表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

26/113

24 ミノ祭り

「グモオオオ」


 巨大なミノタウロスが咆哮し涎を撒き散らした。

 俺はその姿に恐怖よりも怒りを覚えた。

 ここはクロミズのボス部屋。聖域。俺との絆が生まれた場所。

 神聖な聖地を汚すものは許さない。


「ヒトキレボッチモード」


 俺は怒りを噛み殺し、二本のバスターソードを具現化させた。

 俺はダンジョン部員。

 女神たる生徒会長と副会長の後輩だ。

 故に俺も二刀流。

 もちろんこのバスターソードは本物ではない。

 イマジナリーウェポンを持っていない俺が生み出した武器。

 クロミズのボット細胞が変化した偽物だ。


「グモオオオ」


 ミノタウロスが俺を笑う。

 大声で空気が震えた。

 そして巨大な斧を俺に振り下ろした。

 ミノタウロスの斧が床に半球状の穴を穿った。

 俺はそれを回避しながら横目で確認する。

 床に穴を開けることができるのはお前だけじゃない。

 俺はそのまま半身を捻って、バスターソードを横払い。

 ミノタウロスの振り下ろされた太い腕に吸い込まれるようにバスターソードの切っ先が流れる。

 だがミノタウロスはそのまま斧を上に振り上げた。

 ガキンと金属音が、衝撃波が巻き起こる。

 やるではないか。だがこれならどうだ?

 俺は振り抜いたバスターソードをそのまま回転させる。

 ガキンガキンと俺の二本のバスターソードがミノタウロスの斧を揺らす。

 スライムの柔らかボット細胞で構築されたバスターソードが何故火花を散らすのかは謎だ。

 だが負けていない。

 それどころか勝っている。

 流石俺のボットモ。

 俺の回転攻撃で態勢と崩したミノタウロス。

 無論その隙を見逃さない。

 俺は石畳を蹴って、下から剣を振り上げる。

 ミノタウロスは上半身を仰け反って回避する。

 だが俺の攻撃のほうが速い。

 バスターソード切っ先がミノタウロスの鼻先をかすめた。


「グモモモモォ」


 汚いメンタル霊が吹き上がる。

 かすっただけだ。

 だが俺にはもう一本ある。

 俺はもう一振りのバスターソードが同じ軌道を描く。

 だが空振り。

 ミノタウロスは一歩下がって俺の二発目の攻撃を避けた。

 態勢を崩したのは俺だ。

 そこへミノタウロスの巨大な斧が舞い降りる。

 俺は振り上げた二本の剣の威力を生かし、バク転する。

 今度はミノタウロスの斧が俺の鼻先をかすめ、風圧が俺の黒髪を揺さぶった。

 こいつもしかして強い?

 だが案ずるな、ビビるな。俺達ボッチコンビも強い。

 俺は着地と同時に石畳を蹴った。

 眼前に迫るはミノタウロスの柱のように太い足。

 加速した俺はそこにバスターソードをぶっ刺した。

 だがガキンと金属音が響いた。

 斧で止められたのだ。

 俺の攻撃が読まれてた?

 だがそれでも俺は攻撃を止めない。

 もう一振りある。

 ガキンと俺の二撃目が震撼する。

 続いてミノタウロスが反撃し俺の頭に振り下ろされる。

 俺は二本のバスターソードをクロスさせ受ける。

 あまりの威力膝が下がる。

 なんて力だ。このままでは押し切られる。

 いや、押し切れる。

 俺はバスターソードを振り上げる。

 俺のボットモは決してパワーで負けていない。

 浮き上がるミノタウロスの斧。

 さっきから身長差で俺が上から攻撃されるだけだ。

 だったら同じ目線まで上がればいい、

 俺は追撃する。

 がら空きのミノタウロスの腕に向かってバスターソードを突き上げる。


「いけえええ」

「グモ?」


 丸太のように太い腕にバスターソードがめり込んだ。

 刺さった。イケる。

 俺は渾身の力を込めてバスターソード押し込んだ。

 振り抜いた。


「ギャアアアア」


 何かの手ごたえ、そして固い抵抗がある。

 その抵抗が消えた。

 俺のバスターソードが振り抜かれた。

 俺の前にはミノタウロス。

 後ろにはミノタウロスの腕と斧。

 斬ったのだ。

 ミノタウロスの右手が斧ごと石畳に落ち、金属音を回した。

 その次の瞬間、ミノタウロスが血走った目でノーモーションで俺を蹴った。

 ガキンと咄嗟にバスターソードを交差させて身を守る。

 だがその勢いを殺しきれない。

 俺は吹き飛ばされ天井で背中を強打した。

 呼吸が詰まる。

 落下する俺を待ち受けるはミノタウロスの左手の拳。

 天井に打ち付けられ大の字になった俺がバスターソードを戻すも間に合わない。

 ミノタウロスは落下する左手で俺を掴んだ。


「なっ」


 高速で眼前に迫る床。

 俺は避けることもできず、受け身も取れずに床に叩きつけられた。

 視界が回り、バスターソードが火花を散らし不協和音を奏でる。

 俺はボロゾウキンのように振り回され床を弾む。

 だが打撃無効によりダメージはない。

 だが成すがままだった。右に左に床にガンガン打ち付けられる俺。

 ――ダメダメだ。全然ダメだ。全く戦えていない。

 クロミズの加護を得ただけで俺は強くなった気がした。

 考えろ。だが掴まれたままでどうしようもない。

 激突の衝撃でバスターソードを手放しそうになる。

 だがボットモの剣を離すわけにはいかない。


「くっそ」


 俺はやけになって闇雲にバスターソードを振り回した。

 偶然にもミノタウロスの身体を少しだけ切り裂いた。


「グモ?」


 だがしかし、右腕を斬り落とされた今のミノタウロスには効かない。

 こんな小さな傷では俺を離さない。

 怒りで我を忘れたミノタウロスはバーサーカー状態。

 逃げようにも俺の足を掴んだミノタウロスの腕には攻撃は届かない。


「!」


 俺の体はボット細胞そのもの。

 バスターソードを握る必要なんてないのでは?

 バスターソードもボット細胞。

 だった体のどこからでも出せるはずだ。

 俺は掴まれた足からボット細胞を出す。

 それは細い棘のように、鋭利で薄い刃のように。


「グアアア」


 俺を掴んだミノタウロスの腕から棘が突き出した。

 俺の足から飛び出した棘だ。

 続いて刃が煌めく。

 それでもミノタウロスは俺を離さない。


「くっそ」


 てめえ、いい加減離せよ。

 クロミズの加護によってアシストされバスターソードが砲弾のように発射された。

 だがミノタウロスは俺のゼロ距離投擲をかわした。

 なんという反射神経。

 俺はミノタウロスの小指を掴むと逆に折った。


「ガヤアアア」


 俺はヤクザ映画で学んだのだ。小指は大事と。

 ミノタウロスは俺を投げた。床を転がり壁に激突して息が止まる。

 くっそ、なんて馬鹿力だ。


「グアアアア」


 激高したミノタウロスが俺に突進する。

 背後は壁。俺は武器を失っている。

 だがバスターソードは剣であって剣ではない。


「甘い」


 俺が両手を広げ念じると、そこに新たなバスターソードが現れた。

 ミノタウロスは驚いたように目を見開いた。

 ミノタウロスは武器がない。

 俺にはある。

 そしてこれは俺のバスターソードの間合い。

 慌てて止まろうとするもその巨体は止まらない。

 俺は迫るミノタウロスの足を斬りつけ、そのまま振り抜いた。


「グガギャ」


 ミノタウロスの右足が上下に分離、バランスを崩し俺の眼前に倒れる。

 そこにバスターソードを振り上げた。

 ミノタウロスの運動エネルギーと自重に俺の振り上げる力が合わさり、ミノタウロスの首を両断。

 メンタル霊を噴出しながらミノタウロスのクビが床を転がった。

 ミノタウロスの体が壁に激突。

 俺はその隙間から這い出ると、巨体と首は黒い煙となって消えた。

 強いな。俺達ボッコンビは。

 舞い上がったミノタウロスのメンタル霊が経験値となって俺の身体に吸収される。

 強かったぞ。ミノタウロス。

 だがお前との戦いは俺の経験値となって生きる。

 即ちお前は俺の糧となったんだ。


 静寂に包まれるボス部屋。

 そしてそこには大きな魔石が残されていた。

 これはミノタウロスの魔石?

 なんて大きさだ。それは強靭なミノタウロスの面影を残していた。

 その宝石のようなカット面に黒い影が映り込んだ。


「グモオオオオオ」


 背後でミノタウロスの叫びが上がるのと同時に俺は転がった。

 案の定、俺がいた場所に漆黒の斧が振り下ろされ石畳に大穴を開ける。

 飛び散る石片の中、黒い何かが俺の視界に飛び込んできた。

 俺は慌ててバスターソードを盾代わりにする。


 ガキンという金属音と衝撃が俺の腕に伝わる。


「もう一体?」


 息つく暇もない連戦。

 俺は床を転がり、投げたバスターソードを拾うと投擲。

 うなりを上げてミノタウロスに吸い込まれるバスターソード。

 だがミノタウロスは斧で弾いた。

 だが俺はもうミノタウロスの足元にいる。


 投げたのは囮。本物はこっちだ。

 俺はミノタウロスに水平斬り。

 ミノタウロスが斧で防ぐ。

 何度も言うが俺にはもう一本ある。

 もう一振りのバスターソードが斧を叩く。

 よろけるミノタウロス。

 俺は床を蹴ってミノタウロスの下から、縦にバスターソードを振り上げた。

 ミノタウロスの腕が宙を舞った。


「グモオオォオオオ」


 ミノタウロスのがら空きの胸元へ右手、左手と二本のバスターソードの白い弧が瞬差で描かれる。

 それでおしまいだった。

 二体目は瞬殺。

 ゴトンと魔石が床を鳴らし、メンタル霊が俺に吸い込まれる。

 圧倒的ではないか我が軍は? 俺が勝利の余韻に浸っていると。


「!」


 とんでもない殺気を感じ、その場から離れた。

 それは斧ではない。剣でもない。

 爆発した。

 燃え上がり弾ける。

 火だ。

 巨大な火の玉が着弾し石畳が爆発した。

 石の破片が俺の頬を抉る。

 だが加護によりノーダメージ。

 これは魔法攻撃? 一体どこから?

 俺は発射元を探す。


「なっ」


 天井を見上げると、そこには禍々しい大きな穴が開いていた。

 その穴の周りには何かの装飾がある。

 それは門のように見える。

 そうかあれは確か地獄門?


 そして穴の中から巨大な黒い影が落下してきた。

 俺は問答無用で右手に持つバスターソードを投擲した。

 先手必勝。

 加護により加速されたバスターソードは重力に逆らって上に向かって加速する。

 しかしバスターソードが直角に折れ曲がる。弾かれた。


「なっ」


 俺は転がって退避しながらバスターソードを構えた。

 ガキコンと衝撃で体が下がる。

 そこに振り下ろされたのは巨大な漆黒の斧だった。

 今までのミノタウロスが持っていた斧よりも何倍もデカい。


 超重量が着地する。

 それはまさに巨大な壁だった。

 クロミズと最初に出会った時を思い出す。


「こいつ」


 巨大な斧を手にしているのは巨大で漆黒のミノタウロスだった。

 漆黒よりさらに黒い。今までのミノタウロスがミノタぐらいに感じる巨大なミノタウロスだった。

 間違いない。こいつは今までのミノタよりもはるかに強い。


「グモオオオオオオオオ」


 大気が、俺の心が砕けそうになる。

 勝てるのか? いや勝つんだ。

 どれほど巨大で強大な敵でも俺のボットモの出会った場所を汚す者は万死に値する。


 ミノタウロス三戦目の火ぶたが切って落とされようとしていた。

お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ