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気づき

「あ、これ全部絵よね」

 この部屋には飾られなくなった絵が集められていた。その絵すべてに布がかかっている。一枚の絵の布をめくってみると、風景画であった。

「家族の肖像画もここに収められているわね」

 クレアが適当にめくった布の下には、メイウェザー伯と夫人と娘の三人の肖像画があった。


「お義姉様は伯爵と目の色が同じなのよね」

「そうねえ。夫人とは違う色よね」

 リズとクレアは三人の肖像画を見てそう感想を述べる。


「……夫人だけの肖像画ってあるわよね」

 リズが夫人の肖像画を探し出す。クレアはそれを手伝いつつ、リズの様子を窺う。


 クレアは、いくつか布をめくった後、女性一人だけの肖像画を見つける。

「リズ、もしかしたらこれじゃない? あのお嬢様と似てらっしゃるわ」

 クレアの声に、リズは振り返る。振り返ったリズは、クレアと目を合わせ、彼女の手元に視線を落とした。


 リズが一声甲高い悲鳴を上げて、その場に崩れ落ちた。口を手で覆い、目は驚愕に見開かれている。


「会ってる……私、この人と会っている。この目を知っている……」

 リズの言葉に、クレアはうんと大きくうなずいた。リズは真実にたどり着いたのだ。


 リズはクレアの助けを借りて、ゆっくりと立ち上がる。


「ねえ、リズ。私、まだあなたの依頼を達成できてないわ」

「クレア……?」

「私は霊媒師。だから、霊媒師としての仕事をしないとね。リズ、降霊会をしましょう」

 クレアの言葉を聞いて、リズはしばらく考えた後、了承の頷きを返した。



「リズ! あなた何を考えているの!」

 突然の降霊会の開催に、メイウェザー伯爵令嬢が一喝してくる。

「お義姉様。勝手なことをするなとお思いでしょう。ならば、私のことを見張る意味でも是非ご参加ください」

「リズ……」

 令嬢はリズの言葉に困惑を見せる。


「令嬢でもないただの平民が調子に乗ってるな!」

 令嬢の取り巻きをしている令息達がそんなことをリズに言っているが、リズはそれを静かに眺めて受け流す。

 相手にしてくれないリズに令息達は憤慨しつつ、令嬢の元へと戻る。


「リズ!」

 一人で佇むリズに駆け寄るのはベニーだ。

「リズ! どうしたんだ。降霊会を主催するなんて」

「……真相を知りたくて。そうだ、ベニー。あなたに尋ねたいことがあったの」

「知りたいこと?」

 使命感に燃えながらリズに駆け寄ったベニーだったが、リズの問いかけに虚を突かれたようになる。


「あなた、お義姉様と婚約破棄をして私と一緒になりたいと言ってくれたけど、それって私と一緒に平民として生きてくれるってこと?」

「えっ」

 リズの言葉を受けて、ベニーはぽかんとした顔になる。


「何を言ってるんだ? リズがこの家を継げばいいだろう?」

「それこそ何を言っているの。私は、この家の子ではないのよ。それに貴族の血なんて入ってない。生粋の平民よ」

「だが、養子に入るなどすれば」

「それ、意味あるの? 貴族って血筋を重んじるんでしょう。それに、伯爵が私をこの家の養子にするなんてあり得ないわ」

「あり得ない? なぜ言い切れるんだ」

「私は、母のスペア。今は、子供っぽくて伯爵の好みに合致しないんでしょうけど、もう少し大人になればなどと思われてるんでしょう」

「え」

 リズの言葉を聞いて、ベニーが絶句した。

「リズ、あなた……」

 これらの話が聞こえていた伯爵令嬢もさすがに困惑を隠せないようだ。横で聞いていた令息達も同様に困惑しているらしく「えええぇぇぇ」とうめいている。


「私をここから連れ出してくれるの?」

「え……え」

 そこで肯定の言葉がすぐに出ていれば、格好がついたのに、ベニーは中々その言葉を出せない。

「わかったわ」

 リズの声には諦念が滲んでいた。ベニーをじっと見つめていたが、視線を外した。



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リズ、これは可哀想… そしてベニーのぐだっぷりよ…
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