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34 ボッチから陽キャへ

 ま、眩しい。

 爽やかイケメンが太陽のように眩しいシャイニングハロー笑顔を根暗なボッチの俺に向けた。

 一瞬たりとも見てられない。

 俺は逃げるように振り返るが壁があるだけだ。


 俺の前には光り輝く太陽なような好青年が立っていた。

 背が高く、目が大きく、サラサラの髪。ムダ毛無しのイケメンの要素を全て兼ね備えた完璧イケメンがそこにいた。

 俺がボッチガールだったら数マイクロ秒で恋の炎にウェルダンされていただろう。


 そのイケメンの後ろには彼のパーティーメンバーだろうか? カースト上位にいそうな派手な女性陣が不満そうな顔で立っていた。

 明らかに――なんでそんな奴誘うの? ――的な目をしている。

 なんか安心するわ――その蔑む目。

 俺も激しく同意します。

 こんなボッチん坊なんて誘ってもいいことありませんよ。

 空気をあえて読まない俺がパーティーの雰囲気台無しにすること請け合いだよ。


「……ああ、ごめん。僕の名前は赤岩千。センって呼んでくれ、ちなみに僕のイマジナリーウェポンは弓だ。キミのはなんだい?」


 イケメンが白い歯を光らせた。

 どんな歯磨きすればそんなに白く光り輝くんだよ。

 誰か溶接ゴーグルか溶接面持ってきて、眩しすぎて眼が、眼がぁー。

 しかも声もイケボイス。声だけで悶えること確実。

 俺がマイノリティでなくてよかったよ。

 それよりもなんて答える? 俺のイマジナリーウェポンは大魔王の剣ですとでも言うのか?

 ――言えるはずがない。そんなこと口が裂けても言えない。

 俺の言うことなど誰も信じないのだ。

 思い返せば俺が幼稚園の時、みんなで机の上に登って遊んでいたら、逃げ遅れた俺だけ怒られた事件があった。

 俺は必死に俺だけじゃないとアピールするも皆は知らんぷりを決め込んでいた。

 俺の人間不信のきっかけだった。

 だから俺は人は信じない。

 俺は困った時のボッチ最強奥義……。


「……」


 無視の無言のダンマリでサイレントで答えた。

 沈黙は肯定も否定も表す。

 ボッチパッシブスキルサイレント沈黙無言でそのイケメンの問いを軽く無視した。


「……」

「……」

「……」


 イケメンが気まずそうな顔を浮かべた。

 後ろのパーティーメンバーも同様だ。


「そっか、あまり気を落とすことないよ。イマジナリーウェポンがなくたってダンジョンに入れる君は立派な霊トレーサーだからね」


 そういって俺を慰めた。

 なんとイケハート。なんていい奴なんだ。

 俺が無視したのを良い方向に受け取るなんてなんて人間の出来たイケメンだ。

 だがおかしいぞ? この流れ、まるで俺がイマジナリーウェポンを貰えなかった可哀そうな子って感じじゃない?

 俺の背中には立派な大魔王の剣というイマジナリーウェポンがあるのに。


「みんな、ちょっといいかい」


 そしてイケメンはパーティーメンバーとヒソヒソと密談し始めた。

 この流れはなんとなく予想できる――きっとあれだ。

 イマジナリーウェポンを貰えなかった可哀そうな俺を仲間にしてあげたいという相談に違いない。


「みんなで相談したんだが、君をパーティーに入れることに決定した」


 ――と俺の予想通り俺の意思を無視して勝手にパーティー入りを決めた。

 え? 断る権利はないの?

 それに勝手に決めんな。

 ボッチの俺にも選ぶ権利ぐらいあるんだぞ。

 無視する権利と同じくらいの行使力だぞ?


「……」

「イマジナリーウェポンを持ってないってことは前衛には向いていないかな?」

「……」

「……」

「なんか出来んの? そいつ?」


 睨む他のパーティーメンバー。

 何かって? 無視ぐらいはできますよ。

 こうやってね……。

 それよりも話がトントン拍子で進んでいく。


「君、魔法は使えるのかい?」


 イケメンは困った顔をしながらそう聞いてきた。

 なんて答えればいいんだ?

 俺の魔法? なんだっけ? いろいろあって、どれを言えば最適解か分からない。

 ファイアボッチ。アイスボッチ。ロックボッチ。ウィンドボッチ。

 なんで最後にボッチって付いてるかって? 癖になってんだ。ボッチって付けるの。

 ……そんなこと恥ずかしくて口が裂けても言えない。

 では最強魔法のノスフェラトゥフレイムって答えるか?

 だがそれは何だい? って聞かれるはずだ。俺が中学校の頃、異世界に転移してもいいように考案したオリジナル魔法だって答えるの?――無理っス。

 そんな中二病暴露大会なんて無理っスよう。


「……」


 ――ということで俺は無言で無視をした。


「……」

「それは困ったねえ。攻撃も魔法も無理か」

「全然使えないじゃない」

「やっぱ入れるの止さない? なんか目付き悪いし」


 陽キャの女がそう嘲笑った。


「つかえねえ」

「邪魔」

「まあまあ、彼も好きでイマジナリーウェポンがもらえなかったわけじゃないんだ。優しくしないと」


 イケメンマジイケメン。


「じゃあ、うちらの荷物持ってよ」

「それは土下座しても頼みたいだろう?」

「うっし、それで決まりっしょ」

「ああ、一旦はそうしようぜ」

「ええ、うちの荷物触れるのキモイんですけど?」


 はあ? 何言ってんだこいつら? 

 その高飛車の整った顔にボットガンをぶちかますぞ。

 ちょっと美人だからって調子に乗りやがって生徒会長と副会長を見ろ。

 絶世の美女で高スペックスタイルなのにそれを鼻にかけることもなく。

 美人と巨乳を自慢すらしない。

 格が違う。生徒会長と副会長が宝石だったとしたら、お前は靴の中に入り込んだ小石だ。

 この美容整形の時代、顔が良ければいい時代は終わっているのだ。


「おいポーター。良かったな。ご褒美だろ? プッ」

「まあ、みんながそう言うなら……」


 爽やかイケメンはしぶしぶ了承し――。


「じゃあ、みんなでこの試練のダンジョン踏破を目指そう。そしてみんなで霊トレーサーになろう」


 そして手を振り上げ宣言した。


「おおおう。俺に任せろや」

「やれやれ仕方ねーな」

「うちら無敵じゃない?」

「ポーター、貴様は足引っ張んなよ」


 パーティーメンバーが叫んだ。

 えっと何? オラ何も言ってないダニヨ?

 ボットモと融合した最強のボッチが何で荷物持ちなんかになってんダニヨ。

 ポーターって鞄みたいで名前はカッコいいダニねえ。

 でもそれってただの荷物持ちだよね。

 あっ、今の発言は荷物持ちを差別したものではないよ。

 ただ思い出したんだ。

 小学校の頃の運び屋だった記憶がな。

 俺は皆のランドセルを運ばされた苦い経験を思い出した。

 両手の重みと背に背負った理不尽と野次。

 今ではそれも良い思い出だよ……ってぜんぜん良くねーよ。

 荷物持ちはイジメのイメージが定着してんだよ。

 どうせ今回も意地悪されるに決まってんだろ。


 そもそも俺が何時何分何秒、このパーティーに入りたいって言った?

 そんなに物欲しそうな顔してたか?

 何勝手に同情してパーティーに入れてんだよ?

 親切の押し売りは悪徳商法なんだよ。

 親切なことしてそっちは最高な気分かもしれないけどこっちは最悪なんだよ。


 断るって一言、言えばよかったんだが俺はその一言さえ言えなかった。

 ボッチの俺は自己主張さえままならない。

 違う。頭の中でいろいろ考えている間に世界が勝手に進んでしまうだけだ。

 世の中の進行速度が早すぎんだよ。

 だから今なら声を大にして言おう。

 ノーと……お前のパーティーには参加しないと断ろう。


「い、いいいいや」


 俺は全身全霊を込めて拒否した。

 だがそこにはイケメンパーティーの姿はない。

 大部屋の横穴の一つに入ろうとしていた。

 俺の渾身の意思表示は誰にも見られず、聞かれることもなく終わった。

 パーティーはお互いが認識すればパーティーとなると鬼教官が言っていた。

 もしかして俺は深層意識の最下層でパーティーに入ることを願っていたのか?


「ん? どうした? 恥ずかしがらずに早くこっちにおいでよ。みんなを紹介するね」


 紹介されたメンバーの名前なんて覚えキレらない。

 俺の頭には後悔しか渦巻いていない。

 時既に遅し。覆水盆に返らず。後の祭り。

 俺にはパーティーっていう集団行動、共同作業が向いてないんだよ。


 小学校の頃の共同制作のちぎり絵の時だって折り紙をちぎらせてもらえなかったからな。

 俺がボッチアイで必死に訴えると、絶対使用しない色の折り紙渡された。

 俺にはちぎる行為すら許されなかったんだぞ。

 トラウマが走馬灯のように必死にパドックを駆け巡る。


「遅れんなよ。まだ荷物持たせてないんだからな」

「キモイ」

「歩きからもキモイ」

「……」


 前途多難なパーティー行動を想像して俺は大きな溜息をついた。

 最強ボッチの俺がパーティーでは最弱だった……なんてことにならなきゃいいけど。

お読みいただきありがとうございました。

誤字脱字修正いたしました。

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