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22 ゴブリンはリア充に似ている

 俺の身体から放たれた半透明の触手がゴブリン共に突き刺さる。

 俺に襲い掛かってきたリア充は煙となって消えた。

 そして光の粒となって俺に降りかかった。

 俺は慌てて回避。だがその光は誘導して俺の体の中に消えた。

 だが衝撃無効の俺にとってはノーダメージ。

 残念だったな。

 それにしてもおかしい。ここはボッチの聖なるダンジョン……ボンジョンだったはずだ。

 なぜこんなリア充みたいなゴブリン共が沸いているんだ?

 どこから侵入した? 入り口が他にもあるのか?


「は?」


 そういえば副会長が地獄門がどうとか言っていたけど、それってどうなったんだ?

 テンドー君闖入事件ですっかり忘れていたけど地獄門ってほったらかしじゃね?

 そこからゴブリン共が侵入したのだろう。

 くそ。スラッシュは無事だろうか? どこかに隠れているといいが。


「ギャギャギャギャ」


 そうこうしていると新たなゴブリンが集団で襲い掛かってきた。

 人間を、ボッチを見かけたら攻撃する決まりなの?

 こいつらまるでリア充だな。

 集団でボッチに攻撃をしかけるなんてリア充以外ないだろう。

 さっきの上級生の顔がゴブリンと重なる。

 無抵抗な俺をボコってくれた恨みが沸々と沸き上がる。

 ゴブリンの粗末な剣が俺に迫るが俺に届かない。


 その者、打撃無効なり。

 ゴブリンの粗末な剣が俺の体を滑る。


「ギョギョギョ?」


 ゴブリン達が動揺する。

 俺にそんなしょーもない攻撃は効かないのだよ。

 俺はボットモであり神であるクロミズと同化している。

 従ってあらゆる物理攻撃を受け付けない。

 ゴブリンパンチもゴブリンキックも同様に効果ないだろう。


 つまり俺は物理で殴り合ったら負けない体育会系ゴリマッチョボッチなのだ。

 通路の奥にいるゴブリンが俺に矢を放った。


「ひっ」


 粗末な矢が俺に刺さった。

 いくら不死身だと分かっていても怖いものは怖い。


「ギャッタギャ」


 今やったかって言っただろ。

 フラグの神の力は絶対だと証明しなければならない。


 その者、貫通無効なり。

 ゴブリンの粗末な矢が俺の体内から吐き出され床にばら撒かれた。


「ギョーギュル?」

「ギエエ。ギョッチマエ」

「ギョー」


 ゴブリン達は叫んだが何となく分かってしまう。

 行動がリア充そっくりだからだろうか?

 どうする? ええいやっちまえ、おおおーとでも言ったのだろう。

 集団という絶対的な安心感に保証された優越感、砕いて見せようホトトギス。

 俺は触手を一本だけ形成した。

 どういう原理なのか不明だが念じれば触手が生える。

 見た目は正直ヌラヌラしてキモイ。

 俺は一番前で騒いでいるゴブリンに向けて放った。


「ギャ」


 ゴブリンの身体に大きな穴が開き、倒れた。

 そして黒い煙となって消えた。

 それを見た仲間のゴブリンが後退る。

 ゴブリンごときでは神であるボットモの触手を止められない。

 誰も俺達ボッチコンビの進撃は止められないのだ。


「ギャギャ、ギョギョゲギョ」


 残ったゴブリン共が逃げろと叫んでいるらしいがそんな事させると思うか?


「串刺しだ」


 俺はゴブリンの背中に向けて卑怯にも触手を放った。

 ゴブリン達は一瞬で絶命し、黒い煙となって消滅した。

 卑怯とか可哀そうとか非人道的とか残虐とかそんなことは全く思わない。

 人型だろうが何だろうが、集団で襲ってくる奴は敵なのだ。

 暫くして光の粒が俺に舞い降りる。


『そうボッチ。遠慮はいらんボッチ。リア充は皆殺しだボッチ』


 分かっているボッチ君。

 俺はもうただのうすのろで、うずくまっているボッチではない。

 力を手にした逆ギレ暗黒ボッチなのだ。

 暗黒ボッチの俺に正義の心など微塵もない。


 そもそも正義なんて、立場によって変わるものだ。

 この世で一番の害悪は他人に自分の意思を押し付けることだ。

 みんなで仲良くすのが正しいと俺に押し付ける。

 思い返せば最初に疑問に思ったのは保育園の頃だったな。


 トーリ君。そんなところで一人で遊んでないでみんなと遊ぼうねえ。と巨乳の保育士が俺をみんなのところに連れて行った。

 もちろん、生まれながらのボッチの俺にみんなと遊ぶことに興味なんてない。

 そんなことよりも揺れるお胸に釘付けだった。なんだ? あの胸の物体は?

 顔は覚えていないけど、俺の前にしゃがみこんだ保育士のその圧倒的ボリュームはしっかりと覚えている。


 ああ、なんの話だったか? 正義の話だったか? 巨乳の初体験の話だったか?

 つまり何が言いたいかといえば、巨乳は正義なのだ。


「ギャイアー」


 ゴブリンの叫び声と共に通路が奥から順に照らされ、大きな炎が見えた。

 ファイアーと叫んだのだろうか?

 ゴブリンが魔法? ゴブリンのくせに生意気だぞ。


 その者、魔法無効なり。

 ゴブリンの魔法が俺の身体にヒットする直前、何事もなかったように消え失せた。


「ギャンギャト?」


 だんだんゴブリン語が理解できるようになってきた。

 なんだと? と言ったようだ。

 ゴブリンに出来るなら俺にも出来るはずだ。

 現実では決して出来ない事象――魔法を。

 幼い頃から放ちたかった魔法やビーム的な波技。

 それは男の憧れでロマンで夢で醍醐味だ。

 銃であれ何であれ、とにかく男という生き物は放ちたいのだ。


「……」


 このダンジョンは想像力の具現化存在。

 人が望むもの、こうあるべきだと思うものは全て具現化する。

 モンスターの存在も魔法も然り。

 だから俺にも放てるはずだ。極大魔法を。


 先日の傭兵虐殺事件で俺は無意識で魔法を放っていた。

 だからできるはずだ。

 やれば出来る俺はやらないだけだ。

 いつかやると言っている奴は一生やらないと姉ちゃんは言っていた。

 確かに仰る通り。ええい、だが今の俺なら出来る。

 ボッチのインフルエンサーを自称する俺だ。

 ゴブリンごときが魔法を使えて神であるボットモが使えないはずがない。


 俺はあたふたしているゴブリンメイジ達に向かって念じた。

 俺の周囲でメンタル霊が凝縮していく。

 これが魔法か?


「アーハッハッ。思い知れ」


 あれ?

 だが凝縮したメンタル霊はプシュンと拡散して消えてしまった。


「ギャーギャッギャッギャ」


 ゴブリンメイジ達が俺を指さして笑っている。

 何が足らない? 途中までは良い感じだったはずだ。

 なんで魔法にならなかった?

 木曽三川公園警護隊の奴らは中二病みたいな魔法名を叫んでいた。


「はっ」


 そうか名前だ。

 魔法は具体的な名前がないと具現化しないのでは?

 俺は目を閉じて深呼吸をする。

 そして中二時代の呪文を思い出す。

 必死に考えて覚えた意味不明な呪文を。


「地獄よりも深遠なる闇の底から我の願いに応じ召喚せよ。そして我の眼前の魂を吸い尽くし、焼き払え。代償としてその魂を捧げる……ノスフェラトゥフレイム」


 俺の目の前でメンタル霊が凝縮し、闇のように深い紫色の炎となって具現化した。

 やったぞ。できたぞ。魔法っぽい。

 ゴブリンメイジ達が驚愕の表情を浮かべたままその紫色の炎の壁に飲み込まれた。


「ギャ、ギャツイイイ」

「ギャンギャトオオオ」

「ギャゴクのギャノオ」


 そしてゴブリンのメンタル霊を喰らいノスフェラトゥフレイムが輝きを増した。

 喰ったのだ。

 そうこのノスフェラトゥフレイムは敵を喰って糧にする最強の極悪魔法。

 俺が異世界に転生したときの為に考案したオリジナル魔法だ。

 ゴブリンメイジ達のメンタル霊を喰って威力を増したノスフェラトゥフレイムはダンジョンの通路を炎で埋め尽くしながら邁進した。

 その進路上にある全てのゴブリンを屠り、燃やし、喰らい、何もなくなったところでようやく消えた。

 ダンジョンに静寂が舞い戻る。


 全てを食らい尽くす地獄の炎の魔法。


「やっべー。なんだこの威力は」


 こんな高威力ではパーティーの前衛ごと焼き尽くしちゃう。

 ああ、俺はパーティーなんて絶対入らないから関係なかった。

 光の粒が奔流となって俺に降りかかった。

 これって死んだとの攻撃というよりは経験値的なやつじゃね?

 俺のボッチブレインが導き出した答え。

 ゲームのイメージに傾倒したダンジョンらしいシステムだ。


 魔法が撃てると分かったので他の魔法も試してみよう。


「ボッチファイヤーボール」


 俺の指先から野球のボールぐらいの大きさの火球が発射された。

 ダンジョンの暗闇を照らしながら進み、奥の壁に命中して衝撃波が襲い掛かってきた。


「うわ」


 衝撃無効の俺だからよかったものを、普通の人間だったら吹っ飛んでたはずだ。

 使えねえ。こんな高威力では、可愛い魔法使いの女の子のスカートをめくるどころの騒ぎじゃない。スカートを履いたトンガリ帽子のウィッチ服を燃やしちゃってセクハラでパーティーを追放されちゃうだろ。

 ああ、俺にはパーティーなんて入らないから余計な心配だった。


 だが俺はクロミズの圧倒的な潜在能力を垣間見た気がしたぜ。

 クロミズは一体どれほど強いのだろうか?


 ちょうどいい。ヒョロガリ身体能力測定の開始だ。


 俺はダンジョン内を走った。

 風切り音が耳に轟音となって轟く。

 風のように走れるぞ。

 以前の俺は運動神経マイナスのポッチャリ、ドンクサ、ボッチだった。

 それが今はどうだ。ボッド細胞が俺の意思を読み取り、退化した筋力をアシストしダンジョン内を高速で駆け抜ける。

 パワードスーツを体内で着ているようなものだ。

 信じられないことに自分が思った以上に軽快に動けるのだ。

 俺はアスリート顔負けの速度で狭いダンジョン内を走る。

 高速で石壁が流れ、一瞬のうちに新たなゴブリンメイジの集団に迫る。

 視覚情報も心も補強されているのか恐怖感はない。


 そもそも木曽三川警護団を皆殺しした時から感覚がマヒしている。

 これがゲーム脳ってやつだろうか?

 神と一体化した俺は人の感情を捨てたようだ。


「ギャワ?」


 俺は体内の液体を高圧で発射した。

 これはクロミズと出会った時にくらったウォーターカッターだ。

 飛ばしている液体が一体なんなのかは考えたくないが強烈な技なのは確かだ。


「ギャ」

「ギョ」


 ゴブリンの上半身が消えた。

 一撃。これが俺の力なのかあぁ。


『そうだボッチ。これがクロミズと融合した真の姿ボッチ』


 だが強すぎる。力をセーブして一般霊トレーサーレベルに力を抑えなければならない。

 だが俺は一般霊トレーサーの基準を知らない。

 生徒会長と副会長はS級、木曽三川警備隊のおっさん達はA級といっていたな。

 よし。あの弱そうな木曽三川警備隊ぐらいの強さだったら目立たないだろう。

 俺はクロミズに加護の基準を伝えた。


 第零段階。ゼロキレボッチ――今まで通りのボッチ界のインフルエンサーな俺。

 第一段階。ヒトキレボッチ――A級霊トレーサー。木曽三川警護団のおっさんレベル。

 第二段階。フタキレボッチ――S級霊トレーサー。生徒会長級。

 第三段階。オニギレボッチ――クロミズの加護全開。自重も遠慮もないジェノサイド状態。


 何の技術も訓練もしていない俺が彼らのように戦えるかは疑問だが、俺の体に自動迎撃システムの触手がある。問題ないだろう。

 それにしても触手という言葉は卑猥だ、

 この際、名前も変更しよう。ボットモの腕のボットハンドだ。

 そして高圧の体液を放つ技をボットガン。

 要はボットと付ければ何でもいいのだ。

 こうして名前を付けることで俺の意思をクロミズに反映しやすい。

 とはいえ、素手で戦うのもバタ臭い。

 何か武器はないのか? ボッチウェポン。ボウェポンはないのか?

 俺にはまだイマジナリーウェポンがないのだ。


 すると俺の身体の中から何かが現れ床に落ち甲高い金属音を奏でた?


「え? 刀?」

お読みいただきありがとうございました。


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