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16 最強ボッチ爆誕

 俺の目の前に転がるのは俺を取り押さえてた傭兵。

 ゲームの敵キャラが消えるように煙となって消えた。


「てめえ」


 俺に掴みかかろうとする傭兵を掴んで投げた。


「ぎゃっ」


 屈強な傭兵が放物線を描かずに直線軌道で壁に激突して床に落ちて動かなくなった。


「え?」

「なんだ?」


 傭兵達が後退る。


「お前らどうした? 何があった?」


 テンドー君が叫んだ。

 俺はその声に向かった。


「てめえ、待てよ」

「ふざけんな」


 近くの傭兵が俺を拘束しようと腕を掴む、俺はそれを軽く振り払った。


「ひっ」

「ぐぁ」


 前後に吹っ飛ぶ傭兵達。

 グシャリという音が二つした。


「えっ?」

「はっ」

「トーリ?」

「トーリ君?」


 俺は生徒会長の方を見る。

 そしてテンドー君を睨んだ。


「……ころす」


 俺の口から別の声が鳴った。


「お前達、何ぼさっとしている。そんな奴早く殺せ」


 テンドー君が唾を飛ばしながら叫んだ。

 傭兵が慌てて飛び掛かる。

 俺はその傭兵の手を握り潰した。


「ぎゃあ、腕がああああぁ」


 俺の前に立ち塞がるということは敵だ。

 敵には遠慮も慈悲も要らない。

 集団で襲い掛かって来るリア充は皆殺しだ。

 ダンジョン内で殺しても現実では死なないと言ったな?

 だったら何を遠慮する必要があろうか?

 こいつらはテンドー君に味方する俺の敵なのだ。


「俺のぉ。腕が腕がぁあ」


 俺は腕を押えて叫ぶ傭兵を蹴りあげた。

 傭兵は口から血を巻き散らしながら縦回転し、天井に激突して煙となって消えた。


「はっ? 嘘だろ」

「バカな」

「一撃だと?」

「これはまずいぞ。暴走している」

「こいつ加護持ちか?」


 傭兵たちが陣形を組み直す。


「何を騒いでいる。そんな雑魚、数で押さえつけろ」


 テンドー君が一人声を荒げた。


「しかし、これは?」

「いいから殺せ殺せ殺せ」

「ですが?」

「契約を守れ傭兵たちが」

「くっ」


 俺を拘束しようとする傭兵の足を蹴りぬいた。


「がはっ」


 傭兵の足が飛散し、縦に回って頭から床に激突し消えた。


「な、何が起こっている?」


 俺は別の傭兵の首を掴んで、そのまま床に叩きつける。

 一度だけ弾んで煙となって消えた。


「こいつやはり暴走している?」

「この力はまさか? ぎゃああ」


 傭兵達は一人、また一人と煙となって消えていく。


「貴様ああ」


 慌てた傭兵が自動小銃を俺に向けて発射した。

 軽快な発射音がボス部屋に響き渡る。

 俺の身体に何かが連続して弾む。


「誰が撃てと言った」


 よく通る声の男が怒鳴った。


「ですが隊長。こいつ人間じゃねえっスよ……」


 俺はその傭兵の足を掴むと天井に向かって投げた。


「ちょっと待つっス」


 重力に逆らって天井に落ちた後、重力に従って落下するが、その途中で煙となって消えた。


「化物めぇ」

「なんだこいつは? 確かに命中したはずだ?」

「銃が効いてないぞ?」

「そんなバカな」

「これダンジョン弾丸じゃないのか?」

「そのはずだ。何故効かない」


 傭兵が俺を見て銃を構え直す。


「同時に撃つぞ、カウントダウン」

「サン、フタ、マル、撃て」


 無数の銃弾が俺の身体に命中する。

 だが痛みは感じない。


「その者、貫通無効なり」


 生徒会長の声がした。

 俺の身体から何かが射出され、傭兵達の身体を貫いた。


「ギャアアア」

「撃ち返してきたぞ」

「そんな馬鹿な」

「銃もないのに何故?」


 傭兵達は身体にいくつもの穴を開け、煙をまき散らしながらダンジョンから退場していった。


「何を撃った? 銃弾を撃ち返したのか?」

「分からない、発射音がない」

「あり得ない。あり得ない。俺達はA級霊トレーサーだぞ」

「ひるむな。相手は一人だ。集団で囲め」


 集団で一人を取り囲めだと?

 その行為をなんと呼ぶか知っているか?

 イジメって言うんだよ。大の大人が寄ってたかって俺をイジメるだと?

 いいだろう。では俺も精一杯反撃しよう。

 黙ってイジメられていた俺はもういない。

 イジメられっ子が力を手にしたらどうなるか?

 こうなるんだよ。

 俺は半透明の触手を薄く延ばして水平に薙ぎ払った。


「ぎゃー」

「ぐあああ」


 腰から真っ二つに両断される傭兵は床に激突する前に煙となって消えた。

 過剰防衛? イジメに過剰も軽いもない。

 行為自体が悪だ。万死に値する。

 俺は触手を針のように伸ばし、傭兵に向けた。


「ひいい。ありゃ一体、何なんなんだぁ」

「無理だ。あんなの勝てるはずがない」


 触手に串刺しにされ煙となって消える傭兵たち。


「な、何をしている。しっかりしろ! 一体いくら払ったと思ってるんだ」

「ですが、話が違います。契約では……」

「ええい、うるさい。俺に口答えするな、A級霊トレーサーだろ。なんとかしろ」


 地団駄を踏むテンドー君。


「仕方がない。奴を押さえるぞ。イマジナリーウェポン抜刀せよ」


 隊長らしき男が銃を捨て俺を指さした。


「「「「はっ」」」」


 傭兵達の手元に様々な武器が現れた。

 刀、西洋剣、槍、斧、盾など千差万別だ。

 それがお前達のイマジナリーウェポンか?


「連携を怠るな、これはボス戦だと思え。気を抜くな」


 大盾を構えた傭兵を先頭に傭兵達は陣形を組み、距離を取る。

 その集団行動に俺の中の何かが嫌悪感を抱いた。

 俺も同感だ。集団行動は嫌いだ。

 俺は体内の何かを圧縮して放った。

 その瞬間、盾を構えた傭兵の上半身が盾ごと消えた。

 さらにその背後の傭兵も貫通し煙となって消えた。


「ひいい」

「なんだと? 山田の千崖鉄壁ガードが? 一撃だと?」

「何をされた? あの遠距離攻撃は危険だ。下がれ」

「また撃ち込んだ銃弾を撃ち返したのか?」

「違うな。あの威力はヤオロズ級の攻撃だった」

「ヤオロズ級だと? あいつはただの学生じゃないのか?」

「魔法詠唱開始。それまで一歩も通すな」

「はっ」

「ぎゃっ」


 そうはさせない。俺は陣形を整える傭兵達に向かって何かを放った。

 お前達は生徒会長に何をしようとした?

 巫女たる生徒会長に何をした?

 人類の至宝にて究極の美的存在の生徒会長に手を挙げたな?

 それは万死に値する。

 そして俺をイジメようとしたな?

 それは百万死に値する。


「ぎゃあぁ」

「ひええええぇ」

「止まるな。狙い撃ちされるぞ。盾持ちは前に。俺が時間を稼ぐ。援護しろ」


 武器を構えた傭兵達は自慢のイマジナリーウェポンを振るうことなく消えていった。

 隊長らしき男が前に出て刀を構えた。


「……天外武装奥義……十王五月雨改改。受けてみよ」


 隊長の身体がいきなり分裂した。

 え? 分身だと?

 そして剣を抜いた。

 そこから放たれた斬撃が前後左右から同時に俺に迫る。

 分身が攻撃した? どれか一つが本物? いやこの全てが本物だ。

 これは残像ではない。俺の黒く濁った視界にはそれがはっきり見えていた。

 普通ならば全方位からの攻撃など避けきれるものではない。

 だがわざわざ避ける必要がない。

 俺の中の何かがそう言った。

 その言葉通りその斬撃は俺の身体の表面を滑るように流れた。

 流れた斬撃が壁や天井に無数の痕跡が残した。


「なんと?」

「その者、斬撃無効なり」


 副会長の声がした。


「十王五月雨改改が効かない?」


 俺は茫然としている隊長の身体を串刺しにした。


「ぐふっ。今だ、遠距離攻撃を撃て」


 隊長は俺を掴んだ。

 まさか捨て身の抑え込み?

 だがそんな格好いいことはさせない。

 俺は背後から忍び寄る傭兵に向けて体内の何かを圧縮して放った。


「ぎゃ」

「うは」

「くっ」


 ドタドタと崩れゆく傭兵達。


「なんて奴だ」


 隊長がそう言い残し煙となって消えた。


「隊長がやられた? 隊長は特A級霊トレーサーなんだぞ」

「ひいい化物。なんなんだよ。こんなのレイドボス並じゃないか」

「うろたえるな。体制を立て直せ。魔法班は何をしている。隊長の作った隙を無駄にする気か?」


 眼鏡の傭兵が叫んだ。


「詠唱完了、いけます」


 後方の傭兵が叫んだ。


「着弾地点を重ねろ」

「サン、フタ、マル。撃て!」

「インフィニットレッドロック」

「三号炎岸弾」

「グレートフレームランチャー」

「スパイラルビビッド」

「紅蓮皇道波」


 傭兵達の叫びと共に光り輝く魔法のようなものが飛び出した。

 俺はそれを避けもせず、正面からその魔法を受け入れた。


「!」

「え?」

「消えた?」


 俺は魔法を避けることなく全て吸収した。


「「「え?」」」


 魔法攻撃を放った者達が茫然としている。


「その者、魔法無効なり」


 生徒会長の楽しそうな声がした。


「俺の魔法が効かない。そんなぁ」

「なんなんだ」

「ありえない」


 俺は今吸収したばかりの魔法の一部を放った。

 真っ赤に光り輝く細い高熱の糸が、傭兵達に突き刺さり燃え上がった。


「ぎゃぁぁぁあぁあああ。熱い熱い熱い」

「魔法反射?」

「無詠唱?」

「ぎゃああぁあぁ」

「違うぞ、これは俺の放った魔法……ぎゃあああぁぁ」


 最後まで言う前に燃える尽きる傭兵。


「「その者、魔法を反射するなり」」


 生徒会長と副会長が同時に言った。


「ええい俺がいく。奥義……天蓋武装。煙石鎮魂歌」


 巨漢の傭兵から何千という拳が空間を埋め尽くす。

 その全てが俺の身体に命中する。


「え?」


 だが効かない。


「「その者、打撃無効なり」」


 二人は嬉しそうに抱き合って叫んだ。


「攻撃が効かないっだとぉ? そんな馬鹿な」


 だがその姿勢、素手で立ち向かう戦う奴は嫌いじゃない。

 昨日の俺もそうだった。

 最大の礼儀を持って接しよう。

 俺は無表情で無言で殴った。


「カハっ」


 巨漢の男の胸に大穴が開き、吹っ飛びながら煙となって消えた。


「貫通、斬撃、打撃、魔法が無効ならば……ジュピタープレッシャー」


 傭兵が大気を圧縮し衝撃波が発生した。

 俺はその衝撃波を避けずに、片手を前に突き出して衝撃波を飲み込んだ。

 吸収した、いや。喰った。


「はっ? バカな」

「「その者、衝撃無効なり」」


 二人の声が歌うように弾んだ。

 俺は触手を平らに延ばし、お返しとばかりに衝撃波を放った。

 傭兵が粉々になって吹っ飛んだ。


「ひいいい」


 一人残されたテンドー君が、わなわなと震える。


「A級霊トレーサー傭兵部隊が壊滅だとぉ」


 泣きそうな声で叫んだ。

 俺はテンドー君にゆっくり近付いていく。


「来るな、来るな、来るなー化物。ひ、ひいいいい」


 化物はどっちだ。

 ダンジョン内で好き勝手に振る舞うその精神こそ化物。

 理性を失い感情だけで生きるのは動物より劣る。

 俺は濁った視界でテンドー君を睨んだ。

 想像だが、きっと俺の白目と黒目は反転し、闇の住人そのものであっただろう。

 そんな目で睨まれたらどうなるか?


「ひ、ひいいいいいい。うわ、やめて、ごめんなさい。すいあせんえした」


 テンドーは謝りながら背負っている霊キャスターの緊急脱出レバーを引こうとした。

 だがそうはさせない。俺は触手でそれを阻止した。

 こいつにはダンジョンの掟を知ってもらう必要がある。


「ダンジョンは治外法権だったな?」

「ひいいぃい」


 ボッチのコミュ障じゃあるまいし、しっかり喋ろよ。


「……」

「トーリ、もうよい」


 生徒会長が首を横に振った。

 何がいいんだ?

 何故止める? こいつは屑だ。屑は何を言っても理解しない。


「トーリ君、少し落ち着きなさい」

「でも」


 俺が生徒会長と副会長に抗議しようとした瞬間。


「馬鹿め」


 テンドー君が脱出レバーを引いた。

 霊キャスターのメンタル霊が噴出し、テンドー君の存在がこのダンジョンに維持出来なくなり、煙となって消えた。

 くそ。逃がした。クロミズ追うぞ。

 そう、俺は今このダンジョンのボス。クロミズサマと一体化していた。

 憑依されたのでも加護を授かっているのでもない。

 同化したのだ。

 この部屋の扉でクロミズを殺した時に俺は誓った。

 お前の魂は俺が引き受ける。

 外の景色を、いやボッチの本当の世界を見せてやるよ。

 これからは俺達一心同体だと誓った。

 それが全ての始まりであった。

 恐れ多くもそれが神と呼ばれる存在との契約だった。

 俺はクロミズと対等な立場となった。

 相手が神だろうが魔物だろうが関係ない。

 俺達はボットモなのだ。強敵と書いてボットモなのだ。


「「その者、黒き水のごとき……クロミズサマというなり」」


 二人はそう歌いながら俺に駆け寄った。


「トーリ、助かった礼を言う、怪我はないきゃ?」

「トーリ君、これクロミズサマの加護。そう、今はトーリ君を守っているのね」


 そして二人が抱きついてきた。

 俺はあまりの衝撃に意識が飛びそうに。


「へ?」


 ならない。あれ? 俺は今、伝説級の美少女二人に抱きつかれている。

 左右から圧倒的胸部ボリュームが押し付けられ、その形が変位し俺の身体に密着している。

 俺は未知との遭遇をはたしているのだ。

 気が動転して当然、テンパってパニクって当然。

 だが俺はいたって冷静沈着。

 悟りを開いたボッチ賢者のように冷静。

 最高のラッキースケベシチュエーションなのに何も感じない。

 おかしいぞ。俺がおかしいのはいつものことなのだが今回はおかしい。

 童貞マスターボッチの俺に、エロスの衝動からの衝撃が襲って来ない。


 まさか?

 衝撃無効なり。

 その俺の頭にその言葉がよぎった。

お読みいただきありがとうございました。


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