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18 木曽三川傭兵団解散

「すいませんでした。黒岩の巫女とも知らず、危害を加えたこと、心よりお詫び申し上げます。責任は全て私にあります。ダンジョンライセンスを返上します。この者達をどうか寛大な心で許してやってあげてください。お前らも謝れ」

「「「「すいませんでしたあああ」」」」


 木曽三川傭兵隊の隊長の口上と共に華麗な土下座祭りが炸裂した。

 ダンジョンでのダメージで二日酔いのように唸っていた男達が一斉に姿勢を正し、綺麗な土下座をしたのだ。


「……霊ガンやら、霊キャスターやら黒岩の第二研究部門はろくなもんを作らんな。もうよい。そなたらも仕事であったのだろう。全て水に流そう」


 生徒会長が腕を組みその上に圧倒的なボリュームの胸を乗せながら平伏す男達の上から偉そうに許した。


「「「あ、ありがとうございます姫様」」」


 あれ? 呼び方が姫になったぞ。確かに戦国の世なら生徒会長は姫だろう。


「うむ、それとお主、ダンジョンライセンスは大切にしろ」

「しかし」

「ではダンジョンライセンスが要らぬなら私が貰おう。私の為に使え」


 生徒会長の目が細くなる。


「……な、なんなりと」


 隊長の顔に緊張が走り、傭兵団全員にそれが広がった。


「今回のことは絶対に口外せぬように。何も見なかった。何もなかった」

「は、はあ、ですが巫女である黒岩様と横岩様に危害が加えられたのですよ?」

「ほらこの通り。私は何もされとらん」


 生徒会長が胸を張った。


「「「おおぉ」」」


 どよめきが沸き起こった。

 見んといて、それは俺だけの特権なのよ。

 いや生徒会長の圧倒的胸部は人類皆のものだ。

 皆で見ようでないか、皆で見ればその背に背負っている太刀も怖くない。

 俺は正々堂々と生徒会長をガン見した。


「トーリ君?」


 速攻副会長の視線が飛んで来た。


「……しかし」


 隊長が真面目に答えた。


「これは身内の問題だ。部外者がこれ以上口を挟むでない」

「はあ」

「挟んでも構わないけど黒岩の本家と分家の厄介ごとの巻き込まれるわよ?」


 副会長が大きな溜息をついた。


「それは」

「すまぬな。これには複雑な事情があってだな、先妻と後妻とその後妻の夫との……」

「会長」

「おっとそうだった、つまらぬ話だ」


 生徒会長と副会長の会話を聞いた俺の頭の上にクエスチョンマークが出現した。


 どういうことっすか?


「天道君は会長の親戚なの……黒岩天道」

「は?」


 テンドー君はテンドー君じゃなかったの? それ名前だったのかよ。

 そういえば本家とか分家とか総本家とか言っているし。

 それより親戚を襲うなよ。何考えてんだよ。


「……承知致しました。今回のことは絶対に口外いたしません。その証として木曽三川傭兵部隊は今日限りで解散し、傭兵を辞めます」


 隊長は沈痛な面持ちでそう宣言した。


「え? マジっすか?」

「隊長」

「そんな」

「俺達どうすれば」

「隊長がいないと誰が飯を?」

「屑だった俺を隊長が正しい道に」

「隊長」

「誰が飯を作るんですか」


 傭兵部隊が隊長に詰め寄って男泣きしだした。

 解散したところで生徒会長を怖い目に合わせた罪は消えないんだぞ。

 あと純情ボーイの俺の手を赤く染めさせやがって僕の手は汚れてしまった。

 お前らの汚い血でなあ、と俺は睨んだ。


「トーリ君、やり過ぎは禍根を残すだけよ」


 副会長が俺を睨む。

 ふええ、その睨みも俺のボッチ脳にも禍根が残りますよ。


「皆聞いてくれ、今日をもって俺は巫女様に仕える。もう二度と巫女様に危害が加えられないように今後は我々がお守りする。異議がある者は去っても構わない。俺一人でも姫様達をお守りする所存だ」

「マジっすか? それって犯罪では?」

「隊長。水臭いですよ」

「隊長。もちろん一生付いていきます」

「姫様達は俺達が守る」

「今更ですよ」

「姫様万歳」

「拠点の維持はどうするんですか?」

「これでまた隊長の飯が食える」

「異議なし」

「お前らすまんな」

「うむむぅう」


 会長は可愛い口を可愛くへの字に曲げて可愛く唸っている。

 仕草全てがオール可愛い。これは生徒会長の日常を撮影する撮影班が必要だな。

 俺が撮影班のカメラマンやります。アイドルの舞台裏を撮るカメラマンみたいに仲良くなっちゃうやつだ。


「まあ、会長の信者が増えるのは仕方がないことね」


 いいのかよ。これでいいのかよ。

 はっ? 待てよ?

 お前ら本当は生徒会長の側にいればラッキースケベ的なイベントに合えると期待しているようだろうが、そうは副会長と俺が許さないぞ。

 その淡い期待はさっさとダンジョンに捨てたほうがいいぞ。

 副会長のラッキースケベキャンセラーは地球の裏にいようと発動する優れものだぞ。


「もちろん、横岩様の信者でもありますよ」

「あっそう。ありがとう」


 副会長は興味なさそうに手を振った。

 こいつらついさっきまで敵だったのになに仲間面してんだよ?

 君達には傭兵のプライドとかプロ根性とかない訳?

 ボッチにボコボコッチされたくせに生意気だぞ。


「会長、いいですよね?」

「ああ、可愛い千草と後輩のトーリを共に守ってやってくれ」

「え?」

「は?」

「いっ!?」

「ひい」

「え? なんでこいつ?」


 俺の名を聞いた木曽三川警護団の顔色が一気に青ざめた。

 そして冷たい目で俺を見た。

 俺はお返しとばかりにボッチアイで睨み返した。


「トーリ君。昨日の敵は?」


 今日の友です。俺は心の中で答えた。

 くっそ。でも納得がいかない。


「それは、ちょっと」

「いやーまじっスか」

「うわあぁ無理」

「ないわー。こいつだけはないわ」

「無慈悲にぶっ殺されたんだぞ」


 木曽三川警護団の面々が俺の目を見ないようにして文句を言った。

 奇遇だね。俺も同じ気持ちだ。

 お前らとは仲良くできる気がしない。


「何か文句でも?」


 生徒会長が肩眉を上げて元傭兵達を睨んだ。


「「「「ひいい」」」」

「お、恐れながら申し上げます。この、この方はクロミズ様の加護持ちですよね。我々がお守りする必要がないのでは? むしろ守ってもらうのは我々のような。こう見えても我々はA級霊トレーサーですよ。それを一撃で倒すなんて規格外のバケモ、いや、弱者が強者を守るなんておかしくないですか?」


 木曽三川警護団の副隊長らしき男が目を伏せながらそう言った。

 今、はっきり化物って言ったよね?


『確かに言ったボッチ。拳で制裁ボッチ』


 ボッチ君が袖をまくった。


「トーリは確かにお前らより強いかもしれぬ。だがそれはダンジョン内での話だ。現実ではただの高校生だ。むしろこのヒョロガリを鍛えてやってくれないか? 細すぎて心配になる」


 生徒会長のその言葉に木曽三川警護団の顔色が一気に明るく不敵になった。


「ほほう」

「はあ、なるほど。そういうことでしたら我らが、仇、復讐……もとい鍛えてやらねばなりませんなあ。強靭な精神は強靭な肉体に宿ると昔から言いますからね」


 隊長が顎髭をさする。


「とくに精神はメンタル霊に直結しますからなあ。鍛えるという名目の復讐の機会が増えますしねえ」


 副隊長が眼鏡を直す。


「くっくっくっ」


 ムキムキの部下が指をポキポキ鳴らす。


「そうですなあ」

「ふふふふ」

「ぐふふふ」

「仕返しじゃ」

「死ぬ寸前まで鍛えますよ」

「次は負けねえっスよう」


 不敵な笑みを浮かべて俺を見る木曽三川警護団員達。

 ウェイウェイ、チョ待てよ。昨日の敵は今日の友のはずだろ。

 なんで俺だけ憎しみ持たれてんだよ。


「トーリ君がオーバーキルしたからでしょ。少しは反省しなさい」


 いや、オーバーキルなのは貴方達のお胸であって、あの時は手加減なんてしてる余裕なんてこれっボッチもありませんでしたよね?

 貴方達今では笑ってますけど、テンドー君に襲われてたんですよ。

 助けたのにこの扱い。酷い。


「とにかくここは学校だ。直ぐに解散しろ。そなたらのダンジョン侵入許可は我らが出す。悪いようにはせん」


 生徒会長が手を振った。下がれのジェスチャーだ。


「はっ助かります」

「ははー」


 とズザザっと下がった。

 もう完全に時代劇だね。


「後ほど改めて連絡します。代表の方と副代表の方は連絡先を教えてください」


 副会長が隊長の名前と連絡先をメモしている。

 くっそ、なんて羨ましいんだ。副会長様の連絡先を交換できるなんて。

 ムカつくことに傭兵団、もとい護衛団の隊長と副隊長が顔を赤らめている。


「おめーらパーっといくか」

「おおお」

「我らの新たな旅立ちに」

「うおおおお」

「この霊ガン貰っていいのかな?」

「いいんじゃね? クライアントも黙認してるし」

「そうだな。サブウェポンがあると心強いな」

「でもこれ、ほんとに使えるのか?」

「まったく使えないイメージだったが?」

「相手が悪かっただけだろう」

「ああ、確かにクロミズサマの加護はチートだ。チート」

「アオイワサマかアカミズサマの加護持ちなら互角に戦えるんじゃね?」

「どっちが勝つか賭けるか?」

「お前ら置いてくぞ」

「へーい」


 勝手に盛り上がりながら去っていく男達の背は晴れ晴れとしていた。

 仕える主君を見つけた在野武将のように。

 それよりここ学校だから廊下は静かにね。


「トーリよ。今日はここで解散だ」

「トーリ君、明日の放課後も生徒会室に来てね。おやつ用意しておくからね」

「……」


 俺はボッチらしく無言でゴクリと喉を鳴らした。


「今日はありがとうトーリ。また明日な」

「じゃあねトーリ君。かっこよかったぞ」


 二人の伝説の美女は茫然とする俺を残して去って行った。

 え? そこは助けてくれたお礼に、ほっぺにチューしてくれるんじゃねーのかよ?

 なに言葉だけで済ませてんの? そこは態度でも示そうよ。

 俺すげー頑張ったスよ? しかも人殺ししてるんですよ?

 っておーい。聞いてます?




 斜陽の中、俺は落ち込んで帰宅した。

 今日は色々ありすぎて疲れた。

 生徒会長に呼び出しくらって。

 上級生に絡まれて。

 ダンジョン部(執行部)に入部して。

 ダンジョン行ったらミノタウロスが現れてテンドー君が襲ってきて。

 俺が覚醒して俺は最強になってしまった。

 俺の落ち込んでいたテンションは鰻登りに再上昇した。

 最強のボッチ様が帰ったぞ。

 俺は意気揚々で、ただいまも言わず無言で玄関のドアを開けた。


「え? 誰?」


 無慈悲な母親の言葉が俺を迎えた。

お読みいただきありがとうございました。


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