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38 俺の新たな力が開花するところだから黙っててくれないか?

 神であるクロミズの圧倒的な加護あったからこそ、俺は黒ミノタウロスや九尾やキンミズ様と戦えたんだ。

 このまま生徒会長のお達し通りに加護無しで戦うか?

 いやいや無理無理。ただのヒョロガリボッチに過ぎないんだぞ。

 いや、ちょっと前まではポッチャリボッチだった。

 なんとクロミズと融合した俺は劇的ダイエットに成功したのだ。

 今度ダンジョンダイエット本でも書こうかな。

 まずはダンジョンに入ります。

 ダンジョンボスの核を取り出して、扉で挟んで倒します。

 なんだかんだあってボスと友……ボットモになります。

 なんということでしょう。目が覚めたら激痩せしてます。

 うはっ。その本、滅茶苦茶売れそう……って現実逃避している場合じゃねえ。

 ん? ボットモ?


「……チョ、待てよっ」


 俺は思わずパッシブスキル独り言を放った。


「!」


 俺のボットモは一人だけじゃない。

 俺は大切なトモの存在をすっかり忘れていた。

 俺には黒ミノタウロスというセカンドボットモがいるではないか。

 俺の中の黒ミノタウロスがニタァっと笑った。


 生徒会長の巨大な胸がクロミズの加護を人に見られてはいけないと言った。

 だがそのたわわな胸は俺が黒ミノタウロスとボットモになったことを知らない。

 そしてその弾む制服の胸元は黒ミノタウロスの加護を得たことを知らない。

 黒ミノタウロスを両断した時に最後に見せたあの笑顔、残された巨大な斧を吸収した時の高揚感、俺は確信したのだ。

 昨日の敵は今日のトモだと。

 強敵と書いてトモと呼ぶことを。

 そして俺は約束したのだ。黒ミノタウロスに。

 お前の見たかった世界を俺が見せると。

 だから俺と黒ミノタウロスとはボットモのはずだ。

 信じろ! セカンドボットモのことを信じろ!

 ボッチの俺が人を信じることはあまりない。

 だが彼らは人ではない。神だ!

 神は人よりも裏切らないはずだ……多分。

 クロミズ。少しだけ何もせず見守っててくれないか?

 俺の中のクロミズが、やれやれだぜと触手を天に向けたような気がした。

 ふん。やれるもんならやってみるボッチよ……とボッチ君が笑ったような気がした。

 ああ、やってやるよ。

 黒ミノタウロス。

 見せてやるよ。俺に倒されちゃったせいでお前が見れなかった新たな世界を。

 俺と一緒に行こうではないか。

 あの朝日の向こう側に。

 あの地平線の向こう側に。


「グオオオオオオ」


 ……と俺ではなく黒鬼が叫んだ。

 律儀に待っててくれた黒鬼に感謝。

 その咆哮は部屋を揺さぶる大咆哮だった。

 だがそんな脅迫は俺には全く効果がない。

 俺のボッチハートはそんな叫び声では揺るがない。

 だがクラスの蚤の心臓のリア充イケメンならば失禁泡吹きコースに間違いない。


「ひいええええ」

「マジかよ」

「なんて声だ」

「マジありえないんですけど」

「マジ有り得ないんですけど」


 後ろのギャラリーいい加減うるさい。

 今から俺の新たな力が発現する時なんだから、ちょっと黙っててくれないかな。

 俺は黒鬼に向かって走り出した。

 クロミズの加護がないヒョロガリボッチのボッチの貧弱貴公子たる俺が走る速度など人並み以下のはずだ。

 園児以下のはずだ。足がもつれて即効、昏倒するはずだ……。

 だが……俺の足はもつれない。転ばない。物凄い勢いで突き進む。

 俺の足が床を蹴りつける。身体が弾む。視界が加速する。

 ダンジョンの床が、壁が高速で後方に流れる。

 なんと俺は信じれない速度でボス部屋を爆走した。

 やるじゃないか? 黒ミノタウロス。

 俺の中の黒ミノタウロスがサムズアップしたような気がした。

 俺もサムズアップを返す。

 やっぱ俺らボットモだね。

 やっぱ黒ミノタウロスの加護があった。

 眼前に迫る黒鬼の目が俺を見て大きく見開かれた。


「はあああああ?」

「な ん だ と?」

「馬鹿な」

「有り得ない」

「あいつ速い?」

「嘘だろ」

「なにこれ」

「マジキモいんですけど」


 背後からそんな声が聞こえる。

 何でキモイんだよ。キモくねーだろ。

 キモイって万能ワード使い過ぎだろ。

 そこは俺の隠された力に震え、目をウルウルさせて乙女顔するところだろうが。

 俺がリーダーのセンのように爽やかイケメンだったら、男子も女子もマイノリティも即効卒倒しているぞ。

 俺の眼前に黒い巨大な壁が迫る。

 言わずもがな黒鬼の丸太のような巨大な足だ。

 俺を待ち構えていたかのように巨大な金棒が振り下ろされた。

 速い。さっき戦った赤鬼の何倍も速い。

 だが案ずるな。俺もボットモも速いはずだ。

 俺は黒鬼の数歩前で床を蹴りつけ強制的に直角スライドする。

 俺が寸前にいた場所に金棒が激突し轟音と衝撃波を放ち、ボス部屋を揺らした。

 俺はもう一度床を蹴りつけ黒鬼に向かって飛び黒鬼の腹を蹴った。

 腹の底に響くような鐘の音がボス部屋に響いた。

 俺の足と黒鬼の腹の間に何かがあった。

 なんと金棒で防いだのだ。

 だが俺の蹴りのほうか勝っている。

 金棒が浮いた。

 流石ボットモである黒ミノタウロスだ。

 デカくて黒くて硬い……いろいろ男の子的に最強じゃねーか。

 それにしても黒ミノタウロスっていちいち長いな。

 頭の中でも舌噛みそうで言いにくい。

 黒ミノタウロス……略してクスだ。

 突然、俺の足から力が抜けた。

 金棒が俺に向かって振るわれる。

 俺は慌てて身をかがめて避ける。

 そして後方に飛んで距離を取った。


 ヤバイ。今、加護が消えかかったぞ。

 何がいけなかった?

 はっ? まさか俺の冴えわたるネーミングセンスが気に食わない?

 今のなし。やり直し。

 黒ミノタウロス……もとい……クロウスだ。

 いいか、黒ミノタウロス。

 今からお前の名前はクロウスだ。

 どうだ?

 俺の中のクロウスが震えた。

 俺の冴え渡るネーミングセンスに歓喜しているだろう。

 クロミズや黒ミノタウロスや黒鬼やら、名前が似すぎている。

 少しでも名称を差別化し分かりやすくするのが読者に優しいコンテンツだ。


 行くぞクロウス。

 俺はもう一度床を蹴って走った。

 身を低くして顎が床に着きそうな低姿勢で走る。

 そして黒鬼の寸前で飛び上がり、その顎に拳をぶち込んだ。

 クロウスのモーモーパワーで。

 俺の身体がバランスを崩した。

 クロウスが俺の冴え渡るネーミングセンスに若干難色を示したようだ。

 では改めて……クロウスの力……羅黒で。

 どうだクロウス? このカッコいい名前は?

 身体に力がみなぎる。

 たぎる。

 まさか、君? ひょっとして、もしかして漢字が好きなのか?

 ではクロウスのことを漢字で呼ぼうか?

 黒牛守君?

 俺の拳が加速する。

 どうやら漢字が好きみたいだね。

 ちなみに俺も大好き。

 だがしかし黒鬼はそれを予期していたのか、身を捻ってかわした。

 黒鬼もやるじゃない。

 そして巨大な二本の金棒を後ろに大きく振りかぶった。

 ここは既に完全に黒鬼の金棒の間合い。

 俺に逃げる暇はない。

 逃げる隙もない。

 だがこれでいい。

 この時を待っていた。

 黒牛守の力はパワーだけではないのだ。


 俺は体内のメンタル霊を収束させ放った。

 突如、巨大な炎の玉が俺と黒鬼の間に現れた。

 黒鬼が目を見開いた。

 そうだ。刮目せよ。

 これが俺と黒牛守の友情パワーだ。

 その目でとくと見よ。

 膨大なメンタル霊が圧縮燃焼した魔法……これが黒牛守玉だ。

 黒鬼に巨大な黒牛守玉が命中し大爆発した。


「グアアア」


 巨大な炎が迸り床を、天井を、焦がし、空気を、ダンジョンを焼いた。

 俺の黒髪を黒牛守玉の衝撃波が揺らす。


「なっ、あれは? 魔法?」

「魔法だとお? おい、今詠唱していたか?」

「してないぞ、しかもただの魔法じゃない」

「あいつ無詠唱で魔法を放ったのか?」

「嘘でしょ。メンタル霊が膨大過ぎて有り得ない」

「まさか極大大魔法?」

「なんで荷物持ちが、魔法放ったり、あんな動きができるんだ。おかしいだろ」

「マジムカつく、生理的にウザキモいんですけど」


 ギャラリーうぜー。

 爆球が晴れ、その中から金棒をクロスさせた黒鬼が現れた。

 無傷……いや、所々黒い皮膚が黒く焼け焦げている。

 なんと俺達の渾身の合体魔法攻撃が防がれた。

 だが全くの無傷ではない。

 効果ありだ。

 今の攻撃魔法は黒牛守と初めて戦った時に放たれた魔法……略して黒牛守玉だ。

 黒鬼も、まさか至近距離からこんな攻撃が来るとは思わなかっただろう。

 俺もそうだった。

 黒牛守はパワー系を隠れ蓑にしたテクニシャンなのだ。

 俺がパワー全開の格闘系で攻めたのは、この黒牛守玉を至近距離から放つためだ。

 冴え渡る知能派クレバーボッチの俺と体育会系の黒牛守のタッグを思い知ったか。


「グオオオオオオ」


 黒鬼が怒りの咆哮をあげた。

 その目には殺意が爛々と燃え、巨大な真っ赤な目が更に燃え上がった。

 黒鬼が床を揺らしながら爆走し俺に迫る。

 金棒を無秩序に振り回しながら暴れながら。

 黒鬼がキレた。あれは作戦も冷静さもない、ただの本能任せの腕白駄々っ子攻撃だ。

 金棒が床がえぐれる。床の破片が舞う。床の膨大な土煙が爆発する。

 轟音がヘビメタバンドの薄っぺらドラム張りにビートを刻む。

 俺は迫る黒鬼に向かって冷静に黒牛守玉を放った。


 巨大炎の玉が迸る。

 巨大炎の玉が迸る。巨大炎の玉が迸る。

 巨大炎の玉が迸る。巨大炎の玉が迸る。巨大炎の玉が迸る。

 更に巨大炎の玉が迸る。


 俺が放った黒牛守玉は一発だけではない。

 黒牛守玉を連射したのだ。

 黒牛守の圧倒的メンタル霊保有量に担保された連続攻撃。

 黒鬼が慌てて金棒で防ごうとするが遅い。

 着弾からの大爆発。

 続いて次弾が着弾。

 爆球が膨れ上がる。

 ダブル金棒が吹っ飛んだ。

 三弾目が黒鬼の顔に着弾。


「グオオオオオ」


 まだだ。

 次の黒牛守玉が命中する。

 次の黒牛守玉は外れ、天井で爆球を描いた。

 床に着弾。黒鬼を左右から揺さぶる。

 次は命中。命中。命中。

 黒牛守玉が連続着弾して黒鬼が吹っ飛んだ。

 更に非常にも、無慈悲にも転がった黒鬼に追い打ちをかけるように黒牛守玉が着弾し、床が半球状に爆発する。

 合計三十発余りの黒牛守玉がボス部屋を揺るがした。


「馬鹿な」

「連射しただと?」

「あの大出力の魔法を連射だと? 何発放った?」

「数え切れない。あいつは大魔術師か?」

「そんなの知らない」

「でもあの動きは魔導士のそれではない」

「卑怯すぎてキモイ」


 ボス部屋の外からギャラリーが俺の行動を逐一解説してくれる。

 卑怯キモイ? 何言ってんだ?

 現代兵器は全て飛び道具だろうが、飛び道具否定派なら武士道極めてくれ。

 近代兵器相手に剣で挑む馬鹿はいない。

 剣はコンテンツ業界では燃える展開かもしれないが自殺行為でしかない。


 起き上がろうとする黒鬼。

 そうはさせない。

 俺は新たな黒牛守玉を放った。


「ひいい、ひどい」

「倒れている相手にひでえ」

「うわあ、可哀そう。あんなに撃たなくても」


 何を言っている?

 これは試合じゃないんだぞ。

 殺し合いなんだぞ。

 敵に情けをかけるな。あれは敵だ。俺を殺しに来てんだぞ。

 呑気に外野から見ているお前らには理解できないだろう。

 そもそも戦いは数だ。物量だ。圧倒的戦力で敵をねじ伏せるのが戦いだ。


「グウウウ」


 爆炎の中から黒鬼がフラフラと現れた。

 全身が焼けただれ、自慢の角も折れている。

 だが俺の攻撃はこれだけでは終わらない。

 俺は床を蹴って飛び上がり回し蹴りを放った。

 黒鬼の腹に直撃、吹っ飛ぶ黒鬼。

 俺は床に手を突いて更に飛び上がり回し蹴りを放つ。

 黒鬼の喉を蹴り抜いた。


「カハッ」


 呼吸が止まり逆方向に吹っ飛ぶ黒鬼。

 だが俺は黒鬼の足を掴んで床に叩きつけ、弾んだところを蹴った。

 ゴロゴロと床を転がる黒鬼。

 俺は転がる黒鬼を加速させるように空中に蹴り上げる。

 何百キロはあろう大質量の黒鬼が宙を舞った。

 俺は飛び上がって、前方宙返りの最後に黒鬼をかかと落としで蹴り落とす。

 黒鬼の巨体大質量が床を破壊し弾む。

 俺は高く舞い上がる。

 天井に激突する寸前身体を反転させ、天井を蹴り落下しながら加速した。

 その落下地点には弾み上がった黒鬼がいる。

 俺の渾身の全体重を乗せた蹴りが黒鬼の鳩尾に決まった。

 だが、止まらない。そのまま蹴り抜いた。

 俺の蹴りは黒鬼を突き抜け、床を破壊した。

 衝撃波が、床の破片を二段加速し吹き飛ばす。

 黒鬼の分厚い筋肉に覆われた腹がぶち破られ、上半身と下半身に分断された黒鬼が別々に弾んだ。

 俺は両手を左右に広げ、黒牛守玉を放った。

 大爆発が俺の黒髪を揺らす。

 黒鬼の分断された身体が粉々に吹き飛んだ。

 膨大なメンタル霊を撒き散らしながら飛散する。

 断末魔も、叫び声をあげることなく黒鬼は完全に消滅した。


「……ひっ」

「……ひでえ」

「……やりすぎ」

「あの巨大なボスを一人で倒したのか?」


 ボス部屋の外から、安全な場所から好き勝手なことを言う元パーティーメンバーの声が聞こえた。


 違う。

 俺は独りで倒したんじゃない。

 これは俺独りの力ではない。

 俺にはボットモがいる。

 いや、俺には頼もしいパーティーメンバーがいるのだ。

 そう俺は既にパーティーを組んでいたのだ。

 何を落ち込む必要があっただろう。

 どこに凹む理由があったのだろう。

 どこを嘆く必要があったのだろう。


 俺は独りではなかった。

 そう俺はパーティーを組んでいたのだ。

 そのパーティーメンバーは神だ。

 俺もいるボッチ。

 イマジナリーフレンドのボッチ君が挙手をした。

 ああ、忘れて……勿論忘れていないぞ。お前が俺の最初のボットモだよ。


 そう俺は大きな勘違いしていたのだ。

 ボッチボッチと連呼することで自分をボッチだと言い聞かせていた。

 ボッチで独りだからいいと。

 独りだから他人のことなど、どうでもいいと。

 リア充や陽キャと勝手に分類し、決めつけて、あいつらは自分とは違うと勝手にラベルを張り、俺はその責任から逃れていた。

 仲間を守るという責任から逃げていたのだ。

 ボッチという逃避世界に肩までどっぷり浸っていたのだ。


「ははは」


 舞い上がったメンタル霊が俺に吸収され経験値となった。


「ひいい」

「ひっ悪魔」

「魔王だ」


 俺のキモイ笑いに過剰反応する元パーティーメンバー達。


「くっくっくっ」


 俺はパーティーだと最弱じゃなかった。


「……アーハッハッハ」


 俺のパーティーは最強だった。

お読みいただきありがとうございました。

誤字脱字、読みやすいように修正しました。


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