63 深夜の初心者用ダンジョンのボッチーズ
「だからオペレーション・ダイダロスだよ」
だが俺のボットモであるヤオロズ達は沈黙したままだ。
え? オペレーション・ダイダロスを知らないの?
今俺が考えたばかりの出来立てほやほやの作戦なんだが――?
デュラハンの剣が迫る。
「ひっ」
俺は慌てて回避する。思わず変な声が出ちゃったじゃないか。
デュラハン、チョ待てよ。今作戦タイムなんだから攻撃すんなよ。
俺は慌ててオペレーション・ダイダロスを素早く伝える。
俺の中のボットモ達が、あーと頷いた気がした。
もっといい反応しろよ。
俺の冴えわたるボッチ量子コンピューターが立てた作戦だぞ。
俺がボットモに脳内突っ込みをしているとデュラハンが剣を振った。
「ヒイ」
俺は飛び上がり回避する。
そしてボッチハンドで天井を掴み、もう一度飛んだ。
上へ。
そしてもう一度飛んで、デュラハンの頭上に舞い上がる。
デュラハンの首の部分にはポッカリと穴が開いていた。
「オペレーション・ダイダロス。ファーストステップ」
俺はアイテムボックスから川の水を取り出し、ぶちまけた。
大量の水がデュラハンに降り注ぐ、首なしの胴体内に水が侵入していく。
次に魔石を鎧の中に放り込んだ。
「オペレーション・ダイダロス。セカンドステップ。ノスフェラトゥフレイムニードル」
そして極悪魔法のノスフェラトゥフレイムを細く絞って鎧の中に放った。
鎧の中の魔石に命中した。
「オペレーション・ダイダロス。サードステップ。」
俺は大量の川の水をデュラハンに掛ける。
「オペレーション・ダイダロス。ファイナルステップ。ボッチオンアイスワールド」
俺の氷の魔法で見る見るうちに凍っていくデュラハン。
デュラハンの首が、斬れた足が、鎧の隙間が氷で固まり、密閉された。
「オペレーション・ダイダロス。ラストステップ。最大船速で後退せよ」
俺は逃げた。
巨大な爆発音と衝撃波が俺の背を襲う。
俺がデュラハンの中に放り込んだのは何だ?
水と魔石とノスフェラトゥフレイムの火だ。
そしてそこに氷の蓋をした。
俺がデュラハンの中に入れた川の水がノスフェラトゥフレイムの火で沸騰、蒸発し、膨張し、デュラハンを内部から吹き飛ばしたのだ。
その燃料は放り込んだ魔石であり、デュラハンのメンタル霊そのもの。
ここは半物質で構築されたダンジョン。物理法則は半分だけ作用する。
なんというクレバリーボッチプランだ。
漫画やアニメでは定番の水蒸気爆発を現実に実行できる俺は漫画かアニメの主人公に匹敵する戦闘能力の持ち主。
これで顔が良くて、口が上手ければ完全に主人公だったはずだ。はずだ。はずだ。
デュラハンだったメンタル霊が飛散し、経験値となって俺に加算された。
「勝ったな」
「ああ」
俺は顎を組んだ手に乗せながらで隣の架空の副官にそう言った。
なんてことでしょう、ボッチのコミュ障の俺がソロで倒したのだ。
ボス部屋には巨大なデュラハンの剣と盾、巨大な魔石が取り残されていた。
勿論全部ボッシュート。全てアイテムボックスに収納した。
お前の意思は俺が受け継ぐ、この剣と盾に誓って。
終わってみれば快便快勝。俺ってばやっぱ最強じゃん?
ソロでは最強じゃん? ウィース。おつかれさーん。
俺はボットモ達とハイタッチする。
ボス部屋の奥でガコンと何かが開く音がした。
この音は隠し扉が開いた音だ。
音がしたほうに行くと下へ降りる階段が出現したいた。
ここらで一旦引き返すか?
いやメンタル霊の残量も時間もまだある。
俺は強い。ストロングボッチだ。
俺は有頂天のお気楽気分のランランボッチで階段を降りた。
下の階層も暗闇に包まれているダークゾーンのままだ。
俺はボットハンドを飛ばし、壁や天井をサワサワしながら進む。
まさに暗黒のサワサワ貴公子、暗闇のお触りボッチ。
暫く進むとボッチレーダーが音声を拾った。
「ギャッギャッギャ」
何匹かのリア充、もといゴブリンだ。
だが、侮ることなかれ、俺のボットハンドはそれ自体が武器だ。
リア充、もといゴブリンは二言目を発する前に、ボットハンドの先端から放たれたボットガンの餌食となった。
目の前の落とし穴の罠も回避する。
回避というか、作動させて空回りさせて起動させた後に進む。
怪しいスイッチも落とし穴の罠もボットハンドで押す。
矢が飛び出る罠も前もってボットハンドで押す。
もはやお触りボッチの前には罠など意味がない。
もはやマッピングすら不要。迷うことなどないのだ。
「うわ、マジかよ」
俺は思わず独り言を呟いた。
床には落とし穴の罠が連続して設置され、壁には矢が飛び出る穴が蓮コラのように開き、天井には落ちてきそうな剣山が並んでいた。
それが何十メートルも続き、飛び越えるなど不可能の罠祭り。
「こんなんどうやって進むんだよ」
ボットハンドでサワサワしながら進むか?
否。面倒だ。
「ヒトキレボッチモード」
俺の身体が身体強化の加護に包まれた。
ヒトキレボッチモードはA級霊トレーサー並みの能力だ。
俺は罠で溢れた通路の中を水平に走る。
視覚に頼っていない俺は視覚に頼っていた以前の俺ではない。
人は見えないから怖い。先が予想できないから怖い。
見えていたら? 先が予想できていたら?
今までは知らず知らずのうちに恐怖で加減していたのだろう。
ヒトキレボッチモードの速度が上昇していた。
以前よりキレがある。まさにキレ・ヒトキレボッチモードだ。
もし目だけに頼っていたら高速による視界縮小により恐怖し、速度が落ちていただろう
だが俺は全てを把握している。
どこに何があるのか分かっている。
俺の通った後に慌てて罠が作動するがそこには俺はもういない。
俺は連続罠通路を高速で駆け抜ける。
これが異世界だったら疾風お触りボッチの異名を付けられていただろう。
俺は連続罠通路を楽勝で抜けた。
暫く進むと分岐があった。
しかも普通の分岐ではない。
分岐は無数にあった。壁に無数の通路が開いていた。
ボット―レーダーで一個ずつ確かめるのも面倒だ。
ボットレーダーはレーダーの名が付いているが有線なのだ。
無数の穴にボットレーダーを侵入させてもいいが、その後の分岐はどうする?
さらにボットレーダーを発射するか?
それでは効率が悪いし、大量のボット細胞を要するが、ボット細胞の大半はテンドー君に奪われている。
「……」
俺は楽をする為ならば全力で頭を使う。
「行け、ミニボッチーズ」
そう、俺は分身体を放った。
俺はボッチーズの今期の監督に就任したのだ。
俺には何でも言うことを聞く有能な選手達がいるのだ。
ボチーとボッチーズが壁の穴の中に消えていった。
数分後、情報を持ち帰ったボッチーズが俺の身体に融合した。
「……正解はこの穴か」
もはや分岐も無意味。俺にはボッチーズがいるのだ。
もはや直接、足を運ぶまでもない。
俺は確実に成長していた。自分の成長が恐ろしい。
もう怖いものなし。無敵のストロングサワーボッチだ。
「……」
俺は迷いもせずにボス部屋に辿り着いた。
俺はノックもせずに無言で扉を開けて中に入った。
突然、強烈な光に襲われ、俺の視覚が麻痺した。
眩しくて何も見えない。
白い紫の残光が網膜に焼きついた。
これが大きな目のイケメンだったら被害は甚大だったはずだ。
幸いにも俺の目は激細。
だが見えない。白く見えない世界。
これが普通の霊トレーサーだったら失明して冒険は終わっていただろう。
だが俺にはボットレーダーがある。
目で見ているのか、ボットレーダーで見ているのか、もはや自分でも分からない。
俺は部屋の中をボットレーダーで感知した。
メンタル霊反応多数。いやいや多数どころじゃない。
部屋の中のメンタル霊は全て魔物だ。
隙間無くびっしりと大量に存在する魔物の壁。
群れ、群れ、群れの魔物軍。部屋の中は全て魔物。
俗にいうモンスターハウスだった。
完全に調子に乗っていた俺は、何の用心もせずにモンスターハウスに飛び込んでしまった。
オーマイボッチ。数秒前の俺を殴り飛ばしてやりたい。
図に乗るなと。調子に乗るなと。浮かれた瞬間に人は落ちるのだ。
ダンマスめえ、やってくれるじゃねえか。
俺は迫りくる魔物の壁に圧し潰された。
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誤字脱字修正いたしました。




