お墓参り
確かに、実際に件の人物が埋葬されていることを視認すれば、疑いもなくなる。イリスは、何故の部分は特に気にならなかったのだろう。クレアはリズと一緒に教会へと案内するイリスについていくことになった。
「メイウェザー家がお世話になるならば、この教会ではないかしら」
「ここが……」
「まずはお葬式がどんな感じだったか、聞きましょうよ」
イリスがサクサクと話を進めていく。
「ご令嬢がさめざめとお泣きになる様は、本当に哀れに見えて、はたで見ているだけの我々もかなり物悲しい気持ちになったものです」
適当な教会関係者を捕まえて、イリスは話を聞いていく。
「私、世情に疎くって今になってようやくメイウェザー伯爵夫人がお亡くなりになったことを知ったのですよ。ですから、お墓参りがしたくって」
などと堂々と口から出まかせを語るイリスの姿にクレアは感心したものである。相手に疑いを持たれたらどうしようなどと、そんな不安など端から抱かず行動に移せる彼女の強さはクレアにはもっていないものなので、実に頼もしかった。
「あなたがお知りになるのが遅れたのはしょうがないことでしょう。どうやら、ご葬儀に招かれたのはごくわずかな親族のみで実にひそやかなお式でしたから」
「まあ、そうでしたの」
ありがとうとイリスは礼を言って、彼と別れた。
「お墓はこちらですってよ」
イリスの案内で夫人の墓へと向かう。
「何をしているの!」
「お義姉様!」
墓へと向かう途中、ばったりと出会ったのはメイウェザー家の令嬢であった。彼女は先の夜会で両側に侍らせていた男達と一緒であった。
「あの、お墓参りをした方がいいのかと……」
「あなたにそんなことをして欲しくないわ!」
令嬢の声には切実さがあり、傍で聞いていたクレアもごもっともと思った。
「あの、お義姉様」
「姉などと呼ばないで! 思ってもない癖に!
彼女はリズを拒絶すると、急いでその場を去った。彼女を追って男達も去っていく。去り際にギロッとリズ達を睨んでいった。
リズがはあっと息を吐く。何度か深呼吸をして、気を落ち着かせようとしている。クレアはそんな彼女の背をそっと撫でた。
「……どうやら、本当にお葬式はしてお墓もあるようですわね」
イリスがそう断ずる。
「あと確かめる必要があるのは、ご遺体が本人かどうか」
「ええ⁉」
イリスの言葉に、リズが驚く。
「夫人が亡くなってないとするならば、そういうことでしょう」
「でも、そんなことどうやって確かめれば……」
「お墓を暴くわけにもいきませんしねえ」
リズの困惑にイリスが同意する。二人の様子を見ていると、イリスがクレアと目を合わせてきた。
「彼女の願望でしょう。夫人が生きていて欲しいってのは」
教会を去るときにイリスがクレアに語る。
「本当は夫人が生きていて、そして戻って来てほしいのよ。そうすればあの家を出る口実が明確にできるから」
「まあ、それはそうよね……」
「彼女、自分がただ逃げるだけならば、真相を明かす必要なんてないはずなのに、それをしたいのは誰かを気遣ってのことかしら」
「ああ……」
イリスの見解にクレアはなるほどとうなずく。リズが気遣うのは、やはり彼女の母だろう。




