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25 新たなボットモ

 黒ミノタウロスがニタッと笑うとメンタル霊が収束し、巨大な炎の玉が出現した。

 なんでミノタウロスが魔法を使えるんだよ。

 バスターソードをクロスさせた瞬間、轟音と炎の玉が直撃、熱風が俺のボッチフェイスを襲う。

 クロミズの無敵の加護で、ただ熱いだけで済んでるが、加護がなかったら黒焦げだ。

 いや、待て、このジュウジュウという音はなんだ?

 まさか剣が焼けている?

 このバスターソードはクロミズのボット細胞で作った偽物。このままではボット細胞がが牛脂のようにドロリと溶けてしまう。


「ええい」


 俺は炎の玉を床に叩きつけてその場から退避。

 爆球が膨れ上がる。爆風と熱風と衝撃波が襲う。

 そして爆球をかき分けるように斧の切っ先が出現した。

 続いて太い腕が、大きな肩が、凶悪な牙が、ミノタウロスの凶悪な笑顔が現れた。

 くそっつ。俺はバスターソードで応戦。

 ガキンという金属音と共に俺は弾き飛ばされ、壁で背中を強打。

 息が詰まり、視界が揺らいだ。意識が飛びそうだ。

 動け。立ち止まるな。追撃が来るぞ。

 俺は慌てて飛び退いた。

 巨大な斧が俺の目の前を通過し、床を砕き、舞い上がった爆風を吹き飛ばす。


「グモ」


 黒ミノタウロスがやるじゃねえか、と言わんばかりに白い牙を見せた。

 やるもなにも、ギリギリの一杯一杯だってばよ。

 俺は距離を取ってバスターソードを構え直す。

 こいつはただの筋肉バカじゃない。

 今までのミノタウロスとは根本的に何かが違う。

 黒くてデカくて強い――そうまるでボスみたいだった。

 するってーとなにかい? こいつがこのダンジョンの新しいボスなのか?

 ボスがお留守の間に勝手に入り込んでボス面か?

 ボスはクロミズただ一人。絶対にボスの座は渡さない。


「ボッチファイヤーストーム」


 俺の怒りが、闘志が魔法となって具現化し、スパイラルを描きながら黒ミノタウロスに向かう。それは俺のボッチイズムの結晶。孤独な炎の競演――孤独なのに競演って誰と共演するんだろう?

 ええいそんなことはどうでもいい。とにかく焼けろおおおお。


「グフッフッ」

「なっ」


 だがしかし、黒ミノタウロスは俺の炎魔法を漆黒の斧で弾いた。

 そんなばかな。俺のボッチズムの結晶であるボッチ魔法が効いてない?

 何故だ? 威力が弱かったのか?

 ダンジョンは空想。妄想で魔法が具現化する。

 俺の妄想が迷っていたいだから。

 ボッチの競演というアンビバレントな名称のせいだ。

 濃い目のアメリカンコーヒーと一緒で薄いのか濃いのか分からない中途半端な魔法名を念じた俺が悪い。


 俺は迫る斧を屈んで回避。黒いボッチ毛が何本か持っていかれる。

 起き上がり様にバスターソードを振り上げる。

 ガキコンと金属音が響き、黒ミノタウロスが斧で受け止めた。

 知っている。お前が受け止めることも、お前が強いことはな。

 だから最大限の力でお相手しよう。


「フタキレボッチモード」


 俺は加護を一段階上げた。

 これは生徒会長クラスのパワーとスピードを持つレベル。

 つまり美少女モードだ。見た目はむさい男子高校生だが、心は乙女。

 ――て、ふざけている場合ではない。


 俺は加速する。床を蹴る。飛び上がる。

 二倍の加速。二倍のパワー。乙女パワーで黒ミノタウロスに斬りかかる。

 ガキンと斧に命中。

 あれ? おかしいなあ。狙ったのは斧じゃない。黒ミノタウロスの首だったのだが。

 くっそ。二倍では全然足りない。


「オニギレボッチモード」


 俺は更に加護を引き上げる。

 これでクロミズの加護が全開だ。

 俺は走る。いや飛んだ。一歩一歩の距離が長い。

 壁を蹴って方向転換。

 ガキンと斧が俺の前に立ちふさがる。

 くっそ、俺の全力についてきているだと?


 天井を蹴って急降下。

 ゴキンと斧が降り上げられる。

 くっそ、互角?

 だが俺は自分の動きが速すぎて状況が把握できていない。

 入れ替わる視界。迫る壁。迫る床。迫る斧。

 思考も加速しろ。情報処理能力を上げろ。


 俺は後方宙返り。

 その下を斧が水平に舞う。

 くっそ。もっと速く。もっと強く。


 俺はさらに加速する。

 視界が以前よりも狭い。

 だが直ぐに視界が広がる。

 よし。この速度領域に適応したのだ。

 イけるボッチよ。


 だがガキコンと俺の目の前を斧が通過。


「なっ?」


 俺は大勢を崩した。

 それを見逃す黒ミノタウロスではない。

 俺がバスターソードを構え直す前に巨大な斧が降ってきた。

 鈍い金属音が空気を揺らすと同時にバックステップ。


「なっ?」


 そこに火球が飛来する。俺はバスターソードで打ち返す。

 はは。効かねえな――なっ。だが一発だけじゃない。次々と火球が飛来し、爆発する。

 くっそ。俺は地面を蹴ってジグザグに逃げる。

 だが追撃するかのように迫る火球。

 両サイドに、背後に着弾。轟音と熱風が俺のヒョロガリを揺らす。


 無理無理。こんなん無理。とにかく一旦回避、逃げろ。

 ボス部屋ってこんな狭かったか? 目の前に壁が迫る。

 俺は壁を蹴って強制的に方向転換。


「くっそお」


 そこへ火球が着弾し俺は吹っ飛んだ。

 床にバスターソードを叩きつけ、態勢を立て直す。

 新たな火球が着弾。俺はバスターソードで左中間の当たり。

 壁に着弾した火球が大爆発。


「なんて威力だ」


 ミノタウロスのくせに魔法を連発しやがって、ボス気取りかよ?

 いや、ボス気取りは俺だ。俺がボスだ。俺がボスボッチのボス。ボッスだ。

 落ち着け。ミノタウロスだからって体育会系だと決めつけるな。

 いや決めつけるんだ。ここはイメージの世界。

 妄想が現実となる非現実な世界。

 常識を捨てろ。頭を柔軟剤を入れ過ぎたように柔らかく保て。

 ダンジョンはイメージの世界だ。

 決めつければいい。俺は強い。やればできる子。

 ミノタウロスは魔法名を言っていない。

 つまりわざわざ魔法名を唱えなくとも魔法は発動するはずだ。

 だったら俺にもできるはずだ。同じボスの俺にもクロミズにもできるはずだ。

 ゴブリン戦でできなかったのは俺のイメージ不足なだけだ。

 今の俺ならば可能なはずだ。俺は根拠のない自信持ちなのだ。


 念じろ。妄想は俺の十八番。妄想だけは誰にも負けない。

 友達のいない俺にできることは妄想だけだった。

 だから負けるわけにはいかない。

 俺は頭の中でこう叫んだ。


 シュトラールアイスボッチ!


 俺の意思をくみ取ったクロミズがメンタル霊が収束させる。

 周囲の温度が一気に下がり、パキパキと弾けた。

 白い霜が地面を光線のように一直線で黒ミノタウロスに向かう。


「いけえええ」


 炎には氷。俺の妄想が生み出した極低温の冷たい世界。

 触るとボッチになる氷の光線。

 全てを拒絶する絶対ボチ度の極低温。

 氷の直線が黒ミノタウロスの太い足を駆け上る。

 そのまま凍れえええ。いいぞ。凍れ。

 だが黒ミノタウロスが牙を見せた。


「グロロロロロォォォォォ」

「え?」


 俺のシュトラールアイスボッチの霜が粉々に弾け飛んだ。

 なんて奴だ。叫び声一声で魔法を無効化しただと?


 ええい。まだボッチ魔法には風と土属性がある。

 そして最強の闇属性があることを忘れてはならない。

 ちなみにボッチ魔法には光属性の魔法は存在しない。

 光り輝くボッチなんて存在しないのだ。目立ってたらリア充なのだ。


 闇こそが最強なのだ。

 そう今のシュトラールアイスボッチは実証実験に過ぎない。

 次は本気でいく。


 深遠なる闇の奥から我の願いと共に眼前の魂を吸い尽くし、焼き払え。代償としてその魂を捧げる。ノスフェラトゥフレイム!


 巨大な紫炎が巻き上がり、黒ミノタウロスに向かって驀進した。


「グフフ」


 だが黒ミノタウロスは俺の放った魔法を見て笑った。

 さっきのシュトラールアイスボッチ並みの威力だと思ったか?

 フフフ。慢心したな? 黒ミノタウロスよ。

 次の瞬間。


「グオオオオオオ」


 黒ミノタウロスが紫の炎に包まれた。

 残念だったな。このノスフェラトゥフレイムは普通の魔法ではない。

 メンタル霊を全て飲み込む暴食の王たるクロミズらしい魔法ではないか。

 異世界転生に備えて考えた魔法がこんなところで役立つとはな。


「グモモモグモオオ」

「え? ちょっと待って」


 なんと黒ミノタウロス炎を纏いながら俺に向かって突進してきた。

 炎の黒ミノタウロスになってしまったじゃねえか! 失敗。これ失敗。


「シュトラールアイスボッチ」


 俺は慌てて魔法を石畳に向かって放った。

 凍り始める地面。そのまま滑って転ぶがいい。

 だが黒ミノタウロスの突進のほうが速い。

 目の前に火を纏った黒ミノタウロスの角が迫る。

 次の瞬間、激痛が、襲いかかる。息ができない。

 それもそのはず黒ミノタウロスの巨大な角が胸に突き刺さっていた。


 貫通無効。痛い。


 黒ミノタウロスが俺を突き上げる。

 天井に激突。

 衝撃無効。滅茶苦茶痛い。


 俺は重力に従って落下。

 そこへ炎の黒ミノタウロスが巨大な斧を振り上げる。

 慌ててバスターソードで防ぐ。

 丸太のような黒ミノタウロスの蹴りが俺の腹にめり込む。


 打撃無効。イテエエエエエ。


 なんて痛いんだよ。クロミズ、どうなってんだ? 加護をしっかり付けてくれないと困るよ君イイ。痛いじゃないか?

 俺は床を転がり、壁に激突。

 目が回ってもう何がなんだか分からない。

 ダメだ。勝てない。こいつは強い。ボッチの俺が調子に乗ってすんませんでした。


「くっ」


 俺は震えながらバスターソードを杖代わりにして立ち上がる。


「グモオ?」


 ミノタウロスが首を傾げながら斧を横払い。

 俺は真横に吹っ飛ばされ壁に激突。

 打撃無効、衝撃無効、斬撃無効。様々な加護が頭をよぎるが、激痛が伴う。

 さっきから全然加護が効いてない。クロミズの気分が乗らないのかな?


「くっ」

「グロロロロロ」


 黒ミノタウロスは、さあ来いと言わんばかりに斧を振り回した。

 なんという強さだ。勝てるはずがない。そもそも俺は普通以下のダメ人間だぞ?

 こんな屈強マッチョに勝てるはずがない。

 ダンジョンデビューをしたばかりの俺がボスと互角に張り合えるはずがない。

 なんでこんなに俺は弱いんだ。

 いつも弱い。だからリア充共に舐められるんだ。

 ランドセルを運ばされるんだ。

 俺は精神的に弱いから舐められる。

 ここに生徒会長がいれば、副会長がいれば助けてくれたのに。

 ここには俺しかいないのだ。

 誰も助けに来てはくれないのだ。


「……」


 だったらえ自分のことは自分で守る。

 ボッチの俺を助けてくれる奴はいない。


 だから俺は自分で自分を助ける。

 バイザボッチ、フォーザボッチだ。


 孤高のボッチはこんなところで倒れてはいけない。

 至高のボッチは泣き言を言い過ぎてはいけない。

 立つんだボッチ。まだ息をしている。心臓が動いている。

 ボッチボッチとくだらないことを言っていられる余裕があるじゃないか。


「……」


 こいつを倒す手段を考えろ。

 剣を習ったことのない俺の剣技はダメ。魔法もダメ。


 そうだ!


「フフフッ」


 俺の口からキモイ笑い声が漏れた。


 俺もそろそろ次の段階に進もうと思っていたところだ。

 この試練が俺を更なる高みに引き上げてくれるだろう。

 お前をライバルとして認めてやろうじゃないか?

 ――と格好をつけていると黒ミノタウロスが突進してきた。


「わっちょっと、まままま、待って」

「グモオオオオ」

「うわああああ」


 俺の叫び声がまるで悲鳴のようだが、これは迫真の演技だ。

 ひ弱なふりだ。俺はクロミズに願う。ナイスアイデアを伝える。


 床を蹴って強制ターン。

 右腕を前に突きだし。


「ボットスピア」


 そして放った。

 クロミズが貯め込んだ武器を放った。

 槍が高圧で高速で衝撃波と共に射出された。

 そう、放ったのは体液ではない。槍だ。


「ボットソード」

「ボットアロー」


 続いて、剣が矢が射出、しかもそれだけではない。

 無数の武器を連続射出した。


「グモオオオオオ」


 斧を振り回し、撃ち落とす黒ミノタウロス。

 だが何本かはその巨体に突き刺さっていた。

 攻撃が効いた。

 いける。イケちゃうぞボッチ。


「クロミズ。武器変化だぁぁぁぁ」


 俺は手にするバスターソードの形状を変化させることをクロミズに願った。

 スライムの不定形ボディに決まった形などありはしないのだ。

 その形は自由。二本のバスターソードはその姿を静かに変えた。


「グモ?」


 そうだ。驚いただろう?

 俺の手には巨大なバスターアックスがあった。

 黒ミノタウロスの眼が大きく見開いた。

 俺は迫りくる狂った黒ミノタウロスに向かって新たな獲物――バスターアックスを振り上げた。斧と剣では重さが違う。

 そもそもボット細胞のできたバスターソードに重さはないが、そこはイメージだ。

 物理法則のイメージ。斧の方が重そうだ。それだけ重くなる。


「グモモモ」

「ボボボボ」


 黒ミノタウロスが黒い斧を振り抜いた。

 同時に俺も振り抜いた。

 互いの斧が激しく激突。

 火花どころか互いのメンタル霊が衝撃波のように弾け飛んだ。


「グモ?」

「フフッ」


 だが忘れていないか?

 俺は生徒会長の太刀を見て思った。

 俺も二刀流になりたいと。

 つまり今の俺は斧の二刀流。

 てめえは一本。俺は二本。斧の数は俺の方が多い。

 俺はもう片方のバスターアックスを振り上げる。

 黒ミノタウロスの手首を一刀両断。


「グモオオオ」


 斧が右手ごと床を転がり悶絶する黒ミノタウロス。

 俺はその隙を見逃さない。

 もう片方のバスターアックスが黒ミノタウロスの腰に突き刺さる。

 メンタル霊が血飛沫のように噴出。

 だが浅い。これでは斬れない。

 いや斬れるはずだ。このバスターアックスは見た目ほど重くはない。

 いや、重いのだが重くないのだ。ヘビーライトフェザー級みたいなものだ。

 切れ味は剣並。そう、だから俺にでも振れる。扱える。

 矛盾は想像でゴリ押せ。


 押せ。タタっ斬れ! クロミズも手伝ええええ。


「いけえええええええ」


 バスターアックスの背からジェット推進のように水が噴出。

 加速するバスターアックス。

 これはペットボトルロケット?

 なんだか科学実験的な攻撃だが、それを教えたのは俺だ。

 つまり温故知新。科学とクロミズの競演。フェスティバル。

 加速した俺のバスターアックスの抵抗が消え、バスターアックスが空を斬った。


 少し遅れて黒ミノタウロスが腰を中心に斜めにズレた。

 落下する黒ミノタウロスの眼が驚愕に開かれて後、歯を見せた。

 倒した。やったぞ。倒したぞ。


 笑った?

 見事だと言っているように思えた。

 お前もな。

 そして黒ミノタウロスの巨体が床に衝突して、黒い煙となって消えた。

 膨大なメンタル霊が俺に舞い降りる。


「勝った」


 床には大きな黒い斧が残されていた。

 いい勝負だった。

 昨日の敵は今日の友、強敵と書いてトモと呼ぶ。

 お前もボッチでボスだったから、俺達と同類かもな。


 俺は黒ミノタウロスの一人で戦うその雄姿に敬意を払った。


「お前のボッチ魂を」


 俺は床に残された巨大な黒い斧を手に取ると。


「俺が引き継ぐ」


 俺はそう呟くとクロミズに斧の回収を命じた。

 黒ミノタウロスの斧がクロミズに俺の手から吸収された。


 お前の見たかった世界は俺が見せてやる。

 もう俺達はボットモだ。

 俺の心の中で黒ミノタウロスがサムズアップしたような気がした。


 終わった。激戦だった。勝ったのが信じられない。

 ギリギリだった。加護を全開にしてやっと倒したのだ。

 運が良かっただけだ。


「地獄門か」


 俺は天井の地獄門を見上げる。

 何かが出てくる気配はない。

 だがこのままここに放置しておけば、またモンスターに溢れてしまうだろう。

 破壊するか? どうやって? 今の俺は精も根も尽き果てた。

 攻撃する元気もボッチ魂も残っていない。

 どうやって壊す? 武器を射出するか? いま吸い込まれるだろう。


 いや、もっといい方法があるじゃないか。


「クロミズ、あれってアイテムボックスに収納できないかな」


 その質問に答えるかのように俺の身体から漆黒のボットハンドが伸び、天井付近に浮いていた地獄門が消えた。


「……」


 入っちゃった。どういう原理だ?

 まあいい。終わったのだ。ダンジョンが静けさを取り戻した。

 これこそがボンジョンだ。この圧倒的サイレンス。

 これこそがボンジョンの正しい姿だ。

 ボッチのダンジョン、ボンジョンだ。

 俺は斧になったバスターソードの具現化を解くと、手の中にするすると消えていった。


「スラッシュ。もういいぞ。終わったぞ出ておいで」


 俺の言葉を待っていたかのように壁からスラッシュが姿を現した。

 よかった。生きていた。少し薄くなっているような気もするが気のせいだろう。

 俺は副会長が用意してくれたお供えをスラッシュに食べさせた。

 もちろん大好物のカロリーバーも忘れずに与えた。

 スラッシュが不安そうに触手を伸ばした。

 安心しろ。もう倒した。つかボットモになったから大丈夫だ。


 そして俺はスラッシュと楽しいひと時を過ごした後、ダンジョンから出た。

 校内は夕焼けに包まれていた。

 俺は心地良い疲労感に包まれながら下校した。


 今週の日曜日楽しみだな。

 副会長にメールしてみようかな?

 いやいや、女子にメールなんてどうやればいいんだよ。

 そんなことをニヤニヤ考えて信号待ちをしているとポンと背中を押された。


「え?」


 俺は二歩三歩とよろけて、車道に飛び出てしまった。

 次の瞬間、俺の視界が回った。

 俺の視界に空が、信号が、夕焼けに染められたビルが、驚く人々の顔が、車があった。

 そして頬にアスファルトの硬いギザギザの感触が当たった。

お読みいただきありがとうございました。

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