第7話 異世界で初登録を
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「冒険者やりたいです。」
心が動かされていつの間にか声に出していた。でも光輝は言ったことに後悔は一つもなかった。
「…本当ですか!?」
受付の女性は嬉しかったのか少し声を張り上げカウンターから身を乗り出していた。
「は、はい。」
突然と近づかれ、光輝は動揺した。あまりにも美人の顔が目の前にあったため、見つめまいと視線を逸らした。
「…あ、スイマセン…。」
受付の女性は少し顔を赤くして定位置に戻った。
「…で、ではまず冒険者に必要な冒険者ライセンスを作るために名前を記入しましょうか。」
「…は、はい。」
受付の女性はライセンス発行の準備を始めた。がここで光輝は自分が置かれている問題を新たに認識した。
(…そう言えばここは異世界だった!!言葉は通じても文字はどうなるんだ!?)
少し慌てていると『ブン』という機械音がしてパソコンのキーボードのような画面が現れた。そして気になる文字は親しみなれていた英語だった。
「こちらにある画面に文字を打てば冒険者ライセンスにあなたの名前の記入ができます。どうぞ。」
「…は、はい。」
光輝は少し戸惑った。だが先ほどのACCEPTANCEと英語で書かれているのを見たが、素通りしたのを思いだして少し納得することはできた。少し不安になりながらも画面をタッチパネルに触れる感覚で画面の文字をタッチして名前を記入した。
「つきくめ、こうき…、珍しいお名前ですね。」
「よく言われます。」
「しかしレクラルク語をここまでご存知の方とは、思いませんでした。」
「…レクラルク語?」
「…あれ?…てっきりご存知かと思いました。ということはトレトアイル語もご存じでは無いですよね?」
「…は、はい。」
「では少しながら説明します。レクラルク語は数千年前にこの世界「アン・イリス」に神がもたらしてくれた言葉で、現在でも神を祀る際にこの言葉を使うことが今でも多くあります。今はそれだけではなく、神の言葉をよりよく知ろうというということで様々な場所で少しですが使われています。トレトアイル語は神々がレクラルク語をこの世界に伝える前に存在していた言葉で、古代の人々が知恵を出し合い生まれたと言われています。このトレトアイル文字は古代に誕生した様々な文字の中で形を変えず唯一現在に残った文字で、現在は全世界で使われる言葉です。」
「…なるほど。」
「ちなみにトレトアイル文字はこのようなものになっております。」
受付の女性はそういうと画面にトレトアイル語を映し出した。
(やっぱり見たことが無い文字だ…。)
詳しくトレトアイル文字を詳しく見ていると光輝はあることに気が付いた。
(この文字はひらがなと同じで50音でできているのか…。)
何だか少しだが光輝は親近感をこの文字に持っていた。しかしあることに気が付いた。
(なんだろう…?初めて見る文字なのに、読める気がするのは何でだろうか…。)
「…。」
「…さん。」
「…。」
「…あの、光輝さん…?」
「…!…すいません。」
「いえ大丈夫ですよ。ではライセンスには顔写真も必要ですからここで一枚写真をとりましょうか。」
「はい。」
受付の女性はトレトアイル文字の映った画面を右手でスワイプして、スマホのカメラアプリのような画面を表示させた。
「あの、もう少し左に寄って下さい。」
光輝は指示通りに足を少し動かして、カメラ画面の中央に身体全体を移動させた。
「はい、そのまま動かないでくださいね…。」
受付の女性はカメラのピントをうまく合わせて、右端の中央にある白く丸いボタンをタップして『パシャリ』とシャッター音を立てて、光輝の顔写真を撮った。
「顔写真はこちらとなります。これでいいですか?」
受付の女性は先ほど撮った写真を光輝に見せて確認をした。光輝は特に気にしない様子で
「大丈夫ですよ。」
と即答した。
少しの間、受付の女性はライセンス発行の作業をしていた。光輝は静かにライセンスの発行の手続きが終わるのを待っていた。
「これでライセンスの発行の手続きは終わりました。ライセンスの発行には時間がかかりますから、冒険の為の自分の身体に合った武器をそろえましょうか。」
「はい。」
「少し待ってください。」
受付の女性は画面を消すと、『席を外しています』と書かれたスタンドを立てて、受付のテーブルを少し上げて光輝の前に出てきた。
「では案内します。付いてきてください。」
「はい。」
光輝は言われるがままに受付の女性に付いていった。しばらく歩くとエレベーターのような扉が見えてきた。受付の女性は扉の隣にある↓ボタンを押した。すると『スーッ』と静かな音が扉の近くまで上がってきた。音が近くまで来ると音が止み、『リーン』という少しキレイな音がすると扉が開いた。
「こちらへ、どうぞ乗って下さい。」
光輝は言われるままにエレベーターのような乗り物に、受付の女性と乗った。受付の女性は光輝が乗ったことを確認すると『B2』のボタンを押した。エレベーターのような乗り物は静かに扉を閉めて、音をあまり立てずに下へと降り始めた。
(この世界にもエレベーターみたいな乗り物があるんだな…。)
少し日本とこの世界のエレベーターを見比べていた。見比べが頭から離れたとき、受付の女性は間を置いて
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はギルド・コルフルトの冒険者担当の『ルルシア・リナルミア』と言います。気軽にルルシアと呼んでください。」
と顔に少し笑みを入れながら丁寧に自己紹介をした。
「は、はい。よろしくお願いします。」
光輝はルルシアの笑みを入れた自己紹介に少し緊張ながらも言葉を返した。そんな中で、このエレベーターのような乗り物がこの世界では何と呼ぶのか少し気になった光輝はルルシアに聞くことにした。
「あの、ルルシアさん。」
「はい?」
「この乗り物ってなんていうんですか?乗ったことが無くて…。」
「これはエレベーターと言って上や下に行くことが乗り物です。」
「…なるほど。」
名前が日本と同じだったので何だか質問して光輝は複雑な気分になった。だがここで
「ちなみにこのエレベーターは魔力によって動いています。」
と聞きなれない言葉が出てきた。
「魔力?」
「このエレベーターの一番上と一番下には大きな魔力水晶版があって、その水晶版からこのエレベーターを浮かせることのできる魔力が出ていたその力を利用してこのエレベーターは上下に動いているんですよ。」
「…そうなんですか。」
聞きなれない言葉を交えながらの説明に光輝は頭を付いていかせられずに少し戸惑ってしまった。光輝は冒険者ライセンスの発行が終わったら『ノルス』に聞こうと思った。
そう考えているとエレベーターは止まりリーンという音が鳴ると扉が開いた。
開いた扉の先には、一部は仕切られていながらもとても広く広がっていた。エレベーターを降りて、ルルシアの後を付いていくとまたしても自分の目を疑う光景があった。杖のようなものを持ち、丸い的に向かい炎を放つ女の子。小柄な体系でありながらも、力んだ拳を前に出して簡単に岩を粉砕する少年。物騒な大きな斧を軽々と振り回す女性がいた。
自分が日本で生きていた時にはありえないとして考えるだろう光景を近くで目の当たりにした。この光景にやっぱり俺は冒険者をするのはやっぱりやめておけば良かったのではないかと光輝は自分に少し悟ってしまった。
こうして様々な光景を見ながらもルルシアの後を付いて行くと壁に槍や杖が飾られているような場所が見えてきた。ルルシアはそこで足を止めた。そして顔の表情を少し真剣にして説明し始めた。
「ここは武器を試しに武器を使用して自分に最適な武器を決めるための場所です。光輝さん、冒険をする為の武器は自分に相性がいいと思うものを真剣に選んでください。選ぶ武器によってモンスターとの戦闘での生死を分けてしまうことがあります。過去に武器の選択を真剣に選ばなかったことによって命を落とした冒険者は数多くあります。自分の気持ちに正直になり、武器と自分の心をしっかり向き合わせてください。」
「…!!」
『命を落とす』その言葉は今の光輝を恐怖といった感情が支配した。武器を持つということも怖いと思ったが、それ以上に命を落とすことがとても怖いと思った。だがあの時『冒険者やりたいです。』と自ら言ったことを否定したくなかった。
そしてもし普通に生きていけるのであれば、それがこの世界でも日本と変わらず一番の幸せなのかもしれないとも考えた。
でも普通に生きてまた死んでしまうのであればそれは一生懸命に生きたとはいえない、あの時の誓いを果たせないと思った。一生懸命に生きる。ここまでの願い・決意・自分の言葉を支えとして光輝は恐怖もありながらも勇気を心に持って
「分かりました。」
と答えた。




