだけだ。

 まさか、こいつボッチか?

 他のゴブリンに、イジメられてたのか?

 そこには切り傷が、殴られたような打撲の跡があった。


 俺の中で何か黒い液体がコポリと音を立てた。

 なんて酷いことを、この砦の奴ら皆殺しだ。

 ああ。とっくに皆殺しだった。 酷いのは俺かな?

 俺がゴブリンを嫌いな理由は集団行動でイジメをするリア充みたいだからだ。


 ボッチのゴブリンを嫌う理由はない。

 むしろこのボッチのゴブリンに俺は好感を抱いた。

 敵に、魔物に好感など無用に不要だ。

 だがこのゴブリンは武器も防具も持たず、死を受け入れ震えている哀れな存在。


「……」


 ああ、あの時の俺と同じ。

 加護を得る前の俺と同じ。

 人生になんの希望も夢も持たない諦めた目。

 このゴブリンは俺だ。

 胸が締め付けられる。

 忘れていた孤独が襲い掛かる。

 分かっている。こんなことは駄目だ。これは敵だ。

 だがこいつはボッチのゴブリン……ボチリンなのだ。


「ボッチDEヒール」


 俺はボチリンに回復魔法を唱えた。

 このまま放っておけない。

 こんなジメジメした喰暗い場所で死なせはしない。

 傷付き、飢え死にしそうな哀れな存在を放置などできない。

 それが敵だろうとしてもだ。


 俺の性格は歪んでいるし、被害妄想も酷い。

 それは自他共に認めよう。

 だからといって死にそうなボッチを放置できるほど歪んではいない。

 ボッチDEヒールの癒しの力に包まれるボチリン。


「ギャゼ?」


 なぜと問うたか? それは俺にも分からない。

 驚愕の表情を浮かべたボチリンの小さな身体の古傷から生傷が消えていく。

 神であるクロミズの放つ回復魔法ボッチDEヒールの威力は絶大なのだ。

 俺は敵意がないことを示さなければ……。


「フヒ」


 俺の口から変な笑い声が出た。


「ギャ?」


 表情筋肉が退化した俺の固い笑顔にボチリンが警戒する。

 引かれている。ドン引きされている。

 最弱のゴブリンにまでドン引きされている。

 おかしい。そこは泣いて感謝される感動的な場面のはずだ。

 俺がイケメンだったら歓喜の涙を流し、感動に打ち震えただろう。


 俺、お前の怪我治した? 言葉分かるか?

 俺は自分を指さして、ボチリンを指さした。

 だがボチリンは俺を見たまま動かない。

 ――分かんねえのかよ。俺は拘束具を引き千切ってボチリンを開放した。

 好きなところへ行くといい。


「……」

「……」


 だがボチリンは何も言わない。動かない。

 ――完無視かよ。無視のゴブリン――ムシリンかよ。

 俺は無視するのは好きだが無視されるのは好きではない身勝手な男だ。


 こうなったら最後の手段。カロリーバーをボチリンに投げた。

 床を転がるカロリーバー。ボチリンはそれを不思議そうに見て興味なさそうに目を逸らした。

 こいつ俺の好意をまたしても無視しやがった。

 スライムのスラッシュだったら泣いて飛びつき貪り食っているところだぞ。

 これ以上ここにいてもボッチのコミュ障の俺からコミュ開始するはずがない。

 先に行こう。俺はムシリンを無視してその場から離れ砦の奥に向かう。


 この砦のどこかに通ずる通路か階段があるだろう。

 だが自分で探すのはだるい。

 ボッチーズを派遣しようとしたその時――。


「ギャッテ」


 ボチリンがカロリーバーを握りしめて俺の前に回り込んだ。

 その表情は困惑したままだ。

 今さら遅い。どっか行けよ。あっち行けよ。

 俺を無視した奴とは口をきいてあげないんだからね。

 ああ、それはいつものことだった。


「……」

「……」


 ボッチ同士が出会ったらどうなるか?

 どちらも会話の糸口さえ見いだせず、互いに沈黙するのみ。

 牢獄がサイレントプレイスとなった。


 何か用?

 俺は心の中でボチリンに喋りかけた。


「……」


 だがボチリンは答えない。


「ギョギョテッテ」


 ボチリンが頭を下げた。

 連れてって? と言ったのだろうか?

 ハハハ、何言ってんだ? ボッチの俺はパーティーなど組まない。

 その前にお前はゴブリンで俺は霊トレーサー。

 お前と俺は敵同士。相容れない存在だ。


「ギョギョオ、ギョントカ」


 そこは何とかだって?

 ここはA級極悪ダンジョン。

 この先は更なる強敵が待ち構えているだろう。

 最弱のゴブリンが無事ですむ保証はない。

 俺についてくると死ぬぞ――俺は心の中でそう言った。


「ギャギャワナイ」


 構わないだって?

 そうか――お前は独りぼっちだったな。

 その気持ちは痛い程よく分かる。

 大きな目で真っすぐ俺を見つめるボチリン。

 なんだか憎たらしいゴブリンが可愛く見えてきた。

 いかんいかん、敵に情けなどいかん。


「……」

「ギョギョテッテ」

「……」

「ギョネガイ」

「……」


 くっそ、なんだか可愛く見えてきた。

 連れていくのはいいが俺の一存では決められない。

 クロミズ、キンミズサマ、黒牛守、どうする?

 俺はボットモに問いかける。

 俺の身体は俺だけのものじゃないのだ。

 俺の意思だけで全てを決める訳にはいかない。

 俺達はチーム――ボッチームなのだから。

 ボッチーズも固唾を飲んで見守る。


 俺の手に何かが現れた。

 これはクロミズのコア核の破片?

 俺が扉で潰したクロミズのコア核の破片は全て回収し、アイテムボックスに収納してあった。

 そうかクロミズ。身体の大半をテンドー君に奪われていてもお前は優しい奴だな。

 クロガウの時もそうだった。

 この哀れなボッチのゴブリンを放っておけないんだな。

 お前の眷属にしてもいいんだな?


 俺の中の小さなクロミズがサムズアップした。

 黒牛守が笑った。キンミズサマが跳ねた。

 ボッチーズが頷いている。

 ああ、俺の仲間は最高だ。ボッチーム最高。

 俺は心の中で涙を流した。


「分かった。連れて行ってもいい」

「ギョント?」

「これを食ったらな」


 俺はクロミズのコア核の破片をボチリンに手渡した。


「ギョヘハ?」


 ボチリンが不思議そうな顔でそれを見る。


「く、食え、さ、さささすればば、チチからをふ、えええ得るだほう」


 俺は長台詞を頑張って喋った。舌がつった。


「……」


 疑わし気な目をしたボチリンが俺の手からクロミズのコア核の破片と受け取った。

 そして目を閉じて飲み込んだ。


「ギャアアアアア」


 あれ? 苦しみだしたぞ?

 クロガウの時と同様にボチリンが悶え、苦しむ。

 その小さな身体が半透明のボット細胞に包まれる。

 そして見る見るうちにその身体が巨大化する。

 やせ細っていたボチリンの身体が巨大化する。

 ボット細胞がヌラヌラと蠢く。

 そして、手足が、髪が伸び始めた。


「グギャアア」


 ボチリンが叫んだ。

 化け物化フラグですよ。

 俺は慌ててボットガンを放とうとするがクロミズは無反応だ。

 ちょ、これまずいってば。

 おっきくなってるってば。

 明らかにあかんやつや。


「え?」


 だがボチリンの身体を覆っていたボット細胞がその身体に吸収され、消えていく。

 そしてその半透明のヌラヌラの怪しい細胞の中からボチリンが現れた。

 いやそれはボチリンではなかった。


「え?」


 そこにいたのはゴブリンとは似ても似つかぬ存在だった。

お読みいただきありがとうございました。

誤字脱字修正いたしました。

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